VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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1ー2:幽幻の居城の冒険

◇36 奇襲型ゾンビ:リッター

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「あ、あれ?」

 私はぼんやりとした眼で天井を見上げていた。
 透明なグラス越しで違和感はないけれど、ふと腕を伸ばす。
 今にも手が届きそう。そんな気分になる中、ここに居ることを思い起こす。

「あっ、そっか。私、やられちゃったんだ」

 なんだか悔しいな。
 だけど、悔しいの前に何が起きたのか、全然分からなかった。
 だって、背後からの奇襲攻撃なんて、私じゃ対処も何もできなかった。

「一体どうすればよかったのかな?」

 そもそも反応できても、スキルが間に合っていたのにダメだった。
 攻撃が貫通されちゃって、私とNightはひとたまりも無かった。
 簡単に捻り潰されると、一瞬にして意識が無くなっていた。
 それで気が付いた時にはベッドの上。それが全てだった。

「はぁ、仕方ないのかな?」

 私は負けたことを忘れようとした。
 意識を切り替え、できたことに目を向ける。
 とりあえずは鎧騎士を倒せた。
 今はそれだけで達成感を貰えると、私はベッドから起き上がる。

「そう言えば蒼伊は……あっ、メッセージが来てる」

 不意に左腕の腕時計型VRドライブを見ると、メッセージが来ていた。
 誰からだろう。指でタッチすると、≪Night≫って書いてある。

「Nightってことは蒼伊からってことだよね? どうしたんだろう」

 私は送られて来たメッセージを開く。
 すると同じ分の間に幾つものメッセージが流れていた。


Night:惜しかったな

Night:まさか“リッター”に奇襲されるとはな

Night:アレは仕方がない。負けて当然だ


「リッターってなに?」

 私は奇襲してきたモンスターのことかなって思う。
 あのモンスター、リッターっていうんだ。
 何処かで訊いたことのある名前のパクリっぽいけど、一旦スルーした。


アキラ:うん、惜しかったよね

アキラ:私ももう少し反応が速かったら勝てたかもしれないけど……

アキラ:ごめんね、負けちゃった。でも、私は楽しかったよ


 あくまでも私は楽しかったと伝える。
 すると蒼伊の返信はとんでもなく速い。
 息を飲む間もなく、こんな小さなVRドライブを巧みに操り、私にメッセージを返す。


Night:そうだな

Night:とは言え、リッターを相手に油断は禁物だ

Night:レベルも31だった。策さえ練れば、勝てない相手ではない

アキラ:意識高いね、Nightは

Night:本当のことだ。とは言え、しばらくゾンビ系は懲り懲りだな

Night:私は別ゲーでゾンビを駆除させて貰う


 なんか本家っぽいことを示唆してる。
 私はなんって返せばいいのか分からなかったけど、蒼伊を応援することにした。
 結局、私達は負けたんだ。幕引きとしては、今の所はこれでいいのかもしれない。
 そう思わせてくれると、私はベッドに仰向けで倒れる。

「奇襲型のゾンビか。そんなのまでいるんだ。しかもAIが搭載されているんでしょ? 次戦う時は、もっと強いのかな?」

 正直、シャンベリーに行くことはしばらくない。
 私も懲り懲りで、レベル差も圧倒的だ。
 とは言え、鎧騎士を倒したおかげで私のレベルも上がってくれた。
 次はもっと上手くできそう。私は胸の前で手を握ると、ソッと瞼を閉じる。

「でもどうしよう。結局、ソウラさんへの借金は返せない……はぁ」

 私は溜息を付いてしまう。
 だって、ソウラさんの所に行って事後報告しないとダメだ。
 Nightも一緒に……行ってくれないよね?
 私は自分で掘った穴を埋めないといけなくなったことに悲しくなる中、今日はもう疲れたので寝ることにした。就寝時間、午前一時を回っていた。


「ってことがあったんです」
「まあ、それは大変だったわね」

 私は次の日、早速アイテム屋:Deep Skyにやって来ていた。
 ソウラさんがいつも通りエプロンを着けて接客している。
 とは言え店内には私以外は誰もおらず、マンツーマンで話していた。

「それにしてもシャンベリーって怖いのね。今のままじゃ絶対に行っちゃダメだわ」
「それは確実です。私もNightもやられちゃって」

 やられたとは言っても、真正面からやられたんじゃない。
 注意不足の奇襲攻撃。
 悔しいし負けを認めたくないけど、認めないとダメだ。
 それくらい強敵で、私は痛いくらい痛感した。

「奇襲型のゾンビって、リッターよね?」
「は、はい! Nightはリッターって言ってました」
「ふーん、リッターは痛覚機関が遮断されたゾンビって言われているから、捨て身攻撃もしてくるのね」
「えっ、ゾンビって痛覚残ってるんですか!?」
「えっ、痛覚は無いけど、反射的な行動はするわよ」

 知らなかった。つまりあの時、聖水を被ったゾンビ達は苦しんでいたんだ。
 それはゾンビとしての反射的な動き。
 なんだか悪いことをしたなと思った半面、自分達がやられた時のことを思い起こす。

「あの、プレイヤーがやられた時ってどうなるんですか?」
「どうって?」
「その、体を貫通されて……その時、痛みは一瞬感じた後は、ほとんど無くて……あれ?」

 私は自分で言っていて気が付いた。
 そうだ。あの時、あの瞬間、良くは思いだせないけど、痛みが走った。
 とは言えその痛みは本当に一瞬で、理解が追い付く前に消えていた。
 そのまま視界がブラックアウトすると、私はベッドの上で……

「もしかして、あれが……」
「それが答えよ。一瞬の激痛。その感覚は脳は覚えていないかもしれないけど、体は覚えている。だから次からは負けないようにしようって、本能が訴えるの。ねぇ、面白いでしょ?」

 面白いの前に、リアリティがありすぎて怖かった。
 今度戦う時はどうしよう。
 私は今から考えを巡らせる中、とりあえず上手い具合に本題を逸らすことには成功していた。

(このままなんとか返済の話は……)

「ところでアキラ、シャンベリーでなにか得るものは合ったの?」
「えっ!?」
「そんなに驚かなくてもいいでしょ? なにか得られるものはあったの?」

 やっぱり来た。訊かれてしまった。
 私はテンパってしまうも、ここは意識を切り替える。
 得られたもの、得られたもの。そう、あれは……貰ったもの?

「えっと、たくさんの経験が得られました」
「け、経験?」
「はい! たくさんの経験と思い出と、後は……約束です」
「約束? また変わったものね」

 確かに変わっていると言えば変っていた。
 ソウラさんは面を喰らってしまっている。
 もっと具体的なものが聞きたかったんだろうけど、今は答えられない。
 ううん、答えたくなかった。そんな気持ちを抱えたまま、私は笑顔で対応した。
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