VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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1ー2:幽幻の居城の冒険

◇37 期待できるプレイヤー

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 私は上手くはぐらかしながらソウラさんと喋っていた。
 だけどソウラさんはどうしても気になるのか、何度も同じことを訊ねる。

「それでアキラ」

 流石にもう限界だ。
 私は謝らないとダメだと悟り、ソウラさんに謝る。

「ごめんなさい、ソウラさん!」
「えっ、どうして急に謝るの?」
「それは、その……ごめんなさい」

 とにかく私には謝ることしかできない。
 だって、ドロップアイテムがなにも得られなかった。
 あんなに頑張ったのにだ。何の成果も得られなかった訳じゃないけど、物的なものは何も無い。得られたのは形の無いものばかりで、私にはどうやっても返すことができなかった。

「ソウラさん、あんなに聖水を売って貰ったのに、私はなにも返せなくて……」
「返せないって、なにも得られなかったんでしょ?」
「は、はい……」
「それならいいわよ。すぐに返して貰わなくれも、私は気にしないから」

 そう言うと、ソウラさんは話を纏めてくれた。
 私はソウラさんの優しさを噛み締める。
 ホッと胸を撫でる。かと思えば、ソウラさんに見越されているようで、私は不思議な気持ちになった。

「あの、ソウラさんって、“心が読めたり”……」
「読めるって、答えたらどうするの?」
「えっ!? 本当に読めるんですか!」
「ふふっ。読めても読めなくても、私は変らないわよ。ただ言えるのは、私はアキラに期待しているってことなの。どうかしら?」
「へ、変な期待は止めてくださいね……」
「ふふっ。そう思わせてくれるのは、アキラの良い所よね」

 ソウラさんは終始掴めない。
 だけど私に変な期待を寄せている。
 まるで波のようで、私は飲み込まれないようにするも、ソウラさんは口を開く。

「あっ、それじゃあ代わりに私達の依頼を引き受けてくれるかしら?」
「い、依頼ですか!?」
「ええ、そうよ。でも今は無いから安心して」
「安心してって……難しい依頼は止めてくださいね」
「分かっているわよ。それじゃあ、これからもよろしくね」
「はい!」

 なんだろう、良い具合に言いくるめられちゃった。
 私はソウラさんの言葉に丸められる。
 もうこれは引き下がれない。私は面倒な予感はしつつも、繋がりは大事にしようと考え、依頼を受ける羽目になってしまった。

「まあ、いっか」

 とは言え、私もそれでよかった。
 心の穏やかさを取り持つと、私も納得ができる。
 結局、何も得られななかった訳じゃない。隠しダンジョンはまだ遠い存在だけど、楽しかったから良いことにした。



 キーボードを打つ音が消えた。
 チェアに腰掛け、私は一度休憩を取ります。

「ふぅ。コーヒーでも淹れましょうか」

 私は棚の上に放置されたままのティーカップを見ました。
 隣には今もドリップ中のコーヒーメーカーが置いてあります。
 私以外が口にすることはほとんど無い、苦みの強いコーヒー豆を挽いています。
 そのせいでしょうか、疲れた時、私のことを内側から起こしてくれます。

「うん、良い香りですね。皆さんも飲んでくださって構わないのですが、気に入らないのでしょうか?」

 私はティーカップにコーヒーを注ぎました。
 まずは香りを楽しみ、次に舌でその味を吟味する。
 すると口の中一杯に芳醇な苦みがベールを纏った素の巣の姿を露わにし、私の前に姿を現してくれました。つまり、私に合った味なのです。

「まあ、人の好みも千差万別。とても良いことではないですか」

 私は達観した姿勢を見せました。
 実際、私が求めているのは、それぞれが持ち味を活かせる世界。
 千差万別の色を持っているからこそ、個人と言うものは成長し華を咲かせるものです。

 ピピピピピピピピピピピピピピピ!

「ん?」

 私は腕時計型VRドライブが鳴りました。
 気になって画面を拡大し、宙に表示します。
 そこには私の友人の名前が表示されていました。
 もちろん、個人のものではなく、アカウント名です。

「はい、なんでしょうか?」
「あっ、オーナー! 今大丈夫?」
「ええ、問題ありませんよ。それでどうかしましたか?」
「うんうん。なんでも無いよ?」

 何でもない。ただの気まぐれと言うことでしょうか?
 とは言え、“オーナー”呼びと言うことは、仕事の斡旋でしょうか?
 それともいつものように、新作を卸してくれるのでしょうか?
 どちらにしても楽しみです。私は凛々しい態度を取ります。

「それよりオーナー、CU調子が良さそうだね」
「ええ、企業からの広告やマーケティングにも重宝していますが、少なからず支障も出ていますね。ほとんどAIで管理しているとはいえ、人体に影響が出る方もいて……」
「えー、じゃあもみ消してるの?」
「いいえ、それも契約の内ですから。利用者の方達には申し訳ないと思いますが、それも仕方がないことです」

 実際、絶対の一%に満たないとはいえ、影響が出ている事例ケースもあります。
 それこそ、健康被害を訴えている方や、生活に支障をきたす場合も含めてです。
 ですがその全てを管理することなど不可能です。
 私は自分自身の身の丈を理解しているからこそ、万が一に備え契約書に赤字で警告していたのです。そのおかげでしょうか、被害報告は出ていても、それ以上の事態にはなっていません。

「オーナーの作るゲームって、余りあるくらい凄いもんねー。でも、どうしてオーナーってそんなに……」
「貴女から私に詮索をするのは身のためになりませんよ」
「はい、分かってます。だから私が連絡を取ったのは、オーナーのことじゃなくて……CUで面白いプレイヤーを見つけたんです」

 面白いプレイヤー?
 彼女の思う面白いプレイヤーと言うことは、単一的に輝きを持っていると言うことでしょうか?
 私は考えを巡らせましたが、その前に彼女は話してくれました。

「オーナーは私がデザイナーだって知ってますよね?」
「勿論ですよ。貴女がデザインした洋服は、ほとんど私が経営するブランドで取り扱っていますからね」
「ってことですよ!」
「なるほど。つまり貴女の洋服のセンスに引っかかるようなプレイヤーがいたと言うことですね」
「はいはい! そう言うことです。やっぱり面白いプレイヤーっていますよね。オーナーはいますか、お気に入りのプレイヤー」

 ゲームの開発元である会社の社長を務める私が、誰か一個人を贔屓にするのはあまりよろしくありません。
 ですが私も人間です。個人を贔屓……もとい、期待したくなるのは当然のことです。

「ええ、いますよ。とても期待できるプレイヤーが」
「へぇー、会ってみたいです」
「いずれ会えると思いますよ。もしかすると既に会っているかもしれません」
「うわぁ、予言なにかですか!? それがオーナーのマジカルですか!?」
「さぁ、どうでしょうか? 少なくとも、勝手な期待を私自身が寄せているだけですよ」

 そうだ、これは私が勝手に寄せている期待。
 つまり烏滸がましいものだろう。
 それが分かっていても、人は誰かに期待をしてしまうもの。それを噛み締めて生きて行くのです。

「それではアンジェリカさん。また今度現実で」
「はい、オーナー」

 私はデザイナー:鹿山アンジェリカさんとの通話を切りました。
 全く突然掛けて来るものですね。
 でも私は有意義な時間を使ったと思います。

「本当に期待してしまいますね」

 私はチェアに腰を落ち着かせると、コーヒーを一口飲みました。
 窓の外、広がる景色。
 そこに映る私はどうなのか。例えなんであったとしても、私のやることは変らないのだと、心に留めておきました。それが私、安城エルエスタなのだから。
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