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5 嬉しい出来事
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ロンバルディー国王陛下は、城の中にある客室で仮眠をとられたあと、今日の朝早くに出立されました。
お忙しい中、私の誕生日パーティーの為に足を運んで下さったみたいで、本当に申し訳ない気持ちと有り難い気持ちでいっぱいです。
早起きをした為、少し眠いですが、いつもの時間に朝食をとるためにダイニングルームに向かうと、すでに、お母様達は席に着いておられました。
ダイニングルームに入ってきた私を見ると、お母様もお姉様も上機嫌で、なんと、私に話しかけてこられました。
「リサ、あなた婚約破棄を言い出されたんですって?」
「お母様、言わないであげて下さい。昨日はあの子の誕生日だったんですのよ? それなのに婚約破棄だなんて、あまりにもおめでた…じゃないわ。可哀想じゃないですか」
テーブルの向かい側に座って、仲よさげに寄り添う二人を見て、私は大きくため息を吐きます。
昨日までは散々、人を無視しておいて、楽しい話題が出来るとこれですか。
まあ、今の私のメンタルは昨日のように弱いものではないのでへっちゃらですが、ここは悲しむふりをしていた方が良いのでしょうね。
「酷いことを言わないで下さい」
くすんくすん、と泣き真似をしていると、お母様達は案の定、喜んでくださいました。
国花が浮き出た事については、しばらくの間は、私とお父様、それからロンバルディー国王陛下、そして私の婚約者になる予定の第2王子殿下、私を世話してくれる侍女やメイド達だけの秘密という事になりました。
侍女達に話した理由は、やはり、お風呂に入ったり、着替えを手伝ってもらう時などに隠しきれるものではないからです。
もちろん、私の周りには信用のできる侍女達しか置いておりませんから、お母様達にバレる心配はないでしょう。
あと、今持っているドレスは胸元の開いているドレスが多いため、胸元の開いていないドレスが何枚か必要になった為、それも手配しなければならなかったからです。
寸法は前に測ってもらった時のものでお願いしました。
泣き真似をしながら食事を続けていると、衝撃的な事が起きたのです。
何の断りもなしにダイニングルームの扉が開いたかと思うと、なんと、寝たきりだったお父様が現れたのです。
見慣れた寝巻き姿ではなく、シャツとパンツというラフな格好の上に、あたたかそうな毛皮のコートを着ておられ、顔の血色も良く、長く伸びてしまった髪を後ろに一つに整えた姿は、昔の爽やかなお父様を思い出させます。
「あなた!」
「お父様!」
お母様とお姉様は立ち上がって、お父様の元へ駆け寄ります。
お父様は二人を抱きしめてから、私を見て手を伸ばされます。
けれど、私は遠慮して首を横に振りました。
また妬まれても嫌ですから。
お父様が少し傷付いた様な顔をされましたので、後で、お部屋に伺って謝ろうと思います。
「体調は大丈夫なんですか?」
「顔色も良さそうですし、本当に嬉しいです。お父様! 私が毎晩、祈っていたからかしら?」
「ああ、大分楽になったよ。ありがとう、ブランカ」
お父様は優しい笑顔でお姉様の頭を撫でてから、私の元へとやって来られます。
後で人のいない時に行こうと思っていましたのに、今じゃないと駄目みたいです。
子供みたいなところがあるのですね。
「こうやって会うのは久しぶりだね、リサ」
「お父様、あまり無理はなさらないで下さいね?」
「わかってるよ」
「元気になられたなんて夢のようです」
立ち上がって、お父様に抱きつくと、すぐに抱きしめ返してくれました。
お母様やお姉様の目が気にならないくらいに、お父様が元気になって下さって、本当に嬉しいです。
ただこの感じですと、お父様がもっと早くに、お母様達を叱って下さっていれば良かったのですよ?
なんて文句の1つも言いたくなるところです。
だって、そうしてくれていれば、お父様も原因不明の病に苦しむ事はなかったのですから。
「医者もびっくりしていたよ。奇跡が起こったってね」
お父様は私にだけ見えるように、顔を近づけて目配せしてくださいました。
その様子は私に、言われなくてもわかっているよ、と言ってくれているように感じました。
なんにしても、何度も思いますが、お父様が元気になって、本当に嬉しいです!
「そういえば、先程、正式にドストコ公爵家のオッサムから連絡があったんだが、リサとの婚約を破棄して、ブランカと婚約したいと言ってきた。ドストコ公爵は婚約破棄と新たな婚約については平謝りだったが、オッサムは気にしていなさそうだ」
お父様の言葉を聞いて、お姉様が悲しそうな表情を作って、お父様に近寄ります。
「気持ちは嬉しいのですが、お父様、リサが可哀想ですわ」
「…そうだな。リサ、お前はどうなんだい? あと、当たり前の話だが、公爵がリサに謝りたいと言っていたよ」
「私はオッサムの気持ちを尊重したいと思いますので、婚約破棄を受け入れます。もちろん、ドストコ公爵からの謝罪も受け入れます」
お父様は、私がこう答える事は予想されていたので、無言で頷くと、お母様の方を見て言います。
「リサの婚約破棄に関しては了承する事にする。慰謝料は払ってくれるそうだから、リサの個人的な私財にしよう。あと、オッサムとの新たな婚約の件だが、オッサムを選ぶのかアールを選ぶのか、ブランカの好きなようにしてやりたいんだが、どう思う?」
「では、わたくしがブランカと一緒に話をしますわ」
「そうしてくれ。あと、もう一つ報告がある」
お母様とお姉様が訝しげな顔をされます。
私は無言でお父様を見つめました。
「リサには新たな婚約者が見つかった」
「…どこのどなたですか!?」
お姉様が驚いた表情で聞き返されます。
「エストラフィー国の第2王子である、クレイ殿下だ」
相手の名前を聞いた、お母様とお姉様は悔しそうな顔をして、私を睨んできました。
隣国とはいえ、公爵令息より王子の方が位は高いですからね。
今までは怖くて俯いているだけでしたが、今の私は、今までとは違います。
二人に向かって、余裕の笑顔を見せると、二人共、驚いた顔をされました。
お忙しい中、私の誕生日パーティーの為に足を運んで下さったみたいで、本当に申し訳ない気持ちと有り難い気持ちでいっぱいです。
早起きをした為、少し眠いですが、いつもの時間に朝食をとるためにダイニングルームに向かうと、すでに、お母様達は席に着いておられました。
ダイニングルームに入ってきた私を見ると、お母様もお姉様も上機嫌で、なんと、私に話しかけてこられました。
「リサ、あなた婚約破棄を言い出されたんですって?」
「お母様、言わないであげて下さい。昨日はあの子の誕生日だったんですのよ? それなのに婚約破棄だなんて、あまりにもおめでた…じゃないわ。可哀想じゃないですか」
テーブルの向かい側に座って、仲よさげに寄り添う二人を見て、私は大きくため息を吐きます。
昨日までは散々、人を無視しておいて、楽しい話題が出来るとこれですか。
まあ、今の私のメンタルは昨日のように弱いものではないのでへっちゃらですが、ここは悲しむふりをしていた方が良いのでしょうね。
「酷いことを言わないで下さい」
くすんくすん、と泣き真似をしていると、お母様達は案の定、喜んでくださいました。
国花が浮き出た事については、しばらくの間は、私とお父様、それからロンバルディー国王陛下、そして私の婚約者になる予定の第2王子殿下、私を世話してくれる侍女やメイド達だけの秘密という事になりました。
侍女達に話した理由は、やはり、お風呂に入ったり、着替えを手伝ってもらう時などに隠しきれるものではないからです。
もちろん、私の周りには信用のできる侍女達しか置いておりませんから、お母様達にバレる心配はないでしょう。
あと、今持っているドレスは胸元の開いているドレスが多いため、胸元の開いていないドレスが何枚か必要になった為、それも手配しなければならなかったからです。
寸法は前に測ってもらった時のものでお願いしました。
泣き真似をしながら食事を続けていると、衝撃的な事が起きたのです。
何の断りもなしにダイニングルームの扉が開いたかと思うと、なんと、寝たきりだったお父様が現れたのです。
見慣れた寝巻き姿ではなく、シャツとパンツというラフな格好の上に、あたたかそうな毛皮のコートを着ておられ、顔の血色も良く、長く伸びてしまった髪を後ろに一つに整えた姿は、昔の爽やかなお父様を思い出させます。
「あなた!」
「お父様!」
お母様とお姉様は立ち上がって、お父様の元へ駆け寄ります。
お父様は二人を抱きしめてから、私を見て手を伸ばされます。
けれど、私は遠慮して首を横に振りました。
また妬まれても嫌ですから。
お父様が少し傷付いた様な顔をされましたので、後で、お部屋に伺って謝ろうと思います。
「体調は大丈夫なんですか?」
「顔色も良さそうですし、本当に嬉しいです。お父様! 私が毎晩、祈っていたからかしら?」
「ああ、大分楽になったよ。ありがとう、ブランカ」
お父様は優しい笑顔でお姉様の頭を撫でてから、私の元へとやって来られます。
後で人のいない時に行こうと思っていましたのに、今じゃないと駄目みたいです。
子供みたいなところがあるのですね。
「こうやって会うのは久しぶりだね、リサ」
「お父様、あまり無理はなさらないで下さいね?」
「わかってるよ」
「元気になられたなんて夢のようです」
立ち上がって、お父様に抱きつくと、すぐに抱きしめ返してくれました。
お母様やお姉様の目が気にならないくらいに、お父様が元気になって下さって、本当に嬉しいです。
ただこの感じですと、お父様がもっと早くに、お母様達を叱って下さっていれば良かったのですよ?
なんて文句の1つも言いたくなるところです。
だって、そうしてくれていれば、お父様も原因不明の病に苦しむ事はなかったのですから。
「医者もびっくりしていたよ。奇跡が起こったってね」
お父様は私にだけ見えるように、顔を近づけて目配せしてくださいました。
その様子は私に、言われなくてもわかっているよ、と言ってくれているように感じました。
なんにしても、何度も思いますが、お父様が元気になって、本当に嬉しいです!
「そういえば、先程、正式にドストコ公爵家のオッサムから連絡があったんだが、リサとの婚約を破棄して、ブランカと婚約したいと言ってきた。ドストコ公爵は婚約破棄と新たな婚約については平謝りだったが、オッサムは気にしていなさそうだ」
お父様の言葉を聞いて、お姉様が悲しそうな表情を作って、お父様に近寄ります。
「気持ちは嬉しいのですが、お父様、リサが可哀想ですわ」
「…そうだな。リサ、お前はどうなんだい? あと、当たり前の話だが、公爵がリサに謝りたいと言っていたよ」
「私はオッサムの気持ちを尊重したいと思いますので、婚約破棄を受け入れます。もちろん、ドストコ公爵からの謝罪も受け入れます」
お父様は、私がこう答える事は予想されていたので、無言で頷くと、お母様の方を見て言います。
「リサの婚約破棄に関しては了承する事にする。慰謝料は払ってくれるそうだから、リサの個人的な私財にしよう。あと、オッサムとの新たな婚約の件だが、オッサムを選ぶのかアールを選ぶのか、ブランカの好きなようにしてやりたいんだが、どう思う?」
「では、わたくしがブランカと一緒に話をしますわ」
「そうしてくれ。あと、もう一つ報告がある」
お母様とお姉様が訝しげな顔をされます。
私は無言でお父様を見つめました。
「リサには新たな婚約者が見つかった」
「…どこのどなたですか!?」
お姉様が驚いた表情で聞き返されます。
「エストラフィー国の第2王子である、クレイ殿下だ」
相手の名前を聞いた、お母様とお姉様は悔しそうな顔をして、私を睨んできました。
隣国とはいえ、公爵令息より王子の方が位は高いですからね。
今までは怖くて俯いているだけでしたが、今の私は、今までとは違います。
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