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嵐の様に去って行ったドウェインとヴァルの二人を、呆然と見届けていた私をいち早く見つけたのはシーラだった。
反対側に見えていたエリオット達は私には気付かなかった。
それはそれでとても助かった。
ドウェインとヴァルと一緒にいた事を聞かれても上手く答えられそうも無いから。
どうにかエリオット側に引き込む事が出来ればいいのだけど、その方法さえ探せずにいるのに、さっきみたいな軽率な行動は違う疑いをかけられてしまい兼ねない。
気をつけなければ…。
シーラ!?何処から出て来たの!?
「シーラ…。」
気配を全く感じなかったシーラに驚いた私の心臓は凄くドキドキしている。
「ああ!良かった!マーガレット探したのよ?会場にも何処にもいなかったのだもの!」
「…ごめんなさい、迷ってしまったの。」
「見つかって良かったわ。…それで?」
「え…?」
私を見つけて安堵の表情を浮かべていたシーラに謝ると、シーラは笑顔の筈なのに目が笑っていない。
な、なんでこんなに怒ってるの!?
「さっきの二人のは誰かしら?」
「!?」
「貴女を泣かせていたのはあの二人?」
「!!?」
シーラの告げた言葉に私は目を見開く。
怒ってるのそれ!?というかいつから見てたの!?
驚きのあまり言葉を失っていた私の手をそっと握って、私の持っていたハンカチに気付いた。
「…それルクス家の家紋が刺繍されてるわね。ドウェイン様かしら?」
「!? シーラ、このハンカチの方を知っているの?」
「ええ、何度か街や夜会でお会いしてるわよ?」
シーラはハンカチに刺繍されていた家紋を見ただけでドウェインだと言った。
まさかもうシーラとドウェインが出会っていたなんて…。
やはりストーリーが本当に自我を持っていると言うのだろうか。シーラとドウェインの出会いの場所が違う事がその証拠なのかもしれない。
困惑しながらも、やっぱり早めにドウェインを王太子派から手を引かせなければと改めて思った。
「…ドウェイン様と言うのね。」
シーラにはまだ〝知ってる〟事を黙っていようと決めた私は初めて会った事にする。
まあ、実際今日が初めて会ったのだけど…。
「ええ、とても好印象の素敵な殿方だと記憶してるけど…彼に何かされたのではないのよね?」
「ええ、迷っていた所を助けてもらったの。」
「…じゃあ、その涙の訳は?」
涙の跡をなぞる様に私の頬を指の背でなぞって問い詰めるシーラは、その説明は納得しないらしい。
目が笑っていないシーラに〝殺気を込めた目で見られた〟なんて口が裂けても言ってはいけない気がして私は小さな嘘を吐く。
「迷って不安になっていた時、声をかけられて驚いたのと安心したので涙が出てしまったのよ。」
「それでドウェイン様がハンカチを…。」
「ええ。」
その説明に納得してくれたシーラはハンカチを見た。
「そう…無事で良かったわ。けれど、オルセンは何をしてるのよ。エスコートは任せろって言っていたのに…。」
「シーラ?」
シーラは安心したと笑みを浮かべた後何かを呟いていたけれど、それが私の耳に届く事はなかった。
首を傾げる私にシーラはなんでもないわ、と微笑んで会場に戻ろうと私の手を引いて案内してくれた。
◇◇◇◇◇
化粧を直して会場へ戻ると、戻って来ていたケヴィンとホリーが出迎えてくれた。
これはストーリー通りいい雰囲気なのでは?
心の中でケヴィンとホリーの二人を微笑ましく思っていると二人は顔を見合わせた。
「お姉様、勘違いしないで下さい?」
「え?」
「俺とホリーはお互い協力する事にしたんだ。」
私の考えを読んだのか、可愛らしく頬を膨らませながらホリーがそう言うと、ケヴィンが付け足すように告げる。
「協力?」
私が首を傾げていると、シーラは初めから判っているのか眉を下げて微笑みながら様子を伺っている。
「そうです。お姉様をあのクラウス様には渡しませんから。」
「渡さないって…。」
「マーガレット嬢がクラウスに好意を寄せているのは知ってる。」
「!?」
ホリーとケヴィンの爆弾発言に私は目を見開く。
何で知ってるの!?
「大好きなお姉様の事くらい判ります。」
「ずっと見ていたからな。」
「え…あっ!?」
二人にそう言われて思わずシーラを見ると、困った様に眉を下げながら笑みを浮かべた。シーラの肯定ともとれる仕草に、羞恥で顔全体に熱が集まるのを感じて、言葉を発せずにいる私を見つめる二人。
「お姉様、ヘクターお兄様に思いを告げられたのでしょう?」
「!?」
「マーガレットお姉様が大好きなので私はお兄様との恋を応援します!だからクラウス様には渡せません。」
固まっている私にホリーはそう告げると天使の様な笑みを浮かべた。けれど目が笑っていない。
というか、ヘクターに言われた事を何故知ってるの!?
困惑した私に手を差し伸べて来たのはケヴィンだった。
「マーガレット嬢、ヘクターに先を越されたけれど俺も貴女が好きだ。ずっと昔から。」
「ケ、ケヴィン様っ!?」
ケヴィンの突然の告白に私はどうしていいか判らずに、その手を取る事が出来ないで狼狽えてしまう。
「貴女に異性として見られていないのも判ってる。ヘクターは俺と同じ歳だ。けれど異性として見てるんだから、俺の事も嫌でも意識してもらうと思う。」
「…。」
「マーガレット嬢が誰を思ってるかは判ってる。隙がある内は…それまでホリーと協力してクラウスとの事を邪魔させてもらう事にした。」
そう言って少し強引に手を取ると私の手の甲に口付けしたケヴィンは、私を見て悪戯な笑みを浮かべた。
「っ!?」
顔から火が出るのではないかと思う位に、熱くなった顔を両手で抑えると、シーラはケヴィンに良くやった!と満足気に頷いていた。
「す、少し風に当たって来ます…。」
「一人は危険だ。」
「だ、大丈夫ですよ。ほら、見える位置ですから…。」
「あ、ちょっと!マーガレット?」
火照った体を風に当てようと思い、バルコニーを指差して一人フラフラと歩いて行く。
シーラが呼び止めようとしていたけれど、色々と頭が混乱していた私は少しだけ一人になりたくて足を進めた。
ケヴィンが私を?ホリーと協力?
一体何故そうなった!?
ストーリーは何処へ向かっているの?
私の思考は完全にキャパを超えようとしていた。
反対側に見えていたエリオット達は私には気付かなかった。
それはそれでとても助かった。
ドウェインとヴァルと一緒にいた事を聞かれても上手く答えられそうも無いから。
どうにかエリオット側に引き込む事が出来ればいいのだけど、その方法さえ探せずにいるのに、さっきみたいな軽率な行動は違う疑いをかけられてしまい兼ねない。
気をつけなければ…。
シーラ!?何処から出て来たの!?
「シーラ…。」
気配を全く感じなかったシーラに驚いた私の心臓は凄くドキドキしている。
「ああ!良かった!マーガレット探したのよ?会場にも何処にもいなかったのだもの!」
「…ごめんなさい、迷ってしまったの。」
「見つかって良かったわ。…それで?」
「え…?」
私を見つけて安堵の表情を浮かべていたシーラに謝ると、シーラは笑顔の筈なのに目が笑っていない。
な、なんでこんなに怒ってるの!?
「さっきの二人のは誰かしら?」
「!?」
「貴女を泣かせていたのはあの二人?」
「!!?」
シーラの告げた言葉に私は目を見開く。
怒ってるのそれ!?というかいつから見てたの!?
驚きのあまり言葉を失っていた私の手をそっと握って、私の持っていたハンカチに気付いた。
「…それルクス家の家紋が刺繍されてるわね。ドウェイン様かしら?」
「!? シーラ、このハンカチの方を知っているの?」
「ええ、何度か街や夜会でお会いしてるわよ?」
シーラはハンカチに刺繍されていた家紋を見ただけでドウェインだと言った。
まさかもうシーラとドウェインが出会っていたなんて…。
やはりストーリーが本当に自我を持っていると言うのだろうか。シーラとドウェインの出会いの場所が違う事がその証拠なのかもしれない。
困惑しながらも、やっぱり早めにドウェインを王太子派から手を引かせなければと改めて思った。
「…ドウェイン様と言うのね。」
シーラにはまだ〝知ってる〟事を黙っていようと決めた私は初めて会った事にする。
まあ、実際今日が初めて会ったのだけど…。
「ええ、とても好印象の素敵な殿方だと記憶してるけど…彼に何かされたのではないのよね?」
「ええ、迷っていた所を助けてもらったの。」
「…じゃあ、その涙の訳は?」
涙の跡をなぞる様に私の頬を指の背でなぞって問い詰めるシーラは、その説明は納得しないらしい。
目が笑っていないシーラに〝殺気を込めた目で見られた〟なんて口が裂けても言ってはいけない気がして私は小さな嘘を吐く。
「迷って不安になっていた時、声をかけられて驚いたのと安心したので涙が出てしまったのよ。」
「それでドウェイン様がハンカチを…。」
「ええ。」
その説明に納得してくれたシーラはハンカチを見た。
「そう…無事で良かったわ。けれど、オルセンは何をしてるのよ。エスコートは任せろって言っていたのに…。」
「シーラ?」
シーラは安心したと笑みを浮かべた後何かを呟いていたけれど、それが私の耳に届く事はなかった。
首を傾げる私にシーラはなんでもないわ、と微笑んで会場に戻ろうと私の手を引いて案内してくれた。
◇◇◇◇◇
化粧を直して会場へ戻ると、戻って来ていたケヴィンとホリーが出迎えてくれた。
これはストーリー通りいい雰囲気なのでは?
心の中でケヴィンとホリーの二人を微笑ましく思っていると二人は顔を見合わせた。
「お姉様、勘違いしないで下さい?」
「え?」
「俺とホリーはお互い協力する事にしたんだ。」
私の考えを読んだのか、可愛らしく頬を膨らませながらホリーがそう言うと、ケヴィンが付け足すように告げる。
「協力?」
私が首を傾げていると、シーラは初めから判っているのか眉を下げて微笑みながら様子を伺っている。
「そうです。お姉様をあのクラウス様には渡しませんから。」
「渡さないって…。」
「マーガレット嬢がクラウスに好意を寄せているのは知ってる。」
「!?」
ホリーとケヴィンの爆弾発言に私は目を見開く。
何で知ってるの!?
「大好きなお姉様の事くらい判ります。」
「ずっと見ていたからな。」
「え…あっ!?」
二人にそう言われて思わずシーラを見ると、困った様に眉を下げながら笑みを浮かべた。シーラの肯定ともとれる仕草に、羞恥で顔全体に熱が集まるのを感じて、言葉を発せずにいる私を見つめる二人。
「お姉様、ヘクターお兄様に思いを告げられたのでしょう?」
「!?」
「マーガレットお姉様が大好きなので私はお兄様との恋を応援します!だからクラウス様には渡せません。」
固まっている私にホリーはそう告げると天使の様な笑みを浮かべた。けれど目が笑っていない。
というか、ヘクターに言われた事を何故知ってるの!?
困惑した私に手を差し伸べて来たのはケヴィンだった。
「マーガレット嬢、ヘクターに先を越されたけれど俺も貴女が好きだ。ずっと昔から。」
「ケ、ケヴィン様っ!?」
ケヴィンの突然の告白に私はどうしていいか判らずに、その手を取る事が出来ないで狼狽えてしまう。
「貴女に異性として見られていないのも判ってる。ヘクターは俺と同じ歳だ。けれど異性として見てるんだから、俺の事も嫌でも意識してもらうと思う。」
「…。」
「マーガレット嬢が誰を思ってるかは判ってる。隙がある内は…それまでホリーと協力してクラウスとの事を邪魔させてもらう事にした。」
そう言って少し強引に手を取ると私の手の甲に口付けしたケヴィンは、私を見て悪戯な笑みを浮かべた。
「っ!?」
顔から火が出るのではないかと思う位に、熱くなった顔を両手で抑えると、シーラはケヴィンに良くやった!と満足気に頷いていた。
「す、少し風に当たって来ます…。」
「一人は危険だ。」
「だ、大丈夫ですよ。ほら、見える位置ですから…。」
「あ、ちょっと!マーガレット?」
火照った体を風に当てようと思い、バルコニーを指差して一人フラフラと歩いて行く。
シーラが呼び止めようとしていたけれど、色々と頭が混乱していた私は少しだけ一人になりたくて足を進めた。
ケヴィンが私を?ホリーと協力?
一体何故そうなった!?
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