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27 弟の願い
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「酷いことって……、本当のことだもん! それに、言いたいことは言わなくちゃ駄目だって、お父様から教えられたんだ!」
「じゃあ聞くけど、ロブ、あなた、本気でリアンナお姉様にあんなことを言ったの?」
「だって、酷いじゃないか! 今まで、ロザンナお姉様は僕のことしか見てなかったのに、今は、リアンナお姉様にべったりだ!」
ロブはわたしを指差して続ける。
「リアンナお姉様が現れなければ、僕らはあの家で幸せに暮らせていたのに!」
「お母様とお父様がいれば、幸せに暮らせると言うのなら暮らせば良いじゃない。私がいなくても大丈夫よ」
ロザンナはロブに冷たく言い放つと、くるりと踵を返して歩き出した。
慌てて追いかけて、ロザンナに話しかける。
「ロザンナ! 待って! あなたたちに喧嘩してほしいわけじゃないのよ」
「わかっています。だけど、今はロブの顔を見たくないんです。ごめんなさい」
「……わかったわ。食事は部屋に持っていくわね。改めて話をしましょう」
「ありがとうございます」
わたしなら、こういう時は一人にしてほしいからそう言うと、ロザンナは眉尻を下げつつも、笑顔を作ってみせてくれた。
歩みを止めてロブのほうに振り返ると、ロブは泣きながら、わたしを睨んでいる。
「リアンナのせいだ! お前のせいでめちゃくちゃだ! お父様とお母様が言ってたけど、王族が馬鹿だから、リアンナだって馬鹿になったんだろ! 王族なんていなくなればいんだ!」
ロブが叫んだ時だった。
近くにいた騎士がロブを掴んだ。
「ロブ! 今すぐに謝って!」
騎士がロブを掴んだ理由がわかったので、わたしは焦る。
でも、ロブは意味がわかっていないから暴れるだけだ。
「な、何するんだよ! 嫌だよ! 謝ったりしない! 嘘なんて言ってないもん!」
「不敬罪だよ」
暴れるロブに騎士が冷たく低い声で言った。
「……え?」
「王族の悪口を言えば捕まるんだ。それくらい知っているだろう」
「そ、そんな、知らないよ!」
ロブは首を横に振ったけれど、足を進めていたロザンナが、わたしの隣まで戻ってきて叫ぶ。
「知らないわけがないでしょう! お母様はそれで捕まったんじゃないの!」
「だって、僕は子供だから許されるんじゃ……」
国によっては、子供だからということで、罰が免除されるところもある。
でも、ミドレス王国は不敬罪については、大人だろうが子供だろうが年齢は関係ない。
相手が誰であろうと人の悪口は子供でも言ってはいけないことだからだ。
平民同士、貴族同士の喧嘩なら、その場でおさめる場合も多いけれど、王族相手だと違ってくる。
わたしは小さく息を吐いてから、ロブに話しかける。
「ロブ、子供だからって何を言っても良いという逃げ道を与えるわけにはいかないのよ」
「どういうこと!? 僕は捕まるの!?」
「そうね」
捕まれば、ある意味ではロブの望み通りになる。
ここまでする必要もないかもしれないけれど、口に出してはいけないことだと教えておく機会にもなるかもしれない。
心を鬼にして、ロブに尋ねる。
「ロブ、あなたはどんな状況であっても、わたしの所よりも、お父様かお母様の所へ行きたい?」
「うん」
ちくりと胸が痛んだけれど、はっきりと言ってくれたほうが、この後のことが決めやすいので助かった。
「二人は同じ建物内にはいるわ。でも、別々の部屋にいるの。どちらのほうに行きたい?」
「お母様!」
「だそうよ。申し訳ないけれど、それを伝えてもらえる?」
ロブの返事を聞いて、彼を捕まえている騎士にお願いする。
騎士は「承知しました」と言って、ロブを抱えあげた。
「君の望む場所へ連れて行こう」
「え!? お母様の所へ連れて行ってくれるの!?」
ロブは無邪気に喜び、抵抗することもなく騎士に連れて行かれた。
「これで良かったのかしら」
大きく息を吐いてから呟くと、ロザンナがわたしの手を握って言う。
「わたしはメイドから色々と聞いているから、お母様たちが異常だということをわかっています。でも、ロブは話を聞いても信じないんです。あの子は、お母様たちに似てワガママだから、すぐに音を上げると思いますし、自分の目で真実をすることになるでしょう。ですから、お姉様は気にしなくて良いですよ。ただ、助けを求めてきたら」
「わかってるわ。見捨てることはしないわよ」
わたしの言葉を聞いたロザンナはホッとした表情になった。
そして、ロザンナが予想した通り、その日の昼には警察から連絡があり、ロブがわたしに謝りたいと言って泣いていると連絡があったのだった。
「じゃあ聞くけど、ロブ、あなた、本気でリアンナお姉様にあんなことを言ったの?」
「だって、酷いじゃないか! 今まで、ロザンナお姉様は僕のことしか見てなかったのに、今は、リアンナお姉様にべったりだ!」
ロブはわたしを指差して続ける。
「リアンナお姉様が現れなければ、僕らはあの家で幸せに暮らせていたのに!」
「お母様とお父様がいれば、幸せに暮らせると言うのなら暮らせば良いじゃない。私がいなくても大丈夫よ」
ロザンナはロブに冷たく言い放つと、くるりと踵を返して歩き出した。
慌てて追いかけて、ロザンナに話しかける。
「ロザンナ! 待って! あなたたちに喧嘩してほしいわけじゃないのよ」
「わかっています。だけど、今はロブの顔を見たくないんです。ごめんなさい」
「……わかったわ。食事は部屋に持っていくわね。改めて話をしましょう」
「ありがとうございます」
わたしなら、こういう時は一人にしてほしいからそう言うと、ロザンナは眉尻を下げつつも、笑顔を作ってみせてくれた。
歩みを止めてロブのほうに振り返ると、ロブは泣きながら、わたしを睨んでいる。
「リアンナのせいだ! お前のせいでめちゃくちゃだ! お父様とお母様が言ってたけど、王族が馬鹿だから、リアンナだって馬鹿になったんだろ! 王族なんていなくなればいんだ!」
ロブが叫んだ時だった。
近くにいた騎士がロブを掴んだ。
「ロブ! 今すぐに謝って!」
騎士がロブを掴んだ理由がわかったので、わたしは焦る。
でも、ロブは意味がわかっていないから暴れるだけだ。
「な、何するんだよ! 嫌だよ! 謝ったりしない! 嘘なんて言ってないもん!」
「不敬罪だよ」
暴れるロブに騎士が冷たく低い声で言った。
「……え?」
「王族の悪口を言えば捕まるんだ。それくらい知っているだろう」
「そ、そんな、知らないよ!」
ロブは首を横に振ったけれど、足を進めていたロザンナが、わたしの隣まで戻ってきて叫ぶ。
「知らないわけがないでしょう! お母様はそれで捕まったんじゃないの!」
「だって、僕は子供だから許されるんじゃ……」
国によっては、子供だからということで、罰が免除されるところもある。
でも、ミドレス王国は不敬罪については、大人だろうが子供だろうが年齢は関係ない。
相手が誰であろうと人の悪口は子供でも言ってはいけないことだからだ。
平民同士、貴族同士の喧嘩なら、その場でおさめる場合も多いけれど、王族相手だと違ってくる。
わたしは小さく息を吐いてから、ロブに話しかける。
「ロブ、子供だからって何を言っても良いという逃げ道を与えるわけにはいかないのよ」
「どういうこと!? 僕は捕まるの!?」
「そうね」
捕まれば、ある意味ではロブの望み通りになる。
ここまでする必要もないかもしれないけれど、口に出してはいけないことだと教えておく機会にもなるかもしれない。
心を鬼にして、ロブに尋ねる。
「ロブ、あなたはどんな状況であっても、わたしの所よりも、お父様かお母様の所へ行きたい?」
「うん」
ちくりと胸が痛んだけれど、はっきりと言ってくれたほうが、この後のことが決めやすいので助かった。
「二人は同じ建物内にはいるわ。でも、別々の部屋にいるの。どちらのほうに行きたい?」
「お母様!」
「だそうよ。申し訳ないけれど、それを伝えてもらえる?」
ロブの返事を聞いて、彼を捕まえている騎士にお願いする。
騎士は「承知しました」と言って、ロブを抱えあげた。
「君の望む場所へ連れて行こう」
「え!? お母様の所へ連れて行ってくれるの!?」
ロブは無邪気に喜び、抵抗することもなく騎士に連れて行かれた。
「これで良かったのかしら」
大きく息を吐いてから呟くと、ロザンナがわたしの手を握って言う。
「わたしはメイドから色々と聞いているから、お母様たちが異常だということをわかっています。でも、ロブは話を聞いても信じないんです。あの子は、お母様たちに似てワガママだから、すぐに音を上げると思いますし、自分の目で真実をすることになるでしょう。ですから、お姉様は気にしなくて良いですよ。ただ、助けを求めてきたら」
「わかってるわ。見捨てることはしないわよ」
わたしの言葉を聞いたロザンナはホッとした表情になった。
そして、ロザンナが予想した通り、その日の昼には警察から連絡があり、ロブがわたしに謝りたいと言って泣いていると連絡があったのだった。
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