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第二章 メモリー&レイルート
マァ○リオカート、ウィッヒイイイ!!↑
しおりを挟む現在、俺とミミの戦いの結果は互いに一勝一敗。カセットを入れ替え、次が最終決戦との事らしい。
……さあ、その次なるゲームは…。
「……マァ○リオカート、ウィッヒイイイ!!↑」
超が付くハイテンションで主人公がタイトルコールする。今回プレイするゲームは超人気のレースゲームである。
「さあ、始めようか。」
自信満々な様子のミミ。ちなみに俺はこのゲームはやったことがない。恐らく相当強いであろうミミに俺が勝てるか分からない、だがこのレースゲームの最新作の方は俺もやり込んでいるため、そこまで酷いことにはならないだろう。
……あわよくば勝ちたい。いや、勝つ。そう胸に刻んで俺はラストバトルに挑む。
「キャラ選択だな。」
表情されたキャラクターは総勢24体。見たことの無いキャラも多くいるなか、俺は最新版の方で使っている、骨と化した亀の大王を選ぶ。
「あれ?そのキャラでいいのか?」
ミミは意外そうな表情をする。このキャラは実はそんなに強く無いのかもしれない。でもそんなこと俺は知らない、初めてだから。
まあ、特にどのキャラが強いのかも分からないので、俺はとりあえずこのキャラで行くことにする。
「そうか、…勝ったな。」
そう言ってミミが選んだキャラクターは、バンダナでグラサンのゴリラだ。ミミの表情から察するに、恐らくこのキャラが最強なのだろうと思うが…、
「…何だ、チロ。その目は。」
「いや、何かアンタって、女の子っぽくないなーと思って。」
「なっ……!!」
これは完全に偏見だ。誰がどんなキャラを使おうと、その人の勝手だ、男も女も関係ない。そんなことは俺も分かっている。だがこの作戦の意図は別にある。
「……じゃ、じゃあ変える…。」
そう言ってミミはキャラを黄色ドレスのお姫様に変える。これが俺の狙いだった。ああ言う事で、ミミはあのゴリラを使いにくくなる。俺の作戦勝ちだ。
それにしてもミミがこの作戦に乗ってくるとは、男みたいな口調なのにめっちゃ乙女やん、アイツ。
……と、それに乗じて俺もキャラをグラサンゴリラに変える。
「なっ!!お前ッ、ズルいぞ!!…ず、ズルいわよ!!」
「いや、別に無理に口調変えなくていいから。………可愛いな、ミミ。」
「う、うるひゃい!!!!」
そう言ったきり、ミミは顔を真っ赤にして俯いてしまった。…少々、こいつの乙女心を弄び過ぎたかもしれないな。反省はしているが、後悔はしていない。
……レースが始まる。カナとハナのキャラクターはそれぞれ、緑ぼうしのヒゲと、ピンクドレスのお姫様だ。
レースはこの1レースのみ。その順位で勝敗が決まる。
「……絶対に許さない、絶対に許さない、絶対に…。」
ミミがぼそぼそと何かを呟いている。……なんか恐いので無視する。
……カウントダウンが終わり、一斉にスタートする。俺はまずまずのスタートを切れた。
インコースをひた走り、アイテムを取る。出てきたのは見たことの無い雲だった。
「何だこのアイテム?」
「…………。」
「む、無視!?」
ミミは未だにさっきの事を根に持っているようで、俺の事を完全に無視するつもりでいる。カナとハナはそもそも俺の質問に首を傾げている。
まあ、いいか、と俺はそのまま走ることにする。
……すると持っていた雲が突如カミナリを落としてきた。
「ええッ!!」
「……ふっww」
ミミに鼻で笑われる。…こいつマジで許せない。フェアプレー精神というのを分かってない。正々堂々と戦えこのゴリラ。
と、何本ものブーメランが刺さっている事に気付かない俺が、ミミの背中を追いかける。
……現在の順位は2位。3位とは圧倒的な差を開かせたままラストラップに突入した。
1位であるミミとの差は微妙。加速系のアイテムが来れば逆転を狙える位置にいる。
…アイテムを拾う。どうか来てくれ、キノコ、キラー、赤甲羅でもいい、ミミは今ノーガードだ。
ルーレットが止まる。…来たアイテムは…!?
「……赤甲羅だぁぁ!!!!」
すぐさま甲羅を投じる。……勝った、と、俺は勝ちを確信した。
…その時だった。
「あっ、カミナリ落ちた。」
最下位であったカナが取ったアイテムはサンダーだった。赤甲羅の効力は殆どかき消され、差を縮めることが出来なかった。
「よっしゃ!!カナさんナイス!!」
「畜生めぇぇぇぇ!!!!」
……結果、その後もミミを抜かす事が出来ず、俺は2位に終わった。
「よっしゃあ!!んぎ…」
「んぎ?」
ミミは喉まで出て来ていたおっさんのような叫びを飲み込む。すると俺へと振り返り満面の笑みを浮かべる。
「……いいえ、何でも有りませんわ、チロ様。とても良い勝負でしたね。…まあ、結果的に私が勝ちましたけど?」
……うわ、うっざ。めっちゃウザイ。
さっきまで女口調が可愛いと思ってたが、調子に乗られるとウザイ。そもそもミミがお淑やかにしているというギャップが可愛いのであって、女口調が良いという訳でもないのだが。
「?、どうしました、そんな変な顔をして。」
「………何かテンション高いな、お前。」
俺がそう言った途端、ミミはふざけるのを止めて、急に真面目な表情で語りだした。
その変化のしように、俺は思わず背筋がのびる。
「ああ、そうだな。……真面目に言うと、チロ。アンタと今日遊べて本当に楽しかった。ありがとうな。」
「ど、どうした?急に。」
「私はずっとアンタと会いたいと思っていた。アンタという人間に興味があった。それで今回の周回で始めて会えて、私は本当に嬉しかった。今までのアンタの生き方を私は見てきたから、そして実際会って、もっと好きになった。ありがとう、チロ。………私が何を言ってるか分からないだろうが。」
「……本当に何を言ってるか分からない。どういう事だ。」
「まず、疑問に思わなかったかい?君たちの中央の国に私達がいたのかを。」
「それはカナが招待したからじゃないのか?」
「?、私はしてないよ?」
「じゃ、じゃあ何で…。」
「……それは神林慎一郎、君に会いたかったからだ。」
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