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夏の話

九 「後ろを犯します」(※)

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 後ろの穴がよく見えるようにという有無を言わさぬ命令を受け、レンは両足を抱えている。
 ルイスが使っているローションは、なんだか熱い。媚薬のような成分が入っているのか、それとも気が昂っているだけだろうか。
 初めての夜に抱きつぶされた感覚が身体に刻みこまれているせいで、強い刺激を欲しがっているのかもしれない。
 ルイスは執拗にレンの後孔にローションを塗って、指をピストンする。真新しいシーツにこぼれてもお構いなしだ。

「ルイス、さん、んあ、あっ、あああ」

 喘ぎすぎて喉が枯れそうだとレンは思った。
 ルイスのしつこさは並大抵ではない。レンの秘部を長い指で蹂躙する。レンが気持ちよさそうに喘ぐのが余程嬉しいらしい。
 ルイスは美人だ。髪をかきあげる仕草が、自然で格好良い。見据えられるとレンはぞくりとする。どうしてこんなに美しい瞳を持つ男と、こんな現実感のない場所で、こんな獣のようなセックスをしているのだろうか。

「レン。そろそろ、入れましょうか」
「……っ」

 恥ずかしくて答えられない。なので少しだけ頷く。
 指が引き抜かれ、ルイスの切っ先がレンに進入しようとする。
 的を定めて突き刺そうとしている。だがなかなか入ってこない。

「ル、ルイスさん」
「レン。挿入してもいい? 声にだして答えてください」
「……!」
「ふふふ。レンが答えないなら、僕が決めますよ。いいんですか? 僕に任せておくと、レンは辛いかもしれないですよ。やめてって言われても、そのときにはやめられないかもしれませんから」

 レンの下の口は、ルイスの濡れた先端を美味しそうに咥えこもうとしている。言い訳はきかない。
 レンはルイスに懇願した。

「お、お願いします、入れてください」
「どこに?」
「……っ」
「何を、どうしてほしい?」
「い、意地悪です」
「では、手伝ってあげましょうね。レンはアナルに欲しいんですか?」
「は、はい」
「何を?」
「そ、その、ル、ルイスさんの」
「これですか? なんて呼ぶんです?」
「おちんちん、です」
「どうしてほしいんです?」
「い、入れてください、ルイスさんの、お、おちんちんを、俺の、ア、アナルに、挿入してください」

 レンは諦めて一息に言った。いうしかない。
 ルイスはレンのお願いを受け入れるかのように微笑む。だが――。

「では、レン。自分の指で、欲しいところを広げて、僕によくみせてください」

 レンはたまらず、両手で顔を覆った。

「ルイスさん、もう、俺、恥ずかしくて、死にそう……」
「可愛らしいレン。恥ずかしさでひとは死なないから大丈夫ですよ」

 レンは抵抗を諦め、ここにください、と自分の秘部をルイスに差し出すように指で広げた。広げると、下の口は、宛がわれたルイスの切っ先を食む。

「よく見えますよ」
「ルイスさん、意地悪」

 次の瞬間、レンの熟した穴はルイスの肉棒にこじ開けられる。
 レンは甘く叫んだ。

「あっ! ルイスさんっ、あぁああっ」

 ルイスは楔を打ち込むように細かく刻みながら挿入を試みる。

「レン、レン、ああ、レン」
「あっ、あっ、あっ」
「好きです、レン」
「あ、あ、あっ」

 レンにすべてをおさめたあと、ルイスはレンに覆いかぶさった。ルイスはレンの唇を割って、舌を強く挿入した。

「ん、んふ」
「ん」

 レンはルイスの舌に吸いつく。
 上の口も下の口もルイスに犯され、しぼるように吸いついている。
 ルイスはゆっくりと腰を揺らす。そのねっとりした動きに、レンのほうがたまらずに腰を性急にこすりつける。自らピストンをする。止められない。

「んふ、ん、ん」
「んっ、んっ、こら、レン。そんなに激しくすると、こちらがイきそうになります……」
「んん、ら、らって、あう、んふ」
「盛りのついたメス猫みたいになってますよ、いいんですか、レン」
「ん、よ、よくな、い、です」
「可愛い。可愛いレン」

 下半身をこすり合わせると、ぬちゃぬちゃと粘着質な音を立てる。
 セックスをしている。好きな男に抱かれるときに出る音だ。舌を吸い合って唾液まみれだ。体液が混ざり合っている。汗も、どちらの汗かわからない。
 重なりあってどちらがどちらかわからなくなって、溶けてしまいそうだ。
 ルイスの精液を、中に出されたことがある。ルイスが達したときに出る。そう思うと、レンの腰の動きは止められない。自分の身体で達して欲しい。中に出されたい。ルイスがメスに変えた穴に、たっぷり注いでほしい。

「っ、レンっ」

 ルイスは雄を引き抜いた。あやうくすぐに達しそうになったからだ。少しこらえて、やり返すために、レンの陰茎を扱いた。

「ひゃっ、ああんっ」
「僕が出すのはまだですよ。あいにく、レンほど元気じゃないです」

 と言いながら、レンの中にもう一度挿入する。

「あああ……」

 そして、レンが以前おねだりした奥のほうを嬲った。

「ああああああっ!!! あっ、そこぉ……!」
「ああ、いい声ですね」

 ルイスはそこを激しく徹底的に突く。腰の動きが早い。身体が激しくぶつかり、ベッドが揺れて軋む。

「ああああっ、あああっ、あっ、んああ。ルイスさっ、ルイスさん! んん、ああああ」

 喘ぎながらレンは涙をこぼした。初めての夜の激しさを思い出す。
 もう一度こうして激しく犯されたかった。
 壊されても構わない。

「レンっ、レン!」
「あああっ、ああっ、あう、ああ」
「ああっ、レンっ、ここが、いいんですね」

 前立腺だろうか。奥を突かれて、レンは頭がおかしくなりそうだった。
 真っ白になる。
 こんな淫らな喘ぎ声は恥ずかしいのに、こらえることができない。それどころか、プライドや恥ずかしさのすべてを捨てて、快感に集中して、素直に声を出したい。
 おねだりをすれば、ルイスはレンが望む以上に応えてくれるのだから。

「あっ、そこ、そこです、ああああ! そこ、好き、好きぃっ」

 ルイスはレンの感じるところを的確に引っかく。

「んっ、締めてくる」

 レンは、性の経験は多くない。それに男としての矜持もある。なのに、あの夜のように犯されたいと願っていた。
 気持ちよすぎてどうにかなってしまう。
 ルイスの欲望が荒々しく出入りする。激しい音がする。ルイスの睾丸がレンの臀部に当たる。

「ああっ、あっ、ああっ、ああっ、ああ!」
「レン! レン……!」

 お互いに汗だくだ。唾液も、我慢汁も、精液も、涙も汗も混ざり合っている。ルイスの体液を自分に注いでほしいとレンは思う。

「イく、イく、イっ……!」

 ルイスは、レンの足の裏を舐める。くすぐったいのに、身体がつながっているせいで、足の裏まで感じてしまう。全身が性感帯だ。

「ふぁ、あっ、やあ、あああっ、ああっ、気持ちい、い」
「僕もイきそうです……っ」

 ルイスはレンをかき抱いた。レンの最奥を小刻みに攻める。それに合わせて、腹の間でレンの雄を擦る。レンの口の中に舌を入れて吸わせる。レンは必死になってルイスを吸った。

「んっ、んんっ、ふ、んんん、ん」
「っ、ふ、ん……!」

 ぐちゃぐちゃになりながら、ほとんど同時に射精した。
 ルイスはレンの中で、レンは腹の間で精を放つ。
 息を整えながらルイスはいう。汗の垂れる髪を後ろに撫でつける。髪をあげると印象が変わり、レンはドキドキした。荒い息が、まだ整わない。

「レンは僕のものです」

 ルイスの雄は、レンの中でふたたび固く膨らみつつある。結合部は先ほどの激しい性交のために泡立っている。

「もう、もうだめです、ルイスさん……!」

 レンの体力は限界を迎えつつあった。ルイスは泣き言をいうレンの頬にキスをし、ビズのようにちゅっと音を立てる。

「まだ寝かせません」

 笑顔が怖いとレンは思った。
 まだ眠れそうにない。
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