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◇286 薙刀フォームとてんぱり具合

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 雷斬からのお墨付きを貰い、アキラはフェルノと顔を合わせた。
 それを確認したNightは【ライフ・オブ・メイク】で強力なワイヤーを作った。
 先程の物よりもより頑丈で、かなり分厚かった。

「まずはコレを引っ掛けろ。今度は動きを殺すんだ」
「動きを殺す? つまり足に引っ掛ければいいんだね?」
「そう言うことだ。それとクリスマスボアは図体がデカい分、素の体力が多い。しかも脂が多くてまともな斬撃は入らないはずだ。そこでだ。あえて急所からの一撃を叩き込め」
「「急所からの一撃?」」

 二人は首を捻った。
 するとNightは背中に背負っていた十字架状の剣をアキラへと手渡した。

「コイツを使って串刺しにしろ」
「えっ、えええええっ!?」

 急な無理難題を突き付けられた気分だ。
 しかしNightには確証があった。

 アキラとフェルノは困惑した。
 如何やって串刺しにするのか方法が見つからなかった。

「ね、ねえNightさん? 如何やって串刺しにするのかな?」
「はぁ? いつも通りだ」
「「いつも通りって何!?」

 Nightはさも当然のようだった。
 しかしアキラとフェルノは少し考えてしまった。
 だけど見当がつかなかった。いつも通りが多すぎて、どのいつも通りなのかが分からなかった。

「決まっているだろ。二人にしかできないことだ」
「私達にしかできないこと?」
「ああ。お前たちの戦闘区域は地面だけじゃないはずだ」

 そう言うとNightの視線の先を追った。
 アキラとフェルノは全てを察した。
 「ま、またかー」と思いながらも、それならできるかもと思い始めてしまった。

「と言う訳だ。頼んだぞ」
「な、何でNightは何もしないの?」
「雷斬を無防備な状態で放置できないだろ。それに……私は空を飛べない。そんなスキルじゃない」

 Nightはアキラたちに説明した。
 しかしアキラは密かに思ってしまった。

(【ライフ・オブ・メイク】なら何とかなるんじゃ……)

 と、野暮なことを想像した。
 そう思っている間にも背後からはカキーンカキーンと刃が擦れた音がした。

「ほら、ベルは頑張ってるぞ。とにかく行って来い!」

 Nightに背中を押されてしまった。
 もう引き返すすべはなく、アキラとフェルノもベルの下へと駆け寄った。

「ベルごめん!」
「遅いわよ。こっちはこんなにボロボロなのに……」
「ボ、ボロボロ?」

 ベルは自分のことをボロボロと表現した。
 しかし頬に傷が入っていて痛々しいが、それ以外には怪我もしていなかった。

 ポーチの中からポーションを取り出した。
不味い代わりに効力はかなり高いので、一瞬で傷が癒えてしまった。
しかしポーション類は味覚への刺激が強いので、連発で飲むことはできなかった。

「うっ、不味い……」

 ベルは吐きそうになっていた。
 口元を服の袖で拭き取り、空になった小瓶をポーチの中に突っ込んだ。

「これでHP全回復ね」
「それじゃあベル。はい、コレ」
「何コレ? ワイヤー? 私に何をさせる気なの?」

 ベルは怪しんでいた。
 急にワイヤーを渡される辺り、Nightが何かしらのことをしようとしていた。
 そこまで察したベルは後悔した。
 前衛を買って出た代わりに危険を押し付けられてしまった。奥歯を噛み、ムッとした表情を浮かべた。

「最悪」
「そんなこと言わないでよー。って感じで、頼んだよ」
「頼んだって何!? これから何をする気なのよ!」

 ベルは未だに付いて行けなかった。
 しかしフェルノはただ一言告げた。

「健闘を祈るとか言っておくよー」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 ベルが叫んだ。その瞬間、フェルノが地面に拳を打ち付けた。
 地面に薄っすらと亀裂が入った。乾燥しているおかげで炎が浸透してくれた。

「とりあえず誘導するよー」
「誘導って、まさか!?」
「そのまさかだよ。ベル、お願いね」

 アキラはポンとベルの肩に手を置いた。
 激励を贈るとベルの唖然とした顔が飛び込んできた。

「ちょっと待ちなさいよ。フェルノ、これって貴女の……」
「はいはーい。そんな余裕ないからねー。もう来るよー」
「ええっ!?」

 ベルは驚いてばかりだった。
 前衛でしか見えない景色が広がっていた。

 ドッドッドッドッドッ! 
ゴッゴッゴッゴッゴッ!

クリスマスボアが向かって来ていた。
フェルノの出した炎が熱かったからか、それとも視線をチラつかせたからかは分からなかった。

しかしクリスマスボアは怒りの炎を燃やしていた。
効き足で地面を抉り取りながら助走を付けていた。

先程よりも断然威圧感が違った。
これはマズいとベルの脳裏に危険信号を鳴らした。

「ちょ、ちょっとこれは……」
「来るね」

 フェルノが「待ってました!」とばかりに平然と口にした。
 ふと視線を上げると、全長十メートル。高さはビルの三階くらいのとんでもない猪が走って来ていた。

「む、向かって来てる!?」
「全衝撃が掛かるかもしれないから、ちゃんと張っておいてね」
「衝撃? 張る? ああなるほどね。って一発本番なの!?」

 ベルはここに来てあわあわし始めた。
 しかしそんな時間はもう残されていなかった。
 目の前には青い体毛と白くて巨大な牙を引っ提げた猪が迫っていたからだ。

「それじゃあ行くよ。三、二、一……零」

 アキラが数を数えた。
 直後、クリスマスボアが目の前、鼻先が付くような距離にまで迫っていた。
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