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六話
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【誰でもいいから俺を紐にしてくれ】
六話
両親が言うように俺はずっといい子ってやつを演じていた。それが今度はりゅうに変わるだけ。同じことだ。
俺は俺じゃなくていい。俺に求められてる俺になるしかないのだ。
「お姉さん」
「りゅうくん……」
お姉さんの目がうるっと潤む。
きっとこれがお姉さんに望まれていた俺だ。俺は生まれてから死んでるようなもんで自分の意見なんて言ってこられなかった。
イエスマンって奴だったんだ。だから、これが間違いだったとしても俺は何も言えない。お姉さんに逆らうことも出来ない。それに妥協さえすればお姉さんとのこの甘い生活が続いていくんだ。なら、いいじゃないか。妥協したって。
俺もそれでいいと思う。
「だが断る!」
……でもな、人生一度は言ってみたいセリフ第三位くらいに君臨するあのセリフを言うのに今が好機だ。
「……え?」
お姉さんはキョトンとした顔でこちらを捉えて首を傾げる。
「きっとお姉さんはりゅうくんって人を俺に重ねて、まだ居るんだって思い込んで逃げてるんじゃないですか?」
「それは……」
お姉さんは俺から目を逸らす。
「……もう、僕は逃げません。こんなの間違ってるから。人のために仮面を被って自分を見失うなんてもう嫌なんです。それにお姉さんが教えてくれたんじゃないですか」
仮面なんて必要ない。俺は俺のままで受け入れて欲しい。こんなの傲慢なのかもしれないけど、それでも俺はこんなペルソナに頼って生きていきたくはない。
それが今の俺の本音だ。
「お姉さんに抱きしめられた時、やっぱりこの人は女神なんじゃないかって思ったんです。俺にとってあの家は鳥籠みたいなもんでした。みんなが外で遊んでいる間、俺は家に籠らされて勉強や習い事の日々。外からは楽しそうな笑い声が聞こえてくるのになんで俺だけこんな目に遭わないといけないんだって思ってました。でも、それも大学にさえ出ればもう終わるはずだと言い聞かせてやって来ましたけど、今度は有名企業に入れとか意味のわからないことを言い出して、やっと気がついたんです。あぁ。俺は親に飼われてるだけなんだって。だから、多分俺は勢いだとはいえ、そんなつぶやきをしたんだと思います。今考えてみれば本当に独り言のようなもんでした。でも、お姉さんはそれを見つけて俺を連れ出しにやって来てくれた……」
「……だから女神なの?」
「はい! お姉さんに連れ出して貰ってなかったらきっと親の言いなりの人生を歩んでいたと思います。自分の意思を持たず、ただ流されるだけ。それじゃ死んだも同然ですからね」
「……死んだも同然か。そう……ね。確かにその通りよね……」
お姉さんはこめかみを抑えながらそんなことを言った。
「……最低だわ。私」
「……お姉さん。いや、恭子さん。無理に話さなくてもいいです。俺が勝手に自分のことをペラペラと喋っただけですし、この通り口が水素並みに軽いので」
「……優しいのね。君は」
涙を貯めた瞳でお姉さんはそんなことを言った。
そのお姉さんの表情はいつものSっけなどまるで感じられないくらいに弱々しく、今すぐに抱きしめてやりたいくらいに可愛い。
いや、まあ、もうとっくに抱きしめてるんだけどね。
「……大丈夫です。僕は自分の意思でここに居ますから」
「……ほんと? 出てったりしない……?」
「しませんしません」
「よかった……」
お姉さんなのだが、幼女のようにも見えないことはない一種の幻覚を見てしまった。
そして、お姉さんは安心したように俺に寄りかかって、目を閉じた。
……あれ? これはOKサインってやつ?
だが、やはりお姉さん的にもだが断るってやつだったらしく、すぅすぅと可愛らしい寝息が聞こえてきた。
「……はぁ。やっぱりこうなるのね」
だけれど、これはこれでいいかもな。
六話
両親が言うように俺はずっといい子ってやつを演じていた。それが今度はりゅうに変わるだけ。同じことだ。
俺は俺じゃなくていい。俺に求められてる俺になるしかないのだ。
「お姉さん」
「りゅうくん……」
お姉さんの目がうるっと潤む。
きっとこれがお姉さんに望まれていた俺だ。俺は生まれてから死んでるようなもんで自分の意見なんて言ってこられなかった。
イエスマンって奴だったんだ。だから、これが間違いだったとしても俺は何も言えない。お姉さんに逆らうことも出来ない。それに妥協さえすればお姉さんとのこの甘い生活が続いていくんだ。なら、いいじゃないか。妥協したって。
俺もそれでいいと思う。
「だが断る!」
……でもな、人生一度は言ってみたいセリフ第三位くらいに君臨するあのセリフを言うのに今が好機だ。
「……え?」
お姉さんはキョトンとした顔でこちらを捉えて首を傾げる。
「きっとお姉さんはりゅうくんって人を俺に重ねて、まだ居るんだって思い込んで逃げてるんじゃないですか?」
「それは……」
お姉さんは俺から目を逸らす。
「……もう、僕は逃げません。こんなの間違ってるから。人のために仮面を被って自分を見失うなんてもう嫌なんです。それにお姉さんが教えてくれたんじゃないですか」
仮面なんて必要ない。俺は俺のままで受け入れて欲しい。こんなの傲慢なのかもしれないけど、それでも俺はこんなペルソナに頼って生きていきたくはない。
それが今の俺の本音だ。
「お姉さんに抱きしめられた時、やっぱりこの人は女神なんじゃないかって思ったんです。俺にとってあの家は鳥籠みたいなもんでした。みんなが外で遊んでいる間、俺は家に籠らされて勉強や習い事の日々。外からは楽しそうな笑い声が聞こえてくるのになんで俺だけこんな目に遭わないといけないんだって思ってました。でも、それも大学にさえ出ればもう終わるはずだと言い聞かせてやって来ましたけど、今度は有名企業に入れとか意味のわからないことを言い出して、やっと気がついたんです。あぁ。俺は親に飼われてるだけなんだって。だから、多分俺は勢いだとはいえ、そんなつぶやきをしたんだと思います。今考えてみれば本当に独り言のようなもんでした。でも、お姉さんはそれを見つけて俺を連れ出しにやって来てくれた……」
「……だから女神なの?」
「はい! お姉さんに連れ出して貰ってなかったらきっと親の言いなりの人生を歩んでいたと思います。自分の意思を持たず、ただ流されるだけ。それじゃ死んだも同然ですからね」
「……死んだも同然か。そう……ね。確かにその通りよね……」
お姉さんはこめかみを抑えながらそんなことを言った。
「……最低だわ。私」
「……お姉さん。いや、恭子さん。無理に話さなくてもいいです。俺が勝手に自分のことをペラペラと喋っただけですし、この通り口が水素並みに軽いので」
「……優しいのね。君は」
涙を貯めた瞳でお姉さんはそんなことを言った。
そのお姉さんの表情はいつものSっけなどまるで感じられないくらいに弱々しく、今すぐに抱きしめてやりたいくらいに可愛い。
いや、まあ、もうとっくに抱きしめてるんだけどね。
「……大丈夫です。僕は自分の意思でここに居ますから」
「……ほんと? 出てったりしない……?」
「しませんしません」
「よかった……」
お姉さんなのだが、幼女のようにも見えないことはない一種の幻覚を見てしまった。
そして、お姉さんは安心したように俺に寄りかかって、目を閉じた。
……あれ? これはOKサインってやつ?
だが、やはりお姉さん的にもだが断るってやつだったらしく、すぅすぅと可愛らしい寝息が聞こえてきた。
「……はぁ。やっぱりこうなるのね」
だけれど、これはこれでいいかもな。
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