先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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それぞれの年越しへ:03

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忘年会は盛大に盛り上がり
やがてお開きになった。

店を出た瞬間
夜風が酔いを冷ましていく。

「俺、このあと友達と合流なんで」
柴谷がスマホを見ながら言う。

「雅島の友達も新都にいるんで
 明日から一緒に里帰りっす」

その時、遠くから
「おーい、昴真ー!」と声が飛んできた。

黒縁メガネのテンションの高い青年と
隣にいる女性が手を振っている。

「じゃあ!」と手を振り返し
柴谷は駆け足でそちらへ向かっていった。

残された柊と颯は
静かに駅へ向かって歩き出す。

「さて、どうしますか?」
颯が横目で見上げる。

「明日からしばらく会えなくなりますね」

柊は少し迷ってから
真っ直ぐに口を開いた。

「……颯が良ければ、泊まりたい」

颯は思わず笑みをこぼす。

「断るわけないじゃないですか」

小さな声で「えへへ」と
照れ混じりに笑って、続ける。

「発情納めっ……
 しておかないとですね。ワンコくん」

可愛らしく言われて
柊は肩を揺らして笑った。

夜の街を抜け、二人は並んで歩き
颯の部屋へと帰っていった。



颯の部屋に戻ると
柊は無意識に深く息を吐いた。
自分の部屋よりもずっと落ち着く。

なぜだろう、ここにいると安心して
肩の力が自然と抜けてしまう。

「先輩、たまにはお風呂どうですか?」
と颯が振り返る。

「あっ……先に行ってきていいよ」
「あとで、シャワー借りようかな」
柊は気を利かせたつもりで答えた。

けれど颯は
首を横に振ってニッと笑う。

「違いますよ。
 一緒にどうですか?って意味です」

「え……」柊は思わず目を瞬かせる。
唐突な誘いに心臓が跳ねる。
期待に胸が高鳴るのに
素直に言葉にできない。

そんな柊の反応を楽しむように
颯は軽快な足取りで近づいてくる。

「ほらっ。行きましょう。お風呂!」

拒否権なんて最初から
与えるつもりはない、という笑顔だった。

柊はため息をつくふりをして
その実どこか嬉しそうに頷いた。



浴槽にお湯がたまっていく音を
聞きながら、柊の胸は今にも
張り裂けそうだった。

「一緒にお風呂」——
そんな展開は、想像すらしていなかった。

しかも、もし浴槽の中で
何かが始まったら……と
考えてしまうたびに
熱を帯びた鼓動が体の奥でせり上がる。

まだ何も決まっていない。
ただ一緒に入るだけかもしれない。

それなのに、頭の中は
「お風呂でのプレイ」への
妄想でいっぱいになってしまっていた。

「先輩ー、お湯溜まりましたよー」
脱衣所から軽い調子で呼ぶ声。

向かうと、そこには――
すでに服をすべて脱ぎ捨て
湯気の向こうで全裸の颯が待っていた。

蒸気に包まれて
しなやかな肉体が艶めいて見える。

濡れた黒髪が首筋にかかり
柔らかな光沢を帯びる肌は
眩しくて、思わず喉が鳴る。

そもそも、まじまじと
颯の全裸を見ること自体があまりなくて
緊張してしまう。

「……っ」
息を呑む柊を見て
颯は小さく笑った。

「見惚れてないで
 早く脱いでください。寒いです」
わざと急かすような声。

柊は視線を逸らしながらも
その熱に抗えず、ぎこちなく
シャツのボタンを外していく。

ゆっくりと、服を一枚ずつ脱ぎながら
心臓の鼓動がどんどん速くなっていった。



タオルで体を隠したまま
柊は静かに風呂場へと足を踏み入れた。

湿った湯気が全身を包み込み
すでに胸の奥の鼓動は落ち着かない。

颯もタオルを巻いていて
前髪を小さなピンで留めていた。
蒸気のせいで頬は紅潮し
潤んだ瞳が艶を帯びて見える。

普段よりも幼く
そしてどこか妖艶に見えるその姿に
柊は目を奪われた。

「じゃあ——テンプレ通り
 体洗ってあげますね」

颯は微笑みながらそう言うと
柊の肩に手を置き
タオルをゆっくりとずらしていく。

「……っ、いいよ。
 自分でやるから。恥ずかしい」

思わず制止する柊に
颯は悪戯っぽく耳元で囁く。

「ワンコくんの身体を洗ってあげるのは
 飼い主の役目ですよ?」

抵抗を許さない声音。
するするとタオルが外され
露わになった柊の肌が
浴室の光に白く浮かび上がる。

鏡には、裸の自分と――
背後から覗き込む颯が重なって映っていた。

その視線に射抜かれるようで
体温が一気に上がる。

颯は柊の胸元でタオルを
軽く押さえ肩にそっと顔を乗せる。

鏡越しに視線を合わせ
艶を含んだ声で囁いた。

「……なんか、えっちですね」
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