24 / 52
第23話 伯爵令嬢に怪しまれる
しおりを挟む
今、私の目の前ですごい剣幕で怒っている彼女について、ここへ連れてこられるまでの少しの時間の間に日記に書かれていた事を思い出してみたけど、彼女の所業というか、正確には彼女が下っ端に指示した事は幼稚ないじめが多かった。
だから、この子は小物だと思うのよね…。
毒をノアに飲ませる様な度胸はなさそう。
「ちょっと聞いているの?!」
ぼんやりと考えていたせいで私の反応がなかったからか、ばん、と怒りの形相で目の前にあるテーブルをミラベル伯爵令嬢が叩いた。
そのせいでテーブルの上にのっていたカップがソーサーにぶつかって、がちゃがちゃと音を立てた。
「もちろん、聞いておりますとも。近付くな、というのは今日のお昼の事を言ってらっしゃいます? それなら、私から近付いたのではなく、彼から隣に座られたんですよ? キース本人に、あなたに近付くと私は怖い人に呼び出されちゃうから来ないでと言えば良かったのでしょうか?」
聞き終えてから、うふふと笑う。
「そんな態度で良いと思ってらっしゃるの?」
すると、ミラベル伯爵令嬢は怒りをぶつけるように、テーブルの上に乱暴に扇を置いてから続ける。
「イッシュバルド家の方と婚約をされたせいで、そうやって大きく出られているんでしょうけれど、そんなもの、私の父にかかればすぐに破談にできますわよ!」
えらく大きな事を言ってきたので、小首を傾げて聞いてみる。
「破談にするとはどうやって? イッシュバルド公爵家の意見を変えられると言うのですか? あなたのお父様って貴族界の裏ボスか何かですか?」
「う、裏ボスって何よ!? イッシュバルド公爵家にあなたの悪い噂を流すなんて簡単です! 何よりもうすでにあなたの評判は地に落ちているんですから!」
「その評判が地に落ちている私と婚約を望んだのは、イッシュバルド家ですけど……?」
わざわざ、こんなわかりきった事を答えないといけないのかと思って苦笑したのが悪かったのか、私の言葉を聞いたミラベル伯爵令嬢の怒りのボルテージが上がる。
「婚約者がいながら他の男性と一緒に食事をするだなんて許せませんわ!」
「その婚約者は私の左隣にいましたが見えませんでした? おかしいですね。いつの間に私の婚約者は幽霊に? それともミラベル伯爵令嬢の目にはキース様以外の男性は透明人間か何かになってしまって見えないとかですか?」
「あなたは私を馬鹿にしているの!?」
「馬鹿にしているんじゃなくて質問しているだけです。あ、恋は盲目って言いますし、キース様のことしか見えなかったんですね。失礼いたしました! ご安心ください。あの時、私の婚約者はすぐ隣りにいましたし、彼はキース様と仲良くした方が良いとおっしゃってますの。キース様と私の婚約者は同じクラスになって仲良くなったみたいです」
イライラしているミラベル伯爵令嬢が面白くなってきて、首の前あたりで手を合わせてにっこりと微笑んでから、小首を傾げる。
「で、どうやって婚約を破断にさせるおつもりで?」
「だから言っているでしょう! 私のお父様の力を使って…!」
「ミラベル伯爵の力を使って?」
「あなたの家の評判をもっと貶めて、学園にも来れないようにしてさしあげるわ!」
キュレル家に迷惑をかけられるのは困るわね。
学園に来れなくなる事に関しては、別に私は学園に通いたいわけじゃないから良かったりするけど、ノアの事は気になるし、どうしようかしら…。
それに学園に行かない学生だと、やはり評判は良くないだろうし、来てほしくないと言うのなら、そういう環境を整えてもらいましょう。
「学園に来れなくなるという事は、私の結婚を早めて下さるという事かしら?」
「……何を言っているの?」
「家にずっといるわけにはいきませんし、それならお嫁に行った方が良いですよね? なので、イッシュバルド家にお話をしてほしいんですが?」
私にかなり苛立ってはいるけれど、さすがに今までのアリスと違う事に気付いたらしく、ミラベル伯爵令嬢が私のお願いには何も反応せずに聞いてくる。
「……あなた、本当にキュレル子爵令嬢ですの?」
「もちろんですわ」
憑依した事を正直に話をしてやる義理もないので、大きく頷いてから心の中で呟く。
彼女がアリスをいじめていたという決定的な証拠がほしい。
だから、いいかげん、私に手を出すなり暴言を吐いてくれないかしら?
だから、この子は小物だと思うのよね…。
毒をノアに飲ませる様な度胸はなさそう。
「ちょっと聞いているの?!」
ぼんやりと考えていたせいで私の反応がなかったからか、ばん、と怒りの形相で目の前にあるテーブルをミラベル伯爵令嬢が叩いた。
そのせいでテーブルの上にのっていたカップがソーサーにぶつかって、がちゃがちゃと音を立てた。
「もちろん、聞いておりますとも。近付くな、というのは今日のお昼の事を言ってらっしゃいます? それなら、私から近付いたのではなく、彼から隣に座られたんですよ? キース本人に、あなたに近付くと私は怖い人に呼び出されちゃうから来ないでと言えば良かったのでしょうか?」
聞き終えてから、うふふと笑う。
「そんな態度で良いと思ってらっしゃるの?」
すると、ミラベル伯爵令嬢は怒りをぶつけるように、テーブルの上に乱暴に扇を置いてから続ける。
「イッシュバルド家の方と婚約をされたせいで、そうやって大きく出られているんでしょうけれど、そんなもの、私の父にかかればすぐに破談にできますわよ!」
えらく大きな事を言ってきたので、小首を傾げて聞いてみる。
「破談にするとはどうやって? イッシュバルド公爵家の意見を変えられると言うのですか? あなたのお父様って貴族界の裏ボスか何かですか?」
「う、裏ボスって何よ!? イッシュバルド公爵家にあなたの悪い噂を流すなんて簡単です! 何よりもうすでにあなたの評判は地に落ちているんですから!」
「その評判が地に落ちている私と婚約を望んだのは、イッシュバルド家ですけど……?」
わざわざ、こんなわかりきった事を答えないといけないのかと思って苦笑したのが悪かったのか、私の言葉を聞いたミラベル伯爵令嬢の怒りのボルテージが上がる。
「婚約者がいながら他の男性と一緒に食事をするだなんて許せませんわ!」
「その婚約者は私の左隣にいましたが見えませんでした? おかしいですね。いつの間に私の婚約者は幽霊に? それともミラベル伯爵令嬢の目にはキース様以外の男性は透明人間か何かになってしまって見えないとかですか?」
「あなたは私を馬鹿にしているの!?」
「馬鹿にしているんじゃなくて質問しているだけです。あ、恋は盲目って言いますし、キース様のことしか見えなかったんですね。失礼いたしました! ご安心ください。あの時、私の婚約者はすぐ隣りにいましたし、彼はキース様と仲良くした方が良いとおっしゃってますの。キース様と私の婚約者は同じクラスになって仲良くなったみたいです」
イライラしているミラベル伯爵令嬢が面白くなってきて、首の前あたりで手を合わせてにっこりと微笑んでから、小首を傾げる。
「で、どうやって婚約を破断にさせるおつもりで?」
「だから言っているでしょう! 私のお父様の力を使って…!」
「ミラベル伯爵の力を使って?」
「あなたの家の評判をもっと貶めて、学園にも来れないようにしてさしあげるわ!」
キュレル家に迷惑をかけられるのは困るわね。
学園に来れなくなる事に関しては、別に私は学園に通いたいわけじゃないから良かったりするけど、ノアの事は気になるし、どうしようかしら…。
それに学園に行かない学生だと、やはり評判は良くないだろうし、来てほしくないと言うのなら、そういう環境を整えてもらいましょう。
「学園に来れなくなるという事は、私の結婚を早めて下さるという事かしら?」
「……何を言っているの?」
「家にずっといるわけにはいきませんし、それならお嫁に行った方が良いですよね? なので、イッシュバルド家にお話をしてほしいんですが?」
私にかなり苛立ってはいるけれど、さすがに今までのアリスと違う事に気付いたらしく、ミラベル伯爵令嬢が私のお願いには何も反応せずに聞いてくる。
「……あなた、本当にキュレル子爵令嬢ですの?」
「もちろんですわ」
憑依した事を正直に話をしてやる義理もないので、大きく頷いてから心の中で呟く。
彼女がアリスをいじめていたという決定的な証拠がほしい。
だから、いいかげん、私に手を出すなり暴言を吐いてくれないかしら?
331
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
悪役令嬢まさかの『家出』
にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。
一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。
ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。
帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!
婚約者の命令で外れない仮面を着けた私は婚約破棄を受けたから、仮面を外すことにしました
天宮有
恋愛
婚約者バルターに魔法が上達すると言われて、伯爵令嬢の私シエルは顔の半分が隠れる仮面を着けることとなっていた。
魔法は上達するけど仮面は外れず、私達は魔法学園に入学する。
仮面のせいで周囲から恐れられていた私は、バルターから婚約破棄を受けてしまう。
その後、私を恐れていなかった伯爵令息のロランが、仮面の外し方を教えてくれる。
仮面を外しても魔法の実力はそのままで、私の評判が大きく変わることとなっていた。
婚約破棄された私。大嫌いなアイツと婚約することに。大嫌い!だったはずなのに……。
さくしゃ
恋愛
「婚約破棄だ!」
素直であるが故に嘘と見栄で塗り固められた貴族社会で嫌われ孤立していた"主人公「セシル」"は、そんな自分を初めて受け入れてくれた婚約者から捨てられた。
唯一自分を照らしてくれた光を失い絶望感に苛まれるセシルだったが、家の繁栄のためには次の婚約相手を見つけなければならず……しかし断られ続ける日々。
そんなある日、ようやく縁談が決まり乗り気ではなかったが指定されたレストランへ行くとそこには、、、
「れ、レント!」
「せ、セシル!」
大嫌いなアイツがいた。抵抗するが半ば強制的に婚約することになってしまい不服だった。不服だったのに……この気持ちはなんなの?
大嫌いから始まるかなり笑いが入っている不器用なヒロインと王子による恋物語。
15歳という子供から大人へ変わり始める時期は素直になりたいけど大人に見られたいが故に背伸びをして強がったりして素直になれないものーーそんな感じの物語です^_^
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる