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最終章
【第十話】幽閉塔③
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「貴方達は、一体何をしていたんですか」
最上階へ柊也達が到着するなり、すこぶる機嫌の悪い顔をしたライエンが、腰に手を当てながらそう言った。
「ちょっと遅れただけではないですか。トウヤ様は麗しいドレス姿なのですよ?そう早くは階段など上がれません」
柊也を腕で庇い、ルナールがムッとした顔で反論する。二人がやっと交わした会話がコレとは、柊也はちょっと先が思いやられた。
「遅れてしまい、すみませんでした。ヒールのある靴は性別的にも慣れてませんので」
ははは、と苦笑しつつ柊也がそう言うと、「あぁ」と一瞥してライエンが、小憎たらしい顔でぷぷっと吹き出す様な笑い方をした。
(うん、コイツはっきり言ってムカつくね。根はいい人かもとか、一瞬でも思った僕がバカだったわ)
笑顔のまま柊也がイラッとしていると、ライエンはスッと腕を横に上げ、大きな扉を指差した。
「アレの先に居るのが“孕み子”ですよ。結界が何重にも張られていてワタシ達は中へ入る事が出来ないので、ここからは“純なる子”だけでお進み下さい」
現時点でもう、張られた結界の影響で肌がビリビリとするライエンは、機嫌が悪いのも重なって、不快そうな顔をしている。
「この先に…… 」
柊也は指さされた先に視線をやり、大きな扉の前に立った。豪奢な細工がされた木製の扉はよく見ると二頭のドラゴンが番の様に寄り添う様子が彫られている。その彫物が何処かで見た図柄な気がして柊也は『どこで見たんだ?』と首を傾げたのだが、隣に寄り添っていたルナールが即座に答えをくれた。
「トウヤ様のブレスレットと同じ柄ですよ」
「あぁ!それで」
両手を軽く上げ、銀色をしたブレスレットと扉とを見比べる。
「もしかして、このブレスレットを贈ってくれたのって——」
「はい。ユランですよ、トウヤ様」
「…… ねえ、もしかして…… ルナールはずっとその事を知っていたの?」
あの時ウネグは、誰からの贈り物だと言っていただろうか?と不思議に思いながら、柊也が隣に居るルナールの顔を見上げる。すると彼は、ちょっと切なそうな笑みを浮かべていた。
「…… ルナール?どうしてそんな顔を——」と、柊也が言いながらルナールへ手を伸ばした時、急に彼は体を強く押されてしまい、背中を扉へと叩きつけられた。
「うわっ!」
強い衝撃を感じ、驚きの声を柊也があげた。何が起きたのか分からず、慌てて前を向く。するとライエンが酷く驚いた顔をしながら、ルナールと体を重ねているのが目に入った。
(何?どうしたの?何でライエン王子は、そんな顔をしてるんだろう?何でそんなにルナールにくっつく訳?…… 正直気持ち悪いな)
柊也はそんな事を考えながらも、視界に入る全てが不思議と全てスローモーションに見える気がした。
コマ送りされていくみたいにルナールの体が真っ直ぐには立っていられなくなり、床へと倒れていく。その様子を、柊也はただ呆然と見ていた。
「…… ル、ルナール?」
ルナールの姿が、立っている柊也の視界から消え、短剣を片手に握ったライエンの姿が目の前に現れた。
「ワ、ワタシは悪くないぞ⁈コイツが勝手に!」
王子とは思えぬ言葉を吐き捨て、ライエンは柊也を逆恨みしている様な眼差しで睨みつける。
(…… え?待って…… 何でルナールは、倒れたの?その…… 短剣はいったい——)
訳が分からず、柊也がその場にへたり込む。下がった視界の先には、地面にうつ伏せで倒れるルナールの姿があったのだった。
最上階へ柊也達が到着するなり、すこぶる機嫌の悪い顔をしたライエンが、腰に手を当てながらそう言った。
「ちょっと遅れただけではないですか。トウヤ様は麗しいドレス姿なのですよ?そう早くは階段など上がれません」
柊也を腕で庇い、ルナールがムッとした顔で反論する。二人がやっと交わした会話がコレとは、柊也はちょっと先が思いやられた。
「遅れてしまい、すみませんでした。ヒールのある靴は性別的にも慣れてませんので」
ははは、と苦笑しつつ柊也がそう言うと、「あぁ」と一瞥してライエンが、小憎たらしい顔でぷぷっと吹き出す様な笑い方をした。
(うん、コイツはっきり言ってムカつくね。根はいい人かもとか、一瞬でも思った僕がバカだったわ)
笑顔のまま柊也がイラッとしていると、ライエンはスッと腕を横に上げ、大きな扉を指差した。
「アレの先に居るのが“孕み子”ですよ。結界が何重にも張られていてワタシ達は中へ入る事が出来ないので、ここからは“純なる子”だけでお進み下さい」
現時点でもう、張られた結界の影響で肌がビリビリとするライエンは、機嫌が悪いのも重なって、不快そうな顔をしている。
「この先に…… 」
柊也は指さされた先に視線をやり、大きな扉の前に立った。豪奢な細工がされた木製の扉はよく見ると二頭のドラゴンが番の様に寄り添う様子が彫られている。その彫物が何処かで見た図柄な気がして柊也は『どこで見たんだ?』と首を傾げたのだが、隣に寄り添っていたルナールが即座に答えをくれた。
「トウヤ様のブレスレットと同じ柄ですよ」
「あぁ!それで」
両手を軽く上げ、銀色をしたブレスレットと扉とを見比べる。
「もしかして、このブレスレットを贈ってくれたのって——」
「はい。ユランですよ、トウヤ様」
「…… ねえ、もしかして…… ルナールはずっとその事を知っていたの?」
あの時ウネグは、誰からの贈り物だと言っていただろうか?と不思議に思いながら、柊也が隣に居るルナールの顔を見上げる。すると彼は、ちょっと切なそうな笑みを浮かべていた。
「…… ルナール?どうしてそんな顔を——」と、柊也が言いながらルナールへ手を伸ばした時、急に彼は体を強く押されてしまい、背中を扉へと叩きつけられた。
「うわっ!」
強い衝撃を感じ、驚きの声を柊也があげた。何が起きたのか分からず、慌てて前を向く。するとライエンが酷く驚いた顔をしながら、ルナールと体を重ねているのが目に入った。
(何?どうしたの?何でライエン王子は、そんな顔をしてるんだろう?何でそんなにルナールにくっつく訳?…… 正直気持ち悪いな)
柊也はそんな事を考えながらも、視界に入る全てが不思議と全てスローモーションに見える気がした。
コマ送りされていくみたいにルナールの体が真っ直ぐには立っていられなくなり、床へと倒れていく。その様子を、柊也はただ呆然と見ていた。
「…… ル、ルナール?」
ルナールの姿が、立っている柊也の視界から消え、短剣を片手に握ったライエンの姿が目の前に現れた。
「ワ、ワタシは悪くないぞ⁈コイツが勝手に!」
王子とは思えぬ言葉を吐き捨て、ライエンは柊也を逆恨みしている様な眼差しで睨みつける。
(…… え?待って…… 何でルナールは、倒れたの?その…… 短剣はいったい——)
訳が分からず、柊也がその場にへたり込む。下がった視界の先には、地面にうつ伏せで倒れるルナールの姿があったのだった。
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