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6、やるせない想い
しおりを挟む今の俺になって初めての歓楽街。
そして、前世今世通して初めて女を買った。
こんな投げやりな言い方は、話を聞いてくれた彼女に申し訳ないとは思うのだけれど。
昨夜入った店で、目が合った女…黒髪で黒い瞳をした女を買った。
前世の彼女と似たような姿形なら抱けそうな気がしたけれど、結局駄目だった。
『俺メンタルよえぇー…』
と、溜息交じりに思ったのはここだけの話だ。
それに、多分俺の身分はバレていないはずだから、『第二王子は実は○○○○のよ』なんて噂も立たないと思う……っていうかそんな噂が立った日にはで立ち直れなくなりそうなんで、本気でご遠慮願いたい。
「大丈夫ですよ。まぁ男の人はね、難しいんですよね」
そう言って、俺のこうなった原因を黙って聞いてくれた。
まぁ、そのまま話すわけにもいかないので、色々立場を入れ替えて話した。
昔、結婚の約束をした彼女がいつの間にか兄弟の婚約者になっていた事。
婚約破棄をするわけにもいかず、彼女の幸せを想うならこのまま何も言わずに去った方がいいのかとも。
おまけに思いっきり慰められて、個人の連絡先を教えてもらった。
そして最後に…
「元気出してください。あなたも辛いんだと思うんですけど、きっとその彼女さんも辛いと思うんですよ」
気のせいか涙目の彼女は、そう言いながら明るく手を振って俺を送り出してくれた。
⚫〇⚫〇
隠し通路を辿り城に帰る。
俺の侍従のトマスは、わざと見逃しているのか、それとも本気で気がついていなかったのか…俺が部屋に不在だった事をしてきたことは無い。今まで一度も。
恐らく本気で気がついていないのだと思う。
正直、前世感覚で言ってしまうと、侍従失格案件なんだろけど、きっと王である父上に言われて嫌々付いているんだろうから、文句は言うまい。
「殿下眠そうでございますね」
欠伸をかみ殺し、ノロノロとシャツのボタンをしていたら、珍しく言われた。
「殿下、子種を市井に落とすのだけはお控え下さいませね」
きっぱりと言いそそくさと出ていった。
どうやら色々と知られていたらしい。
無能ではなかったようで、少し安心した。
それにしても子種って……この世界であれをなんと言うのか分からないけれど、変に丁寧な言い方の方がイヤらしいと初めて知った。
まぁ…トマスのしている心配は完全な空振りなんだけどな。トマスが出ていった扉を見つめてボソッと呟く。
あぁ…ここに居ると余計な事を考えてしまう。いっそこのまま留学に出てしまおうか……そう考えたあと、俺は本気で留学を実行して、学院卒業までの二年間一度も帰ってこなかった。
もう少し、国のこと彼女の事を注意して見ていれば良かった……帰国後そう後悔した。
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