28 / 45
27 話し合い
しおりを挟む
お母様の事情がわかった次の日、丁度良いタイミングでお父様も出先から帰ってこられ、お姉様も含めた、家族会議を開く事になりました。
私の記憶にある限りでは、初めての事です。
クレイは家族会議の中に入るのを嫌がりましたが、客観的な目で見てほしかったところもあったのと、私の夫であれば、家族に値しますので、会議に参加してもらう事をお願いして、談話室で五人で話す事になりました。
談話室に入るのも、もういつぶりか思い出せないくらいです。
三人掛けのソファーに私とクレイ、向かい側のソファーにお姉様とお母様が座り、私の斜め左側にある一人用のソファーにお父様が座って、話し合いが始まりました。
まず、お母様からは正式に謝罪をいただきました。
そして、私が生まれた事は何の役にも立たないと決めつけてしまった事、娘を生んだ自分が悪くないと正当化する為に、望まれた娘である、お姉様に対して贔屓をしてしまったのだと言われました。
お姉様を贔屓した理由としては、お姉様はたとえ女性であっても、女王になるのであれば、生まれてきた価値があるので、国民から悪く言われないと思ったんだそうです。
子供が生まれた意味に価値がある、ない、を決める事自体どうかと思いますが、そこはツッコまない事にしました。
お母様への気持ちは後で整理する事にして、ここで、お姉様が私に対しての態度を変えて下さるなら、お姉様とオッサムとの結婚をすすめる計画はなしにしようと思ったのですが、そう上手くはいきませんでした。
お姉様は、アール様の浮気を暴く事になった私を許せないと言いました。
言いたくなる気持ちはわかります。
知らなければ傷付かずに済んだのですから。
「では、お姉様はどうして私にあんな事を言われたんです? 生まれてこなくても良かっただなんて、あの話だって、お姉様が言わなければ、私も知らずに済んだのですが?」
「言われたから、あなたも言い返しても良いと思っているの?!」
「そうしなくてはならない相手にはそうしますよ。そうしないと、いつまでたっても相手はわからないままですから。でも、嫌な事をされない限りは、自分からはしません」
「お母様! お母様はわかって下さいますよね?! リサがいらないというのは、お母様が仰っていたんですから!」
お姉様がお母様に向かって叫ぶと、お母様は私とお父様の方を見た後、申し訳なさそうな顔になって俯かれました。
「お母様、そうですよね?!」
「そうよ。間違いないわ」
「どうして、姉に妹がいらないだなんて言うんだ! リサだって君の娘だろう?! 姉妹が仲良くするように努めるべきだったんじゃないか?」
「あなたは、私達の事なんて考えて下さらなかったじゃないですか!」
責めてくるお父様に、お母様が顔を上げて続けます。
「あなたは自分の家族より国を守る方が大事ではないですか…」
「それは国王として」
「国王だって、一人の人間じゃないですか! どうして私達だけ完璧な人間を求められるんですか! あの時の私は、男児を生めない王妃なんていらないと言われて苦しかったんです! でも、あなたは自分の仕事に必死で私の事を気にかける暇はなかったでしょう?!」
「そ…それは…」
「わかっています。嫁ぐ時に、その覚悟はしていましたから! だけど、気付いてほしかった…」
お母様が話し終わると、部屋の中は静まり返りました。
お父様とお母様を二人にした方が良いのか考えた時でした。
「そんなの私には関係ありません! 何にしてもリサがいらない子供だというのは確かです! だって、女王になれないなら、何の価値があるんです?!」
お姉様は立ち上がり、私を見下ろして言います。
「私が女王になったら、あんたなんか追い出してやるんだから!」
「お好きにどうぞ」
あなたに女王の証は出ませんから。
「ちょっといいですか」
クレイが手を挙げて、お姉様に尋ねます。
「どうして、女王があなたになると決まってるんですか?」
「……は?」
お姉様はクレイの質問の意味がわからないのか聞き返します。
「リサが女王になる可能性だってありますよね?」
「ありえませんわ! 今まで、長女か長男にしか出ていませんのよ?!」
「例外が起きたっておかしくない」
「絶対にないわ! 女王にふさわしいのは私! 国民から望まれて祝福された長女なんだから! 生まれてこなくても良かったと言われているリサと私を一緒にしないで頂戴!」
お姉様は私を指差して叫んだ後、静止の声も振り切って、部屋を出ていってしまわれました。
お母様が慌てて、お姉様の後を追って部屋を出ていかれました。
嫌われてしまったものですね。
アール様の事をお姉様に言わなければ、お姉様は仲良くしてくれたでしょうか?
そんな事はないですよね。
何があってもお姉様の味方だった、お母様が私に謝られたのですから、お母様が私に奪われたと思って、余計に私が憎くなったんでしょうね。
気持ちはわからないでもないですが、かといって、私に攻撃的なお姉様に優しくしてあげる優しさは、私にはありません。
一度、痛い目にあって、目を覚ましてもらわない限り、お姉様は変わらないでしょう…。
俯いて膝の上で両手を握りしめていると、大きな手が重ねられたので顔を上げます。
「俺が余計な事を言ったからだよな? ごめん」
「クレイが謝る事じゃありません!」
首を横に振ると、クレイが手を握りしめてくれて言います。
「何かあれば、俺のせいにしたらいい」
「そんな訳にはいきません!」
「いいから」
クレイの言葉と表情になぜだか胸がドキドキします。
お姉様に嫌われて悲しいよりも、クレイの方が気になるだなんて、私は、本当にひどい妹なのかもしれません。
でも、この胸のドキドキは、一体なんなのでしょう?
私の記憶にある限りでは、初めての事です。
クレイは家族会議の中に入るのを嫌がりましたが、客観的な目で見てほしかったところもあったのと、私の夫であれば、家族に値しますので、会議に参加してもらう事をお願いして、談話室で五人で話す事になりました。
談話室に入るのも、もういつぶりか思い出せないくらいです。
三人掛けのソファーに私とクレイ、向かい側のソファーにお姉様とお母様が座り、私の斜め左側にある一人用のソファーにお父様が座って、話し合いが始まりました。
まず、お母様からは正式に謝罪をいただきました。
そして、私が生まれた事は何の役にも立たないと決めつけてしまった事、娘を生んだ自分が悪くないと正当化する為に、望まれた娘である、お姉様に対して贔屓をしてしまったのだと言われました。
お姉様を贔屓した理由としては、お姉様はたとえ女性であっても、女王になるのであれば、生まれてきた価値があるので、国民から悪く言われないと思ったんだそうです。
子供が生まれた意味に価値がある、ない、を決める事自体どうかと思いますが、そこはツッコまない事にしました。
お母様への気持ちは後で整理する事にして、ここで、お姉様が私に対しての態度を変えて下さるなら、お姉様とオッサムとの結婚をすすめる計画はなしにしようと思ったのですが、そう上手くはいきませんでした。
お姉様は、アール様の浮気を暴く事になった私を許せないと言いました。
言いたくなる気持ちはわかります。
知らなければ傷付かずに済んだのですから。
「では、お姉様はどうして私にあんな事を言われたんです? 生まれてこなくても良かっただなんて、あの話だって、お姉様が言わなければ、私も知らずに済んだのですが?」
「言われたから、あなたも言い返しても良いと思っているの?!」
「そうしなくてはならない相手にはそうしますよ。そうしないと、いつまでたっても相手はわからないままですから。でも、嫌な事をされない限りは、自分からはしません」
「お母様! お母様はわかって下さいますよね?! リサがいらないというのは、お母様が仰っていたんですから!」
お姉様がお母様に向かって叫ぶと、お母様は私とお父様の方を見た後、申し訳なさそうな顔になって俯かれました。
「お母様、そうですよね?!」
「そうよ。間違いないわ」
「どうして、姉に妹がいらないだなんて言うんだ! リサだって君の娘だろう?! 姉妹が仲良くするように努めるべきだったんじゃないか?」
「あなたは、私達の事なんて考えて下さらなかったじゃないですか!」
責めてくるお父様に、お母様が顔を上げて続けます。
「あなたは自分の家族より国を守る方が大事ではないですか…」
「それは国王として」
「国王だって、一人の人間じゃないですか! どうして私達だけ完璧な人間を求められるんですか! あの時の私は、男児を生めない王妃なんていらないと言われて苦しかったんです! でも、あなたは自分の仕事に必死で私の事を気にかける暇はなかったでしょう?!」
「そ…それは…」
「わかっています。嫁ぐ時に、その覚悟はしていましたから! だけど、気付いてほしかった…」
お母様が話し終わると、部屋の中は静まり返りました。
お父様とお母様を二人にした方が良いのか考えた時でした。
「そんなの私には関係ありません! 何にしてもリサがいらない子供だというのは確かです! だって、女王になれないなら、何の価値があるんです?!」
お姉様は立ち上がり、私を見下ろして言います。
「私が女王になったら、あんたなんか追い出してやるんだから!」
「お好きにどうぞ」
あなたに女王の証は出ませんから。
「ちょっといいですか」
クレイが手を挙げて、お姉様に尋ねます。
「どうして、女王があなたになると決まってるんですか?」
「……は?」
お姉様はクレイの質問の意味がわからないのか聞き返します。
「リサが女王になる可能性だってありますよね?」
「ありえませんわ! 今まで、長女か長男にしか出ていませんのよ?!」
「例外が起きたっておかしくない」
「絶対にないわ! 女王にふさわしいのは私! 国民から望まれて祝福された長女なんだから! 生まれてこなくても良かったと言われているリサと私を一緒にしないで頂戴!」
お姉様は私を指差して叫んだ後、静止の声も振り切って、部屋を出ていってしまわれました。
お母様が慌てて、お姉様の後を追って部屋を出ていかれました。
嫌われてしまったものですね。
アール様の事をお姉様に言わなければ、お姉様は仲良くしてくれたでしょうか?
そんな事はないですよね。
何があってもお姉様の味方だった、お母様が私に謝られたのですから、お母様が私に奪われたと思って、余計に私が憎くなったんでしょうね。
気持ちはわからないでもないですが、かといって、私に攻撃的なお姉様に優しくしてあげる優しさは、私にはありません。
一度、痛い目にあって、目を覚ましてもらわない限り、お姉様は変わらないでしょう…。
俯いて膝の上で両手を握りしめていると、大きな手が重ねられたので顔を上げます。
「俺が余計な事を言ったからだよな? ごめん」
「クレイが謝る事じゃありません!」
首を横に振ると、クレイが手を握りしめてくれて言います。
「何かあれば、俺のせいにしたらいい」
「そんな訳にはいきません!」
「いいから」
クレイの言葉と表情になぜだか胸がドキドキします。
お姉様に嫌われて悲しいよりも、クレイの方が気になるだなんて、私は、本当にひどい妹なのかもしれません。
でも、この胸のドキドキは、一体なんなのでしょう?
47
あなたにおすすめの小説
ついで姫の本気
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。
一方は王太子と王女の婚約。
もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。
綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。
ハッピーな終わり方ではありません(多分)。
※4/7 完結しました。
ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。
救いのあるラストになっております。
短いです。全三話くらいの予定です。
↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。
4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。
【完結】優雅に踊ってくださいまし
きつね
恋愛
とある国のとある夜会で起きた事件。
この国の王子ジルベルトは、大切な夜会で長年の婚約者クリスティーナに婚約の破棄を叫んだ。傍らに愛らしい少女シエナを置いて…。
完璧令嬢として多くの子息と令嬢に慕われてきたクリスティーナ。周囲はクリスティーナが泣き崩れるのでは無いかと心配した。
が、そんな心配はどこ吹く風。クリスティーナは淑女の仮面を脱ぎ捨て、全力の反撃をする事にした。
-ーさぁ、わたくしを楽しませて下さいな。
#よくある婚約破棄のよくある話。ただし御令嬢はめっちゃ喋ります。言いたい放題です。1話目はほぼ説明回。
#鬱展開が無いため、過激さはありません。
#ひたすら主人公(と周囲)が楽しみながら仕返しするお話です。きっつーいのをお求めの方には合わないかも知れません。
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
【完結】イアンとオリエの恋 ずっと貴方が好きでした。
たろ
恋愛
この話は
【そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします】の主人公二人のその後です。
イアンとオリエの恋の話の続きです。
【今夜さよならをします】の番外編で書いたものを削除して編集してさらに最後、数話新しい話を書き足しました。
二人のじれったい恋。諦めるのかやり直すのか。
悩みながらもまた二人は………
カナリア姫の婚約破棄
里見知美
恋愛
「レニー・フローレスとの婚約をここに破棄する!」
登場するや否や、拡声魔道具を使用して第三王子のフランシス・コロネルが婚約破棄の意思を声明した。
レニー・フローレスは『カナリア姫』との二つ名を持つ音楽家で有名なフローレス侯爵家の長女で、彼女自身も歌にバイオリン、ヴィオラ、ピアノにハープとさまざまな楽器を使いこなす歌姫だ。少々ふくよかではあるが、カナリア色の巻毛にけぶるような長いまつ毛、瑞々しい唇が独身男性を虜にした。鳩胸にたわわな二つの山も視線を集め、清楚な中にも女性らしさを身につけ背筋を伸ばして佇むその姿は、まさに王子妃として相応しいと誰もが思っていたのだが。
どうやら婚約者である第三王子は違ったらしい。
この婚約破棄から、国は存亡の危機に陥っていくのだが。
※他サイトでも投稿しています。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
私を愛すると言った婚約者は、私の全てを奪えると思い込んでいる
迷い人
恋愛
お爺様は何時も私に言っていた。
「女侯爵としての人生は大変なものだ。 だから愛する人と人生を共にしなさい」
そう語っていた祖父が亡くなって半年が経過した頃……。
祖父が定めた婚約者だと言う男がやってきた。
シラキス公爵家の三男カール。
外交官としての実績も積み、背も高く、細身の男性。
シラキス公爵家を守護する神により、社交性の加護を与えられている。
そんなカールとの婚約は、渡りに船……と言う者は多いだろう。
でも、私に愛を語る彼は私を知らない。
でも、彼を拒絶する私は彼を知っている。
だからその婚約を受け入れるつもりはなかった。
なのに気が付けば、婚約を??
婚約者なのだからと屋敷に入り込み。
婚約者なのだからと、恩人(隣国の姫)を連れ込む。
そして……私を脅した。
私の全てを奪えると思い込んでいるなんて甘いのよ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる