執愛気質のワンコ男子に全てを奪われるだけのお話

月咲やまな

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最終話(望月美百合・談)

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 虚な意識の奥底で、少し離れた場所からグチュグチュッと不自然な水音が聞こえてくる気がする。くちゅっ、ぬぷぷと続く音も何もかも普段の生活の中ではなかなか聞き慣れない音だ。……それと少し冷える。着替えの最中でもあるまいに、ほぼ全身でこの時期特有のひんやりとした空気を感じ取ってしまうのは何故だろうか。

(さ、寒い……)

 なのに内腿や、下腹部ではやたらと熱を受け取ってしまっている。……明らかに“何か”がおかしい。そう思ったと同時に体がぶるっと寒さで震えたからか、「——あ、起きた?」とすっかり聞き慣れた明るい声色で誰かに訊かれた。まだ重い頭を無理矢理動かして、声のした方を覚束ない動きのままぼんやりと見る。すると自分の瞳にとんでもない状況が映った。

(う、う、嘘……な、何コレ!どうなってるの!?)

 ベッドの上で一糸纏わぬ姿になっている自分と、どうしてか私の脚と脚の間に如月君の顔が見え、段々と意識がはっきりし始めた。
 彼を帰らせようと立った時に尋常じゃない眠気に襲われて以降、そのまま意識が飛んだのまでは覚えているのだが、コレは何が何だかさっぱりだ。私の理解出来る範囲の限界を優に超えていて、まだ少し朦朧とした頭では余計に現状が受け止められない。
 それでもどうにかふらつきながらも体を起こそうとする。なのにガシャッと金属音がそこらじゅうに響くばかりで何故か自由がきかない。手だけじゃない、脚も殆ど動かせないせいで男性の真ん前で股を大きく開いたままだとか、恥ずかし過ぎて顔と耳が急速にカッと熱くなった。

「あぁ、そんなに暴れたら怪我するよぉ。内側がふわふわした物じゃないから、そうやって動けば動く程に肌が傷付いちゃう」

 慌てて顔を横に向けると、自分の手首が手錠で拘束されていた。プラスチック製の玩具みたいな物じゃなく、プレイ用の可愛いファー付きの物でもない。刑事ドラマなんかで見る頑丈そうな代物だ。しかもその手錠は高級そうな太い革紐と繋がっていて、その先はベッドの四隅の方へと伸びているから、きっと末端はベッドの脚にでもくくりつけてあるのだろう。
「せめて包帯で肌を保護しようかとも思ったんだけどね、このままだと『ボクのせいでお姉さんの肌が傷が付くんだ』って考えただけで段々気持ちよくなっちゃったから、敢えてやめたんだぁ。あ、でも大丈夫だよ。お姉さんがボクから逃げたりしないって確信を持てたら、ちゃんと責任持って手当してあげる。でも暴れないのが一番だね。お姉さんだって痛いのは嫌でしょう?」
 フフッと恍惚とした表情で如月君が笑う。とてもじゃないが、人の股の間で浮かべていい表情ではなかった。

(今すぐにでも、この巫山戯た真似をやめさせないと!)

 そうは思うも、声をあげようとしても「——んんっ!」としか話せない。手錠や足枷だけじゃなく、口枷までされていて抵抗する術が見事なまでに奪われていた。
「あぁ、ごめんね?喋れない様にもしちゃって。でもさぁ、叫ばれたら近所迷惑になるでしょう?角部屋なボクの部屋とは違って、こっちだと煩いかなぁって思って、それも用意しておいたんだぁ。まぁこの寝室はボクの部屋側にあるから多少の喘ぎ声くらいは平気だろうけど、大声は流石にねぇ。『解いて』『助けて』とか叫ばれて邪魔者とか入ったら……マジでみんな殺したくなるし。——あ、でもその代わりにね、ピンク色の可愛いやつにしてあげたよ♡お姉さん、『私には似合わない』って言って可愛い物を避けてるけど、本当は好きでしょう?ね?ボク知ってるんだから。ふとした瞬間に可愛い物に視線を奪われていたり、口元を緩ませたりするし——」と言い、如月君がぐっと私の顔の側まで一気に近づく。
「ボクの頭を撫でたりするのもさぁ、『可愛いなぁ、可愛いなぁ』って思っているからだよね!?」
 頬を両手で包まれ、興奮した眼差しを真っ直ぐ私に向ける。普段ならば確かに否定は出来ないが、今の君をも『可愛い』と思える要素は一つも無い。

「んぐっ!あぁぁぁぁぁぁ!その怯えた目もホンットに可愛いいぃぃ!可愛い可愛い可愛いっ!ねぇ、ねぇ!ボクら絶対に相性良いと思うんだ、だからこのまま付き合おう?ってか結婚して!いや、もうさぁ、一緒に死んでお墓の中まで添い遂げようよ!んで、来世は最初っからずっと傍に居ようね!」

 早口で、どんどん飛躍していく要求を口にしながら鼻先が触れるくらいの距離まで近づかれて全身がぞわりと震えた。熱っぽいその目は焦点すらも合っていない。しかも密着しているせいでやたらと硬いモノが体に当たっている気がする。だけど如月君があまりに近過ぎて、その正体がナニかはわからなかった。

「あぁ……お姉さんとボクが結婚、かぁ……絶対に幸せになれるよね!ボクはほぼ在宅勤務だからすぐに子供がデキても大丈夫だし。あ、じゃあもう中出しして良いのかぁ!初めてのえっちで生でとか、最っ高過ぎかよ!」

 興奮気味に言われても困惑しか出来ない。妄想が暴走していて現実を全く見ていないその様子には恐怖すら感じる。
「はぁ……。八年もずっと片想いしてた甲斐があったなぁ」と、彼が感無量だと言わんばかりの顔をした。引越して来たのをきっかけに、一ヶ月前に初めて会ったばかりの子が口にするべき歳月じゃないせいで動揺していると、今度は如月君が私の頬や額にバードキスを降らせ始めた。そしてその合間合間で、思いもよらぬ話を語り出す。
「ボクらが初めて逢った日の事は今でも鮮明に思い出せるよ。……あれは八年前の四月八日、午前十一時台。あの日は午後から高校の入学式で、親と一緒に電車に乗って、ちょっと早めに学校方面に向かっていたんだ。家で食べると間に合わなくなるから、学校の側まで移動してからお昼ご飯にしようかってね。その時、まだ大学生だったお姉さんを駅の構内で偶然見掛けたんだ。人目を惹くスラリとした高身長、真っ直ぐ前を見据えたあの目……。その凛々しい姿が目に入ったあの瞬間、ボクは人生最初で最後と断言出来る程の恋に落ちたんだ。一瞬にして、もうお姉さんしか見えなくなった。お姉さんがボクの運命の相手なんだってすぐに気が付いたよ!……でもね、高一のガキがいきなりお姉さんに『好きです』なんて言ったって絶対心に響く訳がないでしょう?子供扱いされたり、『冗談言うな』って言われて一蹴されると思ったんだ。だって、逆の立場だったら、ボクだって絶対にそう受け止めるしね。自分が高校生じゃ無理矢理犯して孕ませたとしたって責任も取れないし。だからまずはちゃんと責任を取れる様に、お姉さんに選ばれる男になろうって決めたんだぁ。それからは、お決まりだけどまずは牛乳を沢山飲んだり、運動や睡眠にも気を付けたし、アプリ開発とかもして、早々に高値で売っぱらって学生のうちに平均的な生涯年俸分くらいまでならもう稼いでおいたから、いつ孕んでくれても良いからね!あ、その為にも早く精子をこの胎にしこまないとか♡ふふふっ」
 信じられない様な話をしながら体を起こし、如月君が硬いモノを私の秘部に当ててくる。布越しであってもわかる程にソレは熱く、硬く、小柄な彼にはどうにも不釣り合いな気もした。
「んぐっ!ふんぐぐぅぅー!」
 手首や足首が痛む事からも目を逸らし、必死に暴れる。このままじゃ埒があかない。せめて口枷だけでも外して貰わねば、こんな事はもうやめる様にと説得すら出来やしないから『口枷を外して欲しい』と動きのみで訴えてみた。だけどこの動きでは抵抗されているとしか受け止めてはもらえそうにない行動しか出来なかった。

「んあっ♡そんなに動いたらボクのが擦られちゃってるよぉ」

 彼に甘い声を出されてぴたりと動きが止まる。ちらりと顔を下腹部に向けると、どう見ても私が彼の股間を自分の秘部で左右に擦っている様な状態になっていた事にやっと気が付いた。

「もぉ、そんなに早くコレが欲しかったの?そんなに孕むの楽しみだった?まだ処女なのに、いやらしくって可愛いなぁ」

 瞳を蕩けさせ、「仕方ないなぁ♡」と言いながら如月君が履いているズボンのベルトを外し、前を開けて自らの局部を躊躇なく晒す。ボロッと姿を現したソレは予想通り小柄な彼には似つかわしくない、狂気じみたサイズと長さを有していた。しかも処女だとも言い当てられ、強い驚きからビクッと体が震える。このまま動けなくなり、目が点状態にもなる。おまけにじわりじわりと変な汗まで全身から流れ出した。
「あ、やっぱり驚いた?いやぁ、ボクのさ、この身長の割にはちょっと大きめみたいなんだよねぇ。でもさぁ、『コレはお姉さんの為のモノなんだ』って一層思えてこない?お互いに一生に一人の相手なんだって確信が持てるよね♡」
 ぬるんっと熱いモノを直接秘部に押し当てられて私の腰が大きく跳ねた。さっきみたいに布という隔たりもなく、どちらも既にやたらとぬるついてるせいで下手をするとそのまま挿入ってしまいそうだ。そう思うだけでガタガタと体が震えだす。未知への恐怖から体に変な力が入り、私の脚の間に居る如月君をぎゅっと内腿で挟んでしまった。

(駄目、絶対に駄目っ!)

 必死に言葉にならぬ声をあげ、上半身だけを捩る。手錠に擦れて手首に痛みが走ったが現状を打破する方が優先だ。
「ふんぐっ!んんーっ!」
「わぁ♡自分で動いてくれるの?嬉しいなぁ。でも、上手く出来ていないから、ボクも動くねー」と言って、何度も何度も秘部に局部を擦り付けられる。彼が動くたびにぬちゅぬちゅっとした卑猥な水音が私の耳にまで届き、ささやかなる抵抗が裏目に出た事を痛感した。
 ぬるりとした彼の先っちょが肉芽を掠るたびにじわりと変な感覚に襲われる。否応無しに体温が上がり、口枷で塞がれた口からはだらりと涎が流れ出た。……涎だけならまだ良かった。段々と甘い吐息や喘ぎ声に近い音までもが口枷の奥から溢れ出始めたからか、如月君が頬を染め、そして口元はニタリと弧を描いた。

「すっごいね、みんなの“ミユたん”の生エロボイスを聴けてるとか、至福過ぎて死んじゃいそ♡」

「——っ!?」
「あ、『何で知ってるの?』って顔してるー。そりゃ八年間ずっとずっとずっとずーっとお姉さんを見てきたんだもん、すぐに気が付くでしょ。ボクはちゃんと初日からずーっと配信聴いてるよ。“バケツゴハン”って言ったら誰だかわかるよね?」と訊き、如月君が小首を傾げる。

 重課金勢として有名なユーザーさんの名前だ、わからないはずがなかった。

 どうも如月君には私の全てを把握されているみたいだ。八年分の片想いと言うのは本当で、伊達ではないのか。
「でもさぁ、“ミユたん”は健全系しかやってくれないから、聴いていてもオカズにはならなくってちょっと残念だったんだよねぇ。——あ、そうだ。今からさぁ、ボクだけの為にもっと沢山そのエロボイスを聴かせてよ♡早くお姉さんの隣室に住みたくって年単位でうずうずしていたのに、追い出さずにちゃんと隣人の退去まで待ってから引っ越して来た我慢強いボクへのご褒美に、さ!」

 要求内容はアレだけど、好機が訪れたと思った。

 ここで反発したらきっとずっとこの口枷は外して貰えないだろう。ならば今は素直に言う事を聞き、説得する機会を得た方が賢明だ。
 ぐっと黙り、こくりと頷く。すると彼はニコッと笑って、こちらに腕を伸ばしながら前屈みになった。だがそのせいで二十八年間ぴっちりと閉じていた秘裂を割り開き、彼の局部の先っちょが少しだけじわりと入り込んでしまった。途端に言葉にならぬ大声をあげ、大きく体が跳ねてしまう。コレは彼にとっても事故みたいなものだったのか、如月君も少し体を震わせ「んあっ♡」と甘い吐息を吐き出した。

「わぁぁぁ。あ、熱っ、すご……うあっ、めっちゃ狭くて気持ちっ。あぁぁ、もう!このまま一気に奥まで押し込みたいぃっ」

 そうは言うが無体はせず、じっと必死に耐えてくれている。そして何度か深呼吸をし、白い肌に汗を滴らせながら私の顔の方に再び手を伸ばした。
 熱っぽい瞳でじっと私の目を見詰め、「……じゃあ、外すけど、絶対に大声は出さないでね。ボクを拒絶する様な発言も絶対にダメだよ。『お姉さんに拒否された!』ってボクが思った時点でもう、すぐにでもお姉さんの人生めちゃくちゃにして、ボクの部屋に一生監禁して、今までみたいな自由は永遠に謳歌出来なくさせるから」と言われた。興奮気味なのを無理に抑え込んでいる状態だからか、声色はとっても甘いのに、話している内容はめちゃくちゃ怖い。今の状況を考えると本当にやりそうで楽観視なんか少しも出来なかった。
「あとは、そうだな……『如月君はこんな事する子じゃないでしょう?』とか『元に戻って』とかも、ムカつくから言わないで。一ヶ月分程度しかボクとはまともな付き合いがないうえに、表面的な部分しか知る機会が無かった人に言われたいセリフじゃないからさ」
 頷いて同意する意思を伝えはしたが、先手を打たれたせいでどうやって説得したらいいのかが全く思い付かない。それにまた少し奥の方に彼のモノがズレた気がする。無自覚のままほんのちょっと動かれるだけで腹のナカがずんと重たくなり、少し目眩までした。

 無事口枷の金具を外してもらえ、口元が自由になった。途端に叫ぶ様な真似は勿論せず、不足していた分を取り戻すみたいに私は何度も呼吸を繰り返した。
「……約束、ちゃんと守ってくれるんだね♡」
 嬉しそうにそう言って、むぎゅっと如月君が抱きついてくる。そのせいでまた彼の勃起した局部が奥に挿入り込み、「んおっ!」と私は情けない声をあげてしまったのに対して、彼は「あ、んんっ♡」と可愛らしい声をこぼしている。『この、差!』と思うと顔から火が出そうになった。

「ねぇ、ナカは痛くない?大丈夫?」

 人の胸の谷間に顔を半分埋めながら如月君が訊いてくる。体格差があるとはいえ、それでもアレだけのモノがまた少し奥に挿入った割には、多少の鈍い痛みがある程度なのが不思議でならない。
「うん。その様子だと大丈夫そうだね。良かったぁ、お姉さんが眠っている間に、たっくさん解しておいた甲斐があったみたいだ」
「……へ?」
「前戯はね、さっき眠っている間にたぁっぷり済ませておいたんだぁ♡だからお姉さんのココもさっきからずっとツンッて美味しそうに勃っていて、『まだまだもっと吸って』『舐めてぇ』って主張しているみたいになったままなんだよ」
 胸の尖りが、彼の言う通りの状態になっている。ツンッといやらしく勃ち上がっており、硬さを持っているだけじゃなく、少し濡れてもいるのか室内灯のせいで光っても見えた。
「でもさぁ寝ている間じゃうんともすんとも反応が無いから、お姉さんの体に触っていても、楽しいのって最初だけなんだよねぇ。漫画とかだと眠っていても反応があって可愛かったりするのに現実は残念過ぎぃ。あのまま睡眠姦までするのは虚しくなりそうだったから、起きるの待って大正解だったなぁ」
 真っ赤な舌先を少し出し、飴でも舐めるみたいに私の胸先を器用に舐め上げる。丁寧に優しく、熱い舌先が触れるたびに堪えようの無い感覚に襲われ、私の口からは何度もはしたない声が漏れ出てしまった。逃げたい、でも拘束と口約束のせいで逃げる事も拒絶も出来ない。
 否応なしではあるものの、与えられる快楽を大人しく享受していると、また少しナカに彼のモノが押し入ってきた。少しずつ、慣らす様に、馴染ませる様に。肉壁に『この形を覚えて受け入れろ』と叩き込むみたいでもあり、その度に呼吸が何度も一瞬止まりそうになった。

(おっきぃ、重い、あ、熱いっ)

 下っ腹の奥に快楽が降り積もっていく。初めてなのに、彼のは相当大きいはずなのに、痛いだけじゃないだなんて逆に怖い。

「……ねぇ、ネタバレしてあげよっか?」
 困惑する感情が表情にでも出ていたのか、如月君が楽しそうに笑いながらそう訊いてきた。そして私の返答を待つ事なく、またとんでもない秘密を打ち明け始める。
「——実はさぁ、お姉さんへの差し入れには、ボクが処方されている眠くなるお薬をいつも仕込んでいたんだよねぇ。部屋の合鍵は随分前から入手済みだったから、眠ったであろう頃合いを見て部屋に入ったり、一緒の時であってもソファーでそのまま寝ちゃったりもしてくれていたから、何度も何度もこの数週間の間に、お姉さんのナカを舌や指ちんぽでゆっくり解しておいたんだぁ♡交際経験が一度も無いのも前々から知っていたし、お姉さんに少しでも興味を持った奴らも早い段階で潰しておいたから、今もまだ処女だって事には確信があったし。あ、でも、玩具には先を越されるかもって不安はずっとあったけど買い物の履歴を見てもその様子は無かったから、『あ、それならいつかの為に解しておいてあげた方が良いかな』って思って。妄想の中ではお姉さんの事何千回と抱いてきたけど、実地では未経験だし。そんな不慣れなボクじゃ興奮し過ぎて初回は無理矢理突っ込んで泣かせちゃう気もしたから、ボクも少しずつお姉さんに触る事にも慣れてもおかなきゃとも考えてね。ねぇ、ボク、お姉さんの事気遣えてるよね?優しいよね?——ん?もうこうやって繋がったのに、いつまでも『お姉さん』呼びは可笑しいか」
 またもや早口でそう言いながら如月君が私の方へまた顔を近づけようとした。そのせいでまたぐぐっと彼のモノが奥に挿入ってきて、とうとう最奥にまで達してしまった。

「これでもう、お姉さんはボクの奥さんになるんだから、今からは『美百合さん♡』って呼ぶね」

 一度も了承なんかしていないのに確定事項になっている。だからって『約束はしていない』なんて言おうなものなら監禁ルートに突入だ。確実に生のまま挿れられてもいるから余計に下手な事は出来ないってわかっている。ちゃんとわかっているのに、なのに私は、「——ま、待って……流石に」と口にしてしまった。

「え?ボクを拒絶するの?」

 仄暗さのある瞳をしながら真顔で訊かれ、「ち、ちが……」と即座に否定した。体が少し恐怖で震えたのと同時に彼のモノをギュギュッとナカで締め抱いてしまったからか、如月君の表情が甘い声を出しながら即座に蕩けてくれた。
「わぁ♡ナカがこんなんって事は、違うよね?そうだよね?『嬉しい、そろそろ早く動いて』って体の方はすごく正直に教えてくれたから、変な勘違いをしなくて済んで本当に良かったよ。……お互いの為にも、ね?」
 また無自覚のまま彼のモノを食い締めながら、こくっと頷く。口枷が無くなろうが結局は何も言えない現状を恨みたくなった。

「んー……。でも、下とは違って、こっちのお口の方はすぐには素直にはなれないみたいだから、ボクとちょっとゲームをしようか」

 頷きはしたが、表情の方には内心が思いっきり出ているからなのか、如月君がこんな状況だっていうのに変な事を提案してきた。絶対に碌でもない内容に決まっている。だけど詰んでいるにも等しいこの状況ではこの提案に乗るしかなさそうだ。
「じゃあ今からボクが動くから、その間に未百合さんはボクに『嫌い』『大っ嫌い』『あっち行けっ』って言ってもいいよ」
「……え」
「その言葉でね、ボクの中にある美百合さんへの愛情を塗り替える事が出来たら全部外に出してあげるし、もう二度と美百合さんの前には現れないって約束する。でもね、もし無理だったら——」とまで言った辺りで一度言葉を切り、彼の腰が少し動いた。取るに足らない刺激だ。それなのに腰周りが少し震え、下っ腹がまたギュッと疼いた。

「美百合さんは、永遠にボクのモノってことで確定ね♡」

 その言葉を合図とするみたいに如月君が根本まで陰部を押し挿れた。最奥にまでもう届いていたのに、それよりも更に押し込まれたせいで一瞬息が詰まった。声をあげる事も出来ずに背中が仰反る。
「あは♡かっわいぃー。ビックリしちゃったの?それとも気持ち良かった?」
 甘い吐息をこぼしながらゆっくりと、抜けるギリギリまでいき、ぐぐっと奥に戻ってくる。その動きが繰り返される中、私は必死に「……き、きら、ぃ」と最初の一言を口にした。
「ん?あ、ココじゃない?じゃあこっちかなぁ」と言い、如月君がナカを攻める角度を少し変える。ちょっと体勢がズレただけだったのに、さっきよりもずっと大きな快楽が襲ってきて「あぁ!」とほぼ濁音付きに近い大きな声で叫んでしまった。

「そっかぁ、ココが美百合さんのイイトコロかぁ♡」

「ちがっ」
「違わない、でしょう?」
 グリグリと肉芽辺りを内側から陰部で擦られ、「ひうっ、ぁふっ!」と情けない声をあげてしまった。でも今はそんな事を気にしている場合じゃない。『嫌い』だって言わないと。なのに何度も何度も同じ箇所を擦られまともな声が出ない。「うぐっ」「ンフッ!」と変な声ばかりあげてしまう。頑張って、頑張って、「き、きぃ——」まで言ったとしたって、「気持ちいい?気持ちいいんだね?いいよ、もっとしてあげる♡」と上書きされて全然最後まで言えていない。他の否定的な言葉すらも言えず、ただ濁音混じりの音だけを叫んで体を跳ねさせてしまうばかりだ。
 容赦無く肉壁を擦り続け、時折思い出したみたいに肉芽をクイッと指先で弄られる。「次は此処に玩具を貼り付けながらしようか♡」と言われた時は流石に「——いやあぁぁ」と言えはしたが、「はいはい」と受け流すだけでまともには聞いてくれなかった。

 段々と意識を保つのすら難しくなってきた。享楽に全てを支配され、思考力は落ちる一方だ。
「や、も、無理っ。ぬ、ぬぃ——あぁぁぁ、ンッ!」
 全身に甘い痺れが走り抜け、体に変な力が入った。腹の中で溜まりに溜まった何かが一瞬にして弾けたみたいな感覚だ。初めての事で訳が分からず、シーツを必死に掴み上げ、如月君の体を内股で思い切り挟んでしまった。予想外だったのか、彼は「わ、まっ!」と焦りの混じった声をあげた。
「……ぁ、あ……」
 目の前でチカチカと花火が散っているみたいな気がする。すると今度は途端に全身から力が抜けてぐったりと溶けるみたいな状態になった。
「あっぶなぁぁ、持ってかれるかと思った……」
 体を前に倒し、如月君が私の胸の上に寝転ぶみたいな体勢になる。そして少しだけ顔をあげると不満そうな顔で「……イク時は言って欲しいなぁ、もっとじっくりちゃんとイキ顔見ておきたかったのに。あ、写真も撮り損ねたや。んもう、動画だってちゃんとした角度で収めておきたかったのに、大丈夫かなぁ……」
 何やら聞き捨てならぬ事を言っている気がするのだが、脳みそが全然仕事をしていない。もうコレで終わりなんだという安堵感はあるが、ゲームには負けたなという確信もあって、この先どうしていいのかさっぱりだ。
「……も、ぬい、て、ね」
 虚な瞳のまま彼にそう告げたが、ナカでヒクッと如月君のモノが不満気に動いただけだった。そんな些細や刺激すら、達したばかりの秘部では刺激が強く、ダイレクトに快楽が全身に行き渡る。
「そんな冗談、面白くもないよー。ボクはまだなんだし、むしろコレからだし。ほらほらぁ、このままじゃ本当に負けちゃうよ?ボクの中の『好き』は寧ろ挿入る前よりもずっとずっと大きくなってく一方なんだから♡」
「も、無理っ、ホ、ホントもう体力も、股関節的にも——」と訴える私の言葉を遮って、「じゃあコレ解いてあげるから、美百合さんはうつ伏せで寝そべってくれているだけでもいいよ。後ろからボクが沢山沢山突いてあげるからさ」と物騒な提案もされてしまった。ソレって知ってる、『寝バック』とかって体位だ。正常位とはたま違う刺激があって寧ろヤバイと友人伝手に聞いた事がある。

「正常位のままでお願いします!」

 ちょっと強めに言ってしまった。他の体位なんか当然全て未経験なので余計に怖い。ならもう知っている体勢の方が幾分マシなはずだ。
「あは♡了解。美百合さんってホント、大胆で可愛いなぁ」
 ぐぐっとナカのモノの重量を更に増やしながら如月君がそう言った。ただでさえ体格の割にかなり大きめだというのに、まだ上があったのか。
「んでも手足の拘束はもう解いてあげるね。だからぁ、沢山ボクに縋って抱きついてね♡」
 拘束を解いてくれるのはありがたいが本心としてはもう止めて欲しい。でも、そんな気配は微塵もないからこれ以上は言っても無駄そうだ。
「あ、でも手錠はつけたままでいようか。……快楽のみで完全に堕とすのって流石に無理だと思うんだよね」
 ふと彼の表情が曇る。その顔を見て胸の奥がチクリと痛んだ。

「んで、ボクの頭の後ろに腕を回して貰えば——。うん!いいね、ずーっとこうされてみたかったんだぁ♡」

 革製の太い紐を手錠との接続部分だった金具ごと外してもらい、まだ手錠で繋がったままの手首を如月君の背後に回すと、まるで正面から抱き合っているみたいな状態になった。彼の体温を感じ取れる面積が増え、じわりと気恥ずかしさが広がっていく。口元を震わせ、嬉しそうに笑う彼からそっと視線を逸らしたら「じゃ、また動くね。もうそろ一度出しておかないと、めっちゃちんこ痛くってキツイから」と宣言し、急に、さっきよりも無遠慮に腰を動かし始めた。誰かを抱く為の動きじゃない。まるで玩具にでもアレを突っ込んででもいるかの如く配慮が無い。
「ま!ちょっ——。ンッ、ふぐっ!はっ、んぉぉぉ!」
 頭ごと体をのけぞらせ、激しく突かれてしまっているせいで獣みたいな声が出てしまう。オナホ扱いでもされているみたいなのにもう、一度『絶頂』なんてもんを知った秘部は自分でも驚く程彼の激しい動きに喜び、もっともっととおねだりでもするみたいに肉壁で如月君のモノをまた食い締めた。早く奥に、子宮に精子を飲ませて欲しいと希うみたいにむぎゅむぎゅっと抱きしめてしまっているのが自分でもわかってしまう。その度に快楽が全身を襲い、また目の前で火花が散った。
「イッ!——あぁぁぁっ」

「あはははは!もう全然『嫌い』って言えてないね。ってか、努力すらしてないんじゃない?そんなに気持ちいいの?でもソレ、すっごくわかるなぁ。ボクもめっちゃ気持ちいいもん。美百合さんのナカマジ最っ高!」

 腰の動きを止めぬまま如月君が私の胸先を軽く噛む。強く吸ったり、口内でコロコロと転がすみたいに舐めたりまでされるもんだから、彼の体をギュッと強く抱きしめた。止めて欲しくってというよりかはもう、『もっとシテ』と願うみたいに。勝手に腰まで動いてもしまうし、この無駄にデカイ体はすっかり快楽に溺れて虜にされてしまったみたいだ。
「く、苦しいけ、ど……ずっとこうしていたい、かも」
 そうだねとでも言うみたいに、「んっ」と返事を無自覚のまましてしまった。途端に彼の目がクッと見開くと腹のナカのモノが質量を増し、ビクビクッと震えた。そして熱い吐息をこぼしながら、「んっ、あぁ……で、でちゃ——」と言い、如月君の肩が何度か軽く跳ねた。

(……え。あ、ま、まさ、か……)

「……あぁーぁ。出ちゃったぁ。美百合さんに不利にならないように、もうちょっとくらい粘っておきたかったのに」
 そんな動きじゃなかっただろ!とツッコミを入れる余裕もなく、不意に体から力が抜けていき、下腹部を中心に甘い痺れが全身にじわりと広がっていく。多分またイッたんだと思うが頭が上手く働かず事実をちゃんと処理出来ない。
「排卵日だし、ほぼ妊娠確実だね」
「何で、知って……」
 自分でも覚えていない情報だ。生理管理の為のアプリは確かに使っているけど、スル様な相手のいない私は排卵日マークなんか一度も気にしてこなかったのに、彼の方が詳しいとか怖過ぎる。

(あれ?そう言えば……前回の生理の時——)

 思い返すと、如月君が随分と甲斐甲斐しく家の事を請け負ってくれていた事を思い出した。『作り過ぎた』と料理を差し入れてくれ、片付けやらなんからと動きの鈍っている私に代わってやってくれ素直に感謝していたんだが、あれは私が生理中だって知っていたからなのかと理解した途端、恐怖しか抱けなくなった。

「……美百合さんの負け、だね。全然『嫌い』って言われなかったのもあってか、貴女の事、もっともっと好きになっちゃっただけだったもん♡」

「い、言えないように、したの、君じゃない」
「そうだっけ?んでも、ボクはえっちな事しただけだし、ルール違反じゃないよね?口を塞いで言えなくしたんなら責められても納得だけど」
「……っ」
 確かにそうだ。口はずっと自由だった。なのに言えなかったのは理性を保てなかった自分が悪い、気がしてくる。

「んじゃ、このまま負けは流石に美百合さんが可哀想だから、もう一回戦ヤろうか♡」

「——は!?」
「八年分の想いだよ?性欲真っ盛りの時期に美百合さんをオカズにオナるだけでじっと我慢してきたボクだよ?こんな一回で終われる訳無いじゃん♡」
 言うが早いか、本当にナカで臨戦体制に戻っているモノの存在を強く感じる。

「このまま負けは嫌でしょう?内心では今もまだボクを拒絶したいんだよね?なら、何度も何度も、何度でも、ボクはゲームに付き合ってあげる♡」

 頬を赤く染め、ニタリと笑う彼の顔を見てゾクッと体が震えた。怖いとかじゃない、悔しい事に、魅了でもされたみたいな体の震えだった——


       ◇


 ——スマホから鳴る目覚まし音で目が覚めた。いつも通り、サイドテーブルに手を伸ばして止めようとしたのだが腕が引っ掛かって思う通りに動かない。『あれ?』と不思議に思っていると、「——おはようございます、美百合さん♡」とすぐ傍で可愛らしい声が聞こえた。
 慌てて声の方へ顔を向ける。するとそこには昨晩散々無体を強いてきた如月君がスマホ片手に全裸のままぺたんとベッドに座っていた。

(……わ。意外に、筋肉質なんだね)

 小柄な彼からは想像も出来ない美体で一瞬にして体が固まった。三回戦目までは辛うじて覚えているけど、こっちはもう何回イカされたのやらって感じなのでもう体がボロボロなせいもあるかもしれない。いや、むしろ後者の理由であって欲しい。
「ふふ、寝起きの姿撮っちゃいましたぁ♡こんな至近距離で撮れるなんて、夫の役得ですね!」
「……お、夫?」
 動揺しつつ上半身を起こす。こっちも全裸のまま眠ってしまっていた事に気が付き、慌てて掛け布団で胸を隠した。

「はい!だって、美百合さんはボクとのゲームに全敗したんで、責任取って、これにサインして下さいね♡」

 そう言って、如月君が私の前にほぼ記入済みの紙とボールペンを差し出してきた。はっきりと『婚姻届』と書かれた紙だ。
「サインしてくれたら、この手錠も外してあげます」
 すっと如月君が腕を持ち上げる。すると私の左手首まで一緒に持ち上がり、今更ながら私達が手錠でしっかりと繋がれている事を知った。
「ボク、絶対に良い夫になりますよ。美百合さんの事しか愛してないから浮気の心配なんて論外だし、収入もちゃんとあるし、貯蓄だってしてるし、ほぼほぼ在宅勤務だから育児だってボク主体で問題ないし。あ、でも仕事は辞めて下さいね。延々と産休と育休を交互に取り続けになるから流石に会社にも迷惑なんで」
 タイミングが良いのか悪いのか。たっぷりと散々中出しされた子種がじわりと膣から流れ出てくる。その感覚で体を少し震わせると、「……ナカに、ボクが指で押し戻してあげましょうか?」と囁く様な声で耳元で訊かれた。どうも私の反応から色々察したみたいだ。八年間で培ってきた観察眼はホント伊達じゃない。
 ぎゅっと掛け布団を強めに掴み、「……結構です」と断る。ちょっと近寄られただけで昨晩の(実際には数時間前、だよね)痴態を体が勝手に思い出し、キュキュッと下っ腹が疼いた。

「じゃあ、まずはボクと誓いの口付けをしましょう?……正真正銘お互いのファーストキスですよ。唇だけは、勝手に奪わなかったんで」

 一旦用紙はベットに置き、成人男性とは思えぬ可愛らしい顔をこちらの寄せて如月君が瞼を閉じる。ぺたんこ座りといい、こんな仕草といい、何故似合っているんだと不思議でならない。……股間の凶器が既に臨戦体制じゃなければもっと良かったんだけど。

「ほらほらぁ、キス、しましょう?僕達もう夫婦になるんですから、ね?」

 頬を赤く染め、うっとりとした声で言われると心よりも先に体が動いた。行動は相当めちゃくちゃだけど、長い長い片想いを拗らせただけだと思えばまぁ、理解出来なくもない。如月君の行動の全ての根底には“深い愛情”があるのだから、別段断る理由が思い浮かばないのならもう、このままでいいかなと思えてしまう。

(……完全に絆されちゃったなぁ、これは)

 内容も順番もぐちゃぐちゃだけど強く愛されている事だけは間違いないからから、私は了承の意を込めて、如月君の愛らしい小さな唇に自分の唇を重ねたのだった。


【完結】
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