執愛気質のワンコ男子に全てを奪われるだけのお話

月咲やまな

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後日談(望月美百合・談)

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 絆され、なし崩し的に如月君に堕とされた私は今、とても困惑している。

 二人にとって幸か不幸か、あの日の行為では子供は出来ていなかった。なので私は今も継続して仕事に出ているのだが、帰ってみると、何故か家主不在のまま私の双子の弟である真幸と如月君が一緒に携帯ゲーム機を使って対戦ゲームをして遊んでいた。真幸が部屋にいるのはわかる。私が合鍵を渡しているし、家族だから。如月君もいつの間にか合鍵を作っていたらしいから、勝手に部屋に上がって色々やっているのはまぁ……辛うじて今なら受け止められる。でも、だ——

(この二人が仲良くゲームをして遊ぶ事までは、理解出来ませんよ?)

 仕事着のまま居間の入口で、疑問符だらけの顔で困惑していると、試合が終わった二人が揃って「あ、おかえりー」「お疲れ様です、美百合さん♡」と言いながらこちらを見上げた。真幸はソファーを背にして床に座り、如月君はソファーにちょこんと腰掛けている。

「ただいま。——って、何で二人で、仲良く遊んでるの?」

 反射的に挨拶を返し、私はすぐに疑問をぶつけた。『勝手に侵入していた如月君と弟が運悪く鉢合わせた』——にしては随分と和やかだから違う気がするが、かと言って他のパターンは思い付かない。そんな私に対し、答えをくれたのは弟の真幸の方だった。

「何でって、コイツとは友達だし」

 ケロッとした顔でそう言われたが、「……は?」としか返せない。
「五年くらい前から、かな?ゲームでフレンド登録して、オフでも会うようになって。今の会社紹介してくれたのも瑞葉だし、“ミユ”が動く様にしてくれているのもコイツだぞ?」
「んなの、知らんっ!」
「……言ってなかったっけ?だってさぁ、そもそもオレ、ずっとイラストレーター志望なんだぞ?キャラデザまでは出来ても、それ以上はやれる技術習得してないって」
「や、ほら、今はなんかこう、ゲームのキャラメイク画面くらいの感覚でアバター作れるみたいだし?“ミユ”もそんな感じかなって……」
 どうせ訊いてもわからないからと、真幸に全て丸投げしていた事を今更後悔した。二人の繋がりを知っていたら最初から彼を警戒しておけたのに!

「あ、そうだ。おめでと、姉さん。とうとう瑞葉と結婚すんのだろう?」

「——真幸に言ったの!?」と驚きながら如月君に訊くと、「うん♡だって、嬉しくって」と照れながら返ってきた。
「親父達も知ってるよ?だってコイツ、先月末に親父とゴルフ行ってたし」
「はぁ!?」
「その前は確か、どっかの平日で母さんと買い物行ってたよな?」と真幸に訊かれ、「うん。『卵のセールが一人一個までだから、付き合って』ってお願いされて」と如月君が答える。

(知らぬ間に、外堀が埋まり過ぎてる!)

 彼が引っ越して来るまでその存在を知らなかったのは私だけだったのだと知り、驚きが隠せない。そのせいかふらっと体が揺れると、当たり前のように如月君が立ち上がり、慌てて私を支えてくれた。
「『年下だからまともに相手されない』『存在を隠されちゃう』って泣きついてきたから、家族単位で支えてやってたんだよな」
「そそ。みんな協力的ですっごく助かったよ♡」
「健気だよなぁ。流石にもういい加減、堂々と大事にしてやれよ?」
「いやいやいやいや!オカシイでしょう!私と如月君が出逢ったのは、一ヶ月とちょっとくらい前が初めてだよ!?それなのに何で、家族みんなで彼の言い分を信じてる訳?」とか言いながら、支えてくれている如月君を拒絶出来ていない私ももう終わってる。

「は?昔っから何度もウチに泊まりにも来てんぞ?……んでも、あれ?そういや、姉さんとはあんましタイミング合わんかったかもなぁ」

(それ、絶対にわざと合わせないでおいたやつだ!)

「それにさぁ、こっちからの頼み事の報酬代わりに、姉さんの写真せがまれて結構な回数撮って送ってやっていたけど、姉ちゃんも別に嫌がってなかったじゃん」
「まさか彼に送ってるとは思っていなかったからね!」
 双子の弟に写真を撮られたって、不思議になんか思うものか。何なら、『イラストレーター志望なんだから構図の参考にでもするんだろう』と考えていたくらいだし。
「あの写真達のおかげでボクの部屋がすっごく充実してるんだよねぇ。ありがとう、真幸」と言う如月君はニコニコ顔だ。……くそ可愛い。だからか、「おう、良かったなぁ」と、のほほんとした顔でそう返した真幸にのみ怒りが湧く。
 私の家族と知らぬ間に仲良くされ、私とちゃんと出逢う前から『近々結婚するんだ』と家族達に宣言されており、弟経由で多くの写真をも手にし、『付き合っているけど、交際を公にしてくれない』とでも言って、きっとその流れで合鍵も家族ルートで入手したんだろう。

(——怖っ!)

 色々わかってしまったのに、如月君の方にちらりと視線を落としても全然悪びれている様子も気まずさすらも感じられない。彼にとってこの行動は『普通』の事なんだ。よく『恋は盲目』と言うが、それにしたってだろう。

「美百合さん、そろそろ座りましょう?ボク、晩御飯作っておいたんで今から温めてきますね」

 私の着ていたコートを脱がせ、ソファーに座る様促す。「ご飯の前までには手を洗っておいてくださいね」と言ってパタパタと走って家事を始める姿は完全に主夫のそれだ。

「良かったじゃん、姉さん。かなり年下だけど、いい奴捕まえたよな」
「……捕まったのはこっちなんだけど」

 呆れ顔を返したのに、「このくらい強引じゃないと、姉さん絶対に結婚しないじゃん。身長がどうこうって人としての自信まで喪失しまくりだもん」と言われ、納得してしまった。……一応は真幸も如月君の実態をちょっとはわかっているっぽい。その上で協力的なんだとしたら、コイツが一番タチが悪いが。
「大丈夫。捕まっておけば幸せになれるから」
「逃げたら死ぬじゃん」
「それなぁ。あははは」
「笑い事じゃないし!」とクソデカ小声ボイスで言い、軽く真幸の頭を叩いた。

「——わ。ずるいですよ!ボク抜きで楽しそうにして!」

 料理を運びながら拗ねた顔をする如月君の表情をも可愛いと思ってしまう。もう私は完全に彼に堕ちたのだなと実感した瞬間だった。



【後日談・完結】
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