先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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自ら咥える 夜のオフィス:05

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──ガチャ。

突然、無機質な音がオフィスに響いた。
思わず、柊の身体がびくりと跳ねる。

振り返ると、ドアの隙間から覗いたのは
警備会社の制服を着た若い男性だった。
見回りの時間──そう気づくのに
時間はかからなかった。

幸い、証拠はない。
衣服も整っていたし
音もすでに止んでいた。

男は軽く頭を下げるだけで
室内を深く覗くことなく引き下がった。

「……ふぅ……」

柊は静かに息をつき

「もう終わったので、出ます」

とだけ言い残して、
さりげなく鞄を手に取った。

新都の夜は、ひどく冷え込んでいる。
街灯に照らされた舗道には
昼間の喧騒の名残がほのかに残っていた。

ほんの数分前まで──
自分は膝をついて
忠実な犬のように主人を
咥えていたというのに。

「……さっきの、ワンコくん
 ほんっとに可愛かったなぁ」

隣を歩く颯が、嬉しそうに
笑いながらからかってくる。

「ていうか、先輩の方から
 “咥えさせてください”なんて
 ちょっと反則ですよね」

「僕、今もまだゾクゾクしてるんですけど」

冗談めいた声と
振り向きながら笑う顔の中に
本音がにじんでいる気がした。

──“求めてくれて、嬉しかった”

それを素直に口にする
颯の顔を見て、柊はふと足を緩めた。

嬉しい。
そう思った。
でも、同時に──どこか違和感があった。

今までの颯は、終わったあとに
行為に触れることはなかった。

次の日には何もなかったかのように
振る舞い、余韻を“味わう”こともなかった。

だからこそ、あの時間は
どこか夢のようで、
現実との境界が曖昧なままに
成り立っていた。

けれど今日は、違う。

自分の意志で求めた
颯の精液が今も柊の胃の奥で
確かに温かく残っている。

そして、その行為を終わった後に
褒めてくれる言葉。

(……これは夢じゃない)

そう思った瞬間
胸の奥に小さなざらつきが残った。

だけど──これは現実なのだと

はっきり分かってしまった。

それが、嬉しさと共に
ほんの少しだけ怖かった。

だけど....
少しずつ夢と現実の境界は明確になっていく。

この日から、颯の支配は
少しずつ確かに変わっていった。

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