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7話
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【誰でもいいから俺を紐にしてくれ】
七話
なぜだか夢心地というか心地の良い気分だった。なんか柔らかいし甘いいい匂いはするし、例えるなら赤ちゃんに戻ったようなそんな気分だ。
「……お……て? ……きて?」
甘い声が耳を蹂躙し、更に俺のオギャバブ精神に火をつけた。
何を言ってるのかはよくわからないけど、こんなに気持ちがいいのだからまだこのままがいい。まだあと少しだけ……
「起きてって!」
強めの口調にうっすらと瞳を開けると、お姉さんの赤面が目に入った。
「……え、ええと……どうしました?」
初めて見るお姉さんの赤面に、目が冴える。可愛くて仕方がない。
「その……それ……いや、男の子だし分かるんだけどね?」
そう言ってお姉さんは俺の下の方を指さした。それを辿っていくと、察した。察しなければならなかった。
俺の男の中の男が逞しくなっていたのだ。
「……そ、その、ご、ごごめんなさーい!!」
俺は赤ちゃんでもなんでもなかった。ただの馬鹿な男だったのだ。
「うわぁぁぁん!!」
涙を流しながら、男としての大事なものをちょっとずつその涙に乗せながら、俺はただひたすらに先の見えない廊下を走り続ける。
なにしてしてんだマジで俺は……恥ずか死ぬぞこれ……絶対このあと顔合したら思い出しちゃってやばいだろうし、大学生になったって言ったって、そっちの方の経験はその辺の中坊の方があると言っても過言ではないしな。まだ童貞だし。
「……はぁ……はぁ……」
宛もなくこのだだっ広い家の中を走って、気がつくと俺は廊下に一人になった。どっちを向いても同じような風景が広がる。
「……ここ何処だ?」
とりあえず、落ち着くために深呼吸をし、荒れた呼吸を正す。
さて、適度な運動で冴えてるはずの頭をフル回転させて考えてみよう。
「OK。Goo子。今俺はどこにいる?」
「……すみません。よくわかりません」
やっと昨日返してもらったばかりの相棒に聞いてみるが、やつにも分からないらしい。
俺より頭のいいはずの奴がダメならもう俺にもお手上げだ。とりあえず、適当に歩いてみるか。
「……どんだけ広いんだよここ。さっきはゾンビが出てきそうな洋館みたいな高級そうな洋室ばっかりだったのに、こっちは和室になってるし、襖開けたらまた襖だし……」
下手に歩き出したのがマズかったのか、全く知らない和室の方へと出てきてしまった。歩けば歩くだけ泥沼にハマっていくようだぜ。
「もうトイレにも行きたいし腹も減ったし、なにより家の中で遭難し、遺体で発見とかニュースにされるの嫌だぜ俺……」
まだ七月中旬だけれど、やっぱり夏前ってなると暑いし元々運動不足な俺にはこれだけで十分厳しい。あまりの暑さに頭がぼーっとしてきた。
やばい。クラクラする……
そんな時、ガッシャーン! と、食器を地面にぶちまけたような音がした。
一瞬、自分が倒れちまったのかと思ったが、そうではなくすぐ近くで本当に皿やコップがクラッシュしていた。
「やべ……またやっちった……」
けど、俺からしたらそんなことはどうでもよかった。やった! 助かった! やっとこの無限の襖地獄から抜け出せるんだ!
それだけで俺の体の疲れはどこかへ吹っ飛んでいったかのように無くなった。
「あ、あの! 助けてください! 今迷ってて……」
「ん? あ、昨日来た子だね? よろしくー俺、八神直斗。君は坊ちゃんでいいか」
「え、えぇ……はい」
「でもよかったよ。やっと人に会えて」
「え?」
「いやー屋敷が広すぎてさぁよく迷子になるんだよねぇあはは」
さっき飛んでいったはずの疲れが三倍増しくらいで帰ってきた。
俺は一番会ってはならない相手に遭遇してしまったらしい。
「君も迷子だったよね? 大丈夫。なんとかなるし」
「……いや、もう結構限界っすね。そろそろ漏れる」
「あー。トイレかー。トイレならわかるよ? 僕もよく迷ってねえ。トイレだけは覚えたんだよね」
なぜ普通に道を覚えなかったんだよとかそういうツッコミなんか知ったこっちゃない。俺はトイレに行きたいんだ。
それにこの人に一度でも突っ込んでしまったらボケ倒されそうだし、面倒くさそうだ。
俺の直感、シックスセンスがそう告げていた。ただですらもう膀胱も体力もピンチなのにこれ以上消耗する理由は作りたくない。
「トイレは……どこにあるんですか?」
「え? そこにあるけどどうしたの? もしかしてトイレ?」
「もしかしなくてもトイレだよ!」
言ってすぐ、俺は口に手を持っていき、言ったことを訂正、いや、無くそうとした。だが、もう言ってしまった言霊は消えない。手遅れだった。
彼は待ってましたと言わんばかりに、瞳をきらきらと輝かせて、何度か首を縦に振りながら、ニンマリと鬱陶しくも笑って見せた。
「おー! いいツッコミだねぇ! お兄さんの胸に響いちゃったよ!」
爽やかな笑顔でそう言う奴の顔面をぶん殴ってやりたいこの気持ちを堪えて、俺は何も言わずにトイレと言われた襖を開けると、そこは外だった。
「……ここは?」
「燦々と輝く太陽! 雑木林で元気に運命の相手を待つセミの鳴き声……これを見て外じゃなかったら一体どこなのさ?」
外と聞いて俺の背筋がぞわりとした。今、首についてるこの首輪……お姉さんは爆弾を外して発信機に変えたと言っていたが、お姉さんが俺のこれを発信機にもし変えていたとしたら、そろそろ迎えが来てもおかしくないはずなのだ。
なのに、それがまだ無い。ってことは……あれはブラフの可能性もある。
命と膀胱どちらが大事だ? 答えは二つに一つだ。
「……おや? 坊っちゃま……と、このバカ息子! また皿を割ったのか!?」
「あはは……でも、一回二回目じゃん?」
「なわけないだろうが! お前は今日で356枚もの皿を割ったんだ!」
朝食べたパンの数を数えなかったり、戦死者数を数えていたりする中、この人らは割った皿の数ですかそうですか。
「お坊ちゃま。大変見苦しい姿をさらしてしまい申し訳ございません。ささ。こちらでお嬢様がお待ちですのでどうぞ」
「は、はぁ」
まあ、何がともあれ俺はなんとかこの迷路から抜け出せるらしい。
「き、君! 随分探したよ?」
「恭子さん? そんな息切らしてどうしたんですか?」
「あ、あはは……実は……その首輪のやつなんだけど解除がなんと面倒くさくてさ? 屋敷からでたらドカンだったんだよね」
俺は尿意も忘れ、声を発することも出来ず、顎が外れるくらいに口を開けて呆然とすることしか出来なかった。
***
さっきはパニックになってしまったが、部屋に戻り一安心した俺は再度スマホを取り出す。
とりあえず、友人や肉親辺りには連絡を入れておいたほうがいいだろう。
緑色のアイコンをタップして起動させてみると、なにかおかしい。なんか画面がスッキリしてるのだ。
「……あれ?」
一度アプリを落として再起動させてみるが、同じようにまっさらな状態で起動される。
「……あれれ?」
確かに俺には友人は少ないと思う。だが、居ない訳では無い。両手でいや、片手で数えられる程度だが、友人は居る。しっかりと俺が属しているグループもあった。
青いメガネがトレードマークの青木に、いつも話が噛み合わない髙木。あと、天然な桜木。どいつもこいつもいい意味で馬鹿で面白い奴らだった。
まあ、奴らと連絡が取れなくなるのはいいとしよう。でも、許せないことが一つだけあった。
俺の理解者であり、俺をずっと陰ながら支えてくれた世界で唯一の俺の嫁であり、最愛の相手。イルンちゃんが何処にもいない。俺の画像フォルダーにイルンが居ない。しっかりクラウド上にもバックアップを取っていたはずの彼女がきれいさっぱり消えていたのだ。
「……浮気は許さないわよ? 例えそれが二次元でもね」
開いたドアにもたれ掛かるように立つ今の俺の嫁が不敵な笑みを浮かべてそういう。
しまった……! ずっとこの人の前じゃオタクってことを隠してきていたのにいつの間にかバレていた。
この人は普通の人っぽいからそっち系の話はしてなかったんだけどなぁ。スマホの中まで見られちゃもう隠しようがない。
てか、人のスマホの中を平気で見て、データの消去を行ってるってのになぜ俺の命に直に関わる俺の首に着いた爆弾はそのままか……なんかの拍子で死んでも知らんぞ俺は……
「……今は恭子さんさえいればいいですから別に気にしてませんよ。それよりこの首輪の爆弾解除してくれません?」
「あ、あぅ……」
意外とおねえさんは攻められると弱いらしい。こうなったらひたすら攻め続けてやろう。
データを消された憂さ晴らしと、この爆弾をどうにかして欲しいってのもあるしな。
「……どうしました?」
「ち、近い……!」
「……なんでです? 僕らは曲がりなりにも夫婦なんですよ? このくらい普通じゃないですか?」
俺はこれまでやられてきたことの仕返しのため、後ろから彼女に抱きついてみると、ふわりと甘い香りがして、密着させたところが全部なんか柔らかくて俺には刺激が強すぎた。
俺が咄嗟に離れようとすると、ガシッとお姉さんは俺の引っ込みかけた手を掴んだ。このときを待っていましたと言わんばかりの恐ろしい笑顔で。
「……ねえ」
「は、はい!?」
「……私に後ろから抱きつくなんていい度胸だね?」
超絶可愛いいい笑顔なのになんでだろ? こんなに恐怖を感じるのは。
「き、恭子さん?」
「何か言うことがあるの? 先に手を出しておいて」
「ち、違いますよ! そ、それはなんというか気の迷いというか……」
背中に滝のように汗が流れていくような気がする。俺はとびきり甘いハニートラップに引っかかっちまったみたいだ。
「……まあいいわ。今日は許してあげる」
そう言ってお姉さんは早足で部屋から出ていった。心做しか顔が赤くなってる気がする。
「あれ? お嬢何顔真っ赤にしてるんです? あ、まさか。お坊ちゃんに」
「な、なんでもないわよ!」
「ほほーう? やっぱりねぇ……お嬢本当、押されるのには」
「この部屋の前でそれ以上言ったらわかってるわよね?」
「は、はいはい。わかった。わかりましたよ」
廊下からそんな会話が聞こえてきた。
……意外と効果あったのか? いやいや、さっきの反応に、あのお姉さんだぞ。そんな事あるわけないよな。
七話
なぜだか夢心地というか心地の良い気分だった。なんか柔らかいし甘いいい匂いはするし、例えるなら赤ちゃんに戻ったようなそんな気分だ。
「……お……て? ……きて?」
甘い声が耳を蹂躙し、更に俺のオギャバブ精神に火をつけた。
何を言ってるのかはよくわからないけど、こんなに気持ちがいいのだからまだこのままがいい。まだあと少しだけ……
「起きてって!」
強めの口調にうっすらと瞳を開けると、お姉さんの赤面が目に入った。
「……え、ええと……どうしました?」
初めて見るお姉さんの赤面に、目が冴える。可愛くて仕方がない。
「その……それ……いや、男の子だし分かるんだけどね?」
そう言ってお姉さんは俺の下の方を指さした。それを辿っていくと、察した。察しなければならなかった。
俺の男の中の男が逞しくなっていたのだ。
「……そ、その、ご、ごごめんなさーい!!」
俺は赤ちゃんでもなんでもなかった。ただの馬鹿な男だったのだ。
「うわぁぁぁん!!」
涙を流しながら、男としての大事なものをちょっとずつその涙に乗せながら、俺はただひたすらに先の見えない廊下を走り続ける。
なにしてしてんだマジで俺は……恥ずか死ぬぞこれ……絶対このあと顔合したら思い出しちゃってやばいだろうし、大学生になったって言ったって、そっちの方の経験はその辺の中坊の方があると言っても過言ではないしな。まだ童貞だし。
「……はぁ……はぁ……」
宛もなくこのだだっ広い家の中を走って、気がつくと俺は廊下に一人になった。どっちを向いても同じような風景が広がる。
「……ここ何処だ?」
とりあえず、落ち着くために深呼吸をし、荒れた呼吸を正す。
さて、適度な運動で冴えてるはずの頭をフル回転させて考えてみよう。
「OK。Goo子。今俺はどこにいる?」
「……すみません。よくわかりません」
やっと昨日返してもらったばかりの相棒に聞いてみるが、やつにも分からないらしい。
俺より頭のいいはずの奴がダメならもう俺にもお手上げだ。とりあえず、適当に歩いてみるか。
「……どんだけ広いんだよここ。さっきはゾンビが出てきそうな洋館みたいな高級そうな洋室ばっかりだったのに、こっちは和室になってるし、襖開けたらまた襖だし……」
下手に歩き出したのがマズかったのか、全く知らない和室の方へと出てきてしまった。歩けば歩くだけ泥沼にハマっていくようだぜ。
「もうトイレにも行きたいし腹も減ったし、なにより家の中で遭難し、遺体で発見とかニュースにされるの嫌だぜ俺……」
まだ七月中旬だけれど、やっぱり夏前ってなると暑いし元々運動不足な俺にはこれだけで十分厳しい。あまりの暑さに頭がぼーっとしてきた。
やばい。クラクラする……
そんな時、ガッシャーン! と、食器を地面にぶちまけたような音がした。
一瞬、自分が倒れちまったのかと思ったが、そうではなくすぐ近くで本当に皿やコップがクラッシュしていた。
「やべ……またやっちった……」
けど、俺からしたらそんなことはどうでもよかった。やった! 助かった! やっとこの無限の襖地獄から抜け出せるんだ!
それだけで俺の体の疲れはどこかへ吹っ飛んでいったかのように無くなった。
「あ、あの! 助けてください! 今迷ってて……」
「ん? あ、昨日来た子だね? よろしくー俺、八神直斗。君は坊ちゃんでいいか」
「え、えぇ……はい」
「でもよかったよ。やっと人に会えて」
「え?」
「いやー屋敷が広すぎてさぁよく迷子になるんだよねぇあはは」
さっき飛んでいったはずの疲れが三倍増しくらいで帰ってきた。
俺は一番会ってはならない相手に遭遇してしまったらしい。
「君も迷子だったよね? 大丈夫。なんとかなるし」
「……いや、もう結構限界っすね。そろそろ漏れる」
「あー。トイレかー。トイレならわかるよ? 僕もよく迷ってねえ。トイレだけは覚えたんだよね」
なぜ普通に道を覚えなかったんだよとかそういうツッコミなんか知ったこっちゃない。俺はトイレに行きたいんだ。
それにこの人に一度でも突っ込んでしまったらボケ倒されそうだし、面倒くさそうだ。
俺の直感、シックスセンスがそう告げていた。ただですらもう膀胱も体力もピンチなのにこれ以上消耗する理由は作りたくない。
「トイレは……どこにあるんですか?」
「え? そこにあるけどどうしたの? もしかしてトイレ?」
「もしかしなくてもトイレだよ!」
言ってすぐ、俺は口に手を持っていき、言ったことを訂正、いや、無くそうとした。だが、もう言ってしまった言霊は消えない。手遅れだった。
彼は待ってましたと言わんばかりに、瞳をきらきらと輝かせて、何度か首を縦に振りながら、ニンマリと鬱陶しくも笑って見せた。
「おー! いいツッコミだねぇ! お兄さんの胸に響いちゃったよ!」
爽やかな笑顔でそう言う奴の顔面をぶん殴ってやりたいこの気持ちを堪えて、俺は何も言わずにトイレと言われた襖を開けると、そこは外だった。
「……ここは?」
「燦々と輝く太陽! 雑木林で元気に運命の相手を待つセミの鳴き声……これを見て外じゃなかったら一体どこなのさ?」
外と聞いて俺の背筋がぞわりとした。今、首についてるこの首輪……お姉さんは爆弾を外して発信機に変えたと言っていたが、お姉さんが俺のこれを発信機にもし変えていたとしたら、そろそろ迎えが来てもおかしくないはずなのだ。
なのに、それがまだ無い。ってことは……あれはブラフの可能性もある。
命と膀胱どちらが大事だ? 答えは二つに一つだ。
「……おや? 坊っちゃま……と、このバカ息子! また皿を割ったのか!?」
「あはは……でも、一回二回目じゃん?」
「なわけないだろうが! お前は今日で356枚もの皿を割ったんだ!」
朝食べたパンの数を数えなかったり、戦死者数を数えていたりする中、この人らは割った皿の数ですかそうですか。
「お坊ちゃま。大変見苦しい姿をさらしてしまい申し訳ございません。ささ。こちらでお嬢様がお待ちですのでどうぞ」
「は、はぁ」
まあ、何がともあれ俺はなんとかこの迷路から抜け出せるらしい。
「き、君! 随分探したよ?」
「恭子さん? そんな息切らしてどうしたんですか?」
「あ、あはは……実は……その首輪のやつなんだけど解除がなんと面倒くさくてさ? 屋敷からでたらドカンだったんだよね」
俺は尿意も忘れ、声を発することも出来ず、顎が外れるくらいに口を開けて呆然とすることしか出来なかった。
***
さっきはパニックになってしまったが、部屋に戻り一安心した俺は再度スマホを取り出す。
とりあえず、友人や肉親辺りには連絡を入れておいたほうがいいだろう。
緑色のアイコンをタップして起動させてみると、なにかおかしい。なんか画面がスッキリしてるのだ。
「……あれ?」
一度アプリを落として再起動させてみるが、同じようにまっさらな状態で起動される。
「……あれれ?」
確かに俺には友人は少ないと思う。だが、居ない訳では無い。両手でいや、片手で数えられる程度だが、友人は居る。しっかりと俺が属しているグループもあった。
青いメガネがトレードマークの青木に、いつも話が噛み合わない髙木。あと、天然な桜木。どいつもこいつもいい意味で馬鹿で面白い奴らだった。
まあ、奴らと連絡が取れなくなるのはいいとしよう。でも、許せないことが一つだけあった。
俺の理解者であり、俺をずっと陰ながら支えてくれた世界で唯一の俺の嫁であり、最愛の相手。イルンちゃんが何処にもいない。俺の画像フォルダーにイルンが居ない。しっかりクラウド上にもバックアップを取っていたはずの彼女がきれいさっぱり消えていたのだ。
「……浮気は許さないわよ? 例えそれが二次元でもね」
開いたドアにもたれ掛かるように立つ今の俺の嫁が不敵な笑みを浮かべてそういう。
しまった……! ずっとこの人の前じゃオタクってことを隠してきていたのにいつの間にかバレていた。
この人は普通の人っぽいからそっち系の話はしてなかったんだけどなぁ。スマホの中まで見られちゃもう隠しようがない。
てか、人のスマホの中を平気で見て、データの消去を行ってるってのになぜ俺の命に直に関わる俺の首に着いた爆弾はそのままか……なんかの拍子で死んでも知らんぞ俺は……
「……今は恭子さんさえいればいいですから別に気にしてませんよ。それよりこの首輪の爆弾解除してくれません?」
「あ、あぅ……」
意外とおねえさんは攻められると弱いらしい。こうなったらひたすら攻め続けてやろう。
データを消された憂さ晴らしと、この爆弾をどうにかして欲しいってのもあるしな。
「……どうしました?」
「ち、近い……!」
「……なんでです? 僕らは曲がりなりにも夫婦なんですよ? このくらい普通じゃないですか?」
俺はこれまでやられてきたことの仕返しのため、後ろから彼女に抱きついてみると、ふわりと甘い香りがして、密着させたところが全部なんか柔らかくて俺には刺激が強すぎた。
俺が咄嗟に離れようとすると、ガシッとお姉さんは俺の引っ込みかけた手を掴んだ。このときを待っていましたと言わんばかりの恐ろしい笑顔で。
「……ねえ」
「は、はい!?」
「……私に後ろから抱きつくなんていい度胸だね?」
超絶可愛いいい笑顔なのになんでだろ? こんなに恐怖を感じるのは。
「き、恭子さん?」
「何か言うことがあるの? 先に手を出しておいて」
「ち、違いますよ! そ、それはなんというか気の迷いというか……」
背中に滝のように汗が流れていくような気がする。俺はとびきり甘いハニートラップに引っかかっちまったみたいだ。
「……まあいいわ。今日は許してあげる」
そう言ってお姉さんは早足で部屋から出ていった。心做しか顔が赤くなってる気がする。
「あれ? お嬢何顔真っ赤にしてるんです? あ、まさか。お坊ちゃんに」
「な、なんでもないわよ!」
「ほほーう? やっぱりねぇ……お嬢本当、押されるのには」
「この部屋の前でそれ以上言ったらわかってるわよね?」
「は、はいはい。わかった。わかりましたよ」
廊下からそんな会話が聞こえてきた。
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