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第31話

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《RDside》

 ハーベルダ大公という超がつくイケメンにエスコートされるがまま、皇宮内にある別室へとやって来たおれたち。
 舞踏会の会場から直接行けるようになっているこの場所は、様々な貴族が来る場所だ。
 左右にズラリと並ぶ扉。やけにムワムワとする廊下。厳重な扉なのに、中から聞こえてくるの声。

「いやムフフな場所やないかい!」
「…………………」

 いや、黙んなし。おかしな雰囲気になるやろうがい。
 前世で住んでいた日本という国にあるお笑いの名地。大阪出身の漫才師も顔負けのツッコミを入れたのに、ハーベルダ大公はわけが分からんという顔をしている。皇太子殿下はともかく、ハーベルダ大公にはこのノリは通じない…。

「ハーベルダ大公…。とりあえずどこか部屋に入りましょう…!こんなところ誰かに見られたら…」
「うふふ♡すっごくヨかったわ~♡」
「本当かい?僕もだよ♡」
「っておぉぉぉいっ!」
 
 背後の扉が開かれたと思ったら、明らかに事後の声が聞こえる。おれは思わず声を上げながらターンをして、ハーベルダ大公の腕を引っ張り近くの部屋へと入る。扉を思いっきり閉めてゼェゼェ!と酸素を胸いっぱいに吸い込んだ。

『何かオジサンの声が聞こえた気がするんだけど…』
『やだぁ~♡オジサンになってまでこんな場所使ってるの~?♡』

 キャッキャウフフとした声が遠ざかってくのを確認して、ゆっくり胸を撫で下ろす。
 ていうか、オジサンの声ってなんだよ。まだピチピチの十九歳なんですけど?すっごく不本意なんですけど?
 おれはフラフラとしながら、大きなベッドに顔面からぶっ倒れた。
 何か疲れたし、嗅いだことのないいい香りがする。ん?何か、変な気分に…。
 お腹の下辺り、子宮がきゅんきゅんと疼き始める。

「嘘…」

 誰かに見られないためには仕方がなかったとは言え、まさかハーベルダ大公をこんな場所に連れ込んでしまうなんて…。さっきの男女以外に、もし部屋に入るところを見られていたとしたら、せっかくの名声がまたもや地に落ちてしまう。ハーベルダ大公を狙う女共に暗殺されてしまう…!
 おれはベッドの上で深く頭を抱え込んだ。
 いや待てよ?そもそもの話、ここに連れて来たのはハーベルダ大公じゃん…。もしかして、ここがだって知らなかった、とか?
 おれは恐る恐る振り返り、ハーベルダ大公の顔を見つめる。


「殿下」


 色気のある声。ズクン、と再び子宮が疼く。はぁと息を漏らし眉を顰め、頬は少し赤い。
 こりゃダメだ。ハーベルダ大公絶対知ってたわ…。しかもおれと一緒で媚薬にやられてるわ…。

「そちらに、行っても?」
「だ、ダメダメダメっ!!!」
「どうしてですか?ここへ連れ込んだのはあなたの方でしょう?」

 いやそうだけど!!!
 全力でこの世の全てに向けて叫びたくなる気持ちを抑えて、必死に現状を打破する方法を考える。魔法でこの部屋を爆破するのもありだし、魔法で転移するのはありよりのありだ。急いで転移をしようと、魔法を発動させる。

「え、何で…」

 おれの魔法が!?うそうそうそ、嘘だ。嫌だわ、さすがにそんなん嫌だわ!
 もう一度発動してみるが、やっぱりダメだ。どうやらこの部屋一帯には、魔法を封印する魔法がかけられているらしい。低級ならすぐに破壊してしまえるのに、そうはいかない。このシルヴェストル大帝国において、おれの魔法に張り合うことのできる魔法を使える人は、たった一人しかいない…。

「ししょー!!!!!!!!!!!」

 シルヴェストル魔法学院学院長であり、おれの師匠でもあるエルセリベルグ・ティデンド・ラン・マーフィカルガ公爵しかいないのだ!
 あんたシルヴェストル魔法学院のトップでしょ!?おれが産まれる前は、神の子とか言われた物凄い人なんでしょ!?何でこんなくだらないことに魔法駆使してんだよ!バカ師匠!!!
 あれよこれよとしている間に、ハッと気づく。
 
「待て待て待て、待ってな?この部屋がどんな場所かは知ってたくせに…どうしてハーベルダ大公はおれをここに連れて来たの?」
からですよ」
「ひぃぃぃっ!!!」

 突如背後から聞こえた声に、叫び声を上げて後退る。相変わらず、腹立たしいほどのイケメンがすぐそこにいる。

「知っていたから、あなたを連れて来たんです」

 ハーベルダ大公はそう言いながら、腰の剣を外し、そして騎士服もスルスルと脱いでいく。服が次々と地面へ儚げに落ちていくその様子を見つめていると、そこにはシャツ一枚とズボンを履いただけのハーベルダ大公がいた。
 知ってたからおれを連れて来た、ってことは、まさかおれとをするつもりなの…?


「殿下…いえ…。リダ。あなたに触れることをどうか、お許しください」


 シャツの一番上のボタンを取り、禁断の二番目のボタンも弾くようにして取る。
 いくらイケメンでも抱かれるのはムリ…って言わなきゃダメなのに、言葉が出ない。体が凍りついたように、動かない。
 まるで、本能から目の前の男を求めているように…。





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