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39 アール様への罰
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それから、リード様について詳しい話を聞いてみたところ、元々、クレイがこちらに来る際に、リード様も連れてくるつもりだった様ですが、諸事情があって、リード様がお断りになったそうです。
リード様は辺境伯家の次男で、クレイやバーキン様と同じ学園で仲が良かったらしく、クレイは一緒に来てほしかったみたいですが、諦めていたみたいです。
リードと呼ぶ様にとお願いされたのですが、クレイのお友達で私にとっては年上の方ですし、バーキン様の事も様付けしていますから、リード様と呼ばせていただく事にしました。
呼ばれる本人はすごく恐縮されていましたが…。
「アール様の件ですが、一体、何をされるお考えなんですか?」
「リサ殿下への無礼な発言を不敬罪として訴えるつもりです」
「え?! 不敬罪?!」
間違ってはいないのかもしれませんが、思わず聞き返してしまいます。
「そうです。お二人の会話を聞いていましたが、なぜ、アール様があの様に偉そうな態度でリサ殿下に対し、あんな失礼な発言をされていたのか、私にはさっぱり理解できません。クレイ殿下もそうでしたが、リサ殿下も自分の立場を自覚していただきたい」
「た、立場を自覚…」
「あなた方は王族なんです。公爵家よりも地位が高いんですよ。それなのに、あんな無礼な発言を放置しておくなんて許してはいけないんですよ!」
リード様は眉間にシワを寄せて続けます。
「リサ殿下のお姉様であられる、ブランカ殿下の婚約者のオッサム様に関しては、かろうじて許せたとしても、アール様の発言は許されるものではありません」
「えっと、そう言われてみれば、そんな感じがしてきました」
「リサ殿下、お優しい事が悪い訳ではありません。ただ、厳しくしなければいけない時は、そうしなければいけません。なぜなら、馬鹿は調子にのるからです!」
「あの…、で、どうされるおつもりなのでしょうか?」
リード様の言われている事は納得できますので頷いてから、どうしたら良いのかも含めて聞いてみました。
「それはもちろん、国から追放しましょう」
「ええ?!」
「王族に失礼な事をしたんです。この国に住みたくないという事でしょう。望み通りにして差し上げるのですから、罰というよりかは、ご褒美になってしまうので、考えるところではありますが、忠誠心がないと自ら公言されているのですから、この国においておく必要はないでしょう。本人を目の前にしての発言ですから見過ごせません」
呆気にとられている私を見て、リード様は笑顔で言います。
「リサ殿下のお手を煩わせる事はございませんから、お気になさらないで下さい」
「そ、それは有り難いのですが…」
「リサ、アールが失礼な事をしたのは確かだ。何か責任はとらせないと」
クレイに言われて、私は彼の方を見て言います。
「彼に言いたい様に言わせてしまったのは私ですから、彼にチャンスを与えては?」
「チャンスって?」
クレイに聞き返されて、返答に困ってしまいます。
別にアール様の事は好きではありませんが、いきなり罰を与えるのもなんだかなあ、と思ってしまうのです。
今まで放置していた私にも責任はありますし…。
「リサ殿下はお優しい方なのですね」
リード様は苦笑した後、続けます。
「では、今回は警告だけに致しましょう。次に何かあれば…」
「は、はい! それでお願いします!」
私が甘い顔をしていたせいでもあるのです。
これからはしっかり対応していかなくては…。
「あ、それか、これはどうです?」
リード様が何かひらめいたのか聞いて来られたので聞き返します。
「なんでしょう?」
「罰を与えないかわりに、ブランカ殿下とオッサム様の結婚を早めてもらいましょう。それが出来なければ追放しましょう」
「えらく国から追い出したがるのですね」
「誰だって好き嫌いはあるものです。けれど、それを相手にわざわざ嫌な態度を見せるのは違うでしょう? 関わらなければ良いだけです。それをわざわざ近付いてきて、人を不快な気持ちにさせていくのは、ただの暇人、もしくは性格の悪い人間ではないですか。王族に対して、そんな事をする人間を国として守ってやる必要はないでしょう。何より、彼は貴族ですから、そんな事をしてはいけないとわかっているはずです」
リード様も言いたい事を言ってしまうタイプの様に見えますが、本人の前で言う訳ではないから良いのでしょうか?
でも、これくらい強く言う事も、上に立つには必要なのかもしれません。
「リード様にお任せしてもよろしいのですか?」
「もちろんです。お役に立ちたいが為に、こちらまで参りましたので」
「遅くなったという事は、ご家族の反対があったのですか?」
ここまで言って下さる方なのに、クレイと最初から一緒に来てくれていない理由が気になったので聞いてみると、リード様は少し、恥ずかしそうにされました。
恥ずかしくなる様な事なのでしょうか?
「こいつ、彼女と離れるのが嫌で渋ってたんだよ」
「しょうがないでしょう! 遠距離恋愛なんて耐えられません」
「遠距離恋愛でもお話の中では上手くいっていらっしゃいますのに」
「リサ殿下。それはお話でしょう? もちろん、現実にも遠距離恋愛で上手くいく方はいらっしゃると思います。ですが、それを理由に別れる場合もあるんですよ」
真剣な表情で言われ、その迫力に圧されてしまった私は、首を何度も縦に振ります。
「理解いたしました! で、ですが、その問題は解決されたのですか?」
「ええ。婚約までこぎつけまして、私の仕事が落ち着いたら結婚して、彼女にはこちらの国に住んでもらいます」
「おめでとうございます! でも、しばらくは遠距離恋愛になるのは申し訳ないです」
私が肩を落として言うと、リード様は笑顔で言います。
「ありがとうございます。ですが、約束があるものとないものでは、また違いますし、ここに来た以上は仕事をしっかりさせていただくつもりです」
「では、よろしくお願いいたします!」
リード様が来てくれた事により、一気に動きが加速する事となるのでした。
リード様は辺境伯家の次男で、クレイやバーキン様と同じ学園で仲が良かったらしく、クレイは一緒に来てほしかったみたいですが、諦めていたみたいです。
リードと呼ぶ様にとお願いされたのですが、クレイのお友達で私にとっては年上の方ですし、バーキン様の事も様付けしていますから、リード様と呼ばせていただく事にしました。
呼ばれる本人はすごく恐縮されていましたが…。
「アール様の件ですが、一体、何をされるお考えなんですか?」
「リサ殿下への無礼な発言を不敬罪として訴えるつもりです」
「え?! 不敬罪?!」
間違ってはいないのかもしれませんが、思わず聞き返してしまいます。
「そうです。お二人の会話を聞いていましたが、なぜ、アール様があの様に偉そうな態度でリサ殿下に対し、あんな失礼な発言をされていたのか、私にはさっぱり理解できません。クレイ殿下もそうでしたが、リサ殿下も自分の立場を自覚していただきたい」
「た、立場を自覚…」
「あなた方は王族なんです。公爵家よりも地位が高いんですよ。それなのに、あんな無礼な発言を放置しておくなんて許してはいけないんですよ!」
リード様は眉間にシワを寄せて続けます。
「リサ殿下のお姉様であられる、ブランカ殿下の婚約者のオッサム様に関しては、かろうじて許せたとしても、アール様の発言は許されるものではありません」
「えっと、そう言われてみれば、そんな感じがしてきました」
「リサ殿下、お優しい事が悪い訳ではありません。ただ、厳しくしなければいけない時は、そうしなければいけません。なぜなら、馬鹿は調子にのるからです!」
「あの…、で、どうされるおつもりなのでしょうか?」
リード様の言われている事は納得できますので頷いてから、どうしたら良いのかも含めて聞いてみました。
「それはもちろん、国から追放しましょう」
「ええ?!」
「王族に失礼な事をしたんです。この国に住みたくないという事でしょう。望み通りにして差し上げるのですから、罰というよりかは、ご褒美になってしまうので、考えるところではありますが、忠誠心がないと自ら公言されているのですから、この国においておく必要はないでしょう。本人を目の前にしての発言ですから見過ごせません」
呆気にとられている私を見て、リード様は笑顔で言います。
「リサ殿下のお手を煩わせる事はございませんから、お気になさらないで下さい」
「そ、それは有り難いのですが…」
「リサ、アールが失礼な事をしたのは確かだ。何か責任はとらせないと」
クレイに言われて、私は彼の方を見て言います。
「彼に言いたい様に言わせてしまったのは私ですから、彼にチャンスを与えては?」
「チャンスって?」
クレイに聞き返されて、返答に困ってしまいます。
別にアール様の事は好きではありませんが、いきなり罰を与えるのもなんだかなあ、と思ってしまうのです。
今まで放置していた私にも責任はありますし…。
「リサ殿下はお優しい方なのですね」
リード様は苦笑した後、続けます。
「では、今回は警告だけに致しましょう。次に何かあれば…」
「は、はい! それでお願いします!」
私が甘い顔をしていたせいでもあるのです。
これからはしっかり対応していかなくては…。
「あ、それか、これはどうです?」
リード様が何かひらめいたのか聞いて来られたので聞き返します。
「なんでしょう?」
「罰を与えないかわりに、ブランカ殿下とオッサム様の結婚を早めてもらいましょう。それが出来なければ追放しましょう」
「えらく国から追い出したがるのですね」
「誰だって好き嫌いはあるものです。けれど、それを相手にわざわざ嫌な態度を見せるのは違うでしょう? 関わらなければ良いだけです。それをわざわざ近付いてきて、人を不快な気持ちにさせていくのは、ただの暇人、もしくは性格の悪い人間ではないですか。王族に対して、そんな事をする人間を国として守ってやる必要はないでしょう。何より、彼は貴族ですから、そんな事をしてはいけないとわかっているはずです」
リード様も言いたい事を言ってしまうタイプの様に見えますが、本人の前で言う訳ではないから良いのでしょうか?
でも、これくらい強く言う事も、上に立つには必要なのかもしれません。
「リード様にお任せしてもよろしいのですか?」
「もちろんです。お役に立ちたいが為に、こちらまで参りましたので」
「遅くなったという事は、ご家族の反対があったのですか?」
ここまで言って下さる方なのに、クレイと最初から一緒に来てくれていない理由が気になったので聞いてみると、リード様は少し、恥ずかしそうにされました。
恥ずかしくなる様な事なのでしょうか?
「こいつ、彼女と離れるのが嫌で渋ってたんだよ」
「しょうがないでしょう! 遠距離恋愛なんて耐えられません」
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「リサ殿下。それはお話でしょう? もちろん、現実にも遠距離恋愛で上手くいく方はいらっしゃると思います。ですが、それを理由に別れる場合もあるんですよ」
真剣な表情で言われ、その迫力に圧されてしまった私は、首を何度も縦に振ります。
「理解いたしました! で、ですが、その問題は解決されたのですか?」
「ええ。婚約までこぎつけまして、私の仕事が落ち着いたら結婚して、彼女にはこちらの国に住んでもらいます」
「おめでとうございます! でも、しばらくは遠距離恋愛になるのは申し訳ないです」
私が肩を落として言うと、リード様は笑顔で言います。
「ありがとうございます。ですが、約束があるものとないものでは、また違いますし、ここに来た以上は仕事をしっかりさせていただくつもりです」
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