VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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4ー1:風が舞い込んで

◇123 圧倒的精度

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「ここが皆さんのギルドホームですね。初めてギルドホームを拝見しましたが、近未来的なのですね」
「そうですね、雷斬」
「ええ、ベル」

 私達はポカンとしてしまった。
 何だか雷斬を二人見ているように感じる。
 けれど私は気が付いていた。ベルさんは無理をしているような感じがした。

「あの、ベルさん」
「なんですか? アキラさん」
「えっと、アキラでいいよ?」
「では、私のこともベルで構いませんよ。それでどうかされましたか?」
「無理してるよね?」
「……はい?」

 私はベルに訊ねるが、急に空気が変わった。
 ベルの顔色が明らかに悪くなると、私のことを睨んでいる。
 何だろう、何かマズいことしたかな?
 私は空気が読めてないと感じると、Nightが割って入る。

「そんなことはいい。とりあえず私はNight、こっちがアキラ、ソレがフェルノ」
「「こっち?」ソレ?」
「どうでもいいだろ」
「「どうでもよくない!」」

 いつものダラダラとしたノリが出てしまった。
 するとベルは一瞬だけ素に戻ったように呆然とする。

「ベル、やっぱり無理して……」
「それはいいではないですか? それより話は伺っています。早速向かいましょうか」
「切り替えちゃった……そうだよね。行こっか」

 ベルが気にしているのなら無理に口を挟むのもよくない。きっと何か事情があるんだ。
 私達は早速タイコモリ―に向かう。
 そんな中、雷斬が私の肩をポンと叩いた。

「アキラさん」
「雷斬どうしたの?」
「ありがとうございます。やはりアキラさんは気が付かれたみたいですね」
「ん?」

 一体なんのことを言っているんだろう。
 私は分からないふりとかじゃなくて、普通に首を捻ってしまう。
 しかし雷斬に「お願いします」と謎発言を受け、私は混乱してしまった。



「ここがタイコモリ―ですね」
「そうだよー。でさ、たまーに飛んでるんだよねー」
「たまに飛んでいる……そうですね、聞こえてきます」

 ベルはソッと目を閉じて耳を澄ます。
 すると先程まで吹いていなかった風が吹き、何処からか翅音を届ける。
 ギュンギュンと鼓膜が痛くなると、私達は顔を背けた。

「急に音が聞こえたよ!」
「コレはなんだ。お前のスキルか、ベル」
「はい。私の種族は<シルフィード>。四大精霊が一つ、風のシルフの亜種です。種族スキルは【風招き】と言います」
「「【風招き】?」」
「なるほど。お前の場合は風の風量を自由自在に変化させる種族スキルか」
「「強い!」」

 人によって種族スキルや固有スキル変わる。
 同じような固有スキルでも微妙にできることは違う。
 それと同じように種族スキルも異なっている。だからこそ面白くて、個性がより濃く出る。

「それによりますと、この先……二百メートル程先……ではないですね」

 ベルが一点を見つめている。
 この先にメガビブラートがいるのかもしれない。
 もちろんまだどんな姿か図鑑でしかベルは知らない。
 それでもある程度の目測を立てると、背中に背負っていた折り畳み式の弓を取り出す。

「ベル、それは?」
「私の武器です。名前は蜉蝣羽かげろうばねです」
「カッコいい」
「ありがとうございます。では皆さん、少し離れてください。構えますから」

 ベルは迷うことなく弓を構えた。まさに職人だ。
 この道をずっと通って来たのが窺える凛とした立ち姿。
 つい見惚れてしまうと、矢の入った矢筒から一本矢を取り出す。
 軽くて丈夫。鏃が黒く尖っている。
 
「カッコいい、もしかして見えてるのー?」
「いいえ、見えませんよ?」
「見えて無いのに、射抜けるのか?」
「ふふっ。もちろんですよ」

 ベルは何故かほくそ笑んでいた。
 一体何処から来る自身なのか、私は考えてみる。
 すると先程の種族スキルが答えだと気が付いた。

「もしかして、【風招き】?」
「……」
「当たっちゃった!?」

 確かに【風招き】ならできなくもないかも?
 よく分からないけれど、風の抵抗が完全に無くなる。
 つまりは理論上、ベルの射た矢は何処までも飛ぶ。それを体現するように全身を使って弦を引いた。

「ベル、頑張ってください」
「かなり遠くから応援している雷斬に言われたくはないですがね」
「うっ」
「「「……」」」

 雷斬は未だに離れている。木の影に隠れて応援している。
 そんな中、ベルは引いていた弦を放す。
 矢が飛んで行くと、木々の合間を抜けて飛ぶ。その速度は衰えない。ましてや落ちもしない。何処までも真っ直ぐに、あらゆる抵抗を突っ切る。

「すごっ!」
「流石の腕……あと精度だな」
「「精度?」」

 私とフェルノはただただ凄いと感じた。けれどNightはそれだけじゃない。
 ベルの射た矢は圧倒的な精度を誇っている。
 もちろん私達はポケーッとしたけれど、矢が飛んで行った先、何かにグサリと突き刺さる。

 バキッ!

「当たった!?」
「なにかには当たりましたね。見に行きましょうか」
「待って待って、それ凄すぎじゃなーい?」

 淡々と進めるベルをフェルノは止めた。
 普通に考えてこんな芸当出来っこない、
 腕を掴まれ面倒そうにするベルの顔が一瞬見えると、フェルノは顔を詰める。

「ベルって、【風招き】をどう使ったの?」
「……えっと、標的の位置を風で囲っただけですが」
「本気か? そんな真似、お前にしかできないだろ」
「そうですね。ですから私の誇りです」

 何となく私の予想は当たっていた。けれど本当にそんな真似をしてみせるなんて。
 私はドン引きしてしまいそうになるが、ベルはソッと腕を払う。
 屋の行く先を追いかけようとすると、スッと手を挙げた。

「それでは私が見てきますね」
「ベル、一人で行くの?」
「大丈夫ですよ、皆さんはここにいてください」

 そう言うと、ベルは一人で矢を回収しに向かう。
 それだけじゃないのは、仕留めた筈のメガビブラートを採取しに向かった。
 如何やら虫が触れるらしい。本当に凄いなと思ったけれど、雷斬は心配そうだ。

「ベル……」
「雷斬、やっぱり気にしてるのかな?」
「「ん?」」

 Nightとフェルノは気が付いていないらしい。
 けれど私には雷斬の思う所が少しだけ分かる。
 このままはダメ? そうとは思わないけれど、心配になったのでベルを追いかける。

「ちょっと行って来るよ」
「えっ、アキラ?」
「心配だから。なにか、無理してそうだから」

 私はベルを追いかけることにした。
 ここは雷斬もいるからきっと掻い潜れる。
 そう信じると、なにも無いことを願っていた。

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