先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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颯に手錠をかけられて:02

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天井から吊るされた金具に
柊の両手は固定された。
部屋干し用の竿を通すフックだった。

そして次の瞬間
颯のネクタイが
ふわりと視界を覆う。

「……ちょっとだけ
 目を貸してください。」

軽く微笑む声が、近くで囁く。
いつものように優しいトーン。
けれどそこには、明確な“意図”があった。

光を奪われた瞬間
空間が曖昧になる。
聴覚と、肌に伝わる感覚だけが
研ぎ澄まされていく。

目隠しされて両腕を
上から吊るされている
なんとも無様な格好だ。

「こうしてると
 何をされるか分からなくて……
 余計に体が疼きますよね……?」

指先が、ゆっくりとシャツにかかる。
一つ、また一つとボタンが外されるたびに
肌に触れる空気が変わる。
それだけで、身体が小さく跳ねる。

「先輩って、ほんと可愛いです」

「声も……息づかいも……全部
 僕のものだって思うと
 嬉しくてたまらないです。」

甘く、静かな囁きが耳元に届く。

「触られるより、こうして
 じっとされてるほうが……
 ずっと恥ずかしいでしょ?」

「でも、大丈夫です。」

「僕がちゃんと
 可愛がってあげますから。」

触れているのは、指先だけ。
けれどその言葉のひとつひとつが
柊の呼吸を乱していく。

理性の奥、支配される悦びが
じわじわと身体の奥から滲み出す。

そして、優しくも容赦のない声が続く。

「先輩、さっき“拘束してほしい”
 ってお願いしましたよね?」

「じゃあ、ちゃんと……
 覚悟できてるってことですよね?」

いつもと変わらぬ、あどけない声。
そのまま、当たり前のように
柊を追い詰めていく。

視界を失った柊は、ただ息を呑み
熱を持った自分の身体に
翻弄されていく。

そして──その支配の続きを
どこかで望んでいた。

▶︎

視界を奪われたまま
頭上で金属音が再び鳴る。

引き締まった拘束具に
柊の呼吸がひとつ荒くなる。
その反応を、颯は見逃さなかった。

「……先輩。」

すぐそばで、小さな笑い声が落ちる。
どこまでもあどけないトーン。

「さっきから
 ここ……こうなってましたよ?」

指先が、ズボンの上から
突起した熱いものに軽く触れる。

ほんの少し触れただけで
火照った身体が微かに震える。

「触ってもないのに……」

「言葉と拘束だけで
 こんなに硬くしてる。」

甘く責めるように、囁く。

「先輩、拘束だけで……
 ほんとに満足ですか?」

「もっと………
 欲しいんじゃないですか?」

言葉の圧だけで
膝が崩れそうだった。

理性の奥でずっと
否定してきた欲望が
静かに形を持ち始めている。

「……っ、俺……」

柊の唇が震える。

その声の奥に、確かに“渇望”があった。

颯は、すでに分かっていた。

その身体が求めているのは
ただの刺激じゃない。

「僕の匂い、欲しいんですよね?」

耳元で、香りとともに
吐きかけられるような声。

「全部、欲しいんですよね?」

「……だったら
 ちゃんと教えてください。」

「何が……欲しいのか。」

頬にかかる吐息が甘くて熱い。
柊は、視界を塞がれたまま
縛られた両手に力が入る。

そして、堪えきれずに――

「……匂いが、欲しい」

「……お前の……
 匂いが全部……欲しい……」

それは願望。
敗北にも近い囁きだった。
けれど、もう抗えなかった。

身体が、心が
もうとっくに──
支配されていたから。
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