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15 予定外の出来事
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お姉様はどうやらバーキン様に一目惚れをしてしまったようでした。
バーキン様の見た目はとても素敵ですから、わからないわけではないのですが、お姉さまは許可もしていないのに、バーキン様の隣に座り、勝手に話を始めてしまいます。
「お初にお目にかかりますわね。わたしの名前をご存知?」
「もちろん、存じ上げております。ブランカ王女殿下にお会いできて光栄です」
「まあまあ! そんな堅苦しい態度をとらないで下さいな!」
バーキン様は笑顔を作っていらっしゃいますが、どことなく引きつっている様にも見えます。
自分から声を掛けるのは良いみたいですが、女性からぐいぐい来られるのは苦手みたいですね。
「バーキン、せっかくだからブランカ王女殿下と違う場所でゆっくりお話させてもらったらどうだ?」
「そうですわ、お姉様。私の部屋ですと、私達が気になって、お話もしにくいのではないですか?」
クレイはバーキン様を、私はお姉様を追い出したいがために、協力する事にしました。
バーキン様は「裏切り者」と言わんばかりの顔でクレイを睨みましたが、クレイは一切気にした様子はありません。
お姉様はというと、普段なら私の言葉なんて聞きもしないくせに、バーキン様の腕にしなだれかかりながら言います。
「リサの言う通りですわ。よろしければ、わたしのお部屋にいらっしゃいません?」
「いや、ありがたいお申し出ですが、婚約者がいらっしゃる未婚女性の部屋に入るのは…」
「何を言ってらっしゃいますの。婚約者に関しては保留中ですのよ?」
そう言って、お姉様は頬紅のついた頬をぐりぐりとバーキン様の腕に当てます。
ああ。
バーキン様の着ていたシャツが白いだけに、お姉様の頬紅の色がついて目立ちます。
後で、バーキン様の服をメイド達に洗濯してもらう様にお願いしましょう。
それにしても、このままでは、お姉様とオッサムを結婚させるのが難しくなります。
お姉様を選んだオッサムを後悔させたいのに、意味がなくなってしまうじゃないですか!
バーキン様は計画を邪魔するつもりでしょうか…。
って、バーキン様は悪くないですね。
私が考えている間にも、二人の会話は進んでいきます。
「いえ、でも、僕はリサ様の専属の医師ですので」
「なんですって!?」
バーキン様の言葉を聞いたお姉様が、すごい顔をして私の方を睨んできました。
昔は恐れおののいていましたが、今は、クレイという味方がいるからでしょうか、恐怖の気持ちは湧いてこず、お姉様の顔をちょっと面白く感じてしまいます。
なんて、こんな事を言ってはいけませんね!
「リサ! どうやってこんな素敵なお医者様を探してきたの!?」
「クレイのお友達です。お姉様が知らなくて当たり前ですわ。この国の方ではありませんから」
「そうだったの!? 素敵なお友達をお持ちですわね、クレイ殿下」
「はあ、どうも」
クレイはうんざりした顔で答えます。
バーキン様は死んだ魚の様な目になっておられて、さすがに少し可哀想になってきた時、私の頭の中に、ある日のバーキン様の言葉が浮かんできました。
そうです!
これなら、バーキン様の目的も達成でき、なおかつ、お姉様もさすがにバーキン様を嫌いになるでしょう!
「バーキン様!」
「どうしました、リサ殿下」
「あの、あれです!」
声に出すには、ちょっとはしたない気がしましたので、口を動かして伝えます。
お姉様の胸はどうですか?
「?」
一回では伝わらなかった様なので、ジェスチャーを混じえながら伝えてみます。
お姉様の…揉みます?
「リサ!」
クレイは何を言っているのか気が付いたみたいで、私の頬を横から軽くつねってきました。
痛いです。
「一体、どうしたんだよ」
バーキン様は不思議そうにしていて、残念ながら伝わっていません。
どうしたら良いか、クレイに助けを求めてみると、大きなため息を吐いてから、バーキン様に言ってくれます。
「リサはお前がリサにお願いした事をブランカ王女にお願いしてみたらどうだ? って言ってる」
「は! そう言えば良かったんですね!」
クレイはすごいです!
そう思ってから、笑顔でバーキン様の方に振り向き、大きく首を縦に振ったのですが、バーキン様は真顔になって手を横に振られます。
「いや、無理」
「どうしてですか!?」
せっかくのチャンスなのに…と思っていると、クレイが耳打ちしてきます。
「あいつは断られるのを覚悟で言ってるだけだから、別に本気でそうしたい訳じゃないんだよ」
「そうなのですか? それなら、なぜクレイはバーキン様を蹴ったりしたんです?」
「あれが挨拶なんだよ」
「男性同士の友情には色々な形があるのですね!」
感動していると、お姉様が立ち上がって言います。
「さあ、参りましょう、バーキン様。ぜひ、わたしの身体も診ていただけますか?」
「あ、いや、別に体調が悪くないのであれば、診なくても大丈夫だと思いますが…」
「そう言われてみれば、胸が苦しい気がします…」
お姉様が頬紅などなくても頬を赤らめて苦しげに、バーキン様を見上げながら言いました。
ああ。
何か、お姉様の事を好きではないからでしょうか。
見ているだけで気分が悪くなってきました。
「よし、バーキン、出て行け」
クレイも同じ気持ちになったのでしょうか。
立ち上がると、バーキン様の腕をつかみ、無理矢理、バーキン様を立ち上がらせると、ずるずると引っ張っていきます。
「おい、クレイ!」
「サルケス伯爵、俺は第2王女の夫だぞ」
「…失礼しました、クレイ殿下」
そう言って、クレイを見つめるバーキン様の表情を見てみますと「くそ、こんな時だけ!」という様な顔をされておられて、ちょっと面白くなってしまいました。
って、このままでは計画が上手くいかなくなりますね。
まあ、バーキン様がお姉さまをフッて下さればいい事だけなんでしょうけれども…。
バーキン様の見た目はとても素敵ですから、わからないわけではないのですが、お姉さまは許可もしていないのに、バーキン様の隣に座り、勝手に話を始めてしまいます。
「お初にお目にかかりますわね。わたしの名前をご存知?」
「もちろん、存じ上げております。ブランカ王女殿下にお会いできて光栄です」
「まあまあ! そんな堅苦しい態度をとらないで下さいな!」
バーキン様は笑顔を作っていらっしゃいますが、どことなく引きつっている様にも見えます。
自分から声を掛けるのは良いみたいですが、女性からぐいぐい来られるのは苦手みたいですね。
「バーキン、せっかくだからブランカ王女殿下と違う場所でゆっくりお話させてもらったらどうだ?」
「そうですわ、お姉様。私の部屋ですと、私達が気になって、お話もしにくいのではないですか?」
クレイはバーキン様を、私はお姉様を追い出したいがために、協力する事にしました。
バーキン様は「裏切り者」と言わんばかりの顔でクレイを睨みましたが、クレイは一切気にした様子はありません。
お姉様はというと、普段なら私の言葉なんて聞きもしないくせに、バーキン様の腕にしなだれかかりながら言います。
「リサの言う通りですわ。よろしければ、わたしのお部屋にいらっしゃいません?」
「いや、ありがたいお申し出ですが、婚約者がいらっしゃる未婚女性の部屋に入るのは…」
「何を言ってらっしゃいますの。婚約者に関しては保留中ですのよ?」
そう言って、お姉様は頬紅のついた頬をぐりぐりとバーキン様の腕に当てます。
ああ。
バーキン様の着ていたシャツが白いだけに、お姉様の頬紅の色がついて目立ちます。
後で、バーキン様の服をメイド達に洗濯してもらう様にお願いしましょう。
それにしても、このままでは、お姉様とオッサムを結婚させるのが難しくなります。
お姉様を選んだオッサムを後悔させたいのに、意味がなくなってしまうじゃないですか!
バーキン様は計画を邪魔するつもりでしょうか…。
って、バーキン様は悪くないですね。
私が考えている間にも、二人の会話は進んでいきます。
「いえ、でも、僕はリサ様の専属の医師ですので」
「なんですって!?」
バーキン様の言葉を聞いたお姉様が、すごい顔をして私の方を睨んできました。
昔は恐れおののいていましたが、今は、クレイという味方がいるからでしょうか、恐怖の気持ちは湧いてこず、お姉様の顔をちょっと面白く感じてしまいます。
なんて、こんな事を言ってはいけませんね!
「リサ! どうやってこんな素敵なお医者様を探してきたの!?」
「クレイのお友達です。お姉様が知らなくて当たり前ですわ。この国の方ではありませんから」
「そうだったの!? 素敵なお友達をお持ちですわね、クレイ殿下」
「はあ、どうも」
クレイはうんざりした顔で答えます。
バーキン様は死んだ魚の様な目になっておられて、さすがに少し可哀想になってきた時、私の頭の中に、ある日のバーキン様の言葉が浮かんできました。
そうです!
これなら、バーキン様の目的も達成でき、なおかつ、お姉様もさすがにバーキン様を嫌いになるでしょう!
「バーキン様!」
「どうしました、リサ殿下」
「あの、あれです!」
声に出すには、ちょっとはしたない気がしましたので、口を動かして伝えます。
お姉様の胸はどうですか?
「?」
一回では伝わらなかった様なので、ジェスチャーを混じえながら伝えてみます。
お姉様の…揉みます?
「リサ!」
クレイは何を言っているのか気が付いたみたいで、私の頬を横から軽くつねってきました。
痛いです。
「一体、どうしたんだよ」
バーキン様は不思議そうにしていて、残念ながら伝わっていません。
どうしたら良いか、クレイに助けを求めてみると、大きなため息を吐いてから、バーキン様に言ってくれます。
「リサはお前がリサにお願いした事をブランカ王女にお願いしてみたらどうだ? って言ってる」
「は! そう言えば良かったんですね!」
クレイはすごいです!
そう思ってから、笑顔でバーキン様の方に振り向き、大きく首を縦に振ったのですが、バーキン様は真顔になって手を横に振られます。
「いや、無理」
「どうしてですか!?」
せっかくのチャンスなのに…と思っていると、クレイが耳打ちしてきます。
「あいつは断られるのを覚悟で言ってるだけだから、別に本気でそうしたい訳じゃないんだよ」
「そうなのですか? それなら、なぜクレイはバーキン様を蹴ったりしたんです?」
「あれが挨拶なんだよ」
「男性同士の友情には色々な形があるのですね!」
感動していると、お姉様が立ち上がって言います。
「さあ、参りましょう、バーキン様。ぜひ、わたしの身体も診ていただけますか?」
「あ、いや、別に体調が悪くないのであれば、診なくても大丈夫だと思いますが…」
「そう言われてみれば、胸が苦しい気がします…」
お姉様が頬紅などなくても頬を赤らめて苦しげに、バーキン様を見上げながら言いました。
ああ。
何か、お姉様の事を好きではないからでしょうか。
見ているだけで気分が悪くなってきました。
「よし、バーキン、出て行け」
クレイも同じ気持ちになったのでしょうか。
立ち上がると、バーキン様の腕をつかみ、無理矢理、バーキン様を立ち上がらせると、ずるずると引っ張っていきます。
「おい、クレイ!」
「サルケス伯爵、俺は第2王女の夫だぞ」
「…失礼しました、クレイ殿下」
そう言って、クレイを見つめるバーキン様の表情を見てみますと「くそ、こんな時だけ!」という様な顔をされておられて、ちょっと面白くなってしまいました。
って、このままでは計画が上手くいかなくなりますね。
まあ、バーキン様がお姉さまをフッて下さればいい事だけなんでしょうけれども…。
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