32 / 258
05
跨る支配:01
しおりを挟む
「……浴びないでおこうかな」
そう答えたのは
理性ではなく本能に近かった。
頷いた柊を見て
颯の目がふわりと緩む。
「よかった」
柔らかく笑って
缶を開ける音が部屋に響く。
「今日は、先輩とゆっくり
飲みたい気分だったんです」
そう言って
膝を折って柊の隣に座る。
さっきまでよりも
ほんの少しだけ距離が近い。
乾杯の音が、無音の部屋に小さく響く。
飲み始めて数十分。
ほどよくアルコールが回り
緩んでいく空気。
颯は、時折笑いながら
時に肩を寄せ、時に上目遣いで柊を見てくる。
「先輩って、ほんとに……
ずるいですよね」
「何がだよ」
「だって、いつもかっこよくて
優しくて、真面目で……
爽やかで……」
頬を赤くしながら
缶を持ったまま柊の肩に額を預ける。
「……でも、たまーに無防備で」
その声が、耳のすぐそばで落ちた。
思わず息を呑むと、颯がくすりと笑う。
「今日も、僕の家に来てくれた」
「それだけで、ちょっと……嬉しくて」
缶を置いた指先が
そっと柊の手の甲に触れる。
「……先輩。今日の服、柔軟剤、変えました?」
「……いや、変えてないけど」
「そうなんですね。なんか……
この間と違う匂いがする……」
そう呟いた颯が
ゆっくりと距離を詰めてくる。
その小さな鼻先が
柊の肩口にそっと触れる。
「ん……」
小さく吸い込むように、
を鳴らす。
「やっぱり……いい匂いです」
頬を染めたまま、瞳が潤んでいる。
「俺の……?」
「はい。ずっと嗅いでいたいくらい」
一瞬、柊の中で何かがきしんだ。
これは、いつもの可愛い部下じゃない。
もっと、なにか深い場所から
にじみ出る熱を孕んだ“何か”。
颯の指が、柊の胸元にそっと触れる。
「ねえ……もっと近くで
匂い……嗅いでも、いいですか?」
その声は、甘くて、柔らかくて――
でも、確実に何かを欲していた。
そして次の瞬間。
颯は、柊の膝の上に
そっと跨るように座った。
その顔が、触れるほどの距離に近づく。
「先輩」
「……な、なんだよ」
「こうしてると……
ドキドキしますか?」
吐息が、柊の唇にかかる。
「僕は、しますよ。」
可愛く、潤んだ目で
でもしっかりと見上げてくる。
「……この体勢……
支配しているみたいです。」
「……神城……」
柊の声が、少し掠れる。
だけど、拒絶の色は薄れていた。
「えへへ……。
待ってたんですね……?」
ふっと笑ったその瞬間――
距離が、音もなく、ゼロになった。
キスは、甘く、長く、そして濃かった。
当たり前のようにそれを受け入れた。
▶︎
ふいに唇が離れた瞬間
柊は息を吸い込む。
まだ体温が乱れたまま
目の前の距離の近さに言葉をなくしていた。
そんな彼を見つめながら、颯は微笑む。
どこか幼さの残る笑みなのに――
そこにあるのは、明確な“意図”だった。
「……ねえ、先輩」
潤んだ目が、ゆっくり瞬く。
「キス、気持ちいいですか?」
柊は返事ができない。
すると颯は、さらに距離を詰め
囁くように言葉を紡ぐ。
「僕のこと、考えて
くれていましたか?」
「それとも……
ないフリ、してましたか?」
指先が、柊のシャツの胸元をなぞる。
「先輩って、ほんと不器用ですよね」
「ちゃんと、見てたんですよ。僕」
「視線、泳いでました。今日の電車の中も」
「僕の脇……見てましたよね?」
頬に吐息が触れる。
その温度が、徐々に柊の思考を鈍らせていく。
「正直に言ってくれたら……
もうちょっと、可愛がってあげます」
「それとも……怖いですか?」
「自分が、“支配されはじめてる”
って、気づくのが」
その一言に、柊の心臓が跳ねた。
呼吸が浅くなる。
そんな反応を見て
颯は楽しそうに目を細める。
「逃げようとすればするほど
……逃したくなくなるんです。」
「部下である僕がこうやって
絡んでくるのって、
ずるいと思いませんか?」
「可愛いって
思ってくれてもいいんですよ?」
「でもその“可愛い”に
支配されてるって……
自分で気づいてくださいね」
小さく笑う颯。
柊の頬に手を添えて
再び唇を重ねてきた。
甘くて、柔らかくて――
けれど、確かに何かを
奪っていくようなキスだった。
そして、その中で囁かれる。
「このまま、名前……
呼んでください」
「ね、神城じゃなくて、“颯”って」
「呼んでくれないと、
期待通りにならない
かもしれませんよ?」
耳元で、そっと吐息混じりに。
「僕の“もの”になってください」
そう答えたのは
理性ではなく本能に近かった。
頷いた柊を見て
颯の目がふわりと緩む。
「よかった」
柔らかく笑って
缶を開ける音が部屋に響く。
「今日は、先輩とゆっくり
飲みたい気分だったんです」
そう言って
膝を折って柊の隣に座る。
さっきまでよりも
ほんの少しだけ距離が近い。
乾杯の音が、無音の部屋に小さく響く。
飲み始めて数十分。
ほどよくアルコールが回り
緩んでいく空気。
颯は、時折笑いながら
時に肩を寄せ、時に上目遣いで柊を見てくる。
「先輩って、ほんとに……
ずるいですよね」
「何がだよ」
「だって、いつもかっこよくて
優しくて、真面目で……
爽やかで……」
頬を赤くしながら
缶を持ったまま柊の肩に額を預ける。
「……でも、たまーに無防備で」
その声が、耳のすぐそばで落ちた。
思わず息を呑むと、颯がくすりと笑う。
「今日も、僕の家に来てくれた」
「それだけで、ちょっと……嬉しくて」
缶を置いた指先が
そっと柊の手の甲に触れる。
「……先輩。今日の服、柔軟剤、変えました?」
「……いや、変えてないけど」
「そうなんですね。なんか……
この間と違う匂いがする……」
そう呟いた颯が
ゆっくりと距離を詰めてくる。
その小さな鼻先が
柊の肩口にそっと触れる。
「ん……」
小さく吸い込むように、
を鳴らす。
「やっぱり……いい匂いです」
頬を染めたまま、瞳が潤んでいる。
「俺の……?」
「はい。ずっと嗅いでいたいくらい」
一瞬、柊の中で何かがきしんだ。
これは、いつもの可愛い部下じゃない。
もっと、なにか深い場所から
にじみ出る熱を孕んだ“何か”。
颯の指が、柊の胸元にそっと触れる。
「ねえ……もっと近くで
匂い……嗅いでも、いいですか?」
その声は、甘くて、柔らかくて――
でも、確実に何かを欲していた。
そして次の瞬間。
颯は、柊の膝の上に
そっと跨るように座った。
その顔が、触れるほどの距離に近づく。
「先輩」
「……な、なんだよ」
「こうしてると……
ドキドキしますか?」
吐息が、柊の唇にかかる。
「僕は、しますよ。」
可愛く、潤んだ目で
でもしっかりと見上げてくる。
「……この体勢……
支配しているみたいです。」
「……神城……」
柊の声が、少し掠れる。
だけど、拒絶の色は薄れていた。
「えへへ……。
待ってたんですね……?」
ふっと笑ったその瞬間――
距離が、音もなく、ゼロになった。
キスは、甘く、長く、そして濃かった。
当たり前のようにそれを受け入れた。
▶︎
ふいに唇が離れた瞬間
柊は息を吸い込む。
まだ体温が乱れたまま
目の前の距離の近さに言葉をなくしていた。
そんな彼を見つめながら、颯は微笑む。
どこか幼さの残る笑みなのに――
そこにあるのは、明確な“意図”だった。
「……ねえ、先輩」
潤んだ目が、ゆっくり瞬く。
「キス、気持ちいいですか?」
柊は返事ができない。
すると颯は、さらに距離を詰め
囁くように言葉を紡ぐ。
「僕のこと、考えて
くれていましたか?」
「それとも……
ないフリ、してましたか?」
指先が、柊のシャツの胸元をなぞる。
「先輩って、ほんと不器用ですよね」
「ちゃんと、見てたんですよ。僕」
「視線、泳いでました。今日の電車の中も」
「僕の脇……見てましたよね?」
頬に吐息が触れる。
その温度が、徐々に柊の思考を鈍らせていく。
「正直に言ってくれたら……
もうちょっと、可愛がってあげます」
「それとも……怖いですか?」
「自分が、“支配されはじめてる”
って、気づくのが」
その一言に、柊の心臓が跳ねた。
呼吸が浅くなる。
そんな反応を見て
颯は楽しそうに目を細める。
「逃げようとすればするほど
……逃したくなくなるんです。」
「部下である僕がこうやって
絡んでくるのって、
ずるいと思いませんか?」
「可愛いって
思ってくれてもいいんですよ?」
「でもその“可愛い”に
支配されてるって……
自分で気づいてくださいね」
小さく笑う颯。
柊の頬に手を添えて
再び唇を重ねてきた。
甘くて、柔らかくて――
けれど、確かに何かを
奪っていくようなキスだった。
そして、その中で囁かれる。
「このまま、名前……
呼んでください」
「ね、神城じゃなくて、“颯”って」
「呼んでくれないと、
期待通りにならない
かもしれませんよ?」
耳元で、そっと吐息混じりに。
「僕の“もの”になってください」
18
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
壁乳
リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。
最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。
じれじれラブコメディー。
4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。
(挿絵byリリーブルー)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる