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4、どうも私です

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「ミレーユ、これからは第一王子の婚約者として恥ずかしくないように、しっかりと学びなさい」


日々、公爵令嬢とは…貴族とはと教え込まれ、泣きたくなる日々を送っていた矢先。
明日は私の十七歳の誕生日…成人の祝いの日を目前に、お母様とお父様に呼ばれた部屋でそう宣言された。
これはすでに私が産まれた時から決まっていたことで、私の資質を見極めた上で先月候補から婚約者に内定されたらしい。そしてくつがえる事のない決定事項だと言われた。


呆然とするまま、私付きの侍女に引きずられるようにして部屋に戻ってきた。
いや…戻された…と言った方がいいかも知れない。


「私嫌よ!殿下の婚約者だなんて務まるはずがないもの……」


前世の記憶を思い出してまだ二年ほど。
貴族社会・身分制度の中、何も持たない女の身では何かあった時に困るだろう。
なんて…そもそもその考えがいけなかったのかもしれない。


この国では余程の事がなければ、長子が家督を継ぐ。
それは王位も変わりない。
そして…第一王子……私の婚約者となった方はアホだった。
きっと馬鹿ではないと思う。仮にも最高水準の教育を受けているのだから。
けど、アホだった。純粋培養のアホだった。


多分恐らく、そのアホのフォローをする為の人選だったのだろう。
失敗した…けど、後悔先に立たず…とはこのことなんだろうと、現行の社会制度を考え諦めた。
諦めて、第一王子の婚約者という立場を受け入れ、自分らしく生きていける道を模索しよう…そう思った。



翌日の私の成人の祝いの為のパーティーは、同時に私達の婚約発表の日でもあった。


「お嬢様、本日は両陛下・第二王子殿下もご出席くださり祝っていただけるそうですよ」


上機嫌で私を飾り立てるのは、お母様の専属侍女の娘リラ。
産まれた時から私と共にあるリラは、私の婚約を喜んでいる人の内の一人だ。
自分のお世話をしている主が王族と…第一王子の婚約者となる事が嬉しいらしい。


やっぱりこの娘にも解ってもらえない。
私を今の私を解ってくれる人はここにはいない。だからといって、他に探しに行ける手立てもない。


いくら前世の記憶が戻ってもチートも何も無いただの公爵令嬢。知識はあっても…多少賢いと言っても所詮は女なのだ。


溜息を閉じ込めて、婚約者である第一王子に挨拶をしエスコートされ、パーティー会場へ向かう。明るい顔をしろ…笑顔でいろ…そういって育てられたけれど、心はドナドナされる牛だ。思わず口ずさんでしまっても、この世界にこの歌を知っている人なんていないからいいよね。


開き直って控えめに口ずさんだ。
一応令嬢なので、ある程度は礼儀を守らなきゃいけないしね。
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