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24 気持ちの変化
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「な、何よ。そんな嘘をついたって信じませんから! アールは私以外の女性に興味はないはずですわ!」
「そうかな?」
「大体、あなたの言葉なんて信じられませんから!」
お姉様の言葉に今度は私が尋ねます。
「誰の言葉なら信じるんです? アール様が自分が嘘をついてたなんて認めるとは思いませんが?」
「ほ、他に女性がいるだなんて、何を根拠にそんな事を!」
「見た奴がいるんだよ。アールが女性とデートしてるところを」
「誰なんです?! どうせ、あなた達が雇った人間なんでしょう?!」
必死の形相で言うお姉様に、私とクレイは顔を見合わせます。
バーキン様はお医者様として雇ってはいますが、アール様の件で雇ったわけではありませんから…。
「まあ、雇ってるのは確かだな」
「そうですね。ただ、証人として雇った訳ではありませんが」
「何の話をしているのよ?!」
お姉様がキャンキャン喚き散らすので、勿体ぶる事を止めて、素直に答えます。
「とある方が、デート中のアール様の姿を写真で撮って下さっています。信じられないなら、お見せする事も出来ますよ?」
「そ、そんな…」
お姉様はショックを受けたのか、よろめかれます。
「デートしていたといっても、相手の方は仕事だと思います。アール様だって遊びだと思います。ですから、許してさしあげてもいいとは思いますが」
「私はそういうのでも許せないのよ! わたし以外の女性に触れるだなんて汚らわしい!」
お姉様は証拠写真も見ずに、私達だけの証言を信じるみたいです。
「お姉様が早くに婚約者を決めて差し上げなかったからでは?」
「うるさいわね! もう決まったから放っておいて!」
お姉様は叫ぶと、部屋から出ていき、廊下で待っていた自分の侍女に向かって叫びます。
「今すぐアールを呼んで頂戴! 確認したい事があると言って!」
「かしこまりました」
次女が頷いたと同時に、執務室の扉が乱暴に閉められ、お姉様達の姿は見えなくなりました。
「嵐の様な人ですね」
「本当だな。…それよりも、大丈夫か?」
「大丈夫か、とは?」
首を傾げて聞き返しますと、クレイは少し困った顔をして、わたしに近付いて来て言います。
「聞いてる俺からしたら、酷い事を言われてたから、言われた本人はもっと辛かったんじゃねぇのかと思って」
「…そうですね。でも、薄々わかっていた事です。望まれた子でしたら、もっと可愛がってくれていたはずです。望んでいなかったからこそ、同じ娘に対して、あんなに酷い対応が出来るのでしょう」
「お前は偉いな。俺だったら、もっと早くに母親にブチ切れてるよ」
「ブチ切れるを通り越したんです。元々は、私が出来損ないなのだと思っていましたから、これ以上目立って、何か悲しい事を言われたりしない様にって、必死に自分を守る事だけ考えてましたから」
「自分を守ろうとするのは当たり前の行為だろ」
「かもしれませんが、クレイが言った様に、キレてみても良かったと思うんです」
「いや、本当は良くないだろ」
クレイが呆れた様に言うので、笑ってから首を横に振ります。
「だって向こうが大人げないことをしてくるんですもの。こちらも同じ土俵に立っても良かったんじゃないかって思いまして」
「で、言いたい事を言う様にしようと思ったのか?」
「国花が出なければ、クレイと出会わなければ、私は昔のままだったと思います」
胸元に手を当ててから続ける。
「守る事も大事ですが、攻める事もしなければなりません。優しい、我慢するだけじゃ駄目なんですよ。相手を調子に乗らせるだけです」
「優しい顔が必要な時もあるが、相手によっては、意味がないからな。これから国の行事に出る様になれば、余計に判断が難しくなるけどな」
「政治的なものに関しては、口に出さない様に致します。ですが、それ以外にやらないといけない事はありますしね」
「そうだな。この国は違うみたいだけど、他の国の王家は自分で資金運用して稼いでるもんな。自分の食い扶持は自分で稼げっていつ言われるかもわからないってのもあるな」
クレイの国のエストラフィー国は不動産で儲けているみたいで、それに対する税金も納められているそうです。
ちなみにミドノワールでは王族に私有財産は認められておらず、生活する費用などは公務費として出していただいています。
簡単に言えば、王族として仕事をして、その分の費用やお給料をいただいている感じでしょうか。
もちろん、オッサムからの慰謝料は別です。
そして、この慰謝料で何か出来たら良いな、と考えています。
「私の国では王族費をゼロにするのは無理そうですが…」
「そりゃそうだろ。それに一国の国王がみすぼらしい格好で、護衛も雇う金もないんじゃ、他国に馬鹿にされるだろうし」
「そうですね。国の代表として外面だけでも良くしないといけませんよね」
いつの間にか、真面目な話に変わってしまい、お姉様の事をすっかり忘れてしまっていました。
そして、次の日には、アール様はお姉様の婚約者候補から外れ、オッサムが正式に婚約者として選ばれたのでした。
「そうかな?」
「大体、あなたの言葉なんて信じられませんから!」
お姉様の言葉に今度は私が尋ねます。
「誰の言葉なら信じるんです? アール様が自分が嘘をついてたなんて認めるとは思いませんが?」
「ほ、他に女性がいるだなんて、何を根拠にそんな事を!」
「見た奴がいるんだよ。アールが女性とデートしてるところを」
「誰なんです?! どうせ、あなた達が雇った人間なんでしょう?!」
必死の形相で言うお姉様に、私とクレイは顔を見合わせます。
バーキン様はお医者様として雇ってはいますが、アール様の件で雇ったわけではありませんから…。
「まあ、雇ってるのは確かだな」
「そうですね。ただ、証人として雇った訳ではありませんが」
「何の話をしているのよ?!」
お姉様がキャンキャン喚き散らすので、勿体ぶる事を止めて、素直に答えます。
「とある方が、デート中のアール様の姿を写真で撮って下さっています。信じられないなら、お見せする事も出来ますよ?」
「そ、そんな…」
お姉様はショックを受けたのか、よろめかれます。
「デートしていたといっても、相手の方は仕事だと思います。アール様だって遊びだと思います。ですから、許してさしあげてもいいとは思いますが」
「私はそういうのでも許せないのよ! わたし以外の女性に触れるだなんて汚らわしい!」
お姉様は証拠写真も見ずに、私達だけの証言を信じるみたいです。
「お姉様が早くに婚約者を決めて差し上げなかったからでは?」
「うるさいわね! もう決まったから放っておいて!」
お姉様は叫ぶと、部屋から出ていき、廊下で待っていた自分の侍女に向かって叫びます。
「今すぐアールを呼んで頂戴! 確認したい事があると言って!」
「かしこまりました」
次女が頷いたと同時に、執務室の扉が乱暴に閉められ、お姉様達の姿は見えなくなりました。
「嵐の様な人ですね」
「本当だな。…それよりも、大丈夫か?」
「大丈夫か、とは?」
首を傾げて聞き返しますと、クレイは少し困った顔をして、わたしに近付いて来て言います。
「聞いてる俺からしたら、酷い事を言われてたから、言われた本人はもっと辛かったんじゃねぇのかと思って」
「…そうですね。でも、薄々わかっていた事です。望まれた子でしたら、もっと可愛がってくれていたはずです。望んでいなかったからこそ、同じ娘に対して、あんなに酷い対応が出来るのでしょう」
「お前は偉いな。俺だったら、もっと早くに母親にブチ切れてるよ」
「ブチ切れるを通り越したんです。元々は、私が出来損ないなのだと思っていましたから、これ以上目立って、何か悲しい事を言われたりしない様にって、必死に自分を守る事だけ考えてましたから」
「自分を守ろうとするのは当たり前の行為だろ」
「かもしれませんが、クレイが言った様に、キレてみても良かったと思うんです」
「いや、本当は良くないだろ」
クレイが呆れた様に言うので、笑ってから首を横に振ります。
「だって向こうが大人げないことをしてくるんですもの。こちらも同じ土俵に立っても良かったんじゃないかって思いまして」
「で、言いたい事を言う様にしようと思ったのか?」
「国花が出なければ、クレイと出会わなければ、私は昔のままだったと思います」
胸元に手を当ててから続ける。
「守る事も大事ですが、攻める事もしなければなりません。優しい、我慢するだけじゃ駄目なんですよ。相手を調子に乗らせるだけです」
「優しい顔が必要な時もあるが、相手によっては、意味がないからな。これから国の行事に出る様になれば、余計に判断が難しくなるけどな」
「政治的なものに関しては、口に出さない様に致します。ですが、それ以外にやらないといけない事はありますしね」
「そうだな。この国は違うみたいだけど、他の国の王家は自分で資金運用して稼いでるもんな。自分の食い扶持は自分で稼げっていつ言われるかもわからないってのもあるな」
クレイの国のエストラフィー国は不動産で儲けているみたいで、それに対する税金も納められているそうです。
ちなみにミドノワールでは王族に私有財産は認められておらず、生活する費用などは公務費として出していただいています。
簡単に言えば、王族として仕事をして、その分の費用やお給料をいただいている感じでしょうか。
もちろん、オッサムからの慰謝料は別です。
そして、この慰謝料で何か出来たら良いな、と考えています。
「私の国では王族費をゼロにするのは無理そうですが…」
「そりゃそうだろ。それに一国の国王がみすぼらしい格好で、護衛も雇う金もないんじゃ、他国に馬鹿にされるだろうし」
「そうですね。国の代表として外面だけでも良くしないといけませんよね」
いつの間にか、真面目な話に変わってしまい、お姉様の事をすっかり忘れてしまっていました。
そして、次の日には、アール様はお姉様の婚約者候補から外れ、オッサムが正式に婚約者として選ばれたのでした。
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