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第二部
31 良いみたいですね
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森の出入り口まで戻ってきた私たちは、リーダー格であるルワイチョ・ジヤオさんに、詳しい話を聞くために彼の家に招かれた。
まさか、盗賊のリーダーの家に足を踏み入れることになるとは思わなかった。
といっても、ジヤオさんの家は木造の平屋で、一般の人たちが住んでいるものと変わらなかった。
ジヤオさんは一人暮らしで、私たちが突然、家を押しかけても困ることはないようだった。
メガとジウには外で見張りをしてもらい、私とエル様だけで話を聞くことになった。
詳しい話を聞いてみると、ジヤオさんは盗品などに反応する魔道具を手に入れたのだそうだ。
どうやって手に入れたのかと言うと、食べ物に困っていた人がいたから、分け与えたところ、この魔道具をくれたのだと言う。
くれた人間はこの石は何の理由かわからないが、突然光り始めるから嫌なのだと言っていたらしい。
そして、それをくれた男性は高齢の人たちから物品をだまし取っていた罪で捕まったらしい。
その時に、もらった魔道具が盗品に反応するのだと気づいたらしかった。
そして、自分の手元にこの魔道具が来たということは、盗品を奪い返すことが自分の使命なのだと考えた。
「盗品を奪うのも犯罪だろ。なぜ、警察に任せておかなかったんだ?」
「フルージアの人間は人が良いと外国の人間に知られてしまってからは、騙される人が多くなっていて、警察も手が回らないんっすよ」
すっかり大人しくなったジヤオさんは、エル様の質問に答えると、大きく息を吐いた。
「それは困ったものですね」
「はい。ただ、この魔道具が私の元に来たのは、悪を許すなということではないのかと思いましてね。一人で始めようとしましたが、仲間に見つかってしまいまして」
「仲間の方が一緒に盗賊をすると決めてくれたんですね」
「はい。一人じゃあぶねぇだろうって」
やっぱり、フルージアの人たちは良い人が多いのね。
今回は間違ったやり方をしてしまったけれど、ここでやめればまだ許されるはず。
そう考えた時、ジヤオさんの服の胸ポケットから、小さな石が勝手に転がり落ちた。
大きさで言えば、イチゴくらいの大きさの白い石だ。
その石は、私とエル様のほうに転がってきて、私とエル様のちょうど間くらいで止まった。
「こ、これは……! 魔道具が、あなた方を選んだようです!」
「え、選んだ?」
意味がわからなくて聞き返す。
エル様も困惑しているようで、聞き返しはしないけれど、眉根を寄せていた。
「そうだと思います。魔道具は私ではなく、あなた方を持ち主に選んだようです!」
ジヤオさんはまるで何かに解放されたかのように笑顔になった。
「……どうしたら良いんですか?」
魔道具はコロコロと私とエル様の前を移動し始めた。
まるで、早く受け取れと急かされているみたいね。
「動く魔道具はあるが、魔力を流してもいないのに、勝手に動く魔道具なんて初めて見たぞ」
「私もです。私なんかは特に、魔法がない国から来ましたから余計に珍しいです」
「この魔道具は俺が持っていても良いか?」
エル様が私に尋ねると、魔道具はぴたりと動きを止めた。
そしてすぐに動きを再開して、エル様に近寄っていく。
「エル様で良いみたいですね」
頷いてから、ジヤオさんにお願いする。
「申し訳ないのですが、もう少しこの魔道具について詳しく教えていただけますか?」
「もちろんです! 俺がわかる範囲になりますがお伝えいたしましょう」
ジヤオさんは笑顔で頷き、私たち二人分だけでなく、外で見張りをしているメガたちにも温かいお茶を淹れてくれた。
まさか、盗賊のリーダーの家に足を踏み入れることになるとは思わなかった。
といっても、ジヤオさんの家は木造の平屋で、一般の人たちが住んでいるものと変わらなかった。
ジヤオさんは一人暮らしで、私たちが突然、家を押しかけても困ることはないようだった。
メガとジウには外で見張りをしてもらい、私とエル様だけで話を聞くことになった。
詳しい話を聞いてみると、ジヤオさんは盗品などに反応する魔道具を手に入れたのだそうだ。
どうやって手に入れたのかと言うと、食べ物に困っていた人がいたから、分け与えたところ、この魔道具をくれたのだと言う。
くれた人間はこの石は何の理由かわからないが、突然光り始めるから嫌なのだと言っていたらしい。
そして、それをくれた男性は高齢の人たちから物品をだまし取っていた罪で捕まったらしい。
その時に、もらった魔道具が盗品に反応するのだと気づいたらしかった。
そして、自分の手元にこの魔道具が来たということは、盗品を奪い返すことが自分の使命なのだと考えた。
「盗品を奪うのも犯罪だろ。なぜ、警察に任せておかなかったんだ?」
「フルージアの人間は人が良いと外国の人間に知られてしまってからは、騙される人が多くなっていて、警察も手が回らないんっすよ」
すっかり大人しくなったジヤオさんは、エル様の質問に答えると、大きく息を吐いた。
「それは困ったものですね」
「はい。ただ、この魔道具が私の元に来たのは、悪を許すなということではないのかと思いましてね。一人で始めようとしましたが、仲間に見つかってしまいまして」
「仲間の方が一緒に盗賊をすると決めてくれたんですね」
「はい。一人じゃあぶねぇだろうって」
やっぱり、フルージアの人たちは良い人が多いのね。
今回は間違ったやり方をしてしまったけれど、ここでやめればまだ許されるはず。
そう考えた時、ジヤオさんの服の胸ポケットから、小さな石が勝手に転がり落ちた。
大きさで言えば、イチゴくらいの大きさの白い石だ。
その石は、私とエル様のほうに転がってきて、私とエル様のちょうど間くらいで止まった。
「こ、これは……! 魔道具が、あなた方を選んだようです!」
「え、選んだ?」
意味がわからなくて聞き返す。
エル様も困惑しているようで、聞き返しはしないけれど、眉根を寄せていた。
「そうだと思います。魔道具は私ではなく、あなた方を持ち主に選んだようです!」
ジヤオさんはまるで何かに解放されたかのように笑顔になった。
「……どうしたら良いんですか?」
魔道具はコロコロと私とエル様の前を移動し始めた。
まるで、早く受け取れと急かされているみたいね。
「動く魔道具はあるが、魔力を流してもいないのに、勝手に動く魔道具なんて初めて見たぞ」
「私もです。私なんかは特に、魔法がない国から来ましたから余計に珍しいです」
「この魔道具は俺が持っていても良いか?」
エル様が私に尋ねると、魔道具はぴたりと動きを止めた。
そしてすぐに動きを再開して、エル様に近寄っていく。
「エル様で良いみたいですね」
頷いてから、ジヤオさんにお願いする。
「申し訳ないのですが、もう少しこの魔道具について詳しく教えていただけますか?」
「もちろんです! 俺がわかる範囲になりますがお伝えいたしましょう」
ジヤオさんは笑顔で頷き、私たち二人分だけでなく、外で見張りをしているメガたちにも温かいお茶を淹れてくれた。
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