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本編
【第九話】事の顛末①(アステリア談)
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今はいったい何時なんだろう?
そもそも、いったいあれから何日経ったの?
肉体に戻ったせいでお腹も空いたし、何よりも——胸が苦しい!
私は重い瞼をぐわっと無理に見開き、頭を枕から持ち上げた。すると、とっても幸せそうな顔の、頬の緩みきった寝顔で私の胸を枕にして眠るヒョウガが目に入って、段々とイライラしてくる。
苦しさの原因はコイツしかいないわ!
「起きて下さい!」と言いながら、ぐぐぐっとヒョウガの頭を押したが、彼はうんともすんともいわない。
今度は、この獣に眠りの魔法でもかかったの!?
そう思う位に彼の眠りが深く、私は胸の上で眠るヒョウガを除ける事が出来ない。
「起きなさいと言っているでしょう!?」
何度押しても、激しく揺らしても全く起きない。
「…… 」
あまりにも無反応なので、ちょっと不安になってきた。
まさか、本当に眠りの魔法に?
「…… ヒョウガ?」
小声で名前を呼び、彼の頭をそっと触れようとした時、バンッと勢いよく私の寝室の無駄に華美な扉が開き、「アステリア様ぁ!」と叫ぶ女性と、それに続き数人の獣耳の生えた獣人達が室内へ突然入ってきた。
「ぎゃああああああっ!」
声の主が誰かを確認する前に、私は城中に響き渡りそうな声で悲鳴を上げ、茨達を召還し、自分のベットの周囲に結界にも似た壁を築き上げた。
今の私は、は、裸なのよ!?
高貴な私が人に肌を曝すなんて、これ以上は耐えられないわ!!
それに——
この胸の上で寝息をたてている狐を人に見られたら、どう弁解したらいいのよ!
「アステリア様⁉︎解いて下さいまし!」と、くぐもった女性の声が茨の奥から聞こえてくる。
「嫌よ!絶対に、絶対に死んでも嫌ぁ‼︎」
半分泣きそうになりながら、必死に叫ぶ。シーツで肌を隠したいのに、胸の上で眠るヒョウガが邪魔でそれも出来ない。人間の自分でも、王家の生まれのおかげで茨を自在に呼び出す程度の魔法くらいは使えた事を心底感謝した。
「部屋の匂いで、何をなさっていたのかはバレバレですよ?」
「だ、駄目だよ。そんな事言ったら女性は傷つくんだって、いい加減わかろうよ」
聞き覚えのない声の男達にぼそぼそっとそう言われ、顔が茹蛸みたいに真っ赤になった。
この獣のせいよ‼︎
コイツが此処に来なければ私はこんな格好にもならなかったし、部屋もこんな風にはならなかったんだから!
「起きなさい!起きなさいって言っているでしょう!?」
ヒョウガの獣耳を引っ張り、小声で言う。
「無理ですよ。ヒョウガ様は普段あまり睡眠を取らない分、一度眠るとなかなか起きませんからね」
茨の奥から誰かがそう教えてくれた。
嘘!?
ちょっと、じゃあせめて放してよ!服を着たいの、裸は嫌よ!!
焦る気持ちと恥ずかしさから、とうとう私の瞳からボロボロと涙が零れ始めてしまった。
嫌だ、人が近くに居るのに泣くなんて私…… 。
止まらない涙に戸惑い、更に涙が零れてしまう。
「…… 泣いているのですか?」
困惑した表情で口元を手で押さえていると、ヒョウガが私の胸から頭を持ち上げ、心配そうに訊いてきた。
お前のせいでしょう!?
そう思っても声が出ず、無言でコクコクと頷く。悲しい気持ちで本気泣きする事になど慣れてはおらず、自分で自分の感情の波をどうあしらっていいのかわからない。
「あぁ、もう誰か来たのか。大丈夫ですよ、服ですね?ほら、もう綺麗になりましたよ」
ヒョウガがそっと私の谷間に手を当てたかと思うと、ふわっとした光が全身を包み、白く綺麗な異国風のドレスが体を覆ってくれた。…… 布面積が少ないのが気になるが、肝心の部分はちゃんと隠れてはいるので、今の状況では文句も言えない。
「…… わぁ」
こんな魔法は知らないわ。
素直に驚いていると、今度は「部屋の匂いも指摘されていたみたいですね。アステリアは、薔薇はお好きですか?」とヒョウガが私に尋ねる。
無言で頷くと、今度は掌を私の目の前に広げて見せ、その手の中から、陽の下で香る美しい薔薇の香りが周囲を満たし始めた。
「これで気持ちは晴れましたか?」
優しく微笑むヒョウガに向かい、言葉を忘れた子みたいに、ただただコクッと頷く。
不覚にも、そもそもの原因は全てコイツのせいだという事を一瞬忘れ、彼の優しさに対してちょっとドキッとしてしまった。
ほんのり染まる頬を隠すように俯き、「ありがとう」と言うと、ヒョウガが「どういたしまして」と言いながら私の前髪をそっと除け、額にキスをしてくる。見詰めあって微笑み合うとか、恋人同士みたいな事までしてしまった。
そもそも、いったいあれから何日経ったの?
肉体に戻ったせいでお腹も空いたし、何よりも——胸が苦しい!
私は重い瞼をぐわっと無理に見開き、頭を枕から持ち上げた。すると、とっても幸せそうな顔の、頬の緩みきった寝顔で私の胸を枕にして眠るヒョウガが目に入って、段々とイライラしてくる。
苦しさの原因はコイツしかいないわ!
「起きて下さい!」と言いながら、ぐぐぐっとヒョウガの頭を押したが、彼はうんともすんともいわない。
今度は、この獣に眠りの魔法でもかかったの!?
そう思う位に彼の眠りが深く、私は胸の上で眠るヒョウガを除ける事が出来ない。
「起きなさいと言っているでしょう!?」
何度押しても、激しく揺らしても全く起きない。
「…… 」
あまりにも無反応なので、ちょっと不安になってきた。
まさか、本当に眠りの魔法に?
「…… ヒョウガ?」
小声で名前を呼び、彼の頭をそっと触れようとした時、バンッと勢いよく私の寝室の無駄に華美な扉が開き、「アステリア様ぁ!」と叫ぶ女性と、それに続き数人の獣耳の生えた獣人達が室内へ突然入ってきた。
「ぎゃああああああっ!」
声の主が誰かを確認する前に、私は城中に響き渡りそうな声で悲鳴を上げ、茨達を召還し、自分のベットの周囲に結界にも似た壁を築き上げた。
今の私は、は、裸なのよ!?
高貴な私が人に肌を曝すなんて、これ以上は耐えられないわ!!
それに——
この胸の上で寝息をたてている狐を人に見られたら、どう弁解したらいいのよ!
「アステリア様⁉︎解いて下さいまし!」と、くぐもった女性の声が茨の奥から聞こえてくる。
「嫌よ!絶対に、絶対に死んでも嫌ぁ‼︎」
半分泣きそうになりながら、必死に叫ぶ。シーツで肌を隠したいのに、胸の上で眠るヒョウガが邪魔でそれも出来ない。人間の自分でも、王家の生まれのおかげで茨を自在に呼び出す程度の魔法くらいは使えた事を心底感謝した。
「部屋の匂いで、何をなさっていたのかはバレバレですよ?」
「だ、駄目だよ。そんな事言ったら女性は傷つくんだって、いい加減わかろうよ」
聞き覚えのない声の男達にぼそぼそっとそう言われ、顔が茹蛸みたいに真っ赤になった。
この獣のせいよ‼︎
コイツが此処に来なければ私はこんな格好にもならなかったし、部屋もこんな風にはならなかったんだから!
「起きなさい!起きなさいって言っているでしょう!?」
ヒョウガの獣耳を引っ張り、小声で言う。
「無理ですよ。ヒョウガ様は普段あまり睡眠を取らない分、一度眠るとなかなか起きませんからね」
茨の奥から誰かがそう教えてくれた。
嘘!?
ちょっと、じゃあせめて放してよ!服を着たいの、裸は嫌よ!!
焦る気持ちと恥ずかしさから、とうとう私の瞳からボロボロと涙が零れ始めてしまった。
嫌だ、人が近くに居るのに泣くなんて私…… 。
止まらない涙に戸惑い、更に涙が零れてしまう。
「…… 泣いているのですか?」
困惑した表情で口元を手で押さえていると、ヒョウガが私の胸から頭を持ち上げ、心配そうに訊いてきた。
お前のせいでしょう!?
そう思っても声が出ず、無言でコクコクと頷く。悲しい気持ちで本気泣きする事になど慣れてはおらず、自分で自分の感情の波をどうあしらっていいのかわからない。
「あぁ、もう誰か来たのか。大丈夫ですよ、服ですね?ほら、もう綺麗になりましたよ」
ヒョウガがそっと私の谷間に手を当てたかと思うと、ふわっとした光が全身を包み、白く綺麗な異国風のドレスが体を覆ってくれた。…… 布面積が少ないのが気になるが、肝心の部分はちゃんと隠れてはいるので、今の状況では文句も言えない。
「…… わぁ」
こんな魔法は知らないわ。
素直に驚いていると、今度は「部屋の匂いも指摘されていたみたいですね。アステリアは、薔薇はお好きですか?」とヒョウガが私に尋ねる。
無言で頷くと、今度は掌を私の目の前に広げて見せ、その手の中から、陽の下で香る美しい薔薇の香りが周囲を満たし始めた。
「これで気持ちは晴れましたか?」
優しく微笑むヒョウガに向かい、言葉を忘れた子みたいに、ただただコクッと頷く。
不覚にも、そもそもの原因は全てコイツのせいだという事を一瞬忘れ、彼の優しさに対してちょっとドキッとしてしまった。
ほんのり染まる頬を隠すように俯き、「ありがとう」と言うと、ヒョウガが「どういたしまして」と言いながら私の前髪をそっと除け、額にキスをしてくる。見詰めあって微笑み合うとか、恋人同士みたいな事までしてしまった。
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