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第二部

33 冗談ではありません!

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「リーチェ! 自分が何言ってるのかわかってんのか?」

 エル様が眉間に刻まれた皺を、より深くさせて尋ねてきた。

「わかっていますとも。それから寝ぼけてもいません! ちゃんと目は開いているでしょう?」
「……目を開けたまま眠れる奴もいるからな」
「私にはそんな器用なことは出来ませんので、ご心配なく! 本当に心の底からお願いしてるんです! どうしても嫌でしたら、遠慮なくフッてください!」
「絶対に冗談だろ!」
「本当に冗談ではありません!」

 中々、信じてもらえないので必死に訴えていると、エル様がいきなり、私の額に手を当てた。

「もしかして、熱でもあるのか?」
「そういうのはもう良いです。このままいきますと、お断りされたのではなく結婚していただけるとみなしますが?」
「えらく極端だな!?」

 エル様が叫んだところで、メガが焦った顔をして聞いてくる。

「ちょ、ちょっと待ってください! もしかしたら、姐さん、前に言っていた男運の悪さを今回も発揮しているのではないですか?」
「お前、それは俺に失礼だろ!」
「いや、まあ、そうですね。でも、ほら、エル様はある意味、面倒な男じゃないですか」
「どこがだよ!? 大体、そう思ってても目上には遠慮して言わないのが普通だろ!?」

 エル様がメガに説教を始めてしまったので、結局は私からの話は曖昧なまま終わってしまった。

 ……結局は結婚してくださるということで良いのかしら?
 嫌われていないと思ってるんだけど、私が鈍いだけで、もしかして嫌われていたりするのかしら。

 その日は、もやもやした気持ちのまま、ベッドに潜り込んだのだった。

 次の日の朝早く、ほとんど寝つけなかった私は、犬のデリーと広い中庭を散歩することにした。

 昨日の件で、エル様にどう話をすれば良いのか考えていると、屋敷の周りに作られた小道を走っているエル様の姿を見つけた。

「ワンッ!」

 デリーは嬉しそうにエル様の所へ走っていこうとする。

 私がデリーに引きずられるようにして付いていくと、エル様が私たちに気が付いて足を止めてくれた。

「おはよう、リーチェ。デリーに散歩に連れて行ってもらってるのか?」
「おはようございます、エル様。あの、違いますわ。のんびりお散歩中でしたのに、エル様の姿を見て、デリーが走り出したんです」
「そうか。可愛い奴だな」

 尻尾をブンブンと振って纏わりつくデリーを抱き上げて、エル様が話しかけてくる。

「昨日のことで話をしたいんだが、宝石商の所へ行く前に時間をくれないか」
「わ、わかりました」

 私は緊張しつつも、大きく頷いた。


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