あなた方には後悔してもらいます!

風見ゆうみ

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38  クレイの側近

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「おめでとうございます、リサ様」

 城に帰って、私の帰りを待ってくれていたフィアナに報告すると、それはもう嬉しそうな笑顔になって言ってくれました。

「クレイ様も、おめでとうございます。本当に嬉しいです」
「ありがとうな。フィアナには、俺も含めて、これからも助けてもらわないといけないだろうし、よろしくな。なるべく、迷惑はかけない様にするけど」
「私は侍女ですから、迷惑をかけられたとしても気にはなりませんし、迷惑だなんて思いもしません」

 フィアナがクレイに笑顔を見せて言うと、クレイも笑顔になって頷きました。
 それから、その日は夜も遅い事もあり、お風呂に入って眠りに就いたのですが、次の日の朝食の後、フィアナに尋ねられたのです。

「リサ様、寝室の件なのですが…」
「寝室ですか?」
「はい! クレイ様と両思いになられたのでしたら、就寝時は寝室に移動されてはいかがでしょうか?」

 笑顔のフィアナの後ろで、メイド達も目をキラキラさせています。
 今朝の間に、メイド達にもクレイとの話をしましたら、とても喜んでくれたのですが、まさか、こっちの話になるとは…。

「その、まだ、早いと思うんです!」
「そうですね。焦らなくて良いと思いますが、いつかは、ですね」

 フィアナとメイド達はずっとニコニコしています。

 お世継ぎ問題が解消されそうなので良かった、とか思われているのでしょうか?

「頑張ります」

 どんな事をするかは聞いた事があります。
 ですが、まさか、私がそんな事をするかもしれないだなんて、思う日が来るだなんて!
 驚きです!

 とまあ、浮かれてばかりではいけません。
 まだ、クレイにもフィアナにも、昨日のアール様の話を出来ていないのです。

 本当は朝食を取る時に話そうと思っていたのですが、クレイの顔を見たら、色々と吹っ飛んでしまいました。
 
 メイド達が部屋を出ていき、私も執務室に向かいます。
 執務室へは、いつもフィアナが一緒に来てくれるので、まず、フィアナにアール様の話をしてみました。

「失礼な人ですね! 大体、リサ様とクレイ様が離婚する前提なのも気に食わないです! いくら公爵家とはいえ、無礼にも程がありますよ!」
「私がなめられてしまっているんでしょうね。国花が出る前の私は本当にウジウジしていましたから」
「だったとしてもですよ! リサ様は第二王女なのですよ!?」
「アール様にしてみれば、大して頭も使わずに、のんびり暮らしている人間に見えるのでしょうね」

 政治に介入しない分、何もしていない様にしか見えていないのでしょう。
 貴族達の操り人形にでも見えているのでしょうね。
 王様や女王には敬意をはらえても、第二王女ではなめられてしまうのです…。
 もちろん、私の今までの態度も悪かったのですが。

「クレイ様には、そのお話はされたのですか?」
「まだなんです。やはり、しておいた方が良いでしょうか」
「もちろんです! このまま放っておいてはいけませんから!」

 フィアナが肩で息をしながら言った後、私に言います。

「今から伝えに行きましょう!」
「昼食の時に伝えますから大丈夫ですよ」
「リサ様、あまり甘い顔をされていてはいけませんよ!」

 フィアナに怒られてしまいました。
 
 そうですね。
 少し、呑気すぎますかね…。

「では、行きましょう!」

 フィアナと一緒にクレイの執務室に向かい、扉をノックすると、クレイの声が返ってきて、入ってもいいと言われたので、フィアナと共に部屋に入ると、先客がおられました。

 紺色の髪に髪と同じ色の瞳、短髪とも長髪ともいえない、全体的に長めの髪、けれど清潔感のある爽やかな印象を受ける、整った顔立ちの男性が、クレイの机の横に立っていて、私に向かって頭を下げます。

「はじめまして、リード・ラッシュと申します。リサ殿下にお目にかかれて光栄です」
「はじめまして、リサ・ミノワーズです」

 挨拶を返してから、クレイの方を見て問いかけます。

「クレイのお知り合いの方ですか?」
「ああ。今日から正式に俺の側近になってもらう。元々、国の方でも彼が俺の側近だったんだ。彼を雇う事に関しては、国王陛下から許可をもらってる」
「そうなんですね! クレイがいつもお世話になってます」
「とんでもございません。これからは、クレイ殿下だけではなく、リサ殿下のお役にも立てますよう、誠心誠意、お仕えさせていただきます」

 ラッシュ様は深々と頭を下げてくれました。

「昨日はパーティーにも出席してもらっていて、俺がいない間は彼にリサの様子を見てもらってたんだ」
「だから、アール様が話しかけてきてから、すぐにこちらに戻ってきてくれたんですね」

 思ったよりもポピー様との話が早かったな、とは思ったのですが、ラッシュ様がクレイに知らせてくれたから、早くに切り上げてくれたみたいです。

「昨日、アール様とリサ殿下がお話されているのはわかっていたのですが、私が助けに入っても不審かと思いましたので、クレイ殿下を呼ばせていただきました。介入が遅くなり、申し訳ございませんでした」
「いえ! 見守っていて下さった事に気付いておりませんでしたし、いきなり助けに入られても、どなた? ってなっていたかと思いますから」
「お近付きの印になるかはわかりませんが、リサ殿下に無礼な対応をされたアール様に関しては私が処理させていただこうと思っておりますので、今後、あの様な事はないかと思われますから、ご安心下さい」

 ラッシュ様は微笑んで、そう私に言ってくれたのでした。

 …処理とは、どういう事なのでしょうか?
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