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第二部
28 必殺技をお見舞いしてあげないといけないわ
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「君の金運には本当に驚かされる」
そう言いながら、エル様は散歩中なのにまとわりついてくるデリーを抱き上げた。
デリーは嬉しそうな顔をして、尻尾をちぎれんばかりに振っている。
デリーの飼い主は、私にだけでなくエル様にもお礼のお金を渡してくれた。
だから、エル様は働かなくても良くなった。
しかも、この街にいる間は、デリーの飼い主の家に滞在することになった。
デリーの飼い主のイメヨチャ伯爵は、お金持ちで有名らしい。
エル様は名前を聞いて驚いていたから、よっぽど有名な敵討ちはなのだと思われる。
「お金が入ったんですから良しとしましょう」
「……そんなもんなんだろうか」
「最低国王を倒すにはお金も必要です」
エル様は最低国王を私と一緒に殺したとしても、きっと自分だけ罪を償おうとするはず。
親の敵討ちはレフェクト王国では禁止されていない。
だから、私もエル様も捕まったとしても、情状酌量もあり、保釈金を積めば刑務所に入らなくても良いと思われる。
私だけが助かっても意味がない。
エル様の分の保釈金も、私が貯めていかないといけないわ。
「まあ、旅費もいるしな。ただ、檻の中に入れられているのを実際に見たら、どうなるかわからねぇな」
「……どういうことですか?」
「殺すことが馬鹿らしくなるかも」
「死ぬよりも怖い目に遭わせてみたくなるとかですか?」
「思い付くことがあるのかよ?」
その質問には答えずに、デリーを連れて、私たちが泊まっていた宿屋に行き、料金を払って宿屋を出た。
そして、デリーと共にとある場所に向かいながら、エル様は話を続ける。
「あの男に死よりも辛いものなんてあるんだろうか」
「あると思います。それに先代の王妃陛下が自分を置いて去っていったことも、かなりショックだったみたいです」
「そうか」
エル様は苦笑して頷いた。
そんなことで納得できるものではないわよね。
「くぅん」
デリーはエル様が悲しげに見えたのか、心配するように鳴いた。
「大丈夫だよ」
エル様がデリーの頭を撫でて微笑むと、デリーは嬉しそうに尻尾を振った。
そんな話をしている内に、目的の場所に着いた。
今日は下見だけで、特に何かする予定はない。
さすがにデリーがいるのに、必殺技の練習をするわけにもいかなかった。
レイティア様とは毎日、水晶玉で話をさせてもらっている。
実践は大事だが、私や周りの誰かが怪我をするのは良くないと言われているので気を付けなければならない。
やって来た場所は森の中に入る入口だった。
この森を抜けていかないと隣町には行けないらしく、昼間は馬車の往来があり、そう危険ではない。
夕方近くから夜にかけてが危険らしく、何かトラブルがあって、明るい内に森を抜けられなかった人たちが盗賊に襲われているとのことだった。
「フルージアの人が犯罪だなんて珍しいですね」
「全てが善人というわけではないんだろうな。逆に生きにくくて、森の中に住んでいるのかもしれない」
「フルージアの人の多くが善人過ぎると思うのはわからないでもないですが、悪いことをしようとするのは極端すぎる気もします」
「反動なのかもしれないな」
森への入口は何か変わった様子があるわけでもない。
ただ、外灯もないため、夜道は月明かりに照らされない限り、先はほとんど見えそうになかった。
盗賊を壊滅することができれば、かなりの金額をもらえることになっている。
賞金稼ぎみたいでワクワクするわ。
今日は下見のみで帰るため、踵を返そうとしたところで、足元にキラキラ光る何かを見つけて拾い上げた。
それを持ち帰り、イメヨチャ家にいる鑑定士に調べてもらったところ、ここ最近、盗賊に奪われた宝石の一つではないかと言われた。
そのため警察に届けると、持ち主に連絡してくれて、持ち主は自分のものだと認めて喜んでくれた。
その人は宝石商を営んでいて、仕入れた宝石を持って帰ってきたところで盗賊に襲われたらしい。
「あまり有名ではない石なので、高くは売れないと思って捨てたのかもしれません。本当にありがとうございます」
そう言って、宝石商の人は1割だと言って、50日以上は何もしなくて良いくらいのお金をくれた。
さて、この調子で盗賊からお金を巻き上げ……ではなく、必殺技をお見舞いしてあげないといけないわ。
そう言いながら、エル様は散歩中なのにまとわりついてくるデリーを抱き上げた。
デリーは嬉しそうな顔をして、尻尾をちぎれんばかりに振っている。
デリーの飼い主は、私にだけでなくエル様にもお礼のお金を渡してくれた。
だから、エル様は働かなくても良くなった。
しかも、この街にいる間は、デリーの飼い主の家に滞在することになった。
デリーの飼い主のイメヨチャ伯爵は、お金持ちで有名らしい。
エル様は名前を聞いて驚いていたから、よっぽど有名な敵討ちはなのだと思われる。
「お金が入ったんですから良しとしましょう」
「……そんなもんなんだろうか」
「最低国王を倒すにはお金も必要です」
エル様は最低国王を私と一緒に殺したとしても、きっと自分だけ罪を償おうとするはず。
親の敵討ちはレフェクト王国では禁止されていない。
だから、私もエル様も捕まったとしても、情状酌量もあり、保釈金を積めば刑務所に入らなくても良いと思われる。
私だけが助かっても意味がない。
エル様の分の保釈金も、私が貯めていかないといけないわ。
「まあ、旅費もいるしな。ただ、檻の中に入れられているのを実際に見たら、どうなるかわからねぇな」
「……どういうことですか?」
「殺すことが馬鹿らしくなるかも」
「死ぬよりも怖い目に遭わせてみたくなるとかですか?」
「思い付くことがあるのかよ?」
その質問には答えずに、デリーを連れて、私たちが泊まっていた宿屋に行き、料金を払って宿屋を出た。
そして、デリーと共にとある場所に向かいながら、エル様は話を続ける。
「あの男に死よりも辛いものなんてあるんだろうか」
「あると思います。それに先代の王妃陛下が自分を置いて去っていったことも、かなりショックだったみたいです」
「そうか」
エル様は苦笑して頷いた。
そんなことで納得できるものではないわよね。
「くぅん」
デリーはエル様が悲しげに見えたのか、心配するように鳴いた。
「大丈夫だよ」
エル様がデリーの頭を撫でて微笑むと、デリーは嬉しそうに尻尾を振った。
そんな話をしている内に、目的の場所に着いた。
今日は下見だけで、特に何かする予定はない。
さすがにデリーがいるのに、必殺技の練習をするわけにもいかなかった。
レイティア様とは毎日、水晶玉で話をさせてもらっている。
実践は大事だが、私や周りの誰かが怪我をするのは良くないと言われているので気を付けなければならない。
やって来た場所は森の中に入る入口だった。
この森を抜けていかないと隣町には行けないらしく、昼間は馬車の往来があり、そう危険ではない。
夕方近くから夜にかけてが危険らしく、何かトラブルがあって、明るい内に森を抜けられなかった人たちが盗賊に襲われているとのことだった。
「フルージアの人が犯罪だなんて珍しいですね」
「全てが善人というわけではないんだろうな。逆に生きにくくて、森の中に住んでいるのかもしれない」
「フルージアの人の多くが善人過ぎると思うのはわからないでもないですが、悪いことをしようとするのは極端すぎる気もします」
「反動なのかもしれないな」
森への入口は何か変わった様子があるわけでもない。
ただ、外灯もないため、夜道は月明かりに照らされない限り、先はほとんど見えそうになかった。
盗賊を壊滅することができれば、かなりの金額をもらえることになっている。
賞金稼ぎみたいでワクワクするわ。
今日は下見のみで帰るため、踵を返そうとしたところで、足元にキラキラ光る何かを見つけて拾い上げた。
それを持ち帰り、イメヨチャ家にいる鑑定士に調べてもらったところ、ここ最近、盗賊に奪われた宝石の一つではないかと言われた。
そのため警察に届けると、持ち主に連絡してくれて、持ち主は自分のものだと認めて喜んでくれた。
その人は宝石商を営んでいて、仕入れた宝石を持って帰ってきたところで盗賊に襲われたらしい。
「あまり有名ではない石なので、高くは売れないと思って捨てたのかもしれません。本当にありがとうございます」
そう言って、宝石商の人は1割だと言って、50日以上は何もしなくて良いくらいのお金をくれた。
さて、この調子で盗賊からお金を巻き上げ……ではなく、必殺技をお見舞いしてあげないといけないわ。
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