先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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神城 颯という後輩:04

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金曜の夜。

前回から短い間隔で行われた
会社の飲み会は、わいわいと盛り上がっていた。

誰かが冗談を飛ばせば、すぐに笑いが起きる。
グラスの音が重なって、空気が少し熱を帯びていた。

「御影くんって、絶対顔採用だよね」

「わかる! てか営業って
 顔面偏差値高くない?」

「神城くんもでしょ。
 あの子、めちゃくちゃ可愛くない?」

「わかるー。可愛いのに
 礼儀もちゃんとしてるし」

「ていうか、肌綺麗すぎー
 なに使ってんだろ」

そんな他部署の女性社員たちの

会話がテーブルのあちこちから聞こえてくる。

柊は笑いながら、グラスを傾けた。

「飲みづらくなるから、やめてくれって」

「いやいや、面倒見いいし
 中身までイケメンとか反則」

「そっちこそ、言いすぎ。
 褒めすぎだって」

苦笑しながら応じたものの
慣れた流れだった。

顔のことは、入社当初から
よく言われている。
それが得かどうかは
本人にはよくわからないままだ。

「先輩って、彼女いないんですか?」

と、不意に颯が口を開く。

その声は控えめで
でもちゃんと通るトーンだった。

「ん? あぁ。いないよ。」

「意外です」

「そうか?」

「いや、だって……」

颯は、なぜかそれ以上は言わずに笑った。

周囲から「ほんと可愛いなあ、神城くん」とか
「弟に欲しい」とか、そんな声が聞こえる。

柊はそのやりとりを受け流すように

ビールを飲み干した。

「神城くんは? 彼女とかいるの?」

「いないです。恋愛とか
 よくわからないんで。」

「わからないって、どういうこと?」

「なんか、そういうの苦手で……」

「なるほどね」

「どうせいなくなっちゃうなら
 最初からなんかその
 別にいいかな...みたいな感じです」

「……めんどくさいタイプ?」

「えへへ。よく言われます」

颯は、さらっと笑う。

それが照れ隠しなのか

本音なのかはわからなかった。

「先輩は、どうなんですか? 
 独占欲とか、出るほうですか?」

「俺は……どうだろ。
 相手によるんじゃない?」

「へえ」

「でもまぁ、依存されるのは
 ちょっと苦手かも。
 気楽なのが好きなんだよね」

「……やっぱり」

「やっぱりってなに」

「自分でちゃんと立ってる人って
 そういう感じします」

「だけど、そう言ってる人ほど
 多分、依存体質なんですよね...」

「ははは。実はそうなのかもね。」

笑いながら、柊は颯のグラスに静かに水を注ぐ。

「……ありがとうございます」

「飲みすぎだぞ。新入社員」

「気をつけます」

頬を少し赤らめた颯が
ぺこりと頭を下げた。

そういうところだけ見ると
確かに“弟っぽい”。

会話はまた、別の誰かにバトンが
渡るように移っていく。

やがて話題は、学生時代の恋バナに。

「御影くんって、初カノ何歳?」

「中3の時だったかなあ。」

「どんな子だったの?」

「まあ……普通の子だったよ」

「へえ~」

「若かったしね。自然消滅」

「惜しいことしたね」

「かもね。まあ、学生時代の恋なんて
 そんなもんでしょっ」

時計を見れば、0時を過ぎていた。

喧騒の中
颯はずっと静かに
柊の横にいた。

何も言わずに
ずっと笑っていた。
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