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287、出ないことが 奏side

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斗真さんのお家…
頭では分かってるのに心に蓋がしまってるみたいに硬くなる。

怖い…それしか思えなくて斗真さんに縋る。

「大丈夫、大丈夫、」

斗真さんの声…
斗真さんの声は僕の心に染み渡る感覚がする。

「大丈夫、大丈夫、」

「っ…」

斗真さんの服を掴んで見上げる。
斗真さんと目が合うと優しく微笑んでくれた。

ここは斗真さんのお家…斗真さんしかいない…
辺りを見渡してもう一度斗真さんの胸に顔を擦り付ける。

「大丈夫、大丈夫、」

コクリ コクリ
「っ……っ…」
"斗真さん…"

言いたかったのに喉は硬くなったままで声が出なかった…

「どうした?」

紙とペンを出してくれた。

また声が出なくなった…悔しくて喉を掴む。

「喉掴まないの、落ち着いたら出るようになるからね。大丈夫、大丈夫、」

優しく抱きしめてもらってまた目頭が熱くなる。

「泣いていいよ。我慢しなくていいからね。」

「っ…」

怖くて出た涙とは違う、これは声が出なくて悔しくて出た涙。

「大丈夫、大丈夫、ちょっと落ち着いてたのにねー、もう少し落ち着いたらリビング行こうね。」

パクパク「…っ…っ」

声を出そうとしてみるけど何も出ない…

「落ち着いたらちゃんと出るようになるから大丈夫、どうした?何か言いたいことあるの?」

フルフル

ペンを目の前に出されたけど首を横に振って斗真さんの胸に顔を押し付ける。

言いたいことがあるわけじゃない…あるわけじゃないけど…なぜか声が出ないことが悔しくて…嫌だった。
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