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第三章 将軍様はご乱心!
第45話 魔力浴
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到着1日目は野営地の設営で終わり、本格的な魔物討伐は翌日から始まった。
この野営地を拠点に、幾つもの隊に分かれて森に入っていくらしい。
森の中でも野営したりしつつ、各隊で魔物を討伐していくんだそうだ。
ちなみに一番大きな成果をあげた隊に褒美が出るらしくて、皆結構張り切っている。
「で、バルギー達は魔物狩らないのか」
「兵達の褒美を奪うわけにはいかないからな」
兵達が森へと消えていった後、静かになった野営地で俺はバルギーとお茶をしている。
今この拠点に残っているのは、後援部隊や軍医達などの非戦闘兵達ばかりだ。
飛将軍のナルガスもやっぱり残ってるみたい。
あとは原っぱで自由にしている馬竜と飛竜達。
ダイル達も今は馬竜と一緒に原っぱを駆け回っている。
「将軍、見つかりましたよ」
お茶を飲みつつゴロゴロしていたら、テントの中にイバンがやってきた。
「見つかったか。思ったよりも早かったな」
「えぇ、予想よりもだいぶ此処から近い場所にあったようで」
イバンがバルギーの前に地図を広げ、森の絵の一部を指さした。
「バルギー、何が見つかったんだ」
「魔力溜まりだ。これから私達が行くところだ」
あぁ、俺の魔力を充電しにいく場所か。
「昼食を取ったら私達は出る。イヴァン、後のことは任せたぞ」
「承知いたしました」
「デカイ走り茸見れっかな」
「そうだな。出てくるのは稀だと聞いているが、居ると良いな」
『エリー、仲間の気配感じたら教えてくれよ。大っきい王様茸見てみたいからな』
俺と一緒にゴロゴロしていたエリーをつついたら、力強く頷いてくれた。
バルギーに連れて来られたのは、拠点から3~40分程歩いた森の中だった。
光はしっかりと差し込んで、どちらかと言うと明るい印象なのに、何故か空気が重く感じる。
そんな場所だった。
なんか、明るいのに幽霊が出そうな雰囲気だ・・・・。
「ここがそうなのか?」
「そうだ。ほらケイタ、ここに座りなさい」
日当たりの良い場所に、バルギーが小さな絨毯を敷いてくれた。
わざわざ拠点から持ってきてくれてたのか。
俺が座れば、バルギーも当たり前のように隣に座る。
「それで、どれくらい此処にいればいいの?」
「そうだな。とりあえず日が傾き始める頃までにしよう。完全に暗くなると足元が悪くなるからな」
ってことは、4時間位かな。
「あー、時間潰し用に戦盤でも持ってくれば良かったな」
「あぁ、そうか。確かにそうだな」
「ま、おしゃべりでもしてれば直ぐだけどね」
俺、おしゃべりは得意だからな。
4時間くらいなら余裕だ。
「それにしても、こうやって森の中でバルギーと2人っきりになると、会ったばっかりの時を思い出すな。あ、エリーも居るな」
籠から出してやれば、俺とバルギーの間にちょこんと体育座りだ。
良い。
「ふむ、確かにそうだな。今回はお前の手を煩わせずに自分で歩けて良かった」
バルギーが冗談のように言いながら、自分の足を軽く叩く。
「ははは、確かにな!あと今はもう言葉もちゃんと通じるし」
「あぁ、そうだな。最初は言葉が伝わらず困る事もあったが、お前は折れること無く頑張ってくれたな。言葉も通じず、素性も分からない私のそばで不安だったろうに、良く見捨てずに運んでくれたものだ。今でもお前に対しては感謝の気持ちが絶えん」
「いやいや、それは俺の台詞だから。俺みたいな正体不明の怪しいやつ、良く連れて行こうって思ったな。それに・・・」
「それに?」
「・・・それに、今でもあんまり俺にそう言うこと聞かないじゃん?」
そう。
バルギーは言葉が通じるようになった今でも俺に故郷についてとか、何であそこに居たのかとかを深く聞いてこない。
ただ、遠い異国から来た迷子くらいの認識止まりだ。
気になるだろうに、聞かずにいてくれる。
こちらとしては大変助かるけど、将軍ともあろう人物がそんな怪しいヤツを家に置いているのはきっと良くない事だろうってのは、さすがの俺でも何となく分かっている。
今まで意識的に避けてた話題だったけど、実際のとこバルギーがどう思っているのか気になってつい口に出してしまった。
自分の首を絞める話題だって分かってるのに。
これをきっかけに深く聞かれたところで、返せる答えは無いのにな。
探るように自分から切り出した話題のくせに、本心では聞かないで欲しいと思っている。
でも、俺を拒否しないで欲しい。
何とも自分勝手で卑怯な願望を含んだ好奇心を我慢できなかった。
「・・・誰でも言いたくないことの一つや二つはあるものだ。お前が話しても良いと思っている事なら、とうにその話はしているだろう。だが、話さないと言うことは話したい事ではないのであろ?」
「それは・・・まぁ、ちょっと説明が難しい事ではある・・・かな」
「なら別に話さなくても良い。それで困る事はないし、私はお前に無理強いはしたくない。私にとって重要なのは、出会ってから共に過ごしたお前との時間だけだ。実際に接して自分で確かめたお前の人柄が私にとっての全てだ。お前がどのような場所から来たのか、どのような過去があるのかは関係ない」
うわぁー、おっとこ前~。
そんな潔い考えを言い切れるバルギーの真面目さというか、漢ぶりというか・・・。
流石だぜ。
って言うか、俺のずるい気持ちを見事に満たしてくれるような完璧な答えだった。
完璧すぎて、むしろ後ろめたい気持ちが大きくなった気がする。
「そう言ってもらえると嬉しいけど・・・。ごめんなバルギー、ちゃんと話せなくて」
その内きちんと話せる日が来れば良いんだけど。
竜達に言われた話が怖くて、今だにその勇気がでないんだよな。
政治的に利用されるかも、戦に駆り出されるかもって。
いや、本当に怖いのはそれではなくて、バルギーにそう言う風に扱われるかもって事だ。
バルギーに対する信頼を裏切られたらって、あの優しい目が道具を見るような目になったらって思うと・・・・。
いや、そもそも異世界から来たなんて話、信じてもらえない可能性の方がでかいか。
頭がおかしいヤツって思われるだけかも。
「ケイタ。ケイタ。そんな不安そうな顔をするな。すまない少し踏み込みすぎた。ただ、気にするなと言いたかっただけだ」
自分の想像で勝手に不安になってたら、バルギーが焦ったように謝ってきた。
しまった。
凄い失礼な事考えちゃった。
バルギーがそんな事する筈無いだろ。
問題はバルギーじゃなくて、ちゃんと信じられない俺の弱さだ。
「へへ、ごめんごめん。ちょっと意気地のない事考えちゃった。バルギーの所為じゃないから気にしないで。俺の問題だわ」
得意の誤魔化し笑いでヘラリとしたら、真剣な表情のバルギーに右手をそっと取られた。
「ケイタ、不安になるような事は何も考えなくて良い。お前が何かに怯えてるなら、私は命をかけてでもそれからお前を守ってやる」
コニャックのような深いブラウンの瞳が、強い光を湛えて俺の視線を縫い付ける。
「一度は危険な目に遭わせてしまったが、同じしくじりは決してせぬ。必ずお前を守り抜く。だから、どうか私を信じて頼って欲しい。今すぐでなくて良い。ゆっくりで良いから」
取られた右手に、バルギーの顔が寄せられる。
あ、キスされるかも・・・・と思ったけど、手の甲に触れたのはバルギーの唇ではなく額だった。
「ケイタ。私の命の恩人。私の大切な人。お前を脅かすものは全て私が退けてやる」
まるで誓いを立てるようなその所作に、俺の心臓が飛び跳ねた。
こんなの、男が男にされて嬉しい事ではない。
筈なのに。
何でか、嫌悪感は感じない。
むしろ、多分俺は嬉しいと思っている。
こちらが怯んでしまいそうな程、真っ直ぐに向けられる親愛の情。
日本では、こんなにもストレートな表現で好意をぶつけられる事は無かったから、耐性がないんだよ。
何時もなら、さすがは外国人!表現が情熱的!とかふざけた事を考えるのに、何故かこの時ばかりは頭が真っ白になって何も考えられなかった。
俺を見つめるコニャックの瞳が余りにも真剣で。
掲げられた右腕に光る2本のブレスレットが揺れて、鈴のような音が響いた。
「帰ってきましたね」
森から出たところで丁度イバンに出会った。
っていうよりも、イバンここで待ってたのかな。
「ただいまー」
「どうだったケイタ、魔物には出会わなかったかい」
「うん、何にも居なかったよ。な、バルギー?」
「あぁ、静かなものだったな」
いつも通り喋ってるつもりだけど、何となくギクシャクした空気を感じてしまう。
いや、感じているのは俺だけだと思う。
バルギーはいたって何時も通りだ。
あの後、何となく気まずくなっちゃって、誤魔化すように俺は無駄に喋り続けた。
でも、凄い喋った割にはうまく会話を繋げる事ができなくて、細切れで取り止めの無い話ばっか。
合コンとかで嫌がられる、つまらない空振りおしゃべり野郎だ。
喋れば喋るほど場の空気を白けさせてる気がするのに、バルギーはどんな話でも楽しそうに聞いてくれて、その大人な対応力に、自分の空振り具合を余計に痛感させられた。
うぅ・・・・恥ずかしい・・・。
バルギー専用の大きなテントへと戻ってくれば、当たり前のようにダイル達が絨毯の上で爆睡してた。
昨日の夜も普通にテントの中に居座って、一緒に川の字で寝たからな。
寝るときにバルギーが何とも言えない顔をしていたけど、追い出せとまでは言われなかった。
「あー・・・ごめんなバルギー。なんか完全にここに居着いちゃったね」
「・・・此奴らは今日もここで夜を過ごすのか」
「あ、やっぱ駄目だよな。ごめん、後でちゃんと外に出てもらうから」
「いや、別にかまわん。場所はあるのだ、好きにさせておきなさい」
どこか諦めたような感じだけど、本当にいいんだろうか。
一応後でダイル達に言っておこう。
「将軍、本日の成果の報告を」
さっきテントの外で別れたばかりのイバンが、報告書らしきものを片手に中に入ってきた。
「うむ。どうであった」
「予想よりも数が多いですね。今日1日でもかなりの数が狩られてきています。まだ小物ばかりですが繁殖地が出来てるのかもしれません。魔力溜まりも例年よりも多く発見されているのでその影響もあるかと。このままだと魔力を回収するための空の魔石が足りなくなりそうです」
「では、王都から追加の手配を」
「畏まりました。明日もこの勢いが続くのであれば、魔物の大繁殖の可能性を考えなくてはならないですね」
「ふむ・・・・予定している日数内に狩りきれぬかもな」
「討伐日の延長も視野に入れておいたほうが良いかと」
「この後の会議でナルグァスと相談しよう」
「承知致しました」
「ケイタ、すまないが少し出てくる」
「分かった。いってらっしゃーい」
「夕食頃には戻るからそれまでは休んでいなさい」
「うん」
「・・・・暇なら外に出ても良いが拠点からは出ないように」
「おう」
「森に入ってもいかん。それに兵達の邪魔もいかんぞ。ここで行う事は全て演習の内だからな、兵の仕事を手伝うのは駄目だ」
「・・はい」
「それと夕食前だから菓子はあまり食べないように。食べたいなら菓子ではなく果物にしなさい。あちらの方が栄養がある。それから」
「はいはい!将軍行きますよ!」
「はいはい!いってらっしゃい、いってらっしゃい!」
バルギーはまだ何か言いたそうな顔だけど、イバンと俺に押されて渋々と言った感じにテントを出て行った。
全く。
お母さんかよ。
【お、ケイタ。戻ってきていたのか】
『うん、さっき戻ってきたとこ』
テントの中で待ってるのもつまらないから、俺は竜達が居る原っぱの方へ来た。
【何だ、ダイル達は半分寝ているでは無いか】
俺の後ろから半目でヨタヨタ付いてきていた地竜達を見て、ラビクが仕方なさそうに首を振る。
テントを出ようとしたところで3匹とも目を覚ましてついて来たんだけど、よっぽど熟睡してたみたいだな。
まだちょっと寝ぼけている。
『寝てても良いって言ったんだけどね』
【ケイタと遊びたい・・・】
【眠い・・・】
【・・・・】
あ、カイマンの目が完全に閉じた。
【仕方ない奴らだの】
【おや、ケイタ帰ってきたのかい】
『あ、デュマン。ただいまーって、誰?』
後ろから声をかけられて振り返ったら、デュマンの隣に見た事のない飛竜がいた。
赤っぽくてデュマンよりは小さい。
飛軍の竜とは違うタイプだ。
デュマン達は前足がそのまま翼のプテラノドンタイプだけど、この竜は四つ足とは別に背中に翼がある絵に描いたようなファンタジックなタイプの竜だ。
【この森に住んでいる竜だよ】
【へぇ、これが噂の人間かい。本当に喋っているね。初めまして坊や】
頭に響いた声は女性の声だ。
おぉ、雌の竜って初めて見る。
『初めまして。ケイタって言うんだ。よろしくな』
【よろしく】
『えっと、名前・・は無いんだよね』
【そうねぇ。でも皆からはシロって呼ばれてるから、それで良いわよ】
『シロ・・・アカでは無くて?』
どう見ても赤い竜だけど。
【ふふ、ここに白い鱗が一枚だけあるんだよ】
そう言って広げて見せてくれた翼の内側に、確かに1枚だけ白い鱗があった。
『あ、本当だー。綺麗だな』
【あら、分かってるじゃないかい】
シロが嬉しそうに翼をバサリと一振りする。
【良い子だね。嫌いじゃないわ】
【言ったであろう。憎めないヤツだと】
デュマンが面白そうに答える。
『シロはどうして此処にいるの?』
【そりゃ、アンタを見に来たに決まっているだろう】
『あ、俺?』
【えぇ、人間達の群れにアンタが居るって聞いてね。確かめに来たんだよ】
ははは、パンダじゃねぇんだぞ。
【でも、噂が本当だってのは確認できたから私は一度帰るわ】
『え、もう帰るの?会ったばっかじゃん』
【森にいる連中が首を長くして私の帰りを待っているからね】
もっとお話でもするのかと思ったのに、シロは言葉通りあっさりと飛び去ってしまった。
本当に俺を見ただけで満足したって感じだけど。
『行っちゃった。ちょっとしか話してないのに・・・』
【安心しろ。どうせ直ぐにまた来る。おいカイマン起きろ】
ラビクがさほど興味無さそうに言いながら、寝ているカイマンを揺すっている。
【ふふふ、ケイタ。きっと楽しい事になるぞ。大変だな】
ラビクとは逆に、デュマンは楽しそうに目を細めている。
『大変って、何が?』
【それは、その時になってからのお楽しみだ】
えー、何。気になる。
『何だよ、教えてグゲふっ!』
横っ腹にダイルのタックルが決まり、言葉の途中で俺は吹っ飛んだ。
【ケイタ!起きた!遊ぶぞ!】
脇腹を押さえて倒れる俺の上に、ダイルとアリが飛んでくる。
『ちょ、待って。ふべっ』
【撫でて!】
【撫でて!】
『ちょ、重っ!くそっ、このやろ。ほーれ!よーしよしよしよしっ!!』
やけくそで力一杯腹を撫でてやったら、2匹とも超喜んだ。
どうやら、目が覚めて完全に遊ぶモードに入ったみたいだな。
一通り戯れて落ち着いた頃、上がっていた息を整えていたらダイルが突然思い出したと叫んだ。
【ケイタ、森に美味しい実がなっているところがあるんだ。一緒に行こう】
そういえば、そんな事言ってたね。
【そうだ!行こう行こう。今!】
『今?!』
そんな急な。
この野営地を拠点に、幾つもの隊に分かれて森に入っていくらしい。
森の中でも野営したりしつつ、各隊で魔物を討伐していくんだそうだ。
ちなみに一番大きな成果をあげた隊に褒美が出るらしくて、皆結構張り切っている。
「で、バルギー達は魔物狩らないのか」
「兵達の褒美を奪うわけにはいかないからな」
兵達が森へと消えていった後、静かになった野営地で俺はバルギーとお茶をしている。
今この拠点に残っているのは、後援部隊や軍医達などの非戦闘兵達ばかりだ。
飛将軍のナルガスもやっぱり残ってるみたい。
あとは原っぱで自由にしている馬竜と飛竜達。
ダイル達も今は馬竜と一緒に原っぱを駆け回っている。
「将軍、見つかりましたよ」
お茶を飲みつつゴロゴロしていたら、テントの中にイバンがやってきた。
「見つかったか。思ったよりも早かったな」
「えぇ、予想よりもだいぶ此処から近い場所にあったようで」
イバンがバルギーの前に地図を広げ、森の絵の一部を指さした。
「バルギー、何が見つかったんだ」
「魔力溜まりだ。これから私達が行くところだ」
あぁ、俺の魔力を充電しにいく場所か。
「昼食を取ったら私達は出る。イヴァン、後のことは任せたぞ」
「承知いたしました」
「デカイ走り茸見れっかな」
「そうだな。出てくるのは稀だと聞いているが、居ると良いな」
『エリー、仲間の気配感じたら教えてくれよ。大っきい王様茸見てみたいからな』
俺と一緒にゴロゴロしていたエリーをつついたら、力強く頷いてくれた。
バルギーに連れて来られたのは、拠点から3~40分程歩いた森の中だった。
光はしっかりと差し込んで、どちらかと言うと明るい印象なのに、何故か空気が重く感じる。
そんな場所だった。
なんか、明るいのに幽霊が出そうな雰囲気だ・・・・。
「ここがそうなのか?」
「そうだ。ほらケイタ、ここに座りなさい」
日当たりの良い場所に、バルギーが小さな絨毯を敷いてくれた。
わざわざ拠点から持ってきてくれてたのか。
俺が座れば、バルギーも当たり前のように隣に座る。
「それで、どれくらい此処にいればいいの?」
「そうだな。とりあえず日が傾き始める頃までにしよう。完全に暗くなると足元が悪くなるからな」
ってことは、4時間位かな。
「あー、時間潰し用に戦盤でも持ってくれば良かったな」
「あぁ、そうか。確かにそうだな」
「ま、おしゃべりでもしてれば直ぐだけどね」
俺、おしゃべりは得意だからな。
4時間くらいなら余裕だ。
「それにしても、こうやって森の中でバルギーと2人っきりになると、会ったばっかりの時を思い出すな。あ、エリーも居るな」
籠から出してやれば、俺とバルギーの間にちょこんと体育座りだ。
良い。
「ふむ、確かにそうだな。今回はお前の手を煩わせずに自分で歩けて良かった」
バルギーが冗談のように言いながら、自分の足を軽く叩く。
「ははは、確かにな!あと今はもう言葉もちゃんと通じるし」
「あぁ、そうだな。最初は言葉が伝わらず困る事もあったが、お前は折れること無く頑張ってくれたな。言葉も通じず、素性も分からない私のそばで不安だったろうに、良く見捨てずに運んでくれたものだ。今でもお前に対しては感謝の気持ちが絶えん」
「いやいや、それは俺の台詞だから。俺みたいな正体不明の怪しいやつ、良く連れて行こうって思ったな。それに・・・」
「それに?」
「・・・それに、今でもあんまり俺にそう言うこと聞かないじゃん?」
そう。
バルギーは言葉が通じるようになった今でも俺に故郷についてとか、何であそこに居たのかとかを深く聞いてこない。
ただ、遠い異国から来た迷子くらいの認識止まりだ。
気になるだろうに、聞かずにいてくれる。
こちらとしては大変助かるけど、将軍ともあろう人物がそんな怪しいヤツを家に置いているのはきっと良くない事だろうってのは、さすがの俺でも何となく分かっている。
今まで意識的に避けてた話題だったけど、実際のとこバルギーがどう思っているのか気になってつい口に出してしまった。
自分の首を絞める話題だって分かってるのに。
これをきっかけに深く聞かれたところで、返せる答えは無いのにな。
探るように自分から切り出した話題のくせに、本心では聞かないで欲しいと思っている。
でも、俺を拒否しないで欲しい。
何とも自分勝手で卑怯な願望を含んだ好奇心を我慢できなかった。
「・・・誰でも言いたくないことの一つや二つはあるものだ。お前が話しても良いと思っている事なら、とうにその話はしているだろう。だが、話さないと言うことは話したい事ではないのであろ?」
「それは・・・まぁ、ちょっと説明が難しい事ではある・・・かな」
「なら別に話さなくても良い。それで困る事はないし、私はお前に無理強いはしたくない。私にとって重要なのは、出会ってから共に過ごしたお前との時間だけだ。実際に接して自分で確かめたお前の人柄が私にとっての全てだ。お前がどのような場所から来たのか、どのような過去があるのかは関係ない」
うわぁー、おっとこ前~。
そんな潔い考えを言い切れるバルギーの真面目さというか、漢ぶりというか・・・。
流石だぜ。
って言うか、俺のずるい気持ちを見事に満たしてくれるような完璧な答えだった。
完璧すぎて、むしろ後ろめたい気持ちが大きくなった気がする。
「そう言ってもらえると嬉しいけど・・・。ごめんなバルギー、ちゃんと話せなくて」
その内きちんと話せる日が来れば良いんだけど。
竜達に言われた話が怖くて、今だにその勇気がでないんだよな。
政治的に利用されるかも、戦に駆り出されるかもって。
いや、本当に怖いのはそれではなくて、バルギーにそう言う風に扱われるかもって事だ。
バルギーに対する信頼を裏切られたらって、あの優しい目が道具を見るような目になったらって思うと・・・・。
いや、そもそも異世界から来たなんて話、信じてもらえない可能性の方がでかいか。
頭がおかしいヤツって思われるだけかも。
「ケイタ。ケイタ。そんな不安そうな顔をするな。すまない少し踏み込みすぎた。ただ、気にするなと言いたかっただけだ」
自分の想像で勝手に不安になってたら、バルギーが焦ったように謝ってきた。
しまった。
凄い失礼な事考えちゃった。
バルギーがそんな事する筈無いだろ。
問題はバルギーじゃなくて、ちゃんと信じられない俺の弱さだ。
「へへ、ごめんごめん。ちょっと意気地のない事考えちゃった。バルギーの所為じゃないから気にしないで。俺の問題だわ」
得意の誤魔化し笑いでヘラリとしたら、真剣な表情のバルギーに右手をそっと取られた。
「ケイタ、不安になるような事は何も考えなくて良い。お前が何かに怯えてるなら、私は命をかけてでもそれからお前を守ってやる」
コニャックのような深いブラウンの瞳が、強い光を湛えて俺の視線を縫い付ける。
「一度は危険な目に遭わせてしまったが、同じしくじりは決してせぬ。必ずお前を守り抜く。だから、どうか私を信じて頼って欲しい。今すぐでなくて良い。ゆっくりで良いから」
取られた右手に、バルギーの顔が寄せられる。
あ、キスされるかも・・・・と思ったけど、手の甲に触れたのはバルギーの唇ではなく額だった。
「ケイタ。私の命の恩人。私の大切な人。お前を脅かすものは全て私が退けてやる」
まるで誓いを立てるようなその所作に、俺の心臓が飛び跳ねた。
こんなの、男が男にされて嬉しい事ではない。
筈なのに。
何でか、嫌悪感は感じない。
むしろ、多分俺は嬉しいと思っている。
こちらが怯んでしまいそうな程、真っ直ぐに向けられる親愛の情。
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何時もなら、さすがは外国人!表現が情熱的!とかふざけた事を考えるのに、何故かこの時ばかりは頭が真っ白になって何も考えられなかった。
俺を見つめるコニャックの瞳が余りにも真剣で。
掲げられた右腕に光る2本のブレスレットが揺れて、鈴のような音が響いた。
「帰ってきましたね」
森から出たところで丁度イバンに出会った。
っていうよりも、イバンここで待ってたのかな。
「ただいまー」
「どうだったケイタ、魔物には出会わなかったかい」
「うん、何にも居なかったよ。な、バルギー?」
「あぁ、静かなものだったな」
いつも通り喋ってるつもりだけど、何となくギクシャクした空気を感じてしまう。
いや、感じているのは俺だけだと思う。
バルギーはいたって何時も通りだ。
あの後、何となく気まずくなっちゃって、誤魔化すように俺は無駄に喋り続けた。
でも、凄い喋った割にはうまく会話を繋げる事ができなくて、細切れで取り止めの無い話ばっか。
合コンとかで嫌がられる、つまらない空振りおしゃべり野郎だ。
喋れば喋るほど場の空気を白けさせてる気がするのに、バルギーはどんな話でも楽しそうに聞いてくれて、その大人な対応力に、自分の空振り具合を余計に痛感させられた。
うぅ・・・・恥ずかしい・・・。
バルギー専用の大きなテントへと戻ってくれば、当たり前のようにダイル達が絨毯の上で爆睡してた。
昨日の夜も普通にテントの中に居座って、一緒に川の字で寝たからな。
寝るときにバルギーが何とも言えない顔をしていたけど、追い出せとまでは言われなかった。
「あー・・・ごめんなバルギー。なんか完全にここに居着いちゃったね」
「・・・此奴らは今日もここで夜を過ごすのか」
「あ、やっぱ駄目だよな。ごめん、後でちゃんと外に出てもらうから」
「いや、別にかまわん。場所はあるのだ、好きにさせておきなさい」
どこか諦めたような感じだけど、本当にいいんだろうか。
一応後でダイル達に言っておこう。
「将軍、本日の成果の報告を」
さっきテントの外で別れたばかりのイバンが、報告書らしきものを片手に中に入ってきた。
「うむ。どうであった」
「予想よりも数が多いですね。今日1日でもかなりの数が狩られてきています。まだ小物ばかりですが繁殖地が出来てるのかもしれません。魔力溜まりも例年よりも多く発見されているのでその影響もあるかと。このままだと魔力を回収するための空の魔石が足りなくなりそうです」
「では、王都から追加の手配を」
「畏まりました。明日もこの勢いが続くのであれば、魔物の大繁殖の可能性を考えなくてはならないですね」
「ふむ・・・・予定している日数内に狩りきれぬかもな」
「討伐日の延長も視野に入れておいたほうが良いかと」
「この後の会議でナルグァスと相談しよう」
「承知致しました」
「ケイタ、すまないが少し出てくる」
「分かった。いってらっしゃーい」
「夕食頃には戻るからそれまでは休んでいなさい」
「うん」
「・・・・暇なら外に出ても良いが拠点からは出ないように」
「おう」
「森に入ってもいかん。それに兵達の邪魔もいかんぞ。ここで行う事は全て演習の内だからな、兵の仕事を手伝うのは駄目だ」
「・・はい」
「それと夕食前だから菓子はあまり食べないように。食べたいなら菓子ではなく果物にしなさい。あちらの方が栄養がある。それから」
「はいはい!将軍行きますよ!」
「はいはい!いってらっしゃい、いってらっしゃい!」
バルギーはまだ何か言いたそうな顔だけど、イバンと俺に押されて渋々と言った感じにテントを出て行った。
全く。
お母さんかよ。
【お、ケイタ。戻ってきていたのか】
『うん、さっき戻ってきたとこ』
テントの中で待ってるのもつまらないから、俺は竜達が居る原っぱの方へ来た。
【何だ、ダイル達は半分寝ているでは無いか】
俺の後ろから半目でヨタヨタ付いてきていた地竜達を見て、ラビクが仕方なさそうに首を振る。
テントを出ようとしたところで3匹とも目を覚ましてついて来たんだけど、よっぽど熟睡してたみたいだな。
まだちょっと寝ぼけている。
『寝てても良いって言ったんだけどね』
【ケイタと遊びたい・・・】
【眠い・・・】
【・・・・】
あ、カイマンの目が完全に閉じた。
【仕方ない奴らだの】
【おや、ケイタ帰ってきたのかい】
『あ、デュマン。ただいまーって、誰?』
後ろから声をかけられて振り返ったら、デュマンの隣に見た事のない飛竜がいた。
赤っぽくてデュマンよりは小さい。
飛軍の竜とは違うタイプだ。
デュマン達は前足がそのまま翼のプテラノドンタイプだけど、この竜は四つ足とは別に背中に翼がある絵に描いたようなファンタジックなタイプの竜だ。
【この森に住んでいる竜だよ】
【へぇ、これが噂の人間かい。本当に喋っているね。初めまして坊や】
頭に響いた声は女性の声だ。
おぉ、雌の竜って初めて見る。
『初めまして。ケイタって言うんだ。よろしくな』
【よろしく】
『えっと、名前・・は無いんだよね』
【そうねぇ。でも皆からはシロって呼ばれてるから、それで良いわよ】
『シロ・・・アカでは無くて?』
どう見ても赤い竜だけど。
【ふふ、ここに白い鱗が一枚だけあるんだよ】
そう言って広げて見せてくれた翼の内側に、確かに1枚だけ白い鱗があった。
『あ、本当だー。綺麗だな』
【あら、分かってるじゃないかい】
シロが嬉しそうに翼をバサリと一振りする。
【良い子だね。嫌いじゃないわ】
【言ったであろう。憎めないヤツだと】
デュマンが面白そうに答える。
『シロはどうして此処にいるの?』
【そりゃ、アンタを見に来たに決まっているだろう】
『あ、俺?』
【えぇ、人間達の群れにアンタが居るって聞いてね。確かめに来たんだよ】
ははは、パンダじゃねぇんだぞ。
【でも、噂が本当だってのは確認できたから私は一度帰るわ】
『え、もう帰るの?会ったばっかじゃん』
【森にいる連中が首を長くして私の帰りを待っているからね】
もっとお話でもするのかと思ったのに、シロは言葉通りあっさりと飛び去ってしまった。
本当に俺を見ただけで満足したって感じだけど。
『行っちゃった。ちょっとしか話してないのに・・・』
【安心しろ。どうせ直ぐにまた来る。おいカイマン起きろ】
ラビクがさほど興味無さそうに言いながら、寝ているカイマンを揺すっている。
【ふふふ、ケイタ。きっと楽しい事になるぞ。大変だな】
ラビクとは逆に、デュマンは楽しそうに目を細めている。
『大変って、何が?』
【それは、その時になってからのお楽しみだ】
えー、何。気になる。
『何だよ、教えてグゲふっ!』
横っ腹にダイルのタックルが決まり、言葉の途中で俺は吹っ飛んだ。
【ケイタ!起きた!遊ぶぞ!】
脇腹を押さえて倒れる俺の上に、ダイルとアリが飛んでくる。
『ちょ、待って。ふべっ』
【撫でて!】
【撫でて!】
『ちょ、重っ!くそっ、このやろ。ほーれ!よーしよしよしよしっ!!』
やけくそで力一杯腹を撫でてやったら、2匹とも超喜んだ。
どうやら、目が覚めて完全に遊ぶモードに入ったみたいだな。
一通り戯れて落ち着いた頃、上がっていた息を整えていたらダイルが突然思い出したと叫んだ。
【ケイタ、森に美味しい実がなっているところがあるんだ。一緒に行こう】
そういえば、そんな事言ってたね。
【そうだ!行こう行こう。今!】
『今?!』
そんな急な。
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切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
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いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
俺の居場所を探して
夜野
BL
小林響也は炎天下の中辿り着き、自宅のドアを開けた瞬間眩しい光に包まれお約束的に異世界にたどり着いてしまう。
そこには怪しい人達と自分と犬猿の仲の弟の姿があった。
そこで弟は聖女、自分は弟の付き人と決められ、、、
このお話しは響也と弟が対立し、こじれて決別してそれぞれお互い的に幸せを探す話しです。
シリアスで暗めなので読み手を選ぶかもしれません。
遅筆なので不定期に投稿します。
初投稿です。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
婚約破棄されて追放された僕、実は森羅万象に愛される【寵愛者】でした。冷酷なはずの公爵様から、身も心も蕩けるほど溺愛されています
水凪しおん
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貧乏男爵家の三男アレンは、「魔力なし」を理由に婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡され、社交界の笑い者となる。家族からも見放され、全てを失った彼の元に舞い込んだのは、王国最強と謳われる『氷の貴公子』ルシウス公爵からの縁談だった。
「政略結婚」――そう割り切っていたアレンを待っていたのは、噂とはかけ離れたルシウスの異常なまでの甘やかしと、執着に満ちた熱い眼差しだった。
「君は私の至宝だ。誰にも傷つけさせはしない」
戸惑いながらも、その不器用で真っ直ぐな愛情に、アレンの凍てついた心は少しずつ溶かされていく。
そんな中、領地を襲った魔物の大群を前に、アレンは己に秘められた本当の力を解放する。それは、森羅万象の精霊に愛される【全属性の寵愛者】という、規格外のチート能力。
なぜ彼は、自分にこれほど執着するのか?
その答えは、二人の魂を繋ぐ、遥か古代からの約束にあった――。
これは、どん底に突き落とされた心優しき少年が、魂の番である最強の騎士に見出され、世界一の愛と最強の力を手に入れる、甘く劇的なシンデレラストーリー。
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