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32.5(エロなしです)
颯の年越し:02
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「颯ー?帰ったのー?」
家の中から母の声がする。
「うん!ただいまー! お腹すいたー!」
颯はふうを抱き上げたまま
懐かしい玄関を上がっていった。
懐かしい食卓で、颯は箸を伸ばす。
母の作った卵焼き。
「ん~、やっぱり
お母さんの卵焼きが一番だ!」
「もう、せっかく年末に帰ってきたのに。
わざわざ卵焼きのリクエストなんて
しなくてもいいのに」
母は呆れ顔で言いながらも
どこか嬉しそうに笑っている。
「だって食べたかったんだもん!
お母さんが作ると、なんでこんな味になるの?
僕が作っても全然違うんだよね」
そう言うと
母はお茶を口に含み、ふふ、と笑う。
「それはね、愛情を込めてるからよ」
「愛情?」
「そうよ。食べる人のことを考えて
大切な人のことを思い浮かべて……
愛を込めて作るとね、美味しくなるのよ」
そう言って、片目をウインクしてみせる。
颯は箸を止めて、少し首を傾げる。
「……愛情?」
「ねぇ颯。新都に行って
もうずいぶん経つでしょう? 」
「まだ恋のひとつやふたつもしてないの?
お父さんともね、そろそろ誰か
連れてくるんじゃないかって話してたのよ」
「恋……かぁ」
母は優しい眼差しで
息子を見つめながら
柔らかく言葉を続けた。
「明日もお墓参りに行くんでしょ?」
母はお茶を置いて
少し柔らかい声で続けた。
「あんたの気持ちもわかるけどね。
いつまでも立ち止まってばかりじゃだめよ。
そろそろ、いいんじゃないの?」
「優真くんも颯には前に進んでほしいって
そう思ってると思うよ」
颯は思わず箸を止め、母を見た。
いつもの母なら
優真のことを話すときは
そっと話題を切り替えるか
ただ黙って寄り添ってくれるだけだった。
けれど、今日は違う。
「まあ、あんた次第だけどね」
母は軽い調子に戻し
少し笑みを浮かべる。
「モテるのも、遊ぶのも
今のうちなんだから。
楽しみなさい? ねっ?」
軽口のように聞こえるのに
その言葉は胸の奥にじんと響いていく。
――楽しむ。恋をする。進む。
頭の中で、母の声が幾度も反響する。
なぜだろう、今日は特別に
その言葉が強く心に残った。
まるで「今」がその時だと
告げられているように。
颯は俯き、卵焼きを口に運ぶ。
少し甘いはずの味が
胸の奥ではほろ苦く広がっていった。
家の中から母の声がする。
「うん!ただいまー! お腹すいたー!」
颯はふうを抱き上げたまま
懐かしい玄関を上がっていった。
懐かしい食卓で、颯は箸を伸ばす。
母の作った卵焼き。
「ん~、やっぱり
お母さんの卵焼きが一番だ!」
「もう、せっかく年末に帰ってきたのに。
わざわざ卵焼きのリクエストなんて
しなくてもいいのに」
母は呆れ顔で言いながらも
どこか嬉しそうに笑っている。
「だって食べたかったんだもん!
お母さんが作ると、なんでこんな味になるの?
僕が作っても全然違うんだよね」
そう言うと
母はお茶を口に含み、ふふ、と笑う。
「それはね、愛情を込めてるからよ」
「愛情?」
「そうよ。食べる人のことを考えて
大切な人のことを思い浮かべて……
愛を込めて作るとね、美味しくなるのよ」
そう言って、片目をウインクしてみせる。
颯は箸を止めて、少し首を傾げる。
「……愛情?」
「ねぇ颯。新都に行って
もうずいぶん経つでしょう? 」
「まだ恋のひとつやふたつもしてないの?
お父さんともね、そろそろ誰か
連れてくるんじゃないかって話してたのよ」
「恋……かぁ」
母は優しい眼差しで
息子を見つめながら
柔らかく言葉を続けた。
「明日もお墓参りに行くんでしょ?」
母はお茶を置いて
少し柔らかい声で続けた。
「あんたの気持ちもわかるけどね。
いつまでも立ち止まってばかりじゃだめよ。
そろそろ、いいんじゃないの?」
「優真くんも颯には前に進んでほしいって
そう思ってると思うよ」
颯は思わず箸を止め、母を見た。
いつもの母なら
優真のことを話すときは
そっと話題を切り替えるか
ただ黙って寄り添ってくれるだけだった。
けれど、今日は違う。
「まあ、あんた次第だけどね」
母は軽い調子に戻し
少し笑みを浮かべる。
「モテるのも、遊ぶのも
今のうちなんだから。
楽しみなさい? ねっ?」
軽口のように聞こえるのに
その言葉は胸の奥にじんと響いていく。
――楽しむ。恋をする。進む。
頭の中で、母の声が幾度も反響する。
なぜだろう、今日は特別に
その言葉が強く心に残った。
まるで「今」がその時だと
告げられているように。
颯は俯き、卵焼きを口に運ぶ。
少し甘いはずの味が
胸の奥ではほろ苦く広がっていった。
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