私には関係ありませんので、どうぞお好きになさって?

風見ゆうみ

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15 私には関係ありませんので、どうぞお好きになさって?

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 さて、どうしようかしら。
 老爺が相手では無理はできないわ。
 表情だけ見てみると、今にも心臓発作を起こして倒れてしまいそうだもの。

 そう思った時、アーティア様が自然な感じで、セナ様の後ろに隠れた。
 気になって視線を送ると、アーティア様はステッキの取っ手部分を外し、反対側の先の部分も手のひらくらいの大きさだけ取り外した。
 そして、一本の丸い筒になったステッキの中に、アーティア様はメイド服のエプロンのポケットから袋に入った針を取り出し、筒の先にセットした。

 もしかして……。

 アーティア様は私を見て微笑んだあと、小声で言う。

「ショーマ様はお任せします」
「大丈夫なんですの?」
「初めての実践ですので、何事もやってみないとわかりませんが、自分を信じようと思います。練習は何度もしていますし。目には当たらないように体の部分に当てますから」

 それはそうかもしれないけれど、老人に対して、そんな危ないことをしても大丈夫なのかしら。

 アーティア様は私と同じことを考えていたようで、人質に取られている老爺に尋ねる。

「あの、何かアレルギーがあったりとかしますか?」
「と……、特にはありませんが」
「そうですか。助かります。ありがとうございます」

 アーティア様はお礼を言ったあと、今度はイータ様に尋ねる。

「イータ様はアレルギーはございますか?」
「特にありませんわ……って、あなた、何を企んでいるつもりなの!?」

 イータ様の質問に、アーティア様は言葉ではなく行動で答えることに決めたようだった。
 イータ様とアーティア様の間に人がいないことを確認すると、ステッキの先を口に当てて、イータ様に向かって何かを吹いた。
 
 トスッ。
 という音と共に、イータ様の肩に何かが刺さった。
 
「ふへ?」

 その瞬間、イータ様の目はとろんとなり、ベッドに倒れ込んでしまった。

「イータ!」

 ショーマ様がイータ様に気を取られている間に、アーティア様は老爺の肩に向けて吹き矢を吹いた。

 服の部分に当たったようだけれど、上手く貫通したようで、イータ様と同じように老爺は力を無くしてぐったりした。

「おい! 起きなさい! 気絶なんてするんじゃありません!」

 人質に気絶されてしまうと、ショーマ様にとっては邪魔な存在に近い。
 だって、今まで自分で立っていた人間を抱えないといけなくなるものね。

 そのため、ショーマ様が老爺を近くの壁に向かって投げつけた。
 素早くジェドが動いて老爺の体を受け止める。

「ありがとうございます」
「礼を言われることではございません」

 アーティア様が老爺を助けたジェドに礼を言うと、ジェドは苦笑して首を横に振った。

「何をしてくれているんですか!」

 激昂したショーマ様がアーティア様に近付いて剣を振り下ろそうとした。
 すると、セナ様が間に入り、シルバートレイで剣を受け止めた。
 ショーマ様の動きが止まったので、防御も出来ない状態になっている鳩尾に扇の持ち手の先を叩き込んで、私は剣の餌食にならないように、すぐに離れた。

「うぐっ」

 ショーマ様は持っていた剣を床に落とすと、前のめりになってしゃがみ込む。
 そんな彼に問いかけてみる。

「ショーマ様、自分で何をやったかおわかりですか?」
「く……くそ。何をやったかなんてわかっていますよ! ふざけた侍女に攻撃しようとしただけです!」
「残念ながら、侍女ではないんですのよ?」

 扇を開いて、どうしても浮かんでしまう笑みを隠しながら、言葉を続ける。

「アーティア様はリシャード国の第二王子であるセナ殿下の婚約者ですわよ」
「な、なんですって?」
「ということは、あなたの剣を受け止めたのは誰だかもうお分かりになりますよね?」
「そ、そんな! セナ殿下だと言うのですか!? どう見たって女性にしか見えません!」
「そういう問題じゃねぇだろ」

 セナ殿下はシルバートレイをアーティア様に返し、胸の前で腕を組んで、ショーマ様を睨みつける。

「正体を知らなかったとはいえ、このことは問題にさせてもらうからな。お前はもう終わりだよ。というか、すでに終わってるけど」
「そういうことですわ。あなたが国王だったとしても良くない展開ですわね」
「くそおぉぉぉっ!」

 半ばヤケクソになったのか、ショーマ様が叫んで、私に向かってこようとした。
 けれど、ジェドがショーマ様の服を後ろから掴んで引き倒した。
 床に大の字になって倒れたショーマ様に近付き、横に立って見下ろすと、彼が叫んでくる。

「こんなことをしても良いと思っているんですか! この国が許しても、きっと周りが許しませんよ!」
「そうとは思えませんが?」
「私がいなくなれば、この国は滅びますよ!」
「そうですわね」

 クプテン王国は無くなって、新たな国名で再出発するんですもの。

「わかっているなら助けなさい!」
「嫌ですわ」
 
 きっぱりと答えたあと、ショーマ様か視線を外し、センマ様に向かって笑顔で言う。

「ショーマ様のことですが、私には関係ありませんので、どうぞお好きになさって? 煮ても焼いても氷漬け、液体漬けも良いでしょう」
「えっと、いや、それは、あの、普通に裁きます」

 困惑するセンマ様には笑顔だけ返して、またショーマ様に視線を戻す。

「どんな形になるかはわかりませんが、お別れですわね」
「絶対に許しませんよ! どんなことをしてでも、あなたの前に現れてあなたを組敷いてやりますよ! そして、僕の息子の餌食にしてやります!」

 そう言って、ショーマ様は床に倒れたまま自分の股間に触れた。

「あら、そうですか。では、最悪な事態を少しでも予防できるように、あなたの息子さんには今のうちに怪我でもしてもらいましょうか」

 私はそう言うと、ショーマ様の息子さんとやらを思い切り踏みつけた。






お読みいただき、ありがとうございます!
次の話が最終話になります。
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