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怠惰の章
⑥
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長髪の男がベッドで寝転がっていた。
中性的な顔立ちと、細く白い肌に、はだけた服装だ。
外で人と会う格好じゃない。
予想通り、奴はここで自堕落に生活しているらしい。
「おかしいなぁ~ 大した魔力は感じなかったのにぃ」
「偽装しているからな。魔力の流れは完全にコントロールしている」
俺は街に入る前に、自らの魔力を抑え込んだ。
一般人に偽装するために。
そこから吸収される魔力量も、自らの意思で調整し、極微量に抑え込んでいた。
「へぇ、すごいねぇ~」
「お前が【怠惰】を持ち去った使い手だな?」
「そうだよぉ~」
彼の首には金属の輪が装着されている。
禍々しい魔力の塊。
間違いなくあれが【怠惰】の……首輪か。
「ここれ街の人間から生命力と魔力を吸収し、自身は眠ったまま快適な生活をしていた、というわけか」
「正解! とっても最高だよ。何もしなくても栄養はとれるし、食事もいらないからねぇ。一日中ぼーっとしてればいいんだ。羨ましいだろう?」
「……別に」
何それ羨ましい!
自分は何の苦労もしないで自堕落な生活が遅れる?
過酷な修行も、面倒な家事も、働く必要だってない。
ただ寝ているだけですべてが賄えるなんて理想的な……いや、惑わされるな!
「それを回収しに来た。大人しく渡せば、手荒なことはしない」
「困るなぁ……これがないと生活できないし、邪魔するなら吸い取るよ?」
「できるものならな」
「……あれ?」
ようやく気付いたらしい。
俺から何も吸い取れないことに。
「よく見ろ。俺の足元を」
「……ちょっと浮いてる?」
小指の関節一つ分くらい、俺の足は床から浮いている。
「お前の呪具は間接的にでも触れていないと発動しないだろ?」
「あーそういうこと……めんどくさいなぁ~」
のっそりと彼は起き上がる。
効果がないとわかり抵抗する気を失った?
いや、違う。
彼は右手を俺に向ける。
「じゃあ殺すね」
瞬間、男の手掌から高圧縮された魔力が解放された。
指向性を持った魔力の放出は、建物の壁を破壊し、外へと俺を押し出す。
俺は空中でくるりと回転し、勢いを殺して宙に浮かぶ。
「なるほど。吸い取った魔力を放出できるのか」
「そうだよぉ~ ここの人たちがいる限り、俺の魔力は無限に近いからねぇ」
「そうらしいな」
「ねぇ、めんどうだから帰ってくれない? 別にさぁ、俺ってここにいるだけで悪さしてないじゃんかぁ~ ただ平和に過ごしたいだけなんだよぉ」
平和?
この街のどこに平和がある?
あいつ一人の幸福のために、何千、何万という人間が苦しみ犠牲になっているというのに。
「それはできない相談だな。お前みたいな引きこもりは、強引にでも外に引っ張り出す!」
俺は左手を怠惰の男にかざす。
空気を掴むように指を曲げ、大きく引き上げる。
「え、うわあ!」
男は俺の眼前まで引き寄せられる。
「な、なにこれ!?」
「【天芯倶舎】――【十纏】、無愧」
その効果は引力と斥力を操る。
左手は引力で対象を引き寄せ、右手は斥力によって弾き飛ばす。
この二つの力の応用で、俺は宙に浮かんでいる。
「大人だろ? いつまでも他人のスネをかじっていちゃダメだ」
「えぇ……こっちのほうが楽だし楽しいよ?」
「お前だけだろ? たくさんの人に迷惑をかけてまで、一人の幸福を維持するのは不平等だ。ちゃんと――」
「ええ~」
「働け! 引きこもり野郎!」
右手をかざし、怠惰な男を吹き飛ばす。
吹き飛んだ男は元いた部屋のベッドを突き壊し、建物の一階まで落下した。
「俺だって働いてるんだ。一人だけ楽は許さないぞ」
というのが本音である。
それにしても、戦いの最中でも怠惰の姿勢を崩さない。
その点は凄いと尊敬しておこう。
しかしこの世は、働かざる者食うべからずだ。
中性的な顔立ちと、細く白い肌に、はだけた服装だ。
外で人と会う格好じゃない。
予想通り、奴はここで自堕落に生活しているらしい。
「おかしいなぁ~ 大した魔力は感じなかったのにぃ」
「偽装しているからな。魔力の流れは完全にコントロールしている」
俺は街に入る前に、自らの魔力を抑え込んだ。
一般人に偽装するために。
そこから吸収される魔力量も、自らの意思で調整し、極微量に抑え込んでいた。
「へぇ、すごいねぇ~」
「お前が【怠惰】を持ち去った使い手だな?」
「そうだよぉ~」
彼の首には金属の輪が装着されている。
禍々しい魔力の塊。
間違いなくあれが【怠惰】の……首輪か。
「ここれ街の人間から生命力と魔力を吸収し、自身は眠ったまま快適な生活をしていた、というわけか」
「正解! とっても最高だよ。何もしなくても栄養はとれるし、食事もいらないからねぇ。一日中ぼーっとしてればいいんだ。羨ましいだろう?」
「……別に」
何それ羨ましい!
自分は何の苦労もしないで自堕落な生活が遅れる?
過酷な修行も、面倒な家事も、働く必要だってない。
ただ寝ているだけですべてが賄えるなんて理想的な……いや、惑わされるな!
「それを回収しに来た。大人しく渡せば、手荒なことはしない」
「困るなぁ……これがないと生活できないし、邪魔するなら吸い取るよ?」
「できるものならな」
「……あれ?」
ようやく気付いたらしい。
俺から何も吸い取れないことに。
「よく見ろ。俺の足元を」
「……ちょっと浮いてる?」
小指の関節一つ分くらい、俺の足は床から浮いている。
「お前の呪具は間接的にでも触れていないと発動しないだろ?」
「あーそういうこと……めんどくさいなぁ~」
のっそりと彼は起き上がる。
効果がないとわかり抵抗する気を失った?
いや、違う。
彼は右手を俺に向ける。
「じゃあ殺すね」
瞬間、男の手掌から高圧縮された魔力が解放された。
指向性を持った魔力の放出は、建物の壁を破壊し、外へと俺を押し出す。
俺は空中でくるりと回転し、勢いを殺して宙に浮かぶ。
「なるほど。吸い取った魔力を放出できるのか」
「そうだよぉ~ ここの人たちがいる限り、俺の魔力は無限に近いからねぇ」
「そうらしいな」
「ねぇ、めんどうだから帰ってくれない? 別にさぁ、俺ってここにいるだけで悪さしてないじゃんかぁ~ ただ平和に過ごしたいだけなんだよぉ」
平和?
この街のどこに平和がある?
あいつ一人の幸福のために、何千、何万という人間が苦しみ犠牲になっているというのに。
「それはできない相談だな。お前みたいな引きこもりは、強引にでも外に引っ張り出す!」
俺は左手を怠惰の男にかざす。
空気を掴むように指を曲げ、大きく引き上げる。
「え、うわあ!」
男は俺の眼前まで引き寄せられる。
「な、なにこれ!?」
「【天芯倶舎】――【十纏】、無愧」
その効果は引力と斥力を操る。
左手は引力で対象を引き寄せ、右手は斥力によって弾き飛ばす。
この二つの力の応用で、俺は宙に浮かんでいる。
「大人だろ? いつまでも他人のスネをかじっていちゃダメだ」
「えぇ……こっちのほうが楽だし楽しいよ?」
「お前だけだろ? たくさんの人に迷惑をかけてまで、一人の幸福を維持するのは不平等だ。ちゃんと――」
「ええ~」
「働け! 引きこもり野郎!」
右手をかざし、怠惰な男を吹き飛ばす。
吹き飛んだ男は元いた部屋のベッドを突き壊し、建物の一階まで落下した。
「俺だって働いてるんだ。一人だけ楽は許さないぞ」
というのが本音である。
それにしても、戦いの最中でも怠惰の姿勢を崩さない。
その点は凄いと尊敬しておこう。
しかしこの世は、働かざる者食うべからずだ。
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