あなた方には後悔してもらいます!

風見ゆうみ

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35  複雑な気持ち

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 オッサムには文献を調べてみたけれど、業務をこなせない様な事にならない限り、普通なら長女に国花が出るようだと伝えました。

 私の話を聞いて、オッサムはホッとした顔になっていたので、本当の事を知った時に、どんな顔をするのでしょうか。
 悔しがるのでしょうか?
 それとも、なんとかして、クレイと私を離婚させて、私の旦那様になろうとするのでしょうか。

 そんな事をさせるつもりはありませんが、クレイが離婚すると言い出したらどうしましょう…。
 
 もう、クレイはポピー様に未練はなさそうな雰囲気でしたから、離婚になる事はないと思うんですが、ポピー様はお姉様と同じで、見た目はとても魅力的です。

 外見重視の方もいらっしゃいますし、性格の好みもありますから、クレイが心替わりしないとは言い切れません。

 私は私で嫌われない様に頑張らなくては!

 そんな事を思っていた、ある日、私宛にパーティーの招待状が届いたのでした。
 今まで、私を名指しして、招待状が来る事などありませんでしたから、誰からかと思っていると、ドストコ公爵家からでした。

 お姉様は参加されない様ですが、オッサム主催で婚約記念パーティーを開くとの事で、妹である私には、ぜひとも出席してほしいと書かれていました。

 断る理由もありませんし、行かざるをえないんでしょうけれど、やはり気になります。

 それに、主役が出席しないパーティーって、どういう事でしょう?

「リサ様、どうかされましたか?」

 招待状を見ながら唸っていると、フィアナに声を掛けられました。

「このパーティー、クレイと一緒に行かないと駄目なんてでしょうね?」
「夜会の様ですし、他の招待客の方はパートナーといらっしゃるかもしれませんが、クレイ様がその日に用事がある事にして、リサ様お一人で出席されても何も言われないとは思いますよ? どうかされましたか?」
「オッサム主催という事はドストコ公爵家が関係しますから、ポピー様も来られるのではないかと思いまして」
「そう言われてみれば、そうですね。…それにしても、パーカー公爵令嬢はアール様と親しくなられたのですよね? どうして、アール様はパーカー公爵令嬢を口説かないのでしょうか」
「綺麗だと言ってましたもんね。アール様は、あの、お店の方との愛を貫く事に決めたんでしょうか?」
「どうなんでしょう…」

 フィアナは少し考えてから答えてくれます。

「いくら公爵家の次男でも、平民との結婚は認めてもらえないのではないでしょうか」
「やはりそうですよね。となると、アール様がポピー様に近付いたのは、私達に対する嫌がらせでしょうか」
「前にクレイ様とお話をされていた様に、リサ様とクレイ様を別れさせる為というのも、あるのかもしれませんね」
「でも、私達が別れたとしても、アール様にメリットはないのでは?」
「メリットがない事はないと思います。ご長男が公爵の爵位を継いでしまいますと、アール様はお父様から、何かの爵位を受け継がない限り、平民になってしまいます。ですから、アール様がクレイ様の後釜を狙っておられるのかも?」
「それなら、ポピー様と結婚されたらいいと思うんですが」
「パーカー公爵令嬢が相手にしないのでは?」
「そうよね。ポピー様はバーキン様が好きなんですものね」

 何だか面倒くさい事になってきました。
 …という事は、アール様は…。

「もしかして、私と結婚するつもりなんでしょうか?」
「その可能性もありえますね」
「そんな馬鹿な! ありえません! 人の事をあんなに馬鹿にしておいて!」
「リサ様、私達の予想なだけで、実際はどうかはわかりません。決めつけない方がよろしいかと」
「そ、そうね、そうですよね」

 苦笑するフィアナに向かって頷いた後、決心してフィアナに言います。

「今回のパーティーは私一人で行きます! クレイにはこの事は内緒にしておいて下さい」
「かしこまりました」

 こんな風に、私とフィアナの間では話がついていたのですが、腹が立つ事に、オッサムはクレイにも招待状を送っていたのです!
 クレイには別に送っているから、だから、私一人の名前だったのですね!

「リサ、パーティーには行くんだろ?」

 クレイに招待状を見せられて、その事に気付きました。

「…行かないと駄目でしょうか…」
「そりゃあ、行かないと駄目だろ。相手は義理の兄になるんだから。何か行きたくない理由があるのか?」
「ありますとも! オッサムとお姉様の婚約記念パーティーだなんて、行っても楽しくなさそうじゃないですか!」
「でも、俺達の時には来てもらってたからしょうがないだろ。楽しくないのは俺も一緒だよ。だけど、そんなワガママ言ってられないだろ」
「うう、そんな正論を…!!」

 そんな事は私だってわかってるんです!
 ただ、言いたくなっただけなんですよ…。

「大丈夫だって。なるべく一人にはしない様にするから」
「そ、そういう理由で嫌がってるわけでは…」

 見上げて言うと、クレイは笑顔で私の頭を撫でてくれます。

「何が心配なんだ?」
「ポピー様も…、いらっしゃるかもしれませんよ?」
「…それなぁ」

 クレイは私の頭から手をはなし、今度は自分の髪に触れた後、苦虫を噛み潰したような顔で言います。

「たぶん、もう大丈夫だと思う」
「どういう事ですか?」
「絶対っていう自信はないけど、もう、ポピーに心が揺らぐ事はないと思う。パーティーで会ったなら、ちゃんと言うよ。もう好きじゃないから、バーキンが好きなら、直接、バーキンの所に行けって。その時は、リサを一人にしてしまうかもしれないけど、すぐに戻ってくるから」
「……」

 本当に大丈夫なんでしょうか…?
 
「心配すんなって」 

 無言で見つめると、クレイが笑顔でそう言ったのでした。
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