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27  話し合い

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 お母様の事情がわかった次の日、丁度良いタイミングでお父様も出先から帰ってこられ、お姉様も含めた、家族会議を開く事になりました。
 私の記憶にある限りでは、初めての事です。

 クレイは家族会議の中に入るのを嫌がりましたが、客観的な目で見てほしかったところもあったのと、私の夫であれば、家族に値しますので、会議に参加してもらう事をお願いして、談話室で五人で話す事になりました。
 談話室に入るのも、もういつぶりか思い出せないくらいです。
 三人掛けのソファーに私とクレイ、向かい側のソファーにお姉様とお母様が座り、私の斜め左側にある一人用のソファーにお父様が座って、話し合いが始まりました。

 まず、お母様からは正式に謝罪をいただきました。

 そして、私が生まれた事は何の役にも立たないと決めつけてしまった事、娘を生んだ自分が悪くないと正当化する為に、望まれた娘である、お姉様に対して贔屓をしてしまったのだと言われました。

 お姉様を贔屓した理由としては、お姉様はたとえ女性であっても、女王になるのであれば、生まれてきた価値があるので、国民から悪く言われないと思ったんだそうです。
 
 子供が生まれた意味に価値がある、ない、を決める事自体どうかと思いますが、そこはツッコまない事にしました。

 お母様への気持ちは後で整理する事にして、ここで、お姉様が私に対しての態度を変えて下さるなら、お姉様とオッサムとの結婚をすすめる計画はなしにしようと思ったのですが、そう上手くはいきませんでした。

 お姉様は、アール様の浮気を暴く事になった私を許せないと言いました。

 言いたくなる気持ちはわかります。
 知らなければ傷付かずに済んだのですから。
 
「では、お姉様はどうして私にあんな事を言われたんです? 生まれてこなくても良かっただなんて、あの話だって、お姉様が言わなければ、私も知らずに済んだのですが?」
「言われたから、あなたも言い返しても良いと思っているの?!」
「そうしなくてはならない相手にはそうしますよ。そうしないと、いつまでたっても相手はわからないままですから。でも、嫌な事をされない限りは、自分からはしません」
「お母様! お母様はわかって下さいますよね?! リサがいらないというのは、お母様が仰っていたんですから!」

 お姉様がお母様に向かって叫ぶと、お母様は私とお父様の方を見た後、申し訳なさそうな顔になって俯かれました。

「お母様、そうですよね?!」
「そうよ。間違いないわ」
「どうして、姉に妹がいらないだなんて言うんだ! リサだって君の娘だろう?! 姉妹が仲良くするように努めるべきだったんじゃないか?」
「あなたは、私達の事なんて考えて下さらなかったじゃないですか!」

 責めてくるお父様に、お母様が顔を上げて続けます。

「あなたは自分の家族より国を守る方が大事ではないですか…」
「それは国王として」
「国王だって、一人の人間じゃないですか! どうして私達だけ完璧な人間を求められるんですか! あの時の私は、男児を生めない王妃なんていらないと言われて苦しかったんです! でも、あなたは自分の仕事に必死で私の事を気にかける暇はなかったでしょう?!」
「そ…それは…」
「わかっています。嫁ぐ時に、その覚悟はしていましたから! だけど、気付いてほしかった…」

 お母様が話し終わると、部屋の中は静まり返りました。
 お父様とお母様を二人にした方が良いのか考えた時でした。

「そんなの私には関係ありません! 何にしてもリサがいらない子供だというのは確かです! だって、女王になれないなら、何の価値があるんです?!」
 
 お姉様は立ち上がり、私を見下ろして言います。

「私が女王になったら、あんたなんか追い出してやるんだから!」
「お好きにどうぞ」

 あなたに女王の証は出ませんから。

「ちょっといいですか」

 クレイが手を挙げて、お姉様に尋ねます。

「どうして、女王があなたになると決まってるんですか?」
「……は?」

 お姉様はクレイの質問の意味がわからないのか聞き返します。

「リサが女王になる可能性だってありますよね?」
「ありえませんわ! 今まで、長女か長男にしか出ていませんのよ?!」
「例外が起きたっておかしくない」
「絶対にないわ! 女王にふさわしいのは私! 国民から望まれて祝福された長女なんだから! 生まれてこなくても良かったと言われているリサと私を一緒にしないで頂戴!」

 お姉様は私を指差して叫んだ後、静止の声も振り切って、部屋を出ていってしまわれました。
 お母様が慌てて、お姉様の後を追って部屋を出ていかれました。

 嫌われてしまったものですね。
 アール様の事をお姉様に言わなければ、お姉様は仲良くしてくれたでしょうか?
 
 そんな事はないですよね。
 何があってもお姉様の味方だった、お母様が私に謝られたのですから、お母様が私に奪われたと思って、余計に私が憎くなったんでしょうね。

 気持ちはわからないでもないですが、かといって、私に攻撃的なお姉様に優しくしてあげる優しさは、私にはありません。

 一度、痛い目にあって、目を覚ましてもらわない限り、お姉様は変わらないでしょう…。

 俯いて膝の上で両手を握りしめていると、大きな手が重ねられたので顔を上げます。

「俺が余計な事を言ったからだよな? ごめん」
「クレイが謝る事じゃありません!」 

 首を横に振ると、クレイが手を握りしめてくれて言います。

「何かあれば、俺のせいにしたらいい」
「そんな訳にはいきません!」
「いいから」

 クレイの言葉と表情になぜだか胸がドキドキします。
 お姉様に嫌われて悲しいよりも、クレイの方が気になるだなんて、私は、本当にひどい妹なのかもしれません。

 でも、この胸のドキドキは、一体なんなのでしょう?
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