VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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5ー4:黒鉄の巨兵と五人の探索者

◇191 チェーンブロー

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 黒鉄の巨兵はとにかく強かった。
 私達は何故か追い詰められると、ゴクリと息を飲む。
 こっちの攻撃は効かない。そんなの如何すればいいの?
 私は悩んでしまう中、Nightはいつものことを言った。

「とりあえず観察するぞ。動きを見破れば、必ず見える筈だ」
「そんなこと言われて……もぅ!?」

 呑気なことは言っていられなかった。
 拳を繰り出し、次の標的は私らしい。
 ピカピカと光り輝く赤い単眼のライトを浴びせられると、凄まじい速度でパンチが飛んで来た。

「あ、危なかった……」

 私は息を荒くしていた。
 パンチが繰り出された瞬間、私は右に飛んだ。
 黒鉄の巨兵の攻撃を素早く避けると、私は胸に手を当てた。

「よく避けたな、アキラ」
「なんとかね」

 って言うよりも、何だか“目で追えた”。
 もしかして、慣れてきたのかな?
 止まって見えた訳じゃないけれど、思考も動きも正確だった。

「でも、避けてるだけじゃ勝てないよ。戦うにしても、逃げるにしても、なんとかしないと」

 ちょっとだけマシなことを言った気がする。
 自分で自分を褒めると、ベルはそんな私を揶揄する。

「そんなの分かっているわよ。けれどどうする気? 観察するにしたって……って、なんでそんな必要があるのよ」

 急にベルは我に返った。
 何かに気が付いたのだろうか?
 私は打開策かもと期待するが、全然そんなこと無かった。
 もっと単純で、目の前に落ちている答えだった。

「そうよ、間合い」
「「間合い?」」
「確かに、私達は何故、黒鉄の巨兵の間合いにいるのでしょうか?」

 ベルがポツリと呟いたこと。確かにと納得できた。
 雷斬が分かりやすく答えてくれたけれど、如何して私達は、黒鉄の巨兵の間合いに居るんだろう?
 ポカンとしてしまう中、ベルは早速行動にしてみせた。

「そうよね。私の本分は、遠距離よね。こんな近くで射撃しても、意味無いわ」
「意味が無いことは無いだろ?」
「バカね。私は弓使いよ? 前線に出てどうするの?」

 ベルの言いたいことはよく分かった。
 だけど私達はベルが善戦でも全然通用することを知っている。
 幸いなことだけど、黒鉄の巨兵は何故か攻撃して来ない。
 観察しているのだろうか? 分からないことが多過ぎて困った。

「それじゃあ少し間合いから……はっ!?」
「ベル、危ない。避けて!」

 私は咄嗟に叫んだ。
 ベルは警戒しながら、単眼から放たれる赤い光から消えようとする。

 その瞬間だった。突然眩い光がベルを追った。
 同時に、ここまで使って来なかった攻撃が繰り出される。
 左腕を大きく振りかぶると、ギュイィィィィィンと金属が擦れる音が空気を叩いた。

「なによそれ、うっ……」

 ベルは間一髪の所でのけ反った。
 おかげで攻撃を躱すことはできた。
 だけどとんでもない破壊力の攻撃で、何よりも”射程距離が長い”のがヤバい。

「Night、今のって!?」
「ああ。チェーンブローだな」

 “チェーンブロー”? 全然分からない。
 だけど確かにチェーンでブローしていた。
 黒鉄の巨兵が左腕を振り抜いた瞬間、肘関節から先が外れると、中に仕込まれていた鎖が飛び出す。空気を叩いて、鞭のようにしなる。音速の域に達すると、伸びた拳がベルを追撃。
 間合いから逃れようとした瞬間、標的を即座に変更して、ベルのことを即死させようとしていた。

「あ、危なかったわ……」
「大丈夫なベルが凄いな」
「このくらい余裕……じゃないわ。マジで怖いんですけど」

 ベルはギリギリの所で直撃を回避した。
 結っていた髪を何本か引き千切られたけど無事。
 腰を抜かしてしまいそうになると、余裕な態度は消える。

「ベル、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。でも、私の反応速度でようやくって所ね」

 雷斬はベルの傍に駆け寄った。
 背中と腰を痛めたのか、手を添わせるベル。
 ベルでようやくの反応。そんなの普通の人には無理だって分かる。
 だって、ベルが自分を棚に上げるんだもん。絶対だ。

「これって、間合いから外れようとしたから?」
「だろうな」
「ってことは、逃げられない?」
「らしい。どうやら黒鉄の巨兵の視野はそこまで広くないが、視界から外れた瞬間、強制的に攻撃対象を変更して追撃して来るんだな。流石に想定外だ」

 Nightの分析はかなり的確だった。
 黒鉄の巨兵は身動き一つ取らない代わりに、遠距離にも対応できる仕掛けが施されていた。
 意外にも広い視野から外れると、逃れた相手を執拗に襲う。きっとチェーンブロー以外にも何かある筈だ。私達は身の安全のために、間合い……特に、赤い光の外には極力出ないようにする。

「……なにもして来ないね」
「そうだな。……怪しい」
「うん、確かに怪しいよね」

 何故か黒鉄の巨兵は動かない。
 攻撃を仕掛ける様子もなく、むしろジッと見つめるだけ。
 単眼が私達を凝視すると、ベルが手で顔を仰ぐ。

「それにしても、少し熱くない?」
「そうですね。地下で戦っているため、蒸してしまうのでしょうか?」

 地下はあるい。空気の出入り口がほとんど無い。
 密閉ではないのだろうが、動けばその分熱を持って、私達の息が上がる。
 だけどそれでは説明ができないくらい、唐突な熱さで、私もおかしいなと思った。

「それじゃあこのままわざと死ぬまで蒸し風呂状態なの? 嫌なんですけど」
「そんなのはごめんだ」
「ごめんって、それじゃあアイツどうするのよ!」

 ベルは言葉を荒くした。
 流石に一度死にかけているんだ。冷静にはなれないのも分かるよ。
 私達は如何することもできない強敵を相手に、ただ不満を吐露した。

「装甲も硬くて攻撃は通らない。逃げるにしても追撃して来る。そんなの……ねぇ?」
「無敵か?」
「「うっ……」」

 ベルが言いたいことは全部伝わる。
 共感してしまうのも無理ないくらいに黒鉄の巨兵は強い。変に強い。
 Nightの言う通り“無敵”。それを理解したくないけど、私もベルも口にした。

「もしかして、無敵?」
「そんなのバカ気てるわ。弱点が無いなんて、どうすればいいのよ!」

 私とベルは声を上げた。
 黒鉄の巨兵はあまりにも無敵すぎる。
 こんな相手を如何やって倒せばいいのか。
 そんなの分からなくて、困ってしまう中、項垂れる私達をよそに、Nightはポツリと呟く。

「いや、弱点は必ず……ん?」

 ここまで観察を続けてきた。
 そんなNightだからこそ、何かに気が付いた。
 ちょっとした違和感が、Nightの眉間に皺を作る。

「いや、スルーしていたが、まさかな」

 ここまでスルーして来たらしい。
 そんな訳がないと、最初から見ないふりをしてきた。
 けれどそれが間違っていたことに気が付いたのか、含み笑いを浮かべる。

「どうしたの、Night?」
「なにか分かったんですか?」

 私と雷斬が声を掛けた。
 あまりにも不気味な笑みだったから気になっちゃった。

「分かったというよりも、気にしていなかっただけだな。だが、今更思えば、それが原因……明らかに弱体化ナーフされた形跡が見られるな」

 Nightの言葉は歯切れが悪かった。
 だけど“弱体化”って言葉はハッキリと耳にする。
 そんな形跡、何処にもないくらい強いのに、一体何に気が付いたんだろう。
 私達にも分かるように説明してよ!

「Night、一人で分かった振りしないでよ」
「そうよ。ちゃんと説明しなさい」

 Nightの“一人分かってますよ”な空気が嫌いだった。
 ムッと頬を張ると、私とベルは文句を言った。
 するとNightは髪を掻き上げ、単なる仮説を話す。

「そうだな。……とりあえず、倒すぞ、黒鉄の巨兵をな」

 しかし言葉にはハリがあった。
 もしかしなくても、Nightの空気が変わる。
 何となくだけど突破口が開けた気がすると、私はNightの表情からバッチリ当てた。
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