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自ら咥える 夜のオフィス:01
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ある日の21時前のオフィス。
パソコンのファンの音と
キーボードを打つ指の
リズムだけが空間を埋めている。
柊と颯は大事な大口の商談を前に
2人でオフィスに残り残業をしていた。
フロアの灯りは必要最低限。
昼間の喧騒が嘘のように
静まり返ったその中で、
柊と颯は黙々と画面に向かっていた。
「……先輩、ここの資料
数字揃えておきました」
颯が落ち着いた声でモニターを見せてくる。
手際はいい。細かい誤字も
流れも、目を光らせてきちんと整えている。
「助かる。……それ
明日の午前で出すやつだよな」
「はい、商談の入り口になる資料なんで
印象重視でまとめました」
言葉のやり取りに、無駄はない。
真面目で、正確。
仕事中の颯は、やっぱり優秀な後輩だと思う。
シャツの袖をたくし上げた細い腕。
ツヤのある肌に伏せた睫毛。
少し疲れたような息遣いすら
どこか記憶の中の颯と重なっていく。
(……まずい、また……)
さっきから、何度も体の奥が
疼く感覚に意識を引き戻されていた。
シャツの下、スラックスの下。
隣にいる"優秀な後輩"を装った
“ご主人様”に触れられた
あの部分が、思い出したように疼いている。
「……あ、先輩」
「うん?」
「このファイル
共有フォルダにも上げておきますね」
「……ああ、ありがとう」
ごく普通の会話が、どうして
こんなにも熱を持って聞こえるのか。
仕事が終わった解放感。
ふたりきりのオフィス。
どこか現実味のない夜の空気。
──また、可愛がってほしい。
そんな考えが頭をよぎるたびに
自分を叱るように目を閉じた。
でも、隣にいる颯の存在感が、
その理性をひそかに崩しにかかってくる。
ふたりだけの空間。
誰にも見られない、音もない場所。
そのすべてが
柊の身体にじわりと火を灯していく。
最初は、触れられるより先に、
「奪われていた」んだ──と、今ならわかる。
視線を奪い、耳に残り、
肌に触れていないのに
感覚を支配してくるような。
その最初の入り口は、匂いだった。
あの夜、目隠しをされて──
頬をかすめた吐息や
鎖骨のあたりに染み込んだ
石鹸と体温の混ざった匂い。
それを嗅がされるたびに
思考は霞んで、
ただ欲望だけが濃くなるのを
止められなかった。
その影響は、今も強く残っている。
颯がスーツの上着を脱ぎ
ワイシャツ姿になるたびに、
視線が勝手に鎖骨へと落ちる。
シャツの襟元から覗く
うっすらとした皮膚。
脇に残る汗の香りを
無意識に求めて鼻が疼いた。
─あのとき嗅がされた場所。
─自分の舌で確かめさせられた、あの熱の奥。
(……駄目だ、忘れろ、仕事中だろ)
パソコンのファンの音と
キーボードを打つ指の
リズムだけが空間を埋めている。
柊と颯は大事な大口の商談を前に
2人でオフィスに残り残業をしていた。
フロアの灯りは必要最低限。
昼間の喧騒が嘘のように
静まり返ったその中で、
柊と颯は黙々と画面に向かっていた。
「……先輩、ここの資料
数字揃えておきました」
颯が落ち着いた声でモニターを見せてくる。
手際はいい。細かい誤字も
流れも、目を光らせてきちんと整えている。
「助かる。……それ
明日の午前で出すやつだよな」
「はい、商談の入り口になる資料なんで
印象重視でまとめました」
言葉のやり取りに、無駄はない。
真面目で、正確。
仕事中の颯は、やっぱり優秀な後輩だと思う。
シャツの袖をたくし上げた細い腕。
ツヤのある肌に伏せた睫毛。
少し疲れたような息遣いすら
どこか記憶の中の颯と重なっていく。
(……まずい、また……)
さっきから、何度も体の奥が
疼く感覚に意識を引き戻されていた。
シャツの下、スラックスの下。
隣にいる"優秀な後輩"を装った
“ご主人様”に触れられた
あの部分が、思い出したように疼いている。
「……あ、先輩」
「うん?」
「このファイル
共有フォルダにも上げておきますね」
「……ああ、ありがとう」
ごく普通の会話が、どうして
こんなにも熱を持って聞こえるのか。
仕事が終わった解放感。
ふたりきりのオフィス。
どこか現実味のない夜の空気。
──また、可愛がってほしい。
そんな考えが頭をよぎるたびに
自分を叱るように目を閉じた。
でも、隣にいる颯の存在感が、
その理性をひそかに崩しにかかってくる。
ふたりだけの空間。
誰にも見られない、音もない場所。
そのすべてが
柊の身体にじわりと火を灯していく。
最初は、触れられるより先に、
「奪われていた」んだ──と、今ならわかる。
視線を奪い、耳に残り、
肌に触れていないのに
感覚を支配してくるような。
その最初の入り口は、匂いだった。
あの夜、目隠しをされて──
頬をかすめた吐息や
鎖骨のあたりに染み込んだ
石鹸と体温の混ざった匂い。
それを嗅がされるたびに
思考は霞んで、
ただ欲望だけが濃くなるのを
止められなかった。
その影響は、今も強く残っている。
颯がスーツの上着を脱ぎ
ワイシャツ姿になるたびに、
視線が勝手に鎖骨へと落ちる。
シャツの襟元から覗く
うっすらとした皮膚。
脇に残る汗の香りを
無意識に求めて鼻が疼いた。
─あのとき嗅がされた場所。
─自分の舌で確かめさせられた、あの熱の奥。
(……駄目だ、忘れろ、仕事中だろ)
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