その杯に葡萄酒を~オメガバ―ス編~

蓬屋 月餅

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第2章

12「涼しげな夏」

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 医者はうなじの咬み痕を診ればそのつがいがいかに強い結びつきを得ているのかが分かるという。
 きちんとした発情状態でつがいになるとその分咬み痕が濃くはっきりしたものになるからだそうだ。
 実際は他人の咬み痕を見る機会などないのでそれが本当なのかは分からないのだが…夾のうなじの咬み痕を診た医者が夾と璇のことを強い結びつきを得ているつがいだと太鼓判を押したところからしてもそれは確かなのだろう。
 休暇が明けた翌日に仕事場である荷車整備工房で、同じオメガである親方の娘から「すごく綺麗なうなじあて…とても素敵…」と羨望の眼差しを浴び、自慢げに思いつつつがいになったのだという実感をさらに強めた夾。
 そしてそれぞれの家族からも祝ってもらったことで2人は新たなつがいとしての生活を始めたのだった。


 そうしてつがいとなってから1か月後。
 夾は妊娠していることが分かった。
 男性オメガはその特性上、つがいになると同時にほぼ必ず第一子を妊娠するといわれているのだが、通常は妊娠に伴う『巣作り』やつわりなどを経験してから医者に診てもらうため きっかり1ヶ月後に妊娠が分かるということは少ない。
 しかし夾は特に妊娠を心待ちにしていたということもあったのでそうした体調の変化を待たずして脈診を受け、かなりの初期で妊娠を確定させたのだ。
 本当につがいになってからすぐに授かったということに驚きを感じながらも、夾は璇と共に新たな家族を迎えるための支度を始めた。

 男性オメガは女性とは違って妊娠そのものが難しいうえに宿った命を失いやすいとされている。そのため安定期というような期間もなく、出産までの8か月半の間はひたすら重いつわりと共に臥せって過ごすことになるのだ。
 夾も例にもれず、兄を始めとした家族に妊娠の報告を済ませ、仕事で使うために手配しておいた製図台を家に設置し終えた頃には早速体調の悪さに苦しめられることになっていた。
 とてもではないが寝台から起き上がって書き物をするなどは出来ないというほどに。
 そうした体調の変化は激しく動いたり重いものを持ったりする状況になるのを防いでお腹の子を守ろうとする男性オメガの本能がそうさせるものであり、女性が経験するつわりよりもひどいからといってその点では心配することではない。
 しかし手洗いと食事、そして湯浴み以外ではほとんど寝台から動くことのできないつがいの姿というのはアルファの心をひどく掻き乱すものなのだった。
 それまで健康な姿しか見せていなかったオメガが何をするにしても苦しがっているのだから心配を通り越して恐ろしくもなるだろう。
 そのためアルファは苦しむつがいのためにその身の回りの家事など一切を請け負うようになるのである。身の回りのことを何もかも、だ。そして互いに【香り】を弱く放つことで心身を支え合い、本来であれば疲弊しきってしまうような日々も健康を保って過ごすのだ。
 璇達も もちろんそうして過ごしている。


ーーーーーーー


 重いつわりで夾が寝台に臥せるようになってから数週間。
 季節がすっかり夏らしくなってきている中、璇は夾のための夕食を詰めたかごを手に【觜宿の杯】での仕事から帰途についていた。
 彼はこのところ、【觜宿の杯】で働くのはごく短い時間だけにしている。
 というのもあまり長く離れていると夾の体調がさらに悪くなってしまうからだ。
 正確に言えば悪くなっているのではなく、心身を癒す効果があるつがい相手の【香り】が感じられなくなっていることで体調が元に戻ってしまっているということなのだが…。
 とにかく、璇は午前中から昼過ぎまでは家事などをして夾のそばに付きっきりになった後、夕刻までは【觜宿の杯】で仕事をし、そして夾と共にまた夕食などの時間を自宅で過ごすという日々を送っていた。
 本当は璇としては【觜宿の杯】での仕事も休んで“眠りつわり”に悩まされている夾のそばに居続けたいところなのだが、食材の入手などのためにも仕事には行くようにと夾から言われているので渋々午後は家を空けることにしているのだ。
 仕事を終えて帰宅した彼は眠っているかもしれない夾を起こさないようにと静かに家に入ると、料理を詰めてきたかごを食卓に置き、すぐさま手洗いなどをしに行った。

「ん…璇、さん…?」

 きちんと手を拭い終わらないうちに聞こえてきたその小さな声に応えながら、璇は急いで居間に向かう。

「ただいま、韶。今帰ってきたところなんだよ、起こして悪かったな」

「大丈夫か?おい…無理に起き上がろうとするなよ、そのままでいいから」

 夾は日中いつも休むのに使っている寝台代わりの長椅子から のそりと起き上がろうとしていて、璇もすぐにそのそばへと駆け寄っていく。
 何とか手をついて起き上がった夾は「…おかえりなさい、璇さん」と弱々しく微笑んだ。

「随分早く…帰ってきたんですね」
「当たり前だろ、こんな状態の韶を1人にして仕事なんかできるか」
「でもじっとしておけばそこまで辛くないので…大丈夫ですよ」

 気丈に振る舞おうとしているらしい夾だがその顔は青ざめていて、璇が仕事をしに行く前よりも明らかに具合が悪そうな様子だ。
 璇がごくわずかに【香り】を放ちながら抱きしめると、夾は「本当に…すごいですね、【香り】って…」と何度も深呼吸を繰り返す。

「すごく辛かったのにこうしてもらったら……ん…もう大丈夫です、眩暈もおさまったみたいです」
「こんなんで?まだ足りないだろ」
「でも効果絶大ですから」

 ほんの少し相手の【香り】を感じただけで気分も体調も良くなるというのがつがいの特徴だ。
 さらに、そうして【香り】を感じたことによっていくらか顔色が良くなった夾を見ていると璇もすっかり安心することができる。
 ゆっくりと食事ができるようになるまで少しこのままでいるべく、璇は夾に今日【觜宿の杯】で作ってきた料理の献立を話して聞かせた。
 青菜ご飯や きのこと肉の炒め物、そして干し魚の出汁で作った溶き卵の汁物。さらにちょっとしたおかずの小鉢 数種類だ。
 すべて軽く温め直せばすぐに食べられるようになっている。
 興味を示した夾のために璇が持って帰ってきたかごの中を見せると、夾は「またこんなに品数を?」と目を瞬かせた。

「毎日三食、全部別のものを何種類も用意するなんて…大変じゃないですか」

 夾が少し申し訳なさそうにすると、璇は「いや、そんなに大変じゃないんだよ」と安心させるように言う。

「料理は全部俺の母さんと義姉さん、あと韶のお義姉さんと琥珀からそれぞれ送られてきたものを片っ端から作ってるだけだからさ、ちっとも大変じゃないんだ」

 そう。夾の妊娠が分かってからというもの、璇の元には様々な料理の作り方を記したものが送られてきていたのだ。
 どれも璇の母や義姉、夾の義姉、そして同じ男性オメガである琥珀が妊娠中に好んで食べていた、もしくは体のためにと食べていた料理の作り方である。
 璇はそれらすべてを医師にも見てもらい、夾の身体にも合うものだということを確認してから上手くそれらを組み合わせて献立を作っていた。
 妊娠中は味覚が変わることも多く、つわりによって体が受け付けないものもあるのでとにかく食べられるものを探すのが大変なのだが、こうした数々の料理を少しずつ試しているうちに夾にも安定して食べられるものが見つかるようになってきている。
 璇の母が教えてくれるものは純粋に夾の好みであることが多く、さらに義姉達からのものは2人とも工芸地域出身ということで夾が幼い頃から食べ慣れた味のものが多かった。
 琥珀は同じ男性オメガということもあって、女性達が食べるものよりも少しだけ満足感が高いような、それでいて油っぽくはないという気分が悪くならない料理を教えてくれている。
 それらの料理の中から夾が好むものをひたすら集め続けて、いつか『どれを食べても美味しい』と思えるような献立を何通りも作ることが璇の目標であるらしい。
 今の献立はまだあれこれと試している途中なので、おかずは数多くしながらも安定して食べられる料理を2品ほどずつ組み合わせることにより『どの料理も体が受け付けず何も口にすることができなかった』という状況になるのを防いでいるようだ。
 色々な人に支えられているのだということをあらためて感じながら、夾はかごの中の料理を見つめて呟いた。

「俺ばっかりこんなに色々してもらって…すごく申し訳ないです」

「もうここのところずっと食事も洗濯も湯浴みの支度もなにもかも…全部 璇さんにさせてしまっているじゃないですか。他の人にもこうしてよくしてもらっているのに俺は何もできていないんですよね、妊娠前にあれだけ大口叩いておきながら今は結局横になってばかりで少しも荷車の設計図に手がつけられていないし」

 力なく笑う夾に、璇はかごを傍らに置いて言う。

「韶、そんな風に思うことはないんだ。医者先生も言ってただろ?つわりは重いけど少しずつ軽くなっていって、あと1カ月もすれば長いこと起きていられるようになるし書き物もできるようになるって。妊娠してすぐは特に体が不安定なんだから仕方がないんだよ」
「だけど…璇さんがあまりにも大変じゃないですか、家事を完璧にきちんとこなしながら【觜宿の杯】との行き来もしたりして…」
「俺が家事を完璧にできてるって?本当に?ははっ それならいい、俺はきちんとアルファとしての役目を果たせてるってことだな。もし韶が自分で何かやりたくなるほど気になるところがあったとすれば それは俺がきちんと韶のために動けてないってことだろ。それじゃつがいとして失格だ」

 璇はまだ少し顔色の悪い夾を自身の【香り】で癒すべく、わずかに【香り】を放ちながら夾に寄り添う。

「…前に韶も言ってただろ『俺達2人の子供を産み育てることができるのは自分だけだ』って。今の韶はまさに他の誰にもできないことをしてるんだぞ、だからこういうことを申し訳なく思う必要はないんだ。そもそもさ、男のオメガってこういうときのためにつがいになるアルファを慎重に選んでるんじゃなかったのか?」

「俺は韶のためになることなら何でもやりたいんだ、これは本心なんだよ。俺の負担?家事をすることが俺の負担になるとでも?俺はアルファだぞ、これくらいどうってことない。アルファってのはそんなにやわじゃないんだ。むしろアルファの特性はこういうときのためにあるんだからさ、韶はオメガとして『存分にこき使ってやる』くらいの気概でいなきゃ」

 ははっと明るく言う璇に「そんな、こき使うだなんてそんなこと…俺にはできませんよ」と困り顔になる夾。すると璇は「その遠慮がちなところが韶の魅力でもあるのは確かだけど、さすがにもう少しは俺に対して大胆になれるようにならないとダメだな」と夾の鼻先を指先で撫でた。

「まったく。何のためのつがいなんだ?身も心も預け合えるのがつがいなんだからもっと俺を頼って任せてもらわないと困るよ」

 そんな台詞を真正面から受け取った夾は恥ずかしくなって、肩をすくめながら視線をどこか端の方に逸らせる。
 しかしその表情はなんとも嬉しそうなものだった。

 いくらか顔色が良くなってきたものの、夾は食事をするにはもう少し休む必要があるようだ。
 そこで璇は自分が仕事で出ていた間の午後の体調はどうだったかと訊ねる。
 なんでも、どんな些細なことでも話して欲しい、と。
 すると夾は「いつも通りですよ、眠くてずっと横になっていました」と言いつつも眉をひそめた。

「でも…やっぱり何度か悪夢を見て起きてしまって、それが…ちょっと辛かったかもしれません」
「夢の内容は同じか?」
「…はい」

 夾が見たという夢。
 それは毎回同じ『どこを探しても璇がいない』という内容の夢である。
 今すぐにでも会いたくて探そうとするのにどこにもいない
 家の外にいるのではないかと確かめるために出ていこうとしても戸は開かず、身動きができなくなって悲しさと寂しさで胸がいっぱいになる…そんな夢だ。
 それは妊娠した男性オメガがよく見るとされている悪夢だった。
 眠っている間につがいのアルファの存在がそばに感じられないと男性オメガは無意識にその【香り】を求めてしまい、結果としてそうした夢を見てしまうのだ。
 もはやそれは重いつわりと共に男性オメガにつきまとうどうしようもない現象なのだが、璇は少しでもその夢を見ずに済むようにと夾のために自身の【香り】を染み込ませた寝間着などを持たせるなどして対策を試みていた。

「いつもより多めに【香り】を残していったはずなのに…それでも変わらなかったのか」

 璇が小さくため息をつくと、夾は「いいえ、この寝間着があったのでとても助かりましたよ」と傍らにあった璇の寝間着を抱き寄せる。

「妊娠してから一番大変なのはずっとこういう悪夢を見てばかりだってことです。俺は元々そんなに外出する気がない性格なので臥せっていること自体は辛くないんですけど…あまり良くない夢ばかり見てしまうのはどうしても落ち着かなくて…でもそれも仕方のないことなので何とか耐えるしかありません。そんな中でもこの寝間着と染み付いた【香り】があるおかげで少し安心するというか…璇さんがそばにいると思うだけでいくらか気持ちを落ち着かせることができるんです。いくら冷や汗をかいて飛び起きても璇さんの【香り】を感じると少し落ち着くんですよ。だからこうして寝間着を残して行ってもらえて助かってますし、今日はいつもよりしっかりと香っていたので もっと落ち着くことができたと思います。…もちろん、こうして本物の璇さんから直接香った方が効果は高いですけどね」

 そう話す夾に璇は「やっぱり俺も仕事を休んで家に居続けるよ」と訴えるが、その提案はすぐに却下されてしまう。

「だめですよ、璇さんは【觜宿の杯】へ行って仕事をしてきてください」
「俺が行ったって【觜宿の杯】は大して変わらないよ、どうせ来る人はいつも同じ ほとんど決まってて忙しさに波があるわけでもないんだし。それに…」
「璇さん。璇さんはきちんと外で仕事をしてください。そうしてご飯や食材を何とかしてきてもらわないと俺達2人共 困るじゃないですか?そばにいようとしてくれることはすごく嬉しいですけど、まずはきちんとした生活を送らないと」
「それは…なんとかなるよ。だけど俺がいない間に韶がそうやって何度も目が覚めて辛い思いをしてるんなら…」
「もう…ですから 俺は大丈夫ですってば」

 だいぶ顔色が良くなってきた夾が目を伏せて優しげに微笑むので、璇が少々いたずらっぽく「でも、俺やっぱり仕事休もうかな」と言うと、夾はすぐに「だめですってば…!」と小さく笑い声を上げる。
 すっかり彼の気分も良くなったようだ。
 そろそろ夕食にしようかと誘うと、夾も頷き、夕食の支度が始まった。
 夾の体調を気遣って長椅子でそのまま夕食にするのはどうかと提案するも、夾は「大丈夫です。それに寝てばかりじゃなくて少しは動かないと」と食卓の方へ移動する。
 璇は調理場で料理を温め直しながらも、ひたすら夾が言った『璇さんがそばにいると思うだけでいくらか気持ちを落ち着かせることができるんです』ということについて考えていた。

(なにかもっと…俺がそばにいると感じられるようなものがあればいいんだけどな…)

 そうして後日、璇は夾のためにあるものを用意したのだった。


ーーーーーーー


「これを俺に?なんですか?」

 妊娠2ヵ月になろうかというある夜のことだ。
 璇はあるものを手渡すべく、寝支度を整え終えた夾を寝台に腰掛けさせていた。
 未だにつわりで臥せっている夾のためにと璇が手配したもの…それは美しい色紙が貼られた小箱の中に納められている。

「気に入るといいんだけど…とにかく開けてみて」

 璇が促すと、夾は小箱の蓋に手をかけてそっと中にあるものを覗いた。
 箱が傾いた拍子に箱の中のものが爽やかな音を立ててきらりと光る。

「わっ…なんですか?これ…」

 小箱の中から夾が慎重に取り出したもの。
 それは濃紺の房飾りがついた銀の丸い鈴だった。
 控えめな金の星模様が描かれている鈴はどこにも切れ目などは見当たらないにもかかわらず、少し揺らすだけでも涼やかで軽やかな音色を響かせる。
 それは工芸地域で色々なものを見てきた夾でさえも初めて目にする鈴だった。

「これを俺に?鈴…みたいですけど、これってどういうものなんですか?音がすごく綺麗ですね…不思議な感じがします」
「気に入ったか?」
「それはもちろんですよ…!でもどうしたんですか?これ」

 何度も揺らして音を聴く夾の目の前に、璇はもう1つのよく似た鈴を提げて見せた。
 その2つの鈴にはそれぞれ璇と夾の名前を意味する星の紋様が描かれていて、それに気付いた夾は頬を綻ばせる。
 璇が夾に渡した方の鈴には璇の名前を意味する紋様が描かれていた。

「ほら…俺の存在を近くに感じられると少し落ち着くことができるって言ってただろ?だから寝間着の【香り】だけじゃなくてもっと何かそういう“存在”が感じられるようなものを贈りたかったんだ。それで色々と考えてた時にこの鈴を思い出してさ、職人に俺達それぞれの紋様入りで作ってもらえるよう頼んでおいたんだよ。音が綺麗だろ?水滴の音が響くのを再現した鈴で『水琴鈴』っていうんだ。随分前にちらっと見たことがあって…この音なら具合が悪くても聴くのが苦じゃないくて癒しにもなるんじゃないかと。本当は風で揺れたぐらいじゃ音は鳴らないんだけど、職人に相談したら房飾りとかを付けて風鈴みたいにもできるようにあれこれと工夫してもらえたんだ」

「韶は俺の名前の紋様がついたその鈴を持っててくれ、俺は韶の名前の紋様がついたこの鈴を持ち歩くからさ。それで気分が悪くなったときにはこの音を聴いてみてほしい」

 璇が「少しはそれで気が紛れたらいいんだけどな…うるさくないよな?」と心配そうに話すものの、夾はなによりもその音が気に入ったらしく何度も何度もさらさらと鈴を揺すって音を確かめている。
 彼は「本当に綺麗な音がしますね」と瞳を輝かせた。

「透き通った音というか、耳に痛くない音、というか…本当に水滴を思わせるような…とにかく俺が知ってる鈴とは全然違います」

 璇が自らの手の中にあるもう1つの鈴を揺らすと、夾が持っているものとは微妙に高さの違う音が響いて音色が心地良く重なり合う。
 その2つの鈴を並べて見つめながら 夾は「本当に嬉しいです…璇さん」と璇の肩に頬を寄せた。

「この鈴もすごく好きだし、なによりこうして俺のことを考えて用意してくれたっていうその気持ちが…嬉しいんです。ありがとうございます、璇さん。本当に本当に、大切にしますね」

 夾による心の底からの笑顔とほのかな【香り】に璇もすっかり胸が満たされて応えるように自身も【香り】を放つ。
 一日の疲れも何もかもが溶けて癒されていく一時だ。
 その後に璇が「ま、でも2人でいるときは鈴じゃなくて俺に注目してほしいんだけど」と2つの鈴飾りを部屋の壁に掛けにいくと、夾はまた愉快そうに笑った。

 きっとこの清純で澄んだ音色をした鈴は日中 静かなこの家に涼やかさをも もたらすことだろう。
 まだまだ初々しい一組のつがいはしばらくの間そうして2人寄り添い合い、穏やかに夜を過ごしたのだった。
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