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颯の過去:04
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お酒を持って
颯がニコニコしながら
ソファに戻ってきた。
頬はうっすらと紅潮し
目元は酔いでとろんとしている。
颯は手際よくウイスキーと炭酸を割り
氷の音を軽く揺らしながら
ハイボールを作って差し出す。
「どうぞ、先輩」
自分は好きな赤ワインを
細いグラスに注ぎ
ゆっくりと口をつけている。
柊はグラスを受け取り、ひと口。
そのまま、少し間をおいてから――
ずっと胸の奥で燻っていた質問を口にした。
「……颯の、過去の話を聞きたい」
恋愛のこと。
経験のこと。
これまで、どんな相手と
どんな時間を過ごしてきたのか。
一年半も、恋人以上に深く
濃く、体を重ねてきたというのに……
この話題を持ち出すのは初めてだった。
口にした瞬間
胸の奥がむず痒くなり
妙な恥ずかしさに身体が落ち着かなくなる。
颯は、手の中のワイングラスを
一度揺らし、視線を落とした。
長いまつ毛が影を作る。
「……それ、聞いちゃいます?」
静かに問うその声は
酔いの熱よりもずっと冷たく
少し遠くに感じられた。
柊は無意識に唾を飲み込む。
颯の表情が、あの夜と重なる。
困惑と、悲しさと
そして儚さが混ざり合った顔。
柊の心の中には
ずっと引っかかっている言葉があった。
あの夜、颯が挑発するように言った一言。
「あの女より、僕のほうが……
男の人いっぱい食べてますから」
冗談めかした口調だったはずなのに
どうしても忘れられなかった。
その響きは耳の奥に残り
ふとした拍子に思い出してしまう。
まるで小さな棘が
心に刺さったまま
抜けずにいるような感覚。
正直、嫉妬していた。
颯がどんな経験をしてきたのか――
誰に愛され、誰を抱いてきたのか――
全部、知りたかった。
氷がグラスの中でカランと音を立てる。
柊は、ついにその棘を
抜きたくて口を開いた。
「……あのとき言ってたこと、覚えてる?」
颯は瞬きをして、首をかしげる。
「……どんなことですか?」
視線を絡めたまま、柊は唾を飲み込み
あの夜の言葉を繰り返す。
「男の人いっぱい食べてますから……って」
一瞬、颯の笑顔が止まる。
それでもすぐ、可愛らしく口角を上げて
「僕、そんなこと言ってましたっけ?」と
誤魔化そうとする。
柊はその手を掴みまっすぐに言った。
「……お願い。聞きたい、颯」
酔いで赤く染まった頬。
見開かれた瞳が、ゆっくりと柊を見つめ――
「……先輩……」
拒絶でも肯定でもない甘い響きが
柊の胸に深く沈んでいった。
颯がニコニコしながら
ソファに戻ってきた。
頬はうっすらと紅潮し
目元は酔いでとろんとしている。
颯は手際よくウイスキーと炭酸を割り
氷の音を軽く揺らしながら
ハイボールを作って差し出す。
「どうぞ、先輩」
自分は好きな赤ワインを
細いグラスに注ぎ
ゆっくりと口をつけている。
柊はグラスを受け取り、ひと口。
そのまま、少し間をおいてから――
ずっと胸の奥で燻っていた質問を口にした。
「……颯の、過去の話を聞きたい」
恋愛のこと。
経験のこと。
これまで、どんな相手と
どんな時間を過ごしてきたのか。
一年半も、恋人以上に深く
濃く、体を重ねてきたというのに……
この話題を持ち出すのは初めてだった。
口にした瞬間
胸の奥がむず痒くなり
妙な恥ずかしさに身体が落ち着かなくなる。
颯は、手の中のワイングラスを
一度揺らし、視線を落とした。
長いまつ毛が影を作る。
「……それ、聞いちゃいます?」
静かに問うその声は
酔いの熱よりもずっと冷たく
少し遠くに感じられた。
柊は無意識に唾を飲み込む。
颯の表情が、あの夜と重なる。
困惑と、悲しさと
そして儚さが混ざり合った顔。
柊の心の中には
ずっと引っかかっている言葉があった。
あの夜、颯が挑発するように言った一言。
「あの女より、僕のほうが……
男の人いっぱい食べてますから」
冗談めかした口調だったはずなのに
どうしても忘れられなかった。
その響きは耳の奥に残り
ふとした拍子に思い出してしまう。
まるで小さな棘が
心に刺さったまま
抜けずにいるような感覚。
正直、嫉妬していた。
颯がどんな経験をしてきたのか――
誰に愛され、誰を抱いてきたのか――
全部、知りたかった。
氷がグラスの中でカランと音を立てる。
柊は、ついにその棘を
抜きたくて口を開いた。
「……あのとき言ってたこと、覚えてる?」
颯は瞬きをして、首をかしげる。
「……どんなことですか?」
視線を絡めたまま、柊は唾を飲み込み
あの夜の言葉を繰り返す。
「男の人いっぱい食べてますから……って」
一瞬、颯の笑顔が止まる。
それでもすぐ、可愛らしく口角を上げて
「僕、そんなこと言ってましたっけ?」と
誤魔化そうとする。
柊はその手を掴みまっすぐに言った。
「……お願い。聞きたい、颯」
酔いで赤く染まった頬。
見開かれた瞳が、ゆっくりと柊を見つめ――
「……先輩……」
拒絶でも肯定でもない甘い響きが
柊の胸に深く沈んでいった。
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