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神城 颯という後輩:02
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朝。
目を開けた瞬間
一瞬どこにいるのか分からなくて
薄い天井をぼんやりと見上げた。
──ああ 神城の部屋か。
終電逃して
そのまま泊まったんだった。
体を起こすと
ソファに毛布がかかっていて
まだ少し 酒が残ってる感じがした。
「先輩 おはようございます」
明るい声がして
キッチンから颯が顔を出した。
「朝ごはん 食べますよね?」
朝から元気だな。と思いつつ
「…あっ。あるなら……」ってぼそっと返す。
「了解です」
素直に笑うその顔が
子どもみたいで無邪気だった。
焼き魚と味噌汁
卵焼きまで綺麗に巻いてあって
ちょっと驚いた。
「料理 得意なの?」
そう聞くと
颯はタオルで手を拭きながら
少し照れたように笑った。
「大学入ってから一人暮らしで
自炊ばっかです」
「慣れですよ 慣れ」
ふーん と流しながら
箸を受け取った。
「昨日はありがとうございました」
「泊まってくれて 嬉しかったです」
その言い方に
ちょっとだけ違和感を覚える。
──いや 泊めてもらったの 俺の方だけど。
まあいいかと思って
「助かったよ」って返す。
「また 今度も 終電なくなったら」
「うち 来てください」
声のトーンはずっと優しいままなのに
言葉の奥に
なにか“決定事項”みたいなものを感じた。
誘いというより
もう“そうなる前提”みたいな。
でも
今そんなことを深く考えるほど
頭も回ってなかった。
「……じゃあ 今度 飲み会あったらな」
適当に返して
味噌汁に口をつける。
ふと視線を落とすと
近くのゴミ箱が目に入った。
昨日の夜は 空だったはずの場所に
ティッシュがぐしゃっと詰まっている。
──こんなに 使ったっけ。
わからないけど
あえて何も聞かず
そっと目をそらした。
* * *
「先輩 ここの資料 持ってきました」
昼過ぎのオフィス。
颯は相変わらず動きが早い。
「おつかれ ありがと」
「一緒にチェックしてもいいですか?」
そう言いながら
俺のデスクにさらっと近づいて
モニターをのぞき込んでくる。
──近いな。
視界の端にある颯の横顔は
少し汗をかいたみたいに艶があって
髪が軽くうねってる。
香水とかは使ってないみたいだけど
シャンプーっぽい匂いがふわっとする。
「見づらくない?」
「全然 平気ですよ」
「先輩のモニター 明るくて見やすいし」
ただの素直さなのか
よくわからない。
「ここの日付 修正した方がいいと思います」
「あー ほんとだな」
「っていうか 神城、気づくの早すぎ」
「ふふ 仕事ですから」
返ってくる言葉も
特別おかしいわけじゃない。
でも 距離感だけが妙に近い。
ぐいっとモニターを指差す指先が
俺の腕にかすかに当たった。
すぐ引いたけど
なぜか 少しだけそのまま固まってるように見えた。
──いや 気のせいか。
俺が考えすぎなだけだ。
颯は元々こういう
懐っこいタイプなのかもしれないし。
「このへん 任せちゃって大丈夫?」
「もちろんです」
にこっと笑って
資料を持って颯は自分の席に戻っていった。
ぱたぱた歩く音がやけに軽い。
──まあ 仕事ができるのは助かるな。
そのくらいに思って
俺はまた画面に向き直った。
何か気になるような
でも 別に問題ないような
そんな曖昧な後味だけが
背中に残っていた。
目を開けた瞬間
一瞬どこにいるのか分からなくて
薄い天井をぼんやりと見上げた。
──ああ 神城の部屋か。
終電逃して
そのまま泊まったんだった。
体を起こすと
ソファに毛布がかかっていて
まだ少し 酒が残ってる感じがした。
「先輩 おはようございます」
明るい声がして
キッチンから颯が顔を出した。
「朝ごはん 食べますよね?」
朝から元気だな。と思いつつ
「…あっ。あるなら……」ってぼそっと返す。
「了解です」
素直に笑うその顔が
子どもみたいで無邪気だった。
焼き魚と味噌汁
卵焼きまで綺麗に巻いてあって
ちょっと驚いた。
「料理 得意なの?」
そう聞くと
颯はタオルで手を拭きながら
少し照れたように笑った。
「大学入ってから一人暮らしで
自炊ばっかです」
「慣れですよ 慣れ」
ふーん と流しながら
箸を受け取った。
「昨日はありがとうございました」
「泊まってくれて 嬉しかったです」
その言い方に
ちょっとだけ違和感を覚える。
──いや 泊めてもらったの 俺の方だけど。
まあいいかと思って
「助かったよ」って返す。
「また 今度も 終電なくなったら」
「うち 来てください」
声のトーンはずっと優しいままなのに
言葉の奥に
なにか“決定事項”みたいなものを感じた。
誘いというより
もう“そうなる前提”みたいな。
でも
今そんなことを深く考えるほど
頭も回ってなかった。
「……じゃあ 今度 飲み会あったらな」
適当に返して
味噌汁に口をつける。
ふと視線を落とすと
近くのゴミ箱が目に入った。
昨日の夜は 空だったはずの場所に
ティッシュがぐしゃっと詰まっている。
──こんなに 使ったっけ。
わからないけど
あえて何も聞かず
そっと目をそらした。
* * *
「先輩 ここの資料 持ってきました」
昼過ぎのオフィス。
颯は相変わらず動きが早い。
「おつかれ ありがと」
「一緒にチェックしてもいいですか?」
そう言いながら
俺のデスクにさらっと近づいて
モニターをのぞき込んでくる。
──近いな。
視界の端にある颯の横顔は
少し汗をかいたみたいに艶があって
髪が軽くうねってる。
香水とかは使ってないみたいだけど
シャンプーっぽい匂いがふわっとする。
「見づらくない?」
「全然 平気ですよ」
「先輩のモニター 明るくて見やすいし」
ただの素直さなのか
よくわからない。
「ここの日付 修正した方がいいと思います」
「あー ほんとだな」
「っていうか 神城、気づくの早すぎ」
「ふふ 仕事ですから」
返ってくる言葉も
特別おかしいわけじゃない。
でも 距離感だけが妙に近い。
ぐいっとモニターを指差す指先が
俺の腕にかすかに当たった。
すぐ引いたけど
なぜか 少しだけそのまま固まってるように見えた。
──いや 気のせいか。
俺が考えすぎなだけだ。
颯は元々こういう
懐っこいタイプなのかもしれないし。
「このへん 任せちゃって大丈夫?」
「もちろんです」
にこっと笑って
資料を持って颯は自分の席に戻っていった。
ぱたぱた歩く音がやけに軽い。
──まあ 仕事ができるのは助かるな。
そのくらいに思って
俺はまた画面に向き直った。
何か気になるような
でも 別に問題ないような
そんな曖昧な後味だけが
背中に残っていた。
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