先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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25.

何度も何度もイカされて:14

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余韻に浸るのが颯は苦手なのか
いつも、身体をすぐに離してしまう。

颯は少し間を置いてから
そっと柊の中から引き抜いた。

その瞬間、微かに名残を惜しむような音と
感覚がふたりの間に残る。

でも、颯は何も言わずに、手を伸ばし
ベッドの端に置いてあった
ウェットティッシュを取ると、

ゆっくりと優しく、柊の汗と涙と
それ以外のものまで丁寧に拭っていく。

腕、胸、腹部、太もも──
そのたびにひやりとした感触と
颯の指先のぬくもりが混ざり合って、
柊の身体は少しずつ現実に戻っていく。

けれど、意識はまだどこか遠くのまま。

天井をぼんやりと見上げながら
柊は深く息を吐いた。

さっきまでの熱も痛みも快楽も全部を
身体の奥でじわじわと味わっていた。

静寂の中、拭う音だけが微かに響いていて
柊はその気遣いと手の優しさに
何も言わず、ただ目を細めた。

もう何度目かの、満ち足りた沈黙だった。

▶︎

──そして、ベッドとソファ。

いつものように
ふたりは別々の寝床に向かう。

何度重ねても
眠るときはいつもそうだった。

ルールのように
それぞれの場所で背を向けて夜を終える。

柊は、毛布を胸まで引き寄せながら
ぼんやりと天井を見つめた。

その横顔の中に
まだ残っている疑問があった。

──今日の颯は
どうしてあんなに苛立っていたのか。
あの“女”という言葉に込められた感情。

噛みつくような強さも、意地悪さも、

今日のプレイの乱暴さも
ただの支配ではなく
どこか不器用な独占欲のように感じていた。


愛情だなんて
簡単に口にするのは違うかもしれない。

けれど、もし少しでも――
あれが、自分に向けられた“感情”だったのなら。
柊の胸の奥で、何かが微かに震えた。

ソファに背を向けて寝そべる颯の背中は
どこか緊張しているように見えた。

寝息もない。
目を閉じているかすら分からない静寂。

その沈黙が、柊には
逆に答えを求めているようにも思えた。

だから、意を決して声をかける。

「……ねえ、颯」

呼びかけたその声は
想像していたよりも少しだけ震えていた。


▶︎


柊は、ソファに背を向けて
寝転ぶ颯の後ろ姿を見つめたまま、
しばらく迷ってから、ぽつりと声をかけた。

「……今日は、ごめん。」

毛布の中で、わずかに肩が揺れる。

「もういいですよ。そのことは.....」

すぐに返ってきた声は、少しだけ素っ気ない。

「……でも、機嫌悪そうだったし怒らせちゃった」

「……」

すると、颯はほんの少しだけ顔をそらした。
そして、なんでもないような声音で、呟く。

「……別にそんなに気にする事じゃないです」

「でも.....」

「……なんか、変な感じだったんです」

「変な感じ?」

「……はい。ああいうの、あんまり
 見たくないなって。先輩が誰かと話してて
 なんか……楽しそうで」

「……」

「……なんか、もやもやして
 気持ち悪くなっただけです。ほんとに」

柊は、その小さな呟きを聞いて、目を伏せた。

怒っていたわけでも
拗ねていたわけでもなく。

ただ、無意識のなかで
颯は感じてしまっていたのだ。

自分の知らない“柊の顔”に
どこかざわついて。

そしてそれが、彼の中では説明できない
「嫌な感じ」として、残っていたのだろう。

「……そっか。ごめん」

「もう謝らないでください。」

布団に顔をうずめたまま、颯が言う。

「あんまり見たくないだけです。
 なんか上手く言えないですけど。」

そう繰り返して
今度はふっと小さく笑った。

ただ「嫌だったから、嫌だった」と伝えているだけ。

けれどその無自覚な独占欲は
柊の胸の奥に、甘く深く染み込んでいく。

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