モブのモブ!? 気付いたら、大好きなアニメの世界だった!?

SORA

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部屋に入って来たヘクターは真っ直ぐ私とエリオットの前に来ると、エリオットに握られた手を離した。

「ヘクター?」

「…話を聞いていたのか?」

エリオットがヘクターにそう尋ねるとヘクターは首を横に振った。
どうやら話の内容は聞いていなかった様だ。

「…何となくマーガレットが危ない気がした。」

「「…。」」

ヘクターの一言でエリオットと私は思わず顔を見合わせた。

え…? 野生の勘?

エリオットはヘクターに危険人物だと思われているのだろうか。今もエリオットから守る様に私の前にいてくれている。

「ふふ愛の力ね!素敵よヘクター。」

「あ、愛っ!?」

「あらマーガレットちゃん。ヘクターは貴女が大好きだもの。ねえ?」

ヘクターはグレース様のその一言に首を縦に振った。

「!」

グレース様の言葉を肯定したヘクターに動揺する私に、微笑みかけながらグレース様は若いっていいわね!とそのやり取りを見ていた。

「…へえ、そうなんだね。」

「…。」

意味深な目でヘクターを見つめるエリオットの射抜く様な視線に一気に部屋の温度が下がった気がした。

ヘクターもそんなエリオットから私を隠す様に前に立って、眉を寄せて不快感を露わしている。
 
何でそんなに険悪なの!?

そんな二人を見ていたグレース様が戸惑いを隠せずにいる私に気付いてくれた。

「二人ともそんなに恐い顔するとマーガレットちゃんに嫌われちゃうわよ~!」

「「!!」」

「それにエリオットもヘクターもしなくてはいけない事があるでしょう?」

「そうですね…。すみませんでした。」

「…すまない。」

「い、いえ…。」

グレース様に諭されバツが悪そうに私に謝ってくれる二人に、私は眉を下げて笑みを浮かべる。

「私はもう行くよ。ブラン嬢からの貴重な情報だ、必ず役に立てよう。」

「…お願いします。」

エリオット様は私を安心させる様に微笑みながらそう言ってくれた。

「私もそろそろ帰ります。グレース様、エリオット様聞いて下さってありがとうございました。」

「そうね、大分遅くなってしまったわね。」

「マーガレット、家まで送る。」

「…ありがとう、ヘクター。」

思いの外グレース様のお邸に長居してしまった私は、帰ろうとグレース様達に挨拶をして立ち去ろうとするとヘクターが手を取った。

先程のグレース様の言葉を思い出し頬に熱が集まる。

「ああヘクター。ブラン嬢を送ったらそのまま私の所に来てくれ。」

「わかった。」

エリオットはヘクターにそう告げると部屋を出て行った。一瞬此方に目線が合って、〝任せて〟そう言っている様な気がした。

「行こうマーガレット。」

「ええ。グレース様、失礼致します。」

「またいらっしゃい。ヘクター、マーガレットちゃんを頼みましたよ。」

しっかりと頷いたヘクターと共にグレース様のお邸を後にした。


馬車に乗り家に向かう私の手には、エスコートしていたヘクターの手が離れずしっかりと握られていた。

私が離そうと手を動かすと、ヘクターは離さないと言わんばかりに更にギュッと握り返す。
痛くないけれど正直恥ずかしい。

ヘクターの手が少し硬くて私の手より大きくて、男の人なんだと意識してしまう。

「あ、あのヘクター?手を…。」

隣に座るヘクターをそろりと見上げながら言うと、私を見たヘクターが目を大きくした。
恥ずかしさで泣きそうになる私に、ヘクターは満足そうな顔をしてニヤリと笑った。

「…嫌だ。離さない。」

「なっ…!?」

唖然とする私を他所に、ヘクターは馬車の外を眺めて結局ヘクターは家に着くまで、私の手を離す事はなかった。

馬車を降りると優しい風を身体に受けた。

ヘクターに手を握られっぱなしで、ドキドキし過ぎて真っ赤に染まっているだろう頬には外の風がとても心地よく感じた。

「…送ってくれてありがとう。」

「…マーガレット。」

ヘクターにお礼を告げると、何か言いた気にギュッと手を握られた。

「さっき…。」

「ヘクター?」

「さっきグレース様が言った言葉は、冗談じゃない。」

熱を含むヘクターの瞳から目が反らせない。

「マーガレット、貴女が好きだ。」


〝好きだ〟


ヘクターの真っ直ぐな言葉が私の動きを止める。

ヘクターが…私を?

私は唐突にヘクターの言っている意味を理解して、やっと引いた熱が一気に集まる。

「わ、私…っ!!」

「…忘れられない奴がいるのもちゃんと判ってる。」

「…っ!!」

戸惑う私の気持ちを察する様にヘクターはちゃんと判ってると私を見て頷いた。

そんなヘクターの優しさに胸が締め付けられる様に苦しい。

「忘れろとは言わない。」

「ヘクター…。」

「俺は其奴を忘れられなくても構わない。」

真っ直ぐ私を熱い瞳で見ながら告げたヘクターは私を抱き寄せた。

ヘクターの気持ちが抱き締められた温もりを通して〝貴女が好きだ〟と強く伝わって来る。
ヘクターの真っ直ぐな気持ちが素直に嬉しかった。

それでも胸が痛むのは、私の中の〝彼〟をクラウスを忘れられない捨てきれない想いがあるからだ。

「俺は本気だから。その事を知っておいてくれ。今はそれで良い。」

ヘクターはそう言って抱きしめる腕を一瞬ギュッと強めると、名残惜しそうに私を解放した。

それじゃあ、と手を上げて立ち去るヘクターの後ろ姿を見送っていると、ポタリと雫が頬を伝うのに気付いた。

私…。私は……。


答えられない想いと、忘れられない想いが混ざり合って止め処なく溢れ落ちていた。



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