あなた方には後悔してもらいます!

風見ゆうみ

文字の大きさ
5 / 45

4   陛下からの提案

しおりを挟む
「次女や次男に国花が浮き出るだなんて、今まで聞いた事のない話だが、実際どうなんだ?」

 私の話を聞き終えた陛下がお父様に尋ねられます。

「そうだな。私も聞いた事がない。調べれば遠い昔にはあったのかもしれないが…。ただ、今の状況なら、リサに国花が出てもおかしくないだろうな」

 そう言って、お父様が知っている範囲になりますが、私に対するお母様の所業を、陛下に話をして下さいました。

「それはひどい! リサ、どうして言ってくれなかったんだ! 何か出来たかもしれないのに…」

 陛下は私を悲しげな目で見たあと、お父様に言います。

「大体、お前もそこまでわかっていて、なぜ対処しなかったんだ! お前も悪いぞ!」
「身内の恥だからだよ。それに、自分が生んだ娘なんだ。育てていく内に愛情が芽生えると思ったんだよ」
「お前は呑気すぎる!」

 お父様と陛下は、同学年で同じ学園に通っておられたそうです。
 ミドノワール国と陛下の国であるエストラフィー国は友好国で、行き来もしやすく、学問に関しては、ミドノワールの学園が有名なため、陛下が学園に通う際に、この城に滞在しておられたそうです。
 普通なら友好国とはいえ、他国の王子を城に住まわせたりすると、人質ととられかねなかったりするのですが、そんな話題は一切、上がらなかったそうです。

 お父様の前は私のお祖母様で、女王だったからかもしれません。

 エストラフィー国は男性しか王位は継げません。
 なぜ、女性が王位を継げないかというと、男尊女卑が根強いからなんだそうです。
 ですから、先代のエストラフィーの国王陛下はまさに、女王であるお祖母様を下に見ておられたようでした。
 もちろん、お祖母様は優しくて大人の対応が出来る方でしたから、前国王陛下がそんな事を思っているとわかっていたとしても、ロンバルディー国王陛下に優しくされたそうです。
 だから、今もこの様に二人が仲良くされているわけですが。
 そうそう、もう一つ大事なお話があるのでした。

「あと、お父様にもう一つ報告があります」
「他にもあるのか?」
「ええ。先程、オッサムから婚約破棄を言い渡されました」
「なんだって!?」

 お父様だけでなく、陛下までもが聞き返してこられました。
 先程のオッサム達との話をすると、陛下は何度も頷きながら言います。

「野心があるのは良いが、リサが女王になるかもしれないと見抜けなかったところで駄目だな。よし、婚約の破棄を受けなさい」
「おい。君が決める事じゃないだろう」
「お前が動けないから俺が動いてやるんだ」
「そんな事がわかったら、他国への越権行為だとして君の立場が悪くなるぞ!」
「ここだけの秘密だ。なあ、リサ?」
「もちろんでございます」

 頭を下げるようにして頷くと、陛下は笑顔で言われます。

「そんなに姉と結婚したいなら、その婚約者と姉を結婚させれば良い。結婚をさせた後に、リサに国花が浮かび上がった事を発表すると一番面白くなりそうだ」
「意地の悪いことをするなあ…。ブランカも私の娘なんだぞ?」
「そう思うなら、どうしてこんな事になるまで放置していた。というか、もしかして、お前の病はそのせいなんじゃないのか?」

 陛下が言うと、お父様も何かに気付いたような、はっとした顔をされました。

「国王らしくない振る舞いをしていたという事か?」
「そうかもしれないぞ。リサの元婚約者が考えていたように、みんな、姉のブランカが女王になると考えている。もちろん、お前もそうだったろう。それがわかっていたのに、女王になるにふさわしくない、ブランカの行動をお前は止めもしなかった」
「…それは、そうかもしれないな…」

 お父様が唇を噛み締めて俯かれました。
 
 もし、陛下の言う通りだとすれば…。

「という事は、これからのお父様の動き方によっては、体調が良くなるかもしれないという事ですよね?」

 私の言葉にお父様と陛下は大きく頷いてくれます。

「きっとそうだろう」
「これからは、ブランカをきっちり叱って、リサを支えるようにする。それに、任せきりになっている仕事もしっかりやらないといけないな。ああ、そう思うと、身体が軽くなった様な気がする」
「おい、そんな簡単に治るものじゃないだろう」

 お父様と陛下が笑い合っているのを見ると、なんだか心がほっこりしました。
 ニコニコしてお二人を見ていると、陛下が私の方を見て、動きを止められました。

「どうかされましたか?」
「リサ、お前には好きな男性がいたりするのか?」
「いいえ!」

 大きく首を横に振ると、陛下はにっこりと微笑んで言われます。

「リサ、俺の息子を新たな婚約者にするのはどうだ? あいつなら、リサの良い協力者にもなるだろう」
「あいつ、とは?」
「さすがに王太子はやれんが、第2王子なら大丈夫だ」
「え? で、ですが、第2王子殿下にも婚約者がいらっしゃるのでは?」
「それが、決まっていた婚約者に婚約破棄されてからは断られてばかりなんだ…。第2とはいえ王子が相手だというのに…」

 陛下は大きくため息を吐いてから、肩を落とされました。
 そんな陛下に、お父様が尋ねます。

「第2王子というとクレイか。たしかやんちゃ坊主だったという事は覚えているが…」
「ここ何年か、急に言葉遣いが悪くなって、そのせいで婚約者からも断られてな。今はふてくされて面倒な事になっている。だが、親である俺が言うのもなんだが、仕事は出来るし、腕も立つし、根は真面目で優しい男だ。一度、会ってみないか?」
「は、はい! よろしくお願いいたします!」

 陛下に向かって、私は深々と頭を下げた。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

ついで姫の本気

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。 一方は王太子と王女の婚約。 もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。 綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。 ハッピーな終わり方ではありません(多分)。 ※4/7 完結しました。 ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。 救いのあるラストになっております。 短いです。全三話くらいの予定です。 ↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。 4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。

カナリア姫の婚約破棄

里見知美
恋愛
「レニー・フローレスとの婚約をここに破棄する!」 登場するや否や、拡声魔道具を使用して第三王子のフランシス・コロネルが婚約破棄の意思を声明した。 レニー・フローレスは『カナリア姫』との二つ名を持つ音楽家で有名なフローレス侯爵家の長女で、彼女自身も歌にバイオリン、ヴィオラ、ピアノにハープとさまざまな楽器を使いこなす歌姫だ。少々ふくよかではあるが、カナリア色の巻毛にけぶるような長いまつ毛、瑞々しい唇が独身男性を虜にした。鳩胸にたわわな二つの山も視線を集め、清楚な中にも女性らしさを身につけ背筋を伸ばして佇むその姿は、まさに王子妃として相応しいと誰もが思っていたのだが。 どうやら婚約者である第三王子は違ったらしい。 この婚約破棄から、国は存亡の危機に陥っていくのだが。 ※他サイトでも投稿しています。

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

【完結】優雅に踊ってくださいまし

きつね
恋愛
とある国のとある夜会で起きた事件。 この国の王子ジルベルトは、大切な夜会で長年の婚約者クリスティーナに婚約の破棄を叫んだ。傍らに愛らしい少女シエナを置いて…。 完璧令嬢として多くの子息と令嬢に慕われてきたクリスティーナ。周囲はクリスティーナが泣き崩れるのでは無いかと心配した。 が、そんな心配はどこ吹く風。クリスティーナは淑女の仮面を脱ぎ捨て、全力の反撃をする事にした。 -ーさぁ、わたくしを楽しませて下さいな。 #よくある婚約破棄のよくある話。ただし御令嬢はめっちゃ喋ります。言いたい放題です。1話目はほぼ説明回。 #鬱展開が無いため、過激さはありません。 #ひたすら主人公(と周囲)が楽しみながら仕返しするお話です。きっつーいのをお求めの方には合わないかも知れません。

悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。 処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。 まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。 私一人処刑すれば済む話なのに。 それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。 目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。 私はただ、 貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。 貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、 ただ護りたかっただけ…。 だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるい設定です。  ❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。

【完結】イアンとオリエの恋   ずっと貴方が好きでした。 

たろ
恋愛
この話は 【そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします】の主人公二人のその後です。 イアンとオリエの恋の話の続きです。 【今夜さよならをします】の番外編で書いたものを削除して編集してさらに最後、数話新しい話を書き足しました。 二人のじれったい恋。諦めるのかやり直すのか。 悩みながらもまた二人は………

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

私を愛すると言った婚約者は、私の全てを奪えると思い込んでいる

迷い人
恋愛
 お爺様は何時も私に言っていた。 「女侯爵としての人生は大変なものだ。 だから愛する人と人生を共にしなさい」  そう語っていた祖父が亡くなって半年が経過した頃……。  祖父が定めた婚約者だと言う男がやってきた。  シラキス公爵家の三男カール。  外交官としての実績も積み、背も高く、細身の男性。  シラキス公爵家を守護する神により、社交性の加護を与えられている。  そんなカールとの婚約は、渡りに船……と言う者は多いだろう。  でも、私に愛を語る彼は私を知らない。  でも、彼を拒絶する私は彼を知っている。  だからその婚約を受け入れるつもりはなかった。  なのに気が付けば、婚約を??  婚約者なのだからと屋敷に入り込み。  婚約者なのだからと、恩人(隣国の姫)を連れ込む。  そして……私を脅した。  私の全てを奪えると思い込んでいるなんて甘いのよ!!

処理中です...