11 / 43
10 必要ないもの ② (自分の利益しか考えていない両親)
しおりを挟むわたしを見捨てた家族から手紙が届いているという話を、レブさんたちにしてみた。
「まったく信じられませんねぇ」
レブさんがそう言ったあと、難しい顔をして唸る。
「ご迷惑でなければ、私共が内容を確認しましょうか?」
ティアーナさんが苦笑して言ってくれた。
どんな内容が書かれているか予想はできるけれど、一応、読んでもらうことにした。
ソファーに座り、身を寄せ合って手紙を読んでくれている二人の眉間に、深いシワが刻まれていく。
こんな二人の顔を見たのは初めてだったので、余程、酷い内容のことが書かれているのだろうと思った。
「どんな内容か気になるかと思いますので、一応、お伝えさせていただきます」
レブさんは一度言葉を区切り、手紙を四つ折りにして、ティアーナさんに渡した。
そして、大きく息を吐いてから口を開く。
「リアンナ様が将来、王妃になるのだと聞いたので、お金を持って家に帰ってきなさいと」
「はい?」
両親が何を言っているのかさっぱりわからなかった。
お金を持って帰ってきなさいって、どういうことなの!?
「あと、どうして帰ってきた時に、そのことを話してくれなかったのだと文句を言っておられますね」
「その時のわたしは、こんなことになるだなんて思ってもいなかったわ!」
何も悪くないレブさんに強い言い方をしてしまったので、すぐに謝る。
「ごめんなさい。レブさんは手紙に書かれてあることを教えてくれただけなのに」
「いいえ。怒りたくなる気持ちはわかりますし、気にしておりませんよ」
「リアンナ様、レブのことは気にしなくて結構ですよ。それよりも、このお手紙にお返事はなさりますか?」
ティアーナさんが手紙を自分の太ももの上に置いて尋ねてきた。
「自分の利益を考えることは悪いことではないと思うんです」
「そうですわね」
「でも、それって親が娘に対して当たり前のようにすることなんでしょうか?」
私の質問に、ティアーナさんとレブさんは顔を見合わせた。
そして、ティアーナさんが苦笑して口を開く。
「私にも子供がおりますが、出戻ってくるようなことがありましたら、とにかく迎え入れます。もし、突き放したとしても、こちらが悪くて謝罪をしなければならないならまだしも、お金のために連絡を取ろうとは思いません。子供が幸せでいてくれるのであれば満足ですよ」
「普通はそうですよね」
ティアーナさんの言葉に大きく頷く。
正直、わたしは王妃になんかなりたくない。
けれど、今の状況だと、王妃にならざるを得ない状況になっている。
それなら、こんな家族は必要ない。
今のわたしの家族は、レブさんとティアーナさんだもの。
血が繋がっていたとしても、わたしのことを金蔓としか思っていない、本当の家族なんていらない。
手紙を無視しても、また新たに送られてくるだけだろうから、返事は書くことにした。
『 お気持ちはわかりました。
ですが、わたしは娘にお金をせびるような両親はいりません。
縁を切らせていただきます。
わたしのことは死んだと思ってください。
どうか、お元気で。
』
簡単には縁を切らせてはくれないとわかっている。
この手紙ごとなかったことにされないように、わたしは宰相閣下だけでなく、両陛下にまで手紙を見せて証人になってもらうことにした。
確認をしてもらったあと、手紙を届けてくれる人に決まったのは、王家直属の騎士団の中の一人だった。
彼は受け取りのサインも必ずもらってくると言ってくれたので、封をした手紙を手渡した。
大人しく引き下がってくれれば良いのだけど、そう簡単にはいかないわよね。
ため息を吐いたあと、今日のスケジュールを再確認する。
今日は教会で聖なる力を使う日だった。
約束の時間に屋敷の前で待ってくれていた護衛の人たちと合流して、わたしは教会に向かった。
※ 次の話は、リアンナからの手紙を受け取った、リアンナの家族の話になります。
応援ありがとうございます!
36
お気に入りに追加
2,873
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる