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支配に揺れる柊:04
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結局、酔いには勝てなかった。
冷たいタオルが額に
触れていたのは覚えている。
冷たい水を飲んだことも。
でも、気づけば意識は沈み──
そのまま、深く深く
眠りに落ちていた。
──夢を、見ていた。
この部屋の中で
颯に組み敷かれていた。
身体ではなく、言葉で命令される。
“欲しいって言ってください”
“もっと素直になってください”
何度も聞いたはずの声が
肌の奥まで響いてくる。
香りが、熱が、言葉が。
現実以上に鮮明で、
まるで──本当に
支配されているようだった。
(……夢、だよな)
部屋に染みついた颯の匂い。
いつもの柔軟剤。
微かに残るシャンプーの匂い。
それらが、柊の記憶を刺激し、
欲望を形づくっていく。
この部屋の匂いそのものが、
柊にとっては"支配"の一部になっていた。
「……先輩」
夢の中と同じ声が、現実に降りてきた。
「……起きられますか?」
まぶたが重い。
けれど、ゆっくりと開いた。
すぐ近くに、颯の顔。
しゃがみ込んで
寝ぼけた柊を心配そうに見つめる。
夢の中の“彼”とは、まるで別人。
「……ぁ……ああ……」
喉がかすれて、うまく声にならない。
でも、その声と笑顔に
安心してしまう自分がいた。
(さっきまで……
夢の中でどんな顔してたっけ)
思い出すたびに
体の芯がじわりと熱くなる。
「顔、赤いですよ?
熱……はないか。二日酔いですかね」
「ああ……かも……」
何気ないやりとり。
なのに、どうしようもなく
動揺している自分がいた。
「着替えのシャツ畳んでおきました。
軽く、スプレーしたぐらいですけど
僕、シャワー浴びてきますね」
「……ありがと」
颯は立ち上がると
軽やかに脱衣所へと向かっていった。
無防備にのびる背中と首筋が
また柊を刺激する。
(……また、夢に見そうだな)
苦笑いを、しながら
柊は静かに、体を起こした。
颯のあと、シャワーを浴びる。
火照った身体に冷たい空気が心地よくて
ようやく目が覚める。
髪を乾かしてリビングへ戻ると
「ワックス使いますよね?」
「ありがと。助かる。」
鏡の前に座った柊に
颯はさりげなく手を伸ばす。
「ふふ。ここ、ワックス残ってますよ」
わしゃわしゃと
ワックスを馴染ませる何気ない仕草。
だけど、その指先に触れた瞬間
柊の胸の奥がきゅっと軋んだ。
「はい、完成。今日もかっこいいです」
冗談めかした言葉に
柊は何も返さずにスーツの上着に腕を通す。
「これ、忘れてますよ。」
颯が手渡してきたマフラーは
昨日柊がつけていたもの。
ふわりと首に巻かれた瞬間
颯の部屋の香りが染み付いて
喉の奥が詰まりそうになる。
「じゃ、行きましょ。
今日で仕事納めですからね」
いつも通りの口調で
颯が玄関のドアを開ける。
隣を歩き出すその後ろ姿が
少しだけ遠く見えた。
冷たいタオルが額に
触れていたのは覚えている。
冷たい水を飲んだことも。
でも、気づけば意識は沈み──
そのまま、深く深く
眠りに落ちていた。
──夢を、見ていた。
この部屋の中で
颯に組み敷かれていた。
身体ではなく、言葉で命令される。
“欲しいって言ってください”
“もっと素直になってください”
何度も聞いたはずの声が
肌の奥まで響いてくる。
香りが、熱が、言葉が。
現実以上に鮮明で、
まるで──本当に
支配されているようだった。
(……夢、だよな)
部屋に染みついた颯の匂い。
いつもの柔軟剤。
微かに残るシャンプーの匂い。
それらが、柊の記憶を刺激し、
欲望を形づくっていく。
この部屋の匂いそのものが、
柊にとっては"支配"の一部になっていた。
「……先輩」
夢の中と同じ声が、現実に降りてきた。
「……起きられますか?」
まぶたが重い。
けれど、ゆっくりと開いた。
すぐ近くに、颯の顔。
しゃがみ込んで
寝ぼけた柊を心配そうに見つめる。
夢の中の“彼”とは、まるで別人。
「……ぁ……ああ……」
喉がかすれて、うまく声にならない。
でも、その声と笑顔に
安心してしまう自分がいた。
(さっきまで……
夢の中でどんな顔してたっけ)
思い出すたびに
体の芯がじわりと熱くなる。
「顔、赤いですよ?
熱……はないか。二日酔いですかね」
「ああ……かも……」
何気ないやりとり。
なのに、どうしようもなく
動揺している自分がいた。
「着替えのシャツ畳んでおきました。
軽く、スプレーしたぐらいですけど
僕、シャワー浴びてきますね」
「……ありがと」
颯は立ち上がると
軽やかに脱衣所へと向かっていった。
無防備にのびる背中と首筋が
また柊を刺激する。
(……また、夢に見そうだな)
苦笑いを、しながら
柊は静かに、体を起こした。
颯のあと、シャワーを浴びる。
火照った身体に冷たい空気が心地よくて
ようやく目が覚める。
髪を乾かしてリビングへ戻ると
「ワックス使いますよね?」
「ありがと。助かる。」
鏡の前に座った柊に
颯はさりげなく手を伸ばす。
「ふふ。ここ、ワックス残ってますよ」
わしゃわしゃと
ワックスを馴染ませる何気ない仕草。
だけど、その指先に触れた瞬間
柊の胸の奥がきゅっと軋んだ。
「はい、完成。今日もかっこいいです」
冗談めかした言葉に
柊は何も返さずにスーツの上着に腕を通す。
「これ、忘れてますよ。」
颯が手渡してきたマフラーは
昨日柊がつけていたもの。
ふわりと首に巻かれた瞬間
颯の部屋の香りが染み付いて
喉の奥が詰まりそうになる。
「じゃ、行きましょ。
今日で仕事納めですからね」
いつも通りの口調で
颯が玄関のドアを開ける。
隣を歩き出すその後ろ姿が
少しだけ遠く見えた。
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