26 / 45
25 いらない子
しおりを挟む
お姉様との一件があった、次の日の夜。
色々と個人的な話がしたかったので、ダイニングルームではなく、私の部屋でクレイと一緒に晩御飯を食べながら、お姉様についての話をします。
「何だか上手くいきすぎて、拍子抜けしちゃいますね」
「その方が有り難いんだから文句言うなよ」
「まあ、そうなんですけれど、お姉様、バーキン様の事は諦めたんでしょうか…」
「それに関しては、アールがバーキンも店に来ていた事を伝えたみたいだな」
「ああ。だから、不誠実だと?」
首を傾げて尋ねると、クレイは無言で首を縦に振りました。
「そういえば、オッサムはそういうお店に行っていなかったんでしょうか」
「だろうな。それに、オッサムがわざわざ伝えてきたんだから、自分もやってたら、調べられたらすぐにバレるだろうから、わざわざ、そんな話はしてこないだろ」
「そう言われてみればそうですね」
頷いてから、フィアナを見ます。
「フィアナは、そういうお店に通う人は嫌いですか?」
「恋人がいなければいいんじゃないでしょうか。それに、付き合いで行かないといけない時もありますし、私としては、行く分には良いかと思います。なんといいますか、店員と客以上の関係にならなければ良いといいますか…」
「という事は、フィアナの中では、バーキン様に対して嫌なイメージはないと?」
「それに関しましてはございません。他の事でしたらありますけれど」
「フィアナはバーキン様のどこか嫌なのですか?」
女子トークなるものをやってみたかったので、壁際に立っているフィアナに聞いてみますと、彼女はきっぱりと答えてくれます。
「軽いにも程があるでしょう。本気で言っているのかどうなのか、全くわかりません」
「フィアナ、それ、バーキンには言うなよ?」
「どういう事でしょう?」
クレイの言葉にフィアナが聞き返すと、クレイが答える。
「真面目になればフィアナが付き合ってくれるなら、あのチャラさをなくしてくる可能性がある」
「良いじゃないですか」
バーキン様が真面目になるのなら良いと思ったので言ってみると、クレイはフィアナを見ます。
「フィアナがバーキンと付き合う気があるなら良いけど、そうでないなら迷惑だろ?」
「今のところはサルケス様とどうこうなるだなんて気持ちは一切ございません」
「どうしてですか?」
「興味がないからです」
フィアナは迷いのない様子で答えてくれました。
バーキン様はフィアナにとって好きなタイプではない様です。
上手くいかないものです。
そういえば、すっかり忘れていましたが、クレイはポピー様に会ってしまいましたが、精神的には大丈夫なのでしょうか?
モヤモヤしているくらいなら、ちゃんと聞いてしまった方が良いのでしょうか?
って、おかしいですね。
どうして、モヤモヤしてしまうのでしょう?
「リサ、どうかしたのか?」
考えていると、クレイから尋ねられてしまいました。
「いえ、何でもないです」
「ならいいけど、食事が進んでないみたいだから」
「考え事をしていると駄目ですね」
「何を考えてたんだ?」
やはり、ポピー様について、どう思ったのか聞いてしまおうか迷いました。
だけど、聞いてはいけない様な気もします。
だって、私とクレイの関係は契約結婚です。
お互いに触れられたくない事はあるはずで、そこに踏み込んでもいい関係性ではないからです。
「……何でもありません」
首を横に振ると、クレイは何か言いたげに口を開きましたが、言葉を発する事は止めて、静かに口を閉じたのでした。
お姉様はアールの件がよっぽどショックだったのか、私との一件の後は部屋から出なくなり、仕事は放り出し、お母様とオッサムとしか話をしなくなったそうです。
私としては、お姉様が仕事をしてくれないのは迷惑ですが、大人しくしてくれている分には良いと思っています。
薄情な妹だと思われますかね?
だけど、私は可哀相だからといって許す事だけが正義だとは思えません。
私に対しての所業を心から謝ってくれない限りは、私は優しくしてあげる必要はないと思っています。
私の優しさを必要としている人がいたとしても、お姉様ではない事もわかりますし。
このまま時が過ぎるかと思っていましたが、そういう訳にもいきませんでした。
可愛い娘の傷付いた様子を、お母様が黙っていられる訳はありませんでした。
「リサ、あなたって子は、自分のお姉様をあんな風にして何が楽しいと言うの!?」
「楽しくはありません。ですが、お姉様の為にはなりましたでしょう?」
「為になったですって!? あなたのせいで他人が信じられなくなったのよ!?」
「私のせいではありません。アール様のせいでしょう? 最初からお姉様だけにしておけば良かったんです。もしくはお店に行くのを止めれば良かっただけです」
「あなたって子は!」
お母様は私に近付いてきたかと思うと、頬を何度も叩いてきました。
ここでやり返す訳にはいきません。
手を出し返したりしたら、王妃の権力として、私をどこかへ幽閉する可能性があります。
「お止め下さい!」
フィアナが叫んでくれたけれど、お母様の手は止まりません。
怒りで我を失ってしまっているようです。
「あんたなんか! あんたなんか生まれてこなかったら!」
「うるせぇな。なら、何で生んだんだよ」
お母様の平手打ち攻撃が止まったと同時、クレイの声が聞こえて、閉じていた目を開けると、お母様の腕をつかんでいるクレイの姿が見えたのでした。
色々と個人的な話がしたかったので、ダイニングルームではなく、私の部屋でクレイと一緒に晩御飯を食べながら、お姉様についての話をします。
「何だか上手くいきすぎて、拍子抜けしちゃいますね」
「その方が有り難いんだから文句言うなよ」
「まあ、そうなんですけれど、お姉様、バーキン様の事は諦めたんでしょうか…」
「それに関しては、アールがバーキンも店に来ていた事を伝えたみたいだな」
「ああ。だから、不誠実だと?」
首を傾げて尋ねると、クレイは無言で首を縦に振りました。
「そういえば、オッサムはそういうお店に行っていなかったんでしょうか」
「だろうな。それに、オッサムがわざわざ伝えてきたんだから、自分もやってたら、調べられたらすぐにバレるだろうから、わざわざ、そんな話はしてこないだろ」
「そう言われてみればそうですね」
頷いてから、フィアナを見ます。
「フィアナは、そういうお店に通う人は嫌いですか?」
「恋人がいなければいいんじゃないでしょうか。それに、付き合いで行かないといけない時もありますし、私としては、行く分には良いかと思います。なんといいますか、店員と客以上の関係にならなければ良いといいますか…」
「という事は、フィアナの中では、バーキン様に対して嫌なイメージはないと?」
「それに関しましてはございません。他の事でしたらありますけれど」
「フィアナはバーキン様のどこか嫌なのですか?」
女子トークなるものをやってみたかったので、壁際に立っているフィアナに聞いてみますと、彼女はきっぱりと答えてくれます。
「軽いにも程があるでしょう。本気で言っているのかどうなのか、全くわかりません」
「フィアナ、それ、バーキンには言うなよ?」
「どういう事でしょう?」
クレイの言葉にフィアナが聞き返すと、クレイが答える。
「真面目になればフィアナが付き合ってくれるなら、あのチャラさをなくしてくる可能性がある」
「良いじゃないですか」
バーキン様が真面目になるのなら良いと思ったので言ってみると、クレイはフィアナを見ます。
「フィアナがバーキンと付き合う気があるなら良いけど、そうでないなら迷惑だろ?」
「今のところはサルケス様とどうこうなるだなんて気持ちは一切ございません」
「どうしてですか?」
「興味がないからです」
フィアナは迷いのない様子で答えてくれました。
バーキン様はフィアナにとって好きなタイプではない様です。
上手くいかないものです。
そういえば、すっかり忘れていましたが、クレイはポピー様に会ってしまいましたが、精神的には大丈夫なのでしょうか?
モヤモヤしているくらいなら、ちゃんと聞いてしまった方が良いのでしょうか?
って、おかしいですね。
どうして、モヤモヤしてしまうのでしょう?
「リサ、どうかしたのか?」
考えていると、クレイから尋ねられてしまいました。
「いえ、何でもないです」
「ならいいけど、食事が進んでないみたいだから」
「考え事をしていると駄目ですね」
「何を考えてたんだ?」
やはり、ポピー様について、どう思ったのか聞いてしまおうか迷いました。
だけど、聞いてはいけない様な気もします。
だって、私とクレイの関係は契約結婚です。
お互いに触れられたくない事はあるはずで、そこに踏み込んでもいい関係性ではないからです。
「……何でもありません」
首を横に振ると、クレイは何か言いたげに口を開きましたが、言葉を発する事は止めて、静かに口を閉じたのでした。
お姉様はアールの件がよっぽどショックだったのか、私との一件の後は部屋から出なくなり、仕事は放り出し、お母様とオッサムとしか話をしなくなったそうです。
私としては、お姉様が仕事をしてくれないのは迷惑ですが、大人しくしてくれている分には良いと思っています。
薄情な妹だと思われますかね?
だけど、私は可哀相だからといって許す事だけが正義だとは思えません。
私に対しての所業を心から謝ってくれない限りは、私は優しくしてあげる必要はないと思っています。
私の優しさを必要としている人がいたとしても、お姉様ではない事もわかりますし。
このまま時が過ぎるかと思っていましたが、そういう訳にもいきませんでした。
可愛い娘の傷付いた様子を、お母様が黙っていられる訳はありませんでした。
「リサ、あなたって子は、自分のお姉様をあんな風にして何が楽しいと言うの!?」
「楽しくはありません。ですが、お姉様の為にはなりましたでしょう?」
「為になったですって!? あなたのせいで他人が信じられなくなったのよ!?」
「私のせいではありません。アール様のせいでしょう? 最初からお姉様だけにしておけば良かったんです。もしくはお店に行くのを止めれば良かっただけです」
「あなたって子は!」
お母様は私に近付いてきたかと思うと、頬を何度も叩いてきました。
ここでやり返す訳にはいきません。
手を出し返したりしたら、王妃の権力として、私をどこかへ幽閉する可能性があります。
「お止め下さい!」
フィアナが叫んでくれたけれど、お母様の手は止まりません。
怒りで我を失ってしまっているようです。
「あんたなんか! あんたなんか生まれてこなかったら!」
「うるせぇな。なら、何で生んだんだよ」
お母様の平手打ち攻撃が止まったと同時、クレイの声が聞こえて、閉じていた目を開けると、お母様の腕をつかんでいるクレイの姿が見えたのでした。
51
あなたにおすすめの小説
ついで姫の本気
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。
一方は王太子と王女の婚約。
もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。
綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。
ハッピーな終わり方ではありません(多分)。
※4/7 完結しました。
ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。
救いのあるラストになっております。
短いです。全三話くらいの予定です。
↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。
4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。
【完結】優雅に踊ってくださいまし
きつね
恋愛
とある国のとある夜会で起きた事件。
この国の王子ジルベルトは、大切な夜会で長年の婚約者クリスティーナに婚約の破棄を叫んだ。傍らに愛らしい少女シエナを置いて…。
完璧令嬢として多くの子息と令嬢に慕われてきたクリスティーナ。周囲はクリスティーナが泣き崩れるのでは無いかと心配した。
が、そんな心配はどこ吹く風。クリスティーナは淑女の仮面を脱ぎ捨て、全力の反撃をする事にした。
-ーさぁ、わたくしを楽しませて下さいな。
#よくある婚約破棄のよくある話。ただし御令嬢はめっちゃ喋ります。言いたい放題です。1話目はほぼ説明回。
#鬱展開が無いため、過激さはありません。
#ひたすら主人公(と周囲)が楽しみながら仕返しするお話です。きっつーいのをお求めの方には合わないかも知れません。
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
【完結】イアンとオリエの恋 ずっと貴方が好きでした。
たろ
恋愛
この話は
【そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします】の主人公二人のその後です。
イアンとオリエの恋の話の続きです。
【今夜さよならをします】の番外編で書いたものを削除して編集してさらに最後、数話新しい話を書き足しました。
二人のじれったい恋。諦めるのかやり直すのか。
悩みながらもまた二人は………
カナリア姫の婚約破棄
里見知美
恋愛
「レニー・フローレスとの婚約をここに破棄する!」
登場するや否や、拡声魔道具を使用して第三王子のフランシス・コロネルが婚約破棄の意思を声明した。
レニー・フローレスは『カナリア姫』との二つ名を持つ音楽家で有名なフローレス侯爵家の長女で、彼女自身も歌にバイオリン、ヴィオラ、ピアノにハープとさまざまな楽器を使いこなす歌姫だ。少々ふくよかではあるが、カナリア色の巻毛にけぶるような長いまつ毛、瑞々しい唇が独身男性を虜にした。鳩胸にたわわな二つの山も視線を集め、清楚な中にも女性らしさを身につけ背筋を伸ばして佇むその姿は、まさに王子妃として相応しいと誰もが思っていたのだが。
どうやら婚約者である第三王子は違ったらしい。
この婚約破棄から、国は存亡の危機に陥っていくのだが。
※他サイトでも投稿しています。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
私を愛すると言った婚約者は、私の全てを奪えると思い込んでいる
迷い人
恋愛
お爺様は何時も私に言っていた。
「女侯爵としての人生は大変なものだ。 だから愛する人と人生を共にしなさい」
そう語っていた祖父が亡くなって半年が経過した頃……。
祖父が定めた婚約者だと言う男がやってきた。
シラキス公爵家の三男カール。
外交官としての実績も積み、背も高く、細身の男性。
シラキス公爵家を守護する神により、社交性の加護を与えられている。
そんなカールとの婚約は、渡りに船……と言う者は多いだろう。
でも、私に愛を語る彼は私を知らない。
でも、彼を拒絶する私は彼を知っている。
だからその婚約を受け入れるつもりはなかった。
なのに気が付けば、婚約を??
婚約者なのだからと屋敷に入り込み。
婚約者なのだからと、恩人(隣国の姫)を連れ込む。
そして……私を脅した。
私の全てを奪えると思い込んでいるなんて甘いのよ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる