上 下
50 / 53

面倒です

しおりを挟む
「まさか、こんなにこの世界の人間が無知だとは‥‥‥はぁー」
『これまで、俺達は人間が魔法を使い過ぎないようにセーブしてきたんだ。だが、ここ最近は人間だけでなく、魔族までもがこの真実を忘れ果ててしまい、俺達だけでは手が届かなくなってきてしまった』

 私はスィーニュと話を聞きながら、深くため息をついた。
 『精霊の存在意義』これは前世の人間なら、小説やゲームを読み込んでいる人は大体が知っていることだ。
 私が知ったのは小説を読んだからだ。まぁ、内容のとらえかたや考え方は人それぞれだけどね。
 魔法と精霊は一心同体。精霊がいて魔法が成り立つ。魔法があって精霊がいる。どちらが欠けてもいけない。欠けたら絶対に存在しないものとなってしまう。
 まぁ、これは小説とかのうけいりなんだけどね。

「スィ、スィーニュ!なんでそっちにいるの!私の所に来なさい!」

 リッターの後ろに隠れていたアンジェが、前に出て来た。
 また、アンジェのヒステリックが発生したか。
 私はスィーニュに目線で「どうにか出来ない?」と言うと、念話で『無理だ』と帰ってきた。

「スィーニュ!あなた私のでしょ!?なんでよ!‥‥なんで、なんでよ。この世界は私中心のせかいでしょ!?なんでこんなに私の思いどおりにならないことばかりなのよ!この世界はゲームなのに‥‥私はこの世界の主人公ヒロインなのにぃぃいいいぃいい!」

 完璧に壊れた。
 アンジェは絶望した顔をしながら、絶叫している。その声はもう一種の攻撃方法になると思う程だ。

「スィーニュ。あの子を一時的でいいから眠らせて」
『永遠に眠らせる事も出来るが?』

 そんな事を言うスィーニュの顔は、冗談ではなく本気の顔だった。

でいいから」
『‥‥チッ!』

 舌打ちをしながらも、スィーニュはちゃんと指示に従ってくれた。
 アンジェはすぐに前のめりに倒れ込んだので、それを私はキャッチし、会場の端のほうへと移動させた。

「アンジェ!」

 すぐに攻略対象達が近寄ってきたので、離れてその様子を観察する。
 私もキャッチした時にザックリだが確認したが、特に問題なさそうな感じだった。

「さてと、これからどうするか」

 こうなってしまった以上、どうにも出来ない感が半端ない。実際、後の事は何も考えずに行動してきたので、その場その場で行動してきた私に、この状況をどうするかなんてのは、全然頭に浮かばない。

「‥‥‥とりあえず、今日はこれでお開きでいいのでは?」
『そうだな』
「待て!」

 後処理が面倒になってきた私が会場から退場しようとした時、後ろから声が響いた。
 多分、この声はあの馬鹿王子のアインハイトだ。

「なにか御用でしょうか。アイ‥ン‥‥‥ん?」

 だが、後ろを振り向いてもアインハイトはいない。一応奴がいる席を見ても、アインハイトの姿は見えない。

「‥‥空耳か」

 私は空耳を聞いたのだと自身の頭の中で処理して、その場をあとにした。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

乙女ゲーム関連 短編集

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,363pt お気に入り:156

【完結】婚約破棄された私は昔の約束と共に溺愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:433pt お気に入り:6,116

幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:18,406pt お気に入り:3,525

処理中です...